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第3章
遊びと本気 4
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大きなため息をつきながら駅に向かっていると、
「あれ、黒原さん?」
背後から聞き慣れた声がして、思わず体がギクリと跳ねる。
振り向くと、
「し、し、白石さん…」
今現在会いたくない人間ぶっちぎりでナンバーワンの男が現れた。
顔を見ると、先日晒した醜態と匿名相談サイトで得られた回答が一瞬で頭を駆け回り、更にはなぜだかみどりさんの件がなんとなく後ろめたく感じてしまい、ついサッと目を逸らしてしまった。
「今仕事帰りですか?こんなところで会うなんて奇遇ですねえ」
「そ、そうですね…ほんと奇遇…」
「買い物でもして帰ろうかと思ったら、見知った後ろ姿を見かけたのでつい声掛けちゃいました。こんな時間までお疲れ様です」
「い、いやどうも…というか白石さんも、お疲れ様です…」
「ありがとうございます…って黒原さん?何かありました?」
何事もなかったかのように気さくに話しかけてくる白石さんの顔を見れずにいると、にゅっと顔を覗き込まれた。
「なっ!…何もないです、あ~、久しぶりだからかな?はは…」
「そんな久しぶりですか?あの後、無事に帰れたか気になってたんですよ」
あ、あのあと!!!
この男はこんな道端で平然とそういうことを言う!!!
別に他の人間が聞いても特に疑問には感じない言葉ではあるが、
俺と白石さんにとって…いや少なくとも俺にとっては、「あの後」という単語はとてつもなく動揺する意味合いを持つ単語であり…
それを何の気無しにさらっと発言できてしまうこの白石という男にほんの少しだけ怒りを覚えてしまう。
「べ、別に大丈夫でしたよ!?そんな、心配されるようなことでもないですし!!」
と、湧いてくる怒りに任せて、女子高生のような強がった発言をしてしまう30歳会社員…
「ええ?そうですか?メッセージの返信もなければ、心配にもなると思いますけど」
「そっ…それは申し訳なかったですが…」
「それにやっぱりなんだか黒原さん、様子がおかしいですよ。何かあったんでしょう」
はい!?何かあったかだって!?
何かあったに決まってるでしょうが!!
あんたに!!キスを!!されたんだよ!!!
というかそれ以前に!!!もっと色々あったでしょーが!!!
…とも言えず、何と言い返そうかと考えた時、ブブッと握っていたスマホが震えた。
ちらっと画面を見ると、みどりさんからのメッセージだった。
「あ、お電話ですか?どうぞ出てください」
「い、いやメッセージなんで、大丈夫です…」
と言いかけて、はっと思い付く。
「あ~実はですね、そのメッセージでまあちょっと一悶着ありまして…」
「一悶着ですか?」
先日の件で全く懲りていなかったらしい俺は、あろうことか再び白石さんに対する試し行動のような挑発を試みてしまう。
「ええ、はいまあ?女性関係とでも言いましょうか?」
「女性関係?」
「まあちょっと今、それでデートに!誘われたりなんかして、ちょっと悩んでるんですよね~…」
「へえ…デートですか」
声色が少し変わった気がしてチラッと白石さんの顔を見るが、当の白石さんはというといつもと同じ顔でニコッと笑って、
「先日も女性とのお付き合いについてお話しされてましたもんね。悩まれてるのはその件ですか?」
ときた!!
本っ当に、あの日のことを何事もなかったことにされようとしている!!
