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第十夜 「好きになるなど以っての外です」と言われました
本編 ※R15
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「殿下はあなたにお優しくされますが、それは全て本物のお相手と床入れをなさる為の練習です。あなたにお心がある訳ではありません。努努勘違いをなされませんよう、ましてや、好きになるなど以ての外です」
「はい、分かりました⋯」
ひと月程前、この国の第一王子のウィラード殿下が、20歳を迎えられると同時に立太子された。
ウィラード殿下は、立太子される前から、学園での勉学の傍ら、国内の領地を精力的に巡られたり、城下に下りては市井の者の声に耳を傾けられていた。
そんなウィラード殿下は、国民からの信頼も厚く、当たり前だけど、皆から愛されている。
だから、どうしても解せないのだ。
僕が何故、そんな立派なウィラード王太子殿下の閨係に選ばれたのか⋯。
僕がウィラード殿下の閨係に命ぜられたのは、今から1週間前の事だった。
僕はもともと男爵家の四男に生まれた。でも、今から10年前の、僕が8歳の時に、同性婚をしていた伯爵である伯父の養子になった。
伯父のオーラン義父様も、義伯父のカイ義父様も、使用人達も皆、僕をとても可愛がってくれ、何不自由のない生活を送らせてもらった。
今年学園も卒業し、これから恩返しをしようと思っていた矢先、王家から手紙が届いたのだ。
『エリスをウィラード王太子殿下の閨係に命ず
今日より1週間後、日が落ちましたら、王家より迎えの馬車を向かわせます』
最初は、何かの間違いではないかと思った。
養子とは言え、僕は一応伯爵家の跡取りだ。
閨係に高位貴族を指名するなんて、今まで聞いた事がない。
やはり、僕が男爵家の生まれだからだろうか⋯。
結局、義父様達に相談もできず、何も解決しないまま当日を迎え、僕は案内された部屋まで来てしまった。
「『好きになるなど以ての外』なんて、言われなくても分かってるよ」
僕は大きなベッドの前で、緊張を紛らわすように、独り言を呟いた。
「何か言ったかい?」
「えっ!?えっ!?うわあっ!!で、殿下!?」
薄暗い部屋で、僕に声を掛けてきたのは、紛れもなくウィラード王太子殿下だった。
「も、申し訳ありませんっ!」
「何を謝っているんだい?」
「か、勝手に口を開いてしまいました」
「そんな事気にしなくていい、エリスは今日、私の愛しい伴侶になってくれるのだろう?」
「い、愛、しい⋯?伴、侶⋯?」
「そうだよ。ここに案内した者から、話は聞いているね?私は今日、エリスをドロドロになるまで甘やかす事になっているんだよ」
「ドっ!?ドロドロ!?そ、そこまでは言われてません!ただ、殿下から優しくされますが、勘違いしないようにとだけ⋯、ごにょ⋯」
僕が聞いた事をそのまま伝えると、殿下は聞こえなかったのか、僕の肩にすっと手を置き、ゆっくりと僕をベッドに寝かせた。
ほ、本当に、これから殿下と⋯。
僕の頭に一瞬不安がよぎった時、僕は殿下から唇を塞がれていた。
「ふぅっ、んん、はふっ、はぁぁ」
「エリス、何を考えるているの?」
殿下から話し掛けられ、僕はきつく閉じていた瞼を恐る恐る開いた。
⋯っ!
