70 / 80
第8章
吐露と懇意 オマケ
しおりを挟む~吐露と懇意6から7のふたり~
「黒原さん、今日は何食べましょうか!何か気になるものありますか?」
白石さんが嬉しそうにメニューを見せてくる。
「そうですねぇ…この間サービスで付けていただいたバーニャカウダ、すごい美味しかったしまた食べたい気がしてます」
「え?バーニャカウダですか?サービスして頂いたのはティラミスじゃありませんでした?」
…は!!
しまった!!
バーニャカウダは白石さん怒らせた後に1人で来た時にサービスしてもらったものだった…!
一瞬の間に頭の中でなんとかこの場を誤魔化す返事が幾通りも浮かぶが、どれも白石さんに通用する気がしない。
怪訝な顔をする白石さん。とにかく良い感じの返事をしなければ…!
「あ、この間1人で来てみたんですよ。その時にご厚意でバーニャカウダを付けていただいたんでした」
いっそ開き直って堂々と返事をしてみる。
やましいことではないんだ、これが正解なはず…!
「…1人で?ここに?」
「え……は、はい」
ま、間違えたか…?
よく考えてみなくても、白石さんからしたら自分の馴染みの店に勝手に来られたら良い気はしないか…!?
やばい、完全に間違えた。ここからどう挽回すれば…!
「…黒原さんてばひどいな、どうして僕を誘ってくれなかったんですか」
頭の中でぐるぐる考えていたが、白石さんが思いよらず寂しそうな顔をするものだから胸にぐさっと罪悪感が刺さった。
「あ、いや…だって!その時は白石さんのこと怒らせてしまっていた時で…状況的に誘えなかったというか…」
「ええ~…そういう時でも気兼ねなく誘ってくれれば良いのに」
無茶なこと言うな…
「いやどう考えても無理でしょ…」
あの状況でもし仮に白石さんを食事に誘っていたとしたら、心臓に毛が生えてるどころか心臓が意志持って毛皮着てるぐらいあるだろ。
「他には?何を食べたんです?」
「他は…ラザニアだけです、ラザニアとバーニャカウダだけで…」
「じゃあ今日もラザニアを頼みましょう」
視線を落としたままぱたんとメニュー表を閉じる白石さん。
「あ、あの…怒ってます?」
「怒ってませんよ、ただ…僕がおすすめしたんですから一緒に食べたかったんです」
ぐさぐさぐさっと罪悪感が続けて胸を刺す。
「あの…す、すみません…俺も白石さんと一緒に食べた方が美味しいなと思ってました…」
「いえ謝らないでください、僕こそ…黒原さんがこのお店を気に入ってくださったことを喜ばないといけない場面なのに…」
「いや、違うんです…こんなこと言ったら重いと思うんですけど…たまたま白石さんに会えたりしないかなと思って1人でここに来たんです…」
「え?そうなんですか?」
顔を上げた白石さんとぱちっと目が合う。
「そうですよ、だから白石さんがすすめてくれたからラザニアしか思い付かなかったんです…」
「ほ、本当ですか~…?」
疑うような照れたような、複雑そうな顔で笑う白石さん。
「本当ですよ…勝手に1人で来ちゃったけど、白石さんのことしか頭になかったんです」
「………」
「あ、赤くならないでくださいよ…」
~ヤマなしオチなし意味なしオマケ、完~
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
27
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる