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第6章 煙の如き狂猿
66: 危険な援交未満
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田沼工場地帯を縦貫する主幹道路からそれ、奥まった支道をしばらく走っていると、ヘッドライトの光の中に、東洋ケラミック製造山那工場と印刻のある大きなプレートが、厳つい門と共に浮かび上がった。
道は、その門前から左右に別れている。
それを見て、剛人さんは、GT2000の進路を左にとった。
車の窓越しに、工場の煉瓦積みの壁が、延々と続くのが見える。
「さっきのは裏門だ。正門の方は、工場とは思えないほど豪華な作りだよ。もちろん正門から攻めるつもりはない。・・このまま進むと、しばらく緩い上り坂が続いて、工場の背後に回り込める。そこから工場の敷地内に侵入するのが、一番無難なようだね。」
「まだ、この工場は稼働してるんですか?ここに来るまで、ほとんどの施設は休業してて、無人でした。」
こんな無人の工場跡へ忍び込むのに、神経質になる必要はないのにと半分、僕はそう思ってた。
「いや、ここもご多分に漏れずさ。ただどの施設もそうだが、完全に放置されている訳じゃないんだ。一応、監視の目は光っている。実質、そのほとんどが警備会社のご厄介になっているが、それぞれの企業は、施設に対しての管理義務をおっているからね。そういう意味でも、私たちのこれからやろうとする事は立派な不法侵入という事になるんだよ。」
「でも、ここが煙猿のアジトなんでしょう?」
続く『僕たちは、それを暴くんだから、』という言葉を、今度は直ぐに飲み込んだ。
ここに煙猿がいるかどうかは判らない、それこそ「結果の問題」だった。
「どうやら、ここを任されている警備会社とテンロンは裏で繋がっているらしい。そのパイプで、煙猿はここを自由に使ってる。それにアジトと言っても、煙猿が利用してるのは、この広大な工場跡のごく一部だけだろう。そして東洋ケラミックは、そういった事を何も知らないだろうし、これからもそういった事に、余り注意を払うとは思えない。企業が気になるのは、誰がここを買い取ってくれるかとか、転用の余地はあるかとか、まあそんなものだ。事件さえ、起こらなければね。つまりここは、自分の気配を消せる人間には、絶好の隠れ家になる。」
「煙猿の神出鬼没ぶりの秘密は、そんな所にもあるんですね。人間の営みのエアポケットのような所に旨く入り込んでいる、、。」
車は、3分ほど工場の壁際に沿って走り、やがて工場内部の植林が生い茂って壁の外にはみ出しているような、まったく人手の入っていない場所に止まった。
よく見ると、煉瓦積みの壁にもツタが絡まりはじめていた。
「外からは判らないが、ちょうどこの裏が東洋ケラミックの私設博物館になっている。ほら、ここら辺りの壁の上から、沢山、木の天辺が見えるだろう。あれは博物館横にある庭園の一部が見えているんだ。」
「よく調べましたね?」
「よしてくれよ。褒めるなら、これに協力してくれた、ある組織の下っ端達だ。まあ私も下見は、一応したがね。」
「その私設博物館に、煙猿が潜んでいるんですか?」
「ああ、幽霊が出ると噂になっているのは、その博物館だ。それに、その側の荒れ放題になった庭園には、野犬の群がいるという噂話もある。野犬で侵入者を遠ざけ、幽霊で己の痕跡を誤魔化す・・。さあ、行くかな。」
剛人さんは車から降りると、しばらく坂を見下ろす方向に顔を向け、壁を撫でるように周りを観察していた。
今日の剛人さんは、黒のチノパンに黒の革ジャン、それに黒のニット帽の全身黒ずくめで、その厳つい身体を覆っていた。
申し合わせたわけじゃないけど、僕のスタイルもそれに近いパンツスタイルだ。
