アンプラグド 接続されざる者

Ann Noraaile

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第一章 遺産 

11: 二次元刀

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 保海真言の勝手な追跡などの責任を問われ、任務を解かれ待機状態になった流は、保海真言の行方を追っていた。
 もちろん銀甲虫にはその様な任務も職責もない。
 彼、一存の行動である。
 保海真言は、ロイヤルロッカー前での大惨事の再現を恐れてか、その姿を消している。

 流には真言の立ち回り先について思い当たる場所が何カ所かあった。
 それは彼らが通う『闇の左手』が用意した、いくつかの練習場である。
 『闇の左手』は都市の中で生きる暗殺拳であり、戦いの技術の中には流囲の状況を旨く取り込む事が重要視されている。
 その為の練習場として、人目に付かず、尚かつ日常的な場所が道場以外に用意されていた。
 それらはビルの廃屋、資材置き場など、探して見れば街中に結構たくさんあるものだった。
 流はそれらを一つ一つあたっていった。

「残るは(独房)か。隠れ潜むにゃ、もってこいだが、あんな若造が、灯り一つしかないあんな場所で二日も潜んでいられるものか、、。」
 流はそう呟きながら、人気のない資材置き場の敷地内にあるマンホールの蓋を軽々と引き上げた。
 彼らが(独房)と呼んでいる場所は、下水路の迷路の中にあった。


 保海真言は、地下の下水道の窪みの中に身を潜めていた。
 飲まず食わずの状態で今日で丸二日経つが、ロイヤルロッカーの外で起こった市街戦を思い出すと、何処にも動きようがなかった。
 音の種類が限られた世界で過敏になっていた真言の聴覚が(独房)の側を流れる下水のちょっとした流れの変化を捉えた。
 真言の右手が、彼の左に置かれてあった日本刀の柄を掴む。
 しかし(独房)はその名の通り、極めて狭い空間だった。
 日本刀などを振り回せる空間はない。
 突如として(独房)の入り口を塞いだ巨大な人影に、真言は日本刀を抜き放ち横に薙いだ。
  不思議なことに日本刀の刃は(独房)の横のコンクリートの壁をすり抜けて、侵入者の首もとで、再びその形を表し、ぴたりと止まった。
 流騎冥は喉元に当てられた刃を首を動かさずに目だけで確認しグビリと生唾をのんだ。
 その日本刀に対する自分の間合いが完全に狂っていたのだ。

「流さんか?自爆した仲間の仇討ちに来たのか?」
 保海真言が暗い声で言った。
「銀甲虫にはそんなつながりはない。奴は奴なりに考えてやった事だ。」
「だったらこの前の続きなのか?今度は僕の方がやる気がない。前は貴方の都合で流したんだ。今度は僕の番だ。それがいやなら、このまま首を切り落とす。」
「ケリを付けに来たわけでもない。この物騒なやつを下げてくれないか?」
 保海は、日本刀の位置を変えずに峰だけを返した。
 不思議なことに、それだけで、日本刀は消えて無くなり、保海真言は続けて、鞘のなかに日本刀の刀身を納めた。

「ふう、、どんな仕掛けだ?」
「判らない。ここ二日で、こいつの取り扱いはある程度理解できたが、仕掛けの原理はさっぱりという所かな。」
 保海真言は何事もなかったかのように(独房)の中であぐらを組んだ。
 流騎冥は(独房)の入り口に腰をかける。
 位置関係から見れば、流が圧倒的に有利だったが、保海には得体の知れない日本刀があった。

「ところで何をしに来たんですか?」
「ご機嫌伺いという所かな?今のところお前さんは、俺との試合どころじゃなさそうだし、俺の方は俺のほうで、今回の任務がどうしても腑に落ちずに困っている所だ。情報交換ができれば、お互い次がちょっとは見えるかと思ってな。」
「やっぱり仲間の死が気にかかっている?」
「お前さんに俺達、銀甲虫の事はわかるまい。ところでお前さん、自分がああやって俺達にガードされていた理由が分かるかい?」
 保海は自分の左り脇に置いてある日本刀をちらりと見た。
 この日本刀が自分に手渡った経緯はちょっとした秘密だったが、別段その秘密を隠しておかなければならない理由も見あたらなかった。
 それよりも、真言には手詰まりの状況を少しでも打開するのが先決の様に思えた。

「おそらくこの二次元刀が関係しているんだと思う。」
「二次元刀?」
「僕が勝手に付けた名前だ。僕がガードされていたというより、僕にこの二次元刀が手渡されるのを成功させたかった誰かがいるんだろう。だから、こいつが手に入った以上、今後トラブルは僕に付いてまわる。」
 保海真言は今彼が悩んでいる事を正直に話した。

「いや。そうでもなかろう。銀甲虫が相手をしていた連中は、お前さんにそいつが手渡る事が嫌だという意志表示を誰かにしたかっただけで、目的は実力行使じゃなかったようだ。素人のお前さんには判らないだろうが、本気でやるならもっと違った方法があった筈だし、俺達のチームの被害もアレぐらいでは済まなかった筈だ。俺達、銀甲虫はコケにされたという訳だ。」
「貴方はコケにされた事に拘っているのか?」
「そのとおり。このままじゃ死んだ仲間も浮かばれないという事さ。とにかく、外じゃ今の所変わった動きはない。お前さんの今後の動きを見ているんだろうな。言い換えればお前さんが、動いてくれない限り、俺の方も動けないということさ。ここで残りの人生を送る積もりなのか?」
 保海真言は目を瞑って暫く考え込んだ。

「判った。流さん、アンタの状況判断を信じるよ。明日にでもここを出る。僕だってうんざりしているんだ。所で、頼みがあるんだけど聞いてくれますかね?」
「聞かなければ、銀甲虫である俺の正体をばらすとでも言いたいのか?」
「意味があるとは思えないが、必要ならそうしますよ。」
「頼みとはなんだ?言えよ。」

「家族に迷惑をかけたくない。貴方にその事を頼むのは筋違いだが、銀甲虫として僕に協力してくれるならそれに越したことはない。、、安心出来る。」
「都合のいい話だが、一応聞いたことにしておいてやる。ところでその二次元刀ってのはなんだ。」
「見れば判る。」
  保海は意を決したように、もう一度、二次元刀を引き抜いて、今度は流がよく見えるように彼の目の前に刀身を翳した。
 そして刀身の角度をゆっくり変えた。

「なる程、二次元だ。厚みが全くない。」
 流はため息をついた。
「これで切れないモノはない。何度も試してみた。概念上の二次元が具体的こうやってあるという事がどういう意味を持つのか僕にはよく判らないが、、、。」

「お前さんの親父は保海源次郎。HOKAIシステムの発明者だったよな。それとその刀が関係あるのかも知れないぜ。それと、お前を襲った奴らもな。HOKAIシステムは今やソラリスとなって、この国のコンピュータと完全にリンクしている。いやCUVR・W3なんだから世界中のありとあらゆる仮想世界と繋がっているんだ。一連の出来事に、どでかい奴が背後にいたとしても不思議じゃない訳だ。」
 流は瞳をどう猛に光らせて言った。





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