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lesson 1
初めての………
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「私ってこんなにヘタレだっけ?」
リビングで愛梨の作り置きしてくれたおかずをつまみながら独りごちるリクを冷ややかな目で見つめるのは香織。
「……本気で言ってる?だったら答えるけど、アタシはアンタ以上のヘタレ見たことない」
バッサリ切り捨てられたリクは肩を落とす。
「あーぁ…愛梨可哀想……外であんなクールぶってるのに、蓋を開けてみたらこーんなヘタレに捕まっちゃったなんて。何がプレイボーイよ。アンタなんてただのヘタレよ、ヘタレ」
リクは更に肩を落とすしか無かった。
* * ** * ** * ** * ** * *
「あの、さ…あ…あい……アイスあるけど食べる?」
まただ……
幾度となくトライしては言えずにいるのは「愛梨」の名前。
いつの間にか愛梨と香織が名前で呼び合うようになった。
それにすら嫉妬を覚えてしまうリク。
今までの人生で一度もこんなことはなく、ただただ困惑してしまっている。
そんな些細なことを言い出せずにいるとは思ってもみない愛梨は、小さく笑って髪を纏めるとエプロンをつけて料理を始める。
エプロンつけた彼女が自分の家のキッチンに立っているなんて最高……
リビングからキッチンを1人眺めながらリクの思考は支配されて行った。
「ごはん作り終わったらね?リクさん何かリクエストある?香織からは私の作ったものなら何でもいいって言われてしまって…」
そんなふわふわした気持ちを一気に引き戻したのは、愛梨の口から出た「香織」の名前。
お互いなんの感情もないのは分かっている。
それでも燃えるような嫉妬を抱いてしまうのは、未だに愛梨がリクをさん付けで呼ぶからだった。
最近敬語はほとんど使わなくなった。
それでもリクは愛梨のことを「愛梨ちゃん」と呼び、愛梨はリクを「リクさん」と呼んでいる。
それにも関わらず、香織のことは呼び捨てで呼ぶのだ。
そんなリクの思いを知ってか知らずか愛梨は話しながら手際よく料理を作っていくのだった。
「んー♡今日も愛梨のごはん最高に美味しかった!アタシもリクも料理なんて一切できないし…こんなことならアタシの所にお嫁にこな「ダメに決まってるだろ!」」
夕飯の片付けをしながら香織の冗談をニコニコしながら聞いていた愛梨は突然の叫び声に驚いてお皿を落とし、割ってしまう。
「あ…ごめんなさ…ぃった!」
「愛梨っ!」
慌てて割れたお皿を拾おうとする愛梨は欠片で指を切ってしまった。
リクは慌てて駆け寄るが、愛梨の名前を呼べたことに気づいていない。
ニヤニヤしながらその様子を見ている香織と、名前を呼ばれた本人は固まってしまっている。
「愛梨、どこか他に切ったところは?」
「あ…ありません……」
ほっとしたように胸を撫で下ろすと、リクは愛梨に傷を洗って来るように言ってから割れた皿を片付け始める。
「ねぇ…気づいてないの?さっきから愛梨って呼んでること」
愛梨が席を外すと至極楽しそうに香織はリクに話しかけた。
同時に時が止まったように今度はリクが固まる。
「本当だ……呼べてる…」
リビングに戻ってきた愛梨に気づくと、喜びに震えて役に立たないリクにため息を吐きながら香織は愛梨を手招きして呼び、救急箱から絆創膏を出して貼った。
「あのっ!」
アパートまで送ってもらった愛梨はリクを呼び止める。
振り返ろうとするリクの背中に愛梨が身を寄せると、リクの動きはピタッと止まった。
「今日…嬉しかった……香織も含め他の人は呼び捨てなのに私だけって…思ってたから……おやすみなさい!」
振り返ると、いい逃げするようにアパートに駆け込む愛梨の後ろ姿が目に入り、リクはその場にしゃがみこむのだった。
