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第三章 平民の実習期間
55 お肉は美味しい。
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夕食は皆と一緒に食べる。そうなのです、みんなと一緒に食べられるようになったのです! 大きな食堂で、ウキウキしながら椅子に座る。
雑穀が入った麦粥。いつもと同じ――いいえ違う。
「お肉だ!」
「肉、肉、肉!」
そんな歓声と、よだれ、目を爛々とさせた子どもたち。
修道女のみなさんもうきうきと椅子に座る。お尻がもぞもぞ動いている。
「冒険者が大量に仕留めたらしくて、とても安く手に入れることができました。皆さん、恵みと幸運に感謝いたしましょう」
「女神様、冒険者さん、仕入れのおばさん、感謝します」
修道女のおばさまが手を組んで祈りをささげる。
「「女神様、冒険者さん、仕入れのおばさん、感謝します」」
私も含め、皆がそれに続いた。
一人一つ、大きい肉の塊。どん、と置かれたそれに、ニンジンやナス、シシトウみたいな野菜が寄せられている。マメは今日はない。
シンプルにステーキ、ステーキ!
久しぶりの塩分・油だらけじゃないお肉に心が躍る。
ナイフで切り取って、口に入れると、ちょっとだけパサっとしてるけど肉汁が広がる。オークらしいので、豚肉だね。生姜焼き食べたいなあ。醤油がないと難しいか。マメがあるなら類似の調味料ないかなあ。
「ダンジョンが出来てよかったね」
「お肉、毎日食べられるかな」
ウキウキとした小さな子どもたちに、大人の階段を登る大きな子どもが静止をかける。
「商人が到着するまでだよ」
ひょろ、と背の高い男の子だ。口にはお肉が入ったままま。隣の赤毛の同世代の女の子が、キョトン、とした。
「え、ドドルド商会じゃないの」
「今回はコクトーっていう商会が独占したって聞いた。だから俺達も手伝えない、って。商会は遠いから、今は代替でドドルド商会が入ってるけど、そろそろ到着しそうなんだって」
コクトー、その商会の名前に、私の手が止まる。
攻略対象、アリアの幼馴染ネオルの一族だ。シナリオ通りなら、ネオルが次期当主として動き始めているはずだ。
ネオルは、ロミジュリいいえ自殺はNGの駆け落ち夫婦のもとで育った。その時にアリアたんと幼馴染、素敵な思い出ありがとう! 両親が死んでわかったんだけど、僕は大手商家の跡取り息子だったんだ、さようなら初恋の人、必ず会おう初恋の人、でアリアと別れ、学園で再会する。
幼馴染ルートではアリアに商会運営について相談し、アイデアをもらうのルートの主なシナリオだ。私が好きだったのは、新規開拓事業を選ぶミニゲーム。ちなみに特定のアイテムを入れてルーレット形式だったので、出たとこ勝負感がくせになりました。時々限定スチルが出たり、ルート開放用のキーアイテムが出たりして、それはそれで楽しかった。
ファンタジーとは言え、実際の運営はミニゲームなんてないわけだから、アリアが相談に答える形でネオルのルートが進んだんだろう。逆ハーエンドであるならば、幼馴染のネオルは無事に大手商家――コクトー家の次期当主だ。
「えええ! 手伝いで端肉でも持ち帰れると思ったのに!」
「なんか商会が持ってる加工技術があるらしくて……『端肉も流出しない』っておっちゃんがこぼしてたぞ。大っきい商会で、王室ゴヨウタシだから、輸出する時もラクラクなんだって」
男の子の説明は難しい言葉も混じっている。誰か大人から聞いたんだろう。美味しいご飯時間なのに、皆はしょぼんとして目の前の肉を睨みつけた。
「きっと大丈夫だよ」
だから、私の声は皆に届いた。
「サラ姉ちゃん、なんで?」
「平民姫は平民の味方だから?」
ぎょ、と修道士三人が体を揺らす。
「あ、そっかー」
小さな女の子を皮切りに、皆が納得していく。
「それでも――お肉、大事。食べる! でしょ?」
「うー」
「食べないなら、私が食べる」
「げ!」
じ、と手の止まった男の子の肉を見ると、慌てて男の子がお肉に手をつけた。普段の言動とお腹の好き具合を知っている皆には、十分な脅しだろう。
それぞれ、食事に集中していく。
「サラ」
テルくんが、私の名前を呼ぶ、目線だけで答えて、私も食事に集中した。
口に広がるのは、労働の後の充実した成果だ。私が味わわなくて、誰が味わうの?