なんて綺麗な王子様なんだろう⋯。
いつもの優しい雰囲気とは違い、今日は、言葉にできない程の凄まじい妖艶さを纏っていらっしゃる。
「綺麗⋯、あっ!申し訳ありません!」
「謝らなくていい。私は、エリスから褒められると嬉しいよ」
「あっ、あっ、ありがとう、ございます」
「ふっ、エリスは可愛いね」
殿下から熱の篭った眼差しで見つめられ、僕は全身がぶわっと赤く染まった。
「エリス、この位で恥ずかしがっていたら、この先には進めないよ。今からエリスを、ドロドロに溶かす予定だからね」
「へっ?」
殿下の宣言通り、僕はドロドロに溶かされた。
殿下の唇が僕の全身に降り注ぎ、僕が恥ずかしがって体を隠すと、何故か殿下はぶるっと身震いをして、嬉しそうに僕の手を掴んで、シーツに縫い付けた。
長い長い口付けの時間は、僕の羞恥をどこかへ追いやってしまった。
後の事は、あまり覚えていない。
覚えていないと言うか、あまりにも夢の世界の出来事のようで、僕は夢と現実の区別がつかなくなってしまった。
それほど、殿下はお優しかった。
殿下を好きになるには、充分なほどに。
あれからひと月が経った。
王家の閨係は、一度きりだと聞いたことがある。
その時は何故かと思ったけど、今なら分かる。
殿下にもう一度触れられたら、僕は言ってはいけない言葉を口にしてしまうだろう。
「エリス、最近元気がないね」
「カイ義父様⋯」
「もしかして、この前、王城に呼び出された事に関係がある?」
「⋯⋯」
「無理に答えなくてもいいけど、皆エリスの事、心配してるんだよ。オーランなんて、心配しすぎて仕事にならないんだから。この前なんて、ペンにインクもつけずに、何枚も書類にサインしてたんだよ」
「オーラン義父様が⋯?」
「そうだよ」
「⋯心配かけて、ごめんなさい」
「ふふっ、何かあったら相談するんだよ。愛してるよ」
チュッ
カイ義父様は、僕の額に優しく口付けをして、執務に戻っていった。
優しい義父様達に心配を掛けて、僕は何をやってるんだろう。
あの日言われたじゃないか。好きになるなど以ての外だって。
「もう忘れよう⋯」
そう決心した、その時だった。
「エリス、何を忘れるんだい?」
「えっ⋯?ウィラード殿下!?」
驚く僕の目の前には、ウィラード殿下が、完璧なアルカイックスマイルで立っていた。
「ウィラード殿下⋯、どうしてここに⋯?」
「そろそろ暗示が効いてきた頃かと思ってね」
「暗示⋯?」
「ああ、そうだよ。でも、ちょっと待たせすぎたみたいだね。危うく、エリスに忘れられるところだった」
「えっ?」
僕が殿下の言葉に首を傾げた刹那、僕はウィラード殿下に抱き寄せられていた。
「で、殿下っ!?どうされたんですか!?」
「エリス、ずっと好きだった」
「へっ?」
殿下は僕の首筋に顔を埋め、何度も何度も口付けをした。
「えええぇぇぇーーっ!!??」
ウィラード殿下は、呆然とする僕を愛おしそうに見つめながら、少しバツが悪そうに、全てを話してくれた。
「エリス、騙すような真似をしてすまなかった。実は子供の頃、私達は出会ってるんだ。伯爵と伴侶のカイが、王城に養子縁組の書類を持ってきた時、エリスも一緒に来たのを覚えているかい?」
「はい、僕が8歳の時でした」
僕が答えると、殿下は優しく微笑んで頷いた。
「では、あの時、伯爵達と陛下の話が長引いて、退屈したエリスが図書室に案内されたのは?」
「はい、覚えて⋯、あっ!?」
「思い出したかい?」
「はいっ、あの日、図書室で初めて会った優しいお兄さんから、勉強を教えてもらいました。まさか、あの時のお兄さんが⋯」
「そうだよ。私だ」
目を見開いて驚く僕の手を取り、殿下は続けた。
「エリスは私の話を、目をキラキラさせながら聞いてくれた。『それで?それで?』って、何度も質問してきて、本当に可愛かったよ。あの時思ったんだ。この国の民とも、できるだけ直接話をしたいって」
「殿下⋯」
「だから、私は国中を巡ったんだ。エリス、私が皆に好かれる王太子になれたのは、全部エリスのお陰なんだ」
「そ、そんな事ないです!殿下が民を大切に思っていらっしゃるのを、皆知ってるからです!だから!皆、ウィラード殿下の事が好きなんです!」
「エリスも?」
「へっ?」
「エリスも、私が事が好きかい?」
「えっ、えっと、そのぉ⋯」
「おかしいな、暗示が効いていないのか?」
「⋯殿下、さっきから、その暗示というのは何なんですか?」
「怒らないかい?」
「は、はい」
「聞いた話によると、人という生き物は、してはいけないと言われると、したくて堪らなくなるそうなんだ」
「は、はぁ⋯」
「ふっ、訳が分からないって顔だね。エリスはあの日、私を好きになるな、と言われただろう?だからエリスは、私を好きになっては駄目だと思った。だが、そう思えば思う程、私の事が⋯」
「まっ!まさか⋯、確信犯⋯?」
「あの時は私も必死だったんだ。伯爵から、エリスを私の伴侶にするのは、エリスが私を好きになるのが条件だって言われていたんだ」
「へっ?伴、侶⋯?ちょ、ちょっと待ってください、殿下!もしかして、義父様達も知っていたんですか?その⋯、閨係の事」
