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第四章 ハートランドのゲーム
51: シナリオに繋ぐ
しおりを挟む「昔、遊びで商業用のシナリオとHOKAIシステムをリンクさせてみた事があるの。」
ハートランドは決