「いや~まあ、そうなりますかね?俺、そういうのに疎いのもありますし!」
「良かったらお話聞きますよ、僕なんかで良ければですけど」
勝ち目が薄い…というよりほぼ全くないのは分かっているはずなのに、通常営業で接してくる白石さんにどうしても苛立ちを抑えられない俺は…
「僕なんかで良ければって、誰よりも頼りになりますよ白石さんは~!お願いしてもいいですか!?」
と、自ら負け戦のゴングを鳴らしてしまったのだった…
「あれ、黒原さん?」
背後から聞き慣れた声がして、思わず体がギクリと跳ねる。
振り向くと、
「し、し、白石さん…」
今現在会いたくない人間ぶっちぎりでナンバーワンの男が現れた。
顔を見ると、先日晒した醜態と匿名相談サイトで得られた回答が一瞬で頭を駆け回り、更にはなぜだかみどりさんの件がなんとなく後ろめたく感じてしまい、ついサッと目を逸らしてしまった。
「今仕事帰りですか?こんなところで会うなんて奇遇ですねえ」
「そ、そうですね…ほんと奇遇…」
「買い物でもして帰ろうかと思ったら、見知った後ろ姿を見かけたのでつい声掛けちゃいました。こんな時間までお疲れ様です」
「い、いやどうも…というか白石さんも、お疲れ様です…」
「ありがとうございます…って黒原さん?何かありました?」
何事もなかったかのように気さくに話しかけてくる白石さんの顔を見れずにいると、にゅっと顔を覗き込まれた。
「なっ!…何もないです、あ~、久しぶりだからかな?はは…」
「そんな久しぶりですか?あの後、無事に帰れたか気になってたんですよ」
あ、あのあと!!!
この男はこんな道端で平然とそういうことを言う!!!
別に他の人間が聞いても特に疑問には感じない言葉ではあるが、
俺と白石さんにとって…いや少なくとも俺にとっては、「あの後」という単語はとてつもなく動揺する意味合いを持つ単語であり…
それを何の気無しにさらっと発言できてしまうこの白石という男にほんの少しだけ怒りを覚えてしまう。
「べ、別に大丈夫でしたよ!?そんな、心配されるようなことでもないですし!!」
と、湧いてくる怒りに任せて、女子高生のような強がった発言をしてしまう30歳会社員…
「ええ?そうですか?メッセージの返信もなければ、心配にもなると思いますけど」
「そっ…それは申し訳なかったですが…」
「それにやっぱりなんだか黒原さん、様子がおかしいですよ。何かあったんでしょう」
はい!?何かあったかだって!?
何かあったに決まってるでしょうが!!
あんたに!!キスを!!されたんだよ!!!
というかそれ以前に!!!もっと色々あったでしょーが!!!
…とも言えず、何と言い返そうかと考えた時、ブブッと握っていたスマホが震えた。
ちらっと画面を見ると、みどりさんからのメッセージだった。
「あ、お電話ですか?どうぞ出てください」
「い、いやメッセージなんで、大丈夫です…」
と言いかけて、はっと思い付く。
「あ~実はですね、そのメッセージでまあちょっと一悶着ありまして…」
「一悶着ですか?」
先日の件で全く懲りていなかったらしい俺は、あろうことか再び白石さんに対する試し行動のような挑発を試みてしまう。
「ええ、はいまあ?女性関係とでも言いましょうか?」
「女性関係?」
「まあちょっと今、それでデートに!誘われたりなんかして、ちょっと悩んでるんですよね~…」
「へえ…デートですか」
声色が少し変わった気がしてチラッと白石さんの顔を見るが、当の白石さんはというといつもと同じ顔でニコッと笑って、
「先日も女性とのお付き合いについてお話しされてましたもんね。悩まれてるのはその件ですか?」
ときた!!
本っ当に、あの日のことを何事もなかったことにされようとしている!!
「いや~まあ、そうなりますかね?俺、そういうのに疎いのもありますし!」
「良かったらお話聞きますよ、僕なんかで良ければですけど」
勝ち目が薄い…というよりほぼ全くないのは分かっているはずなのに、通常営業で接してくる白石さんにどうしても苛立ちを抑えられない俺は…
「僕なんかで良ければって、誰よりも頼りになりますよ白石さんは~!お願いしてもいいですか!?」
と、自ら負け戦のゴングを鳴らしてしまったのだった…
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