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第3章
遊びと本気 3
しおりを挟む「うーーーーーーん……」
あれから幾日か過ぎ、みどりさん(みどりって呼んでください!とのこと)とのメッセージのやりとりが続いていく中で、恋愛偏差値最底辺の俺はついに頭を抱えるようになっていた。
まず、みどりさんからのメッセージはハートやら甘いスタンプやらの使用率が高い。それはもう、童貞からするとかなりクラっとする画面になっている。
ので、とりあえず白石さんのキスの件と同じように、ハートの絵文字について匿名の相談サイトに投稿してみたのだった。
するとどうだろう…
ーハートの絵文字が送られてきたぐらいで好意があるのかもと勘違いするのは童貞だけです。
ーまあ嫌いな相手には使わないかもしれないけど、好きだから使うわけでもないかな。若い子は特に気にしないと思うけど、質問者さんはいくつなんですかね?
ーハートもスタンプも、普通に送ります。質問者さんは童貞なんですかね。童貞はそういうのに敏感でよく勘違いする傾向があると思います。
う、うるせええええ!!とスマホをぶん投げたくなるような回答ばかりがついてしまったので、みどりさんからの絵文字やらスタンプやらは極力気にしない方針でなんとなくクリーニング代を断るやりとりを続けていたのだが…
『じゃあお夕飯をご馳走させてください!それもダメですか…?ウルウル…』
というなんとも断ることができなさそうなメッセージが送られてきてしまい、まあ別にそれは良いのだが、問題はついうっかり了承のメッセージを送ったその次に送られてきたみどりさんのメッセージである。
『よかった、ありがとうございます(ハート)なんだかデートみたいですね、ドキドキしてきちゃいました(ハート)』
デ、デート!!!??
デート!!!!?
ドキドキしてきちゃったの!!?!?
これは!?どう受け取ったら良いんだ!?
冷静に考えろ黒原三芳30歳会社員!!みどりさんは、かなり可愛い。控えめに言っても超美人。
自分で言って悲しくなるが、そんな女性がこんな冴えない男に好意を寄せるはずがあるか?答えは否!!よって勘違いをしたところで虚しくなるし疲れるだけなのは自分がよく知っているはず!!!
しかし、みどりさんからのメッセージはというと、ハートが咲き乱れ、ウルウルしたうさぎのスタンプで溢れかえり、しまいにはデートみたいでドキドキしてきちゃったと言う!!
これは勘違いもして当然なのでは!?
何をどう考えてもこんなくたびれた男に惹かれる要素はないが、もしかしたら何かのミラクルで本当に俺のことを気になってしまったのかも!?!?
ぶつかられた直後に相手の身を案じたところが紳士的に映ったのか?はたまたスマートにクリーニング代を断ったところが男らしく映ったのかも!?
ぶつかられた時の出来事が頭の中で色々美化して再現され、すっかり浮かれるモテない男に成り下がってしまっていたのだが、ふと我に帰る。
そうだ、もし付き合ったとしても、自分の体質的に上手くいくとは限らないんだった…
白石さんはもう大丈夫だと言ってくれていたが、まだあれから実際に女性と向き合ったことがないので、克服できているのかできていないのか分からない。
そもそもこうやって浮かれているが、今時の若い女性はハートの絵文字と同じくデートという単語にも特に深い意味を持っていないのかもしれないし。
いやそもそも、やっぱり冷静に考えてみると自分に異性から好かれる要素は殆どないようにも思える。
なんだか悲しくなってきたが、ハートもデートもドキドキも、メッセージを送ってきたみどりさんにしか真意が分からないことなので、あまり考え込んでも時間の無駄なのかもしれない。
よし、あまり考えないようにしよう!!
と何度も思っても、やはり頭の中ではグルグルとみどりさんのことを考えてしまい、その度に頭を抱えているのだった。
応援ありがとうございます!
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