疑問に思うのは最もだ。なんで憎んだ相手を上げる真似をするのか。その確信はどこから来るのか。
超絶天使、アリアたんは弱い者を助けることでその地位を確立する。その代表格みたいな、孤児院を見捨てない。
乙女ゲーム「マカリ」のシナリオでは、孤児院での義務教育に力を入れていたわけだし、実際学園で聞いたハイド様とアリアの改革案にも、そんな話があった記憶がある。それに幼馴染の工場を開設して直接雇用、給食付与を狙ってるんじゃないだろうか。プレ義務教育まではまだ早い気がする。
――でもそれは同時に、危険な橋でもあるはずだ。
地元の商会に話を通さずにやろうとしてるなら、今後の雇用問題にかかわらないかな? 教会の子どもたち――身寄りのない子どもたちや、地元の学校に通わない貧民層の子どもたちは、確かに安く遣われている。でも、その分見習いモドキの仕事をたくさんしていて、適性のある分野を探しているようにも見えた。賃金が安いのは問題だけれど、現状教会や王家の補助で賄うことが出来ている上に、職業を選ぶ機会になっている。日曜学校みたいに、学ぶ場もあって図書館も平民に開放されている。この状況で、義務教育はどれだけ成果をあげられるんだろう。職業の適性を探る機会を奪うことにならないだろうか。
私だったら、――ユーフェミアなら、従来の形を維持していただろう。それを強化する方法を探したはずだ。それが王家に、王妃に求められる――って、いけないいけない。
私は平民のサラです。
市民になるために、道を探しています。
「魔力あり」かもしれないことが判明して、今戸惑いながらもウキウキで目の前のお肉がルンルンなのだ。
「いただきます」
大きめにお肉を切って、口の中に放り込む。
やっぱりお肉は美味しい。
雑穀が入った麦粥。いつもと同じ――いいえ違う。
「お肉だ!」
「肉、肉、肉!」
そんな歓声と、よだれ、目を爛々とさせた子どもたち。
修道女のみなさんもうきうきと椅子に座る。お尻がもぞもぞ動いている。
「冒険者が大量に仕留めたらしくて、とても安く手に入れることができました。皆さん、恵みと幸運に感謝いたしましょう」
「女神様、冒険者さん、仕入れのおばさん、感謝します」
修道女のおばさまが手を組んで祈りをささげる。
「「女神様、冒険者さん、仕入れのおばさん、感謝します」」
私も含め、皆がそれに続いた。
一人一つ、大きい肉の塊。どん、と置かれたそれに、ニンジンやナス、シシトウみたいな野菜が寄せられている。マメは今日はない。
シンプルにステーキ、ステーキ!