愛梨の部屋で気を抜いた愛梨がリクのことを「りぃくん」と呼んでノックアウトするのはまた別のお話。。。
リビングで愛梨の作り置きしてくれたおかずをつまみながら独りごちるリクを冷ややかな目で見つめるのは香織。
「……本気で言ってる?だったら答えるけど、アタシはアンタ以上のヘタレ見たことない」
バッサリ切り捨てられたリクは肩を落とす。
「あーぁ…愛梨可哀想……外であんなクールぶってるのに、蓋を開けてみたらこーんなヘタレに捕まっちゃったなんて。何がプレイボーイよ。アンタなんてただのヘタレよ、ヘタレ」
リクは更に肩を落とすしか無かった。
* * ** * ** * ** * ** * *
「あの、さ…あ…あい……アイスあるけど食べる?」
まただ……
幾度となくトライしては言えずにいるのは「愛梨」の名前。
いつの間にか愛梨と香織が名前で呼び合うようになった。
それにすら嫉妬を覚えてしまうリク。
今までの人生で一度もこんなことはなく、ただただ困惑してしまっている。
そんな些細なことを言い出せずにいるとは思ってもみない愛梨は、小さく笑って髪を纏めるとエプロンをつけて料理を始める。
エプロンつけた彼女が自分の家のキッチンに立っているなんて最高……
リビングからキッチンを1人眺めながらリクの思考は支配されて行った。
「ごはん作り終わったらね?リクさん何かリクエストある?香織からは私の作ったものなら何でもいいって言われてしまって…」
そんなふわふわした気持ちを一気に引き戻したのは、愛梨の口から出た「香織」の名前。
お互いなんの感情もないのは分かっている。
それでも燃えるような嫉妬を抱いてしまうのは、未だに愛梨がリクをさん付けで呼ぶからだった。
最近敬語はほとんど使わなくなった。
それでもリクは愛梨のことを「愛梨ちゃん」と呼び、愛梨はリクを「リクさん」と呼んでいる。
それにも関わらず、香織のことは呼び捨てで呼ぶのだ。
そんなリクの思いを知ってか知らずか愛梨は話しながら手際よく料理を作っていくのだった。
「んー♡今日も愛梨のごはん最高に美味しかった!アタシもリクも料理なんて一切できないし…こんなことならアタシの所にお嫁にこな「ダメに決まってるだろ!」」
夕飯の片付けをしながら香織の冗談をニコニコしながら聞いていた愛梨は突然の叫び声に驚いてお皿を落とし、割ってしまう。
「あ…ごめんなさ…ぃった!」
「愛梨っ!」
慌てて割れたお皿を拾おうとする愛梨は欠片で指を切ってしまった。
リクは慌てて駆け寄るが、愛梨の名前を呼べたことに気づいていない。
ニヤニヤしながらその様子を見ている香織と、名前を呼ばれた本人は固まってしまっている。
「愛梨、どこか他に切ったところは?」
「あ…ありません……」
ほっとしたように胸を撫で下ろすと、リクは愛梨に傷を洗って来るように言ってから割れた皿を片付け始める。
「ねぇ…気づいてないの?さっきから愛梨って呼んでること」
愛梨が席を外すと至極楽しそうに香織はリクに話しかけた。
同時に時が止まったように今度はリクが固まる。
「本当だ……呼べてる…」
リビングに戻ってきた愛梨に気づくと、喜びに震えて役に立たないリクにため息を吐きながら香織は愛梨を手招きして呼び、救急箱から絆創膏を出して貼った。
「あのっ!」
アパートまで送ってもらった愛梨はリクを呼び止める。
振り返ろうとするリクの背中に愛梨が身を寄せると、リクの動きはピタッと止まった。
「今日…嬉しかった……香織も含め他の人は呼び捨てなのに私だけって…思ってたから……おやすみなさい!」
振り返ると、いい逃げするようにアパートに駆け込む愛梨の後ろ姿が目に入り、リクはその場にしゃがみこむのだった。
愛梨の部屋で気を抜いた愛梨がリクのことを「りぃくん」と呼んでノックアウトするのはまた別のお話。。。
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