「ああっと、いや⋯、あれは、私が、ごにょ⋯」
「ウィラード殿下?」
「エリス、すまなかった!久しぶりにエリスに会えると思うと、自分を抑えられなかったんだ。だから、あれは私が勝手やった事だ。はぁ、伯爵に八つ裂きにされるだろうな」
「ふ、ふふっ」
「エリス⋯、怒ってないかい?」
「はい。だって僕は、あの日からずっと、暗示にかかってますから」
「エリス、それは⋯」
「殿下、僕も好きです」
「エリスっ!!」
「わわっ!」
殿下が思い切り僕に抱きついた瞬間、部屋の扉が大きく開かれた。
「ウィラード殿下!!閨係とは何の事ですか!!まさか⋯、既にエリスに手を出したのではないでしょうね!!」
「うっ、す、すまない、伯爵」
「ゆ、ゆ、許さーーーん!!!」
家中の皆で、鬼のように怒り狂うオーラン義父様を必死に止めた。
遅れて話を聞いたカイ義父様も怒り出し、暴れる2人を止めるのは、本当に大変だった。
でも、今にも殿下に殴りかかりそうな、オーラン義父様とカイ義父様を見ていたら、僕は今までずっと、2人の深い愛に包まれていたんだと気づいた。
2人の子供になれて、本当に良かった。
オーラン父様、カイ義父様、僕も心から愛してます。
1年後、僕とウィラード殿下は、国民に祝福されながら結婚式を挙げた。
両家とも跡継ぎの問題はあったけど、世論が僕達の後押しをしてくれた。
国中の民が、愛し合う2人を応援したいと言ってくれた。
「私の暗示のお陰かな」
「ウィラード殿下、どう言う意味ですか?」
「私がただ国中を巡ったと思うかい?ふっ、皆に暗示をかけたんだ」
「暗示⋯?」
「ああ、私には好きな人がいるが、きっと成就する事はないだろう、とな。きっと、皆こう思ったに違いない。殿下の恋を成就させてあげたい、ってね」
「ええぇぇっ!?」
ウィラード殿下は、いったいいつから、僕と結婚する計画を立てていたんだろう?
きっと僕は僕が思う以上に、殿下から愛されているみたいだ。
「エリス、何を考えているんだい?」
「あっ⋯、な、何も考えてないです」
「そう?私が怖くなった?」
「そんな事ないですっ!」
「ふっ、エリス、私に毎晩抱かれても、同じ言葉が言えるかい?」
「へっ?」
やっぱり、殿下の愛は、僕が思うよりも、ずっとずっと重いみたいだ。
「はい、分かりました⋯」
ひと月程前、この国の第一王子のウィラード殿下が、20歳を迎えられると同時に立太子された。
ウィラード殿下は、立太子される前から、学園での勉学の傍ら、国内の領地を精力的に巡られたり、城下に下りては市井の者の声に耳を傾けられていた。
そんなウィラード殿下は、国民からの信頼も厚く、当たり前だけど、皆から愛されている。
だから、どうしても解せないのだ。
僕が何故、そんな立派なウィラード王太子殿下の閨係に選ばれたのか⋯。
僕がウィラード殿下の閨係に命ぜられたのは、今から1週間前の事だった。
僕はもともと男爵家の四男に生まれた。でも、今から10年前の、僕が8歳の時に、同性婚をしていた伯爵である伯父の養子になった。
伯父のオーラン義父様も、義伯父のカイ義父様も、使用人達も皆、僕をとても可愛がってくれ、何不自由のない生活を送らせてもらった。
今年学園も卒業し、これから恩返しをしようと思っていた矢先、王家から手紙が届いたのだ。
『エリスをウィラード王太子殿下の閨係に命ず
今日より1週間後、日が落ちましたら、王家より迎えの馬車を向かわせます』
最初は、何かの間違いではないかと思った。
養子とは言え、僕は一応伯爵家の跡取りだ。
閨係に高位貴族を指名するなんて、今まで聞いた事がない。
やはり、僕が男爵家の生まれだからだろうか⋯。
結局、義父様達に相談もできず、何も解決しないまま当日を迎え、僕は案内された部屋まで来てしまった。
「『好きになるなど以ての外』なんて、言われなくても分かってるよ」
僕は大きなベッドの前で、緊張を紛らわすように、独り言を呟いた。
「何か言ったかい?」
「えっ!?えっ!?うわあっ!!で、殿下!?」
薄暗い部屋で、僕に声を掛けてきたのは、紛れもなくウィラード王太子殿下だった。
「も、申し訳ありませんっ!」
「何を謝っているんだい?」
「か、勝手に口を開いてしまいました」
「そんな事気にしなくていい、エリスは今日、私の愛しい伴侶になってくれるのだろう?」
「い、愛、しい⋯?伴、侶⋯?」
「そうだよ。ここに案内した者から、話は聞いているね?私は今日、エリスをドロドロになるまで甘やかす事になっているんだよ」
「ドっ!?ドロドロ!?そ、そこまでは言われてません!ただ、殿下から優しくされますが、勘違いしないようにとだけ⋯、ごにょ⋯」
僕が聞いた事をそのまま伝えると、殿下は聞こえなかったのか、僕の肩にすっと手を置き、ゆっくりと僕をベッドに寝かせた。
ほ、本当に、これから殿下と⋯。
僕の頭に一瞬不安がよぎった時、僕は殿下から唇を塞がれていた。
「ふぅっ、んん、はふっ、はぁぁ」
「エリス、何を考えるているの?」
殿下から話し掛けられ、僕はきつく閉じていた瞼を恐る恐る開いた。
⋯っ!