久しぶりの塩分・油だらけじゃないお肉に心が躍る。
ナイフで切り取って、口に入れると、ちょっとだけパサっとしてるけど肉汁が広がる。オークらしいので、豚肉だね。生姜焼き食べたいなあ。醤油がないと難しいか。マメがあるなら類似の調味料ないかなあ。
「ダンジョンが出来てよかったね」
「お肉、毎日食べられるかな」
ウキウキとした小さな子どもたちに、大人の階段を登る大きな子どもが静止をかける。
「商人が到着するまでだよ」
ひょろ、と背の高い男の子だ。口にはお肉が入ったままま。隣の赤毛の同世代の女の子が、キョトン、とした。
「え、ドドルド商会じゃないの」
「今回はコクトーっていう商会が独占したって聞いた。だから俺達も手伝えない、って。商会は遠いから、今は代替でドドルド商会が入ってるけど、そろそろ到着しそうなんだって」
コクトー、その商会の名前に、私の手が止まる。
攻略対象、アリアの幼馴染ネオルの一族だ。シナリオ通りなら、ネオルが次期当主として動き始めているはずだ。
ネオルは、ロミジュリいいえ自殺はNGの駆け落ち夫婦のもとで育った。その時にアリアたんと幼馴染、素敵な思い出ありがとう! 両親が死んでわかったんだけど、僕は大手商家の跡取り息子だったんだ、さようなら初恋の人、必ず会おう初恋の人、でアリアと別れ、学園で再会する。
幼馴染ルートではアリアに商会運営について相談し、アイデアをもらうのルートの主なシナリオだ。私が好きだったのは、新規開拓事業を選ぶミニゲーム。ちなみに特定のアイテムを入れてルーレット形式だったので、出たとこ勝負感がくせになりました。時々限定スチルが出たり、ルート開放用のキーアイテムが出たりして、それはそれで楽しかった。
ファンタジーとは言え、実際の運営はミニゲームなんてないわけだから、アリアが相談に答える形でネオルのルートが進んだんだろう。逆ハーエンドであるならば、幼馴染のネオルは無事に大手商家――コクトー家の次期当主だ。
「えええ! 手伝いで端肉でも持ち帰れると思ったのに!」
「なんか商会が持ってる加工技術があるらしくて……『端肉も流出しない』っておっちゃんがこぼしてたぞ。大っきい商会で、王室ゴヨウタシだから、輸出する時もラクラクなんだって」
男の子の説明は難しい言葉も混じっている。誰か大人から聞いたんだろう。美味しいご飯時間なのに、皆はしょぼんとして目の前の肉を睨みつけた。
「きっと大丈夫だよ」
だから、私の声は皆に届いた。
「サラ姉ちゃん、なんで?」
「平民姫は平民の味方だから?」
ぎょ、と修道士三人が体を揺らす。
「あ、そっかー」
小さな女の子を皮切りに、皆が納得していく。
「それでも――お肉、大事。食べる! でしょ?」
「うー」
「食べないなら、私が食べる」
「げ!」
じ、と手の止まった男の子の肉を見ると、慌てて男の子がお肉に手をつけた。普段の言動とお腹の好き具合を知っている皆には、十分な脅しだろう。
それぞれ、食事に集中していく。
「サラ」
テルくんが、私の名前を呼ぶ、目線だけで答えて、私も食事に集中した。
口に広がるのは、労働の後の充実した成果だ。私が味わわなくて、誰が味わうの?
疑問に思うのは最もだ。なんで憎んだ相手を上げる真似をするのか。その確信はどこから来るのか。
超絶天使、アリアたんは弱い者を助けることでその地位を確立する。その代表格みたいな、孤児院を見捨てない。
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――でもそれは同時に、危険な橋でもあるはずだ。
地元の商会に話を通さずにやろうとしてるなら、今後の雇用問題にかかわらないかな? 教会の子どもたち――身寄りのない子どもたちや、地元の学校に通わない貧民層の子どもたちは、確かに安く遣われている。でも、その分見習いモドキの仕事をたくさんしていて、適性のある分野を探しているようにも見えた。賃金が安いのは問題だけれど、現状教会や王家の補助で賄うことが出来ている上に、職業を選ぶ機会になっている。日曜学校みたいに、学ぶ場もあって図書館も平民に開放されている。この状況で、義務教育はどれだけ成果をあげられるんだろう。職業の適性を探る機会を奪うことにならないだろうか。
私だったら、――ユーフェミアなら、従来の形を維持していただろう。それを強化する方法を探したはずだ。それが王家に、王妃に求められる――って、いけないいけない。
私は平民のサラです。
市民になるために、道を探しています。
「魔力あり」かもしれないことが判明して、今戸惑いながらもウキウキで目の前のお肉がルンルンなのだ。
「いただきます」
大きめにお肉を切って、口の中に放り込む。
やっぱりお肉は美味しい。
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