剛人さんの前では、色気のある女の子を演じる必要がないから、気が楽だった。
補整下着の類は、付けないですむ。
外灯が鈍い光を周りに落としていたが、それは余り役に立っておらず、周囲の光景は圧倒的に陰の方が多い。
しかし剛人さんは夜目が効くようで、それをまったく気にしていないようだ。
でも僕は、この闇が怖い。
「懐中電灯を持ってくれば良かったですね。」
「懐中電灯の光は目立ち過ぎる。煙猿がそれを見つけたらどうするかな?逃げてしまうか、こちらに向かって来るか、、どちらにしても、得策じゃない。だろ?」
「はい。」
僕は素直に返事をした。
これが所長だったら、あれこれ言い返していただろう。
でも本当に、所長はどうしてしまったんだろう、、。
「いい子だ。そんな風に、これからも私の指示に全面的に従ってくれ。そうすれば、ちょっとハードな道行きになるだろうが、私は最後まで君を守れる。さあ行くぞ。」
さあ行くぞ、と言った途端、剛人さんは、壁に向かって斜めに交差するようにもの凄い勢いで駆け出した。
壁に斜めに激突すると見えた瞬間、剛人さんは地面を蹴って跳躍し、その右足の側面を壁のわずかな凹凸にひっかけ、今度は右脚全体の屈伸力で、自分の体重をさらに垂直に押し上げた。
いくら何でも、その姿勢では、壁面からの反発力が働いて垂直にジャンプし続けるのは無理だろう、と思えたその瞬間、剛人さんの右手が、壁の頂点を掴まえ、今度はその右手が剛人さんを引っ張りあげていた。
不思議な動きだった。
ちっともスマートな動きじゃないのに、凄いことを、あっけなくやり遂げてしまう。
剛人さんが使って見せる骨法もそうだった。
多分、西洋流の価値観にどっぷり浸かった僕のような人間からそれを見ると、変に見えるだけで、剛人さんは凄く理にかなった事をしてるのかも知れない。
外国人なら、こう言うだろう。
「彼は忍者戦士だ!」と。
そしてこのニンジャウォーリアーは、彼の可愛らしい弟子であるこの僕に、過酷な訓練を課そうとしているらしい。
壁の頂上で腹這いになった剛人さんは、腰に隠して巻いていたロープをするすると取り出して、それをU字型にすると下に垂らしたのだ。
その長さだと確かに、ロープの真下で少しジャンプすれば、手がロープの先端に届く筈だ。
でも僕は女の子・・・いや違ったか、、、そして次に急に何故か、僕の中に「男の子」魂が燃え上がって来て、僕は壁に向かって走りはじめた。
忍者に助け出されたお姫様みたいに、壁の上に登り切ったのは良いものの、僕は下をのぞき込んでゾッとした。
壁の内と外では、地面までの高さがまったく違ったのだ。
約二倍、、、今まで自分の人生の中で飛び降りた事のあるどの高さよりも、それは高かった。
剛人さんが、ここを進入路に選んだ理由がよく判った。
ここなら内部にいる者は、壁からの侵入を警戒しない。
飛び降りたら骨折必至だからだ。
今度はいくら男の子だって無理。と思った瞬間、剛人さんは15センチほどの幅しかない壁の上にすっくと立ち上がり、なおかつ、その側でへたり込んでいた僕をお姫様だっこの形で抱え上げた。
信じられないバランス感覚と力だと、感心している暇は、今度もなかった。
剛人さんは僕を抱えたまま、有無をも言わさず、飛び降りていたのだ。
僕は、剛人さんもろとも地面に酷く叩き付けられるだろうと観念して目を瞑った。
でもそれは起こらなかった。
確かに着地の瞬間、グンッと下から突き上げてくる衝撃はあったが、それを剛人さんの逞しい腕が緩和していた。
そして二人分の体重が落下したその衝撃は、、、、剛人さんが、それをどうこなしたのか僕にはわからなかった。
とにかく次の瞬間には、剛人さんは僕を抱きかかえたまま、ゆっくりと地面から屈伸するように立ち上がり、なおかつ、僕をそっと地面に立たせてくれたのだ。
その時、剛人さんが頭髪に付けているポマードの匂いが微かにした。