なんて綺麗な王子様なんだろう⋯。
いつもの優しい雰囲気とは違い、今日は、言葉にできない程の凄まじい妖艶さを纏っていらっしゃる。
「綺麗⋯、あっ!申し訳ありません!」
「謝らなくていい。私は、エリスから褒められると嬉しいよ」
「あっ、あっ、ありがとう、ございます」
「ふっ、エリスは可愛いね」
殿下から熱の篭った眼差しで見つめられ、僕は全身がぶわっと赤く染まった。
「エリス、この位で恥ずかしがっていたら、この先には進めないよ。今からエリスを、ドロドロに溶かす予定だからね」
「へっ?」
殿下の宣言通り、僕はドロドロに溶かされた。
殿下の唇が僕の全身に降り注ぎ、僕が恥ずかしがって体を隠すと、何故か殿下はぶるっと身震いをして、嬉しそうに僕の手を掴んで、シーツに縫い付けた。
長い長い口付けの時間は、僕の羞恥をどこかへ追いやってしまった。
後の事は、あまり覚えていない。
覚えていないと言うか、あまりにも夢の世界の出来事のようで、僕は夢と現実の区別がつかなくなってしまった。
それほど、殿下はお優しかった。
殿下を好きになるには、充分なほどに。
あれからひと月が経った。
王家の閨係は、一度きりだと聞いたことがある。
その時は何故かと思ったけど、今なら分かる。
殿下にもう一度触れられたら、僕は言ってはいけない言葉を口にしてしまうだろう。
「エリス、最近元気がないね」
「カイ義父様⋯」
「もしかして、この前、王城に呼び出された事に関係がある?」
「⋯⋯」
「無理に答えなくてもいいけど、皆エリスの事、心配してるんだよ。オーランなんて、心配しすぎて仕事にならないんだから。この前なんて、ペンにインクもつけずに、何枚も書類にサインしてたんだよ」
「オーラン義父様が⋯?」
「そうだよ」
「⋯心配かけて、ごめんなさい」
「ふふっ、何かあったら相談するんだよ。愛してるよ」
チュッ
カイ義父様は、僕の額に優しく口付けをして、執務に戻っていった。
優しい義父様達に心配を掛けて、僕は何をやってるんだろう。
あの日言われたじゃないか。好きになるなど以ての外だって。
「もう忘れよう⋯」
そう決心した、その時だった。
「エリス、何を忘れるんだい?」
「えっ⋯?ウィラード殿下!?」
驚く僕の目の前には、ウィラード殿下が、完璧なアルカイックスマイルで立っていた。
「ウィラード殿下⋯、どうしてここに⋯?」
「そろそろ暗示が効いてきた頃かと思ってね」
「暗示⋯?」
「ああ、そうだよ。でも、ちょっと待たせすぎたみたいだね。危うく、エリスに忘れられるところだった」
「えっ?」
僕が殿下の言葉に首を傾げた刹那、僕はウィラード殿下に抱き寄せられていた。
「で、殿下っ!?どうされたんですか!?」
「エリス、ずっと好きだった」
「へっ?」
殿下は僕の首筋に顔を埋め、何度も何度も口付けをした。
「えええぇぇぇーーっ!!??」
ウィラード殿下は、呆然とする僕を愛おしそうに見つめながら、少しバツが悪そうに、全てを話してくれた。
「エリス、騙すような真似をしてすまなかった。実は子供の頃、私達は出会ってるんだ。伯爵と伴侶のカイが、王城に養子縁組の書類を持ってきた時、エリスも一緒に来たのを覚えているかい?」
「はい、僕が8歳の時でした」
僕が答えると、殿下は優しく微笑んで頷いた。
「では、あの時、伯爵達と陛下の話が長引いて、退屈したエリスが図書室に案内されたのは?」
「はい、覚えて⋯、あっ!?」
「思い出したかい?」
「はいっ、あの日、図書室で初めて会った優しいお兄さんから、勉強を教えてもらいました。まさか、あの時のお兄さんが⋯」
「そうだよ。私だ」
目を見開いて驚く僕の手を取り、殿下は続けた。
「エリスは私の話を、目をキラキラさせながら聞いてくれた。『それで?それで?』って、何度も質問してきて、本当に可愛かったよ。あの時思ったんだ。この国の民とも、できるだけ直接話をしたいって」
「殿下⋯」
「だから、私は国中を巡ったんだ。エリス、私が皆に好かれる王太子になれたのは、全部エリスのお陰なんだ」
「そ、そんな事ないです!殿下が民を大切に思っていらっしゃるのを、皆知ってるからです!だから!皆、ウィラード殿下の事が好きなんです!」
「エリスも?」
「へっ?」
「エリスも、私が事が好きかい?」
「えっ、えっと、そのぉ⋯」
「おかしいな、暗示が効いていないのか?」
「⋯殿下、さっきから、その暗示というのは何なんですか?」
「怒らないかい?」
「は、はい」
「聞いた話によると、人という生き物は、してはいけないと言われると、したくて堪らなくなるそうなんだ」
「は、はぁ⋯」
「ふっ、訳が分からないって顔だね。エリスはあの日、私を好きになるな、と言われただろう?だからエリスは、私を好きになっては駄目だと思った。だが、そう思えば思う程、私の事が⋯」
「まっ!まさか⋯、確信犯⋯?」
「あの時は私も必死だったんだ。伯爵から、エリスを私の伴侶にするのは、エリスが私を好きになるのが条件だって言われていたんだ」
「へっ?伴、侶⋯?ちょ、ちょっと待ってください、殿下!もしかして、義父様達も知っていたんですか?その⋯、閨係の事」
「ああっと、いや⋯、あれは、私が、ごにょ⋯」
「ウィラード殿下?」
「エリス、すまなかった!久しぶりにエリスに会えると思うと、自分を抑えられなかったんだ。だから、あれは私が勝手やった事だ。はぁ、伯爵に八つ裂きにされるだろうな」
「ふ、ふふっ」
「エリス⋯、怒ってないかい?」
「はい。だって僕は、あの日からずっと、暗示にかかってますから」
「エリス、それは⋯」
「殿下、僕も好きです」
「エリスっ!!」
「わわっ!」
殿下が思い切り僕に抱きついた瞬間、部屋の扉が大きく開かれた。
「ウィラード殿下!!閨係とは何の事ですか!!まさか⋯、既にエリスに手を出したのではないでしょうね!!」
「うっ、す、すまない、伯爵」
「ゆ、ゆ、許さーーーん!!!」
家中の皆で、鬼のように怒り狂うオーラン義父様を必死に止めた。
遅れて話を聞いたカイ義父様も怒り出し、暴れる2人を止めるのは、本当に大変だった。
でも、今にも殿下に殴りかかりそうな、オーラン義父様とカイ義父様を見ていたら、僕は今までずっと、2人の深い愛に包まれていたんだと気づいた。
2人の子供になれて、本当に良かった。
オーラン父様、カイ義父様、僕も心から愛してます。
1年後、僕とウィラード殿下は、国民に祝福されながら結婚式を挙げた。
両家とも跡継ぎの問題はあったけど、世論が僕達の後押しをしてくれた。
国中の民が、愛し合う2人を応援したいと言ってくれた。
「私の暗示のお陰かな」
「ウィラード殿下、どう言う意味ですか?」
「私がただ国中を巡ったと思うかい?ふっ、皆に暗示をかけたんだ」
「暗示⋯?」
「ああ、私には好きな人がいるが、きっと成就する事はないだろう、とな。きっと、皆こう思ったに違いない。殿下の恋を成就させてあげたい、ってね」
「ええぇぇっ!?」
ウィラード殿下は、いったいいつから、僕と結婚する計画を立てていたんだろう?
きっと僕は僕が思う以上に、殿下から愛されているみたいだ。
「エリス、何を考えているんだい?」
「あっ⋯、な、何も考えてないです」
「そう?私が怖くなった?」
「そんな事ないですっ!」
「ふっ、エリス、私に毎晩抱かれても、同じ言葉が言えるかい?」
「へっ?」
やっぱり、殿下の愛は、僕が思うよりも、ずっとずっと重いみたいだ。
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2025.4.28 ムーンライトノベルに投稿しました。
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