今時、ポマードなんて、それに僕はポマードを付けるようなオヤジは大嫌いだった。
だのに、その時、ポマードの匂いが凄く安心できるようなものに感じた。
「行くぞ。」
・・こうなればもう僕は、地獄の底までこの忍者ウォーリアーについていくしかなかった。
道は、その門前から左右に別れている。
それを見て、剛人さんは、GT2000の進路を左にとった。
車の窓越しに、工場の煉瓦積みの壁が、延々と続くのが見える。
「さっきのは裏門だ。正門の方は、工場とは思えないほど豪華な作りだよ。もちろん正門から攻めるつもりはない。・・このまま進むと、しばらく緩い上り坂が続いて、工場の背後に回り込める。そこから工場の敷地内に侵入するのが、一番無難なようだね。」
「まだ、この工場は稼働してるんですか?ここに来るまで、ほとんどの施設は休業してて、無人でした。」
こんな無人の工場跡へ忍び込むのに、神経質になる必要はないのにと半分、僕はそう思ってた。
「いや、ここもご多分に漏れずさ。ただどの施設もそうだが、完全に放置されている訳じゃないんだ。一応、監視の目は光っている。実質、そのほとんどが警備会社のご厄介になっているが、それぞれの企業は、施設に対しての管理義務をおっているからね。そういう意味でも、私たちのこれからやろうとする事は立派な不法侵入という事になるんだよ。」
「でも、ここが煙猿のアジトなんでしょう?」
続く『僕たちは、それを暴くんだから、』という言葉を、今度は直ぐに飲み込んだ。
ここに煙猿がいるかどうかは判らない、それこそ「結果の問題」だった。
「どうやら、ここを任されている警備会社とテンロンは裏で繋がっているらしい。そのパイプで、煙猿はここを自由に使ってる。それにアジトと言っても、煙猿が利用してるのは、この広大な工場跡のごく一部だけだろう。そして東洋ケラミックは、そういった事を何も知らないだろうし、これからもそういった事に、余り注意を払うとは思えない。企業が気になるのは、誰がここを買い取ってくれるかとか、転用の余地はあるかとか、まあそんなものだ。事件さえ、起こらなければね。つまりここは、自分の気配を消せる人間には、絶好の隠れ家になる。」
「煙猿の神出鬼没ぶりの秘密は、そんな所にもあるんですね。人間の営みのエアポケットのような所に旨く入り込んでいる、、。」
車は、3分ほど工場の壁際に沿って走り、やがて工場内部の植林が生い茂って壁の外にはみ出しているような、まったく人手の入っていない場所に止まった。
よく見ると、煉瓦積みの壁にもツタが絡まりはじめていた。
「外からは判らないが、ちょうどこの裏が東洋ケラミックの私設博物館になっている。ほら、ここら辺りの壁の上から、沢山、木の天辺が見えるだろう。あれは博物館横にある庭園の一部が見えているんだ。」
「よく調べましたね?」
「よしてくれよ。褒めるなら、これに協力してくれた、ある組織の下っ端達だ。まあ私も下見は、一応したがね。」
「その私設博物館に、煙猿が潜んでいるんですか?」
「ああ、幽霊が出ると噂になっているのは、その博物館だ。それに、その側の荒れ放題になった庭園には、野犬の群がいるという噂話もある。野犬で侵入者を遠ざけ、幽霊で己の痕跡を誤魔化す・・。さあ、行くかな。」
剛人さんは車から降りると、しばらく坂を見下ろす方向に顔を向け、壁を撫でるように周りを観察していた。
今日の剛人さんは、黒のチノパンに黒の革ジャン、それに黒のニット帽の全身黒ずくめで、その厳つい身体を覆っていた。
申し合わせたわけじゃないけど、僕のスタイルもそれに近いパンツスタイルだ。
剛人さんの前では、色気のある女の子を演じる必要がないから、気が楽だった。
補整下着の類は、付けないですむ。
外灯が鈍い光を周りに落としていたが、それは余り役に立っておらず、周囲の光景は圧倒的に陰の方が多い。
しかし剛人さんは夜目が効くようで、それをまったく気にしていないようだ。
でも僕は、この闇が怖い。
「懐中電灯を持ってくれば良かったですね。」
「懐中電灯の光は目立ち過ぎる。煙猿がそれを見つけたらどうするかな?逃げてしまうか、こちらに向かって来るか、、どちらにしても、得策じゃない。だろ?」
「はい。」
僕は素直に返事をした。
これが所長だったら、あれこれ言い返していただろう。
でも本当に、所長はどうしてしまったんだろう、、。
「いい子だ。そんな風に、これからも私の指示に全面的に従ってくれ。そうすれば、ちょっとハードな道行きになるだろうが、私は最後まで君を守れる。さあ行くぞ。」
さあ行くぞ、と言った途端、剛人さんは、壁に向かって斜めに交差するようにもの凄い勢いで駆け出した。
壁に斜めに激突すると見えた瞬間、剛人さんは地面を蹴って跳躍し、その右足の側面を壁のわずかな凹凸にひっかけ、今度は右脚全体の屈伸力で、自分の体重をさらに垂直に押し上げた。
いくら何でも、その姿勢では、壁面からの反発力が働いて垂直にジャンプし続けるのは無理だろう、と思えたその瞬間、剛人さんの右手が、壁の頂点を掴まえ、今度はその右手が剛人さんを引っ張りあげていた。
不思議な動きだった。
ちっともスマートな動きじゃないのに、凄いことを、あっけなくやり遂げてしまう。
剛人さんが使って見せる骨法もそうだった。
多分、西洋流の価値観にどっぷり浸かった僕のような人間からそれを見ると、変に見えるだけで、剛人さんは凄く理にかなった事をしてるのかも知れない。
外国人なら、こう言うだろう。
「彼は忍者戦士だ!」と。
そしてこのニンジャウォーリアーは、彼の可愛らしい弟子であるこの僕に、過酷な訓練を課そうとしているらしい。
壁の頂上で腹這いになった剛人さんは、腰に隠して巻いていたロープをするすると取り出して、それをU字型にすると下に垂らしたのだ。
その長さだと確かに、ロープの真下で少しジャンプすれば、手がロープの先端に届く筈だ。
でも僕は女の子・・・いや違ったか、、、そして次に急に何故か、僕の中に「男の子」魂が燃え上がって来て、僕は壁に向かって走りはじめた。
忍者に助け出されたお姫様みたいに、壁の上に登り切ったのは良いものの、僕は下をのぞき込んでゾッとした。
壁の内と外では、地面までの高さがまったく違ったのだ。
約二倍、、、今まで自分の人生の中で飛び降りた事のあるどの高さよりも、それは高かった。
剛人さんが、ここを進入路に選んだ理由がよく判った。
ここなら内部にいる者は、壁からの侵入を警戒しない。
飛び降りたら骨折必至だからだ。
今度はいくら男の子だって無理。と思った瞬間、剛人さんは15センチほどの幅しかない壁の上にすっくと立ち上がり、なおかつ、その側でへたり込んでいた僕をお姫様だっこの形で抱え上げた。
信じられないバランス感覚と力だと、感心している暇は、今度もなかった。
剛人さんは僕を抱えたまま、有無をも言わさず、飛び降りていたのだ。
僕は、剛人さんもろとも地面に酷く叩き付けられるだろうと観念して目を瞑った。
でもそれは起こらなかった。
確かに着地の瞬間、グンッと下から突き上げてくる衝撃はあったが、それを剛人さんの逞しい腕が緩和していた。
そして二人分の体重が落下したその衝撃は、、、、剛人さんが、それをどうこなしたのか僕にはわからなかった。
とにかく次の瞬間には、剛人さんは僕を抱きかかえたまま、ゆっくりと地面から屈伸するように立ち上がり、なおかつ、僕をそっと地面に立たせてくれたのだ。
その時、剛人さんが頭髪に付けているポマードの匂いが微かにした。
今時、ポマードなんて、それに僕はポマードを付けるようなオヤジは大嫌いだった。
だのに、その時、ポマードの匂いが凄く安心できるようなものに感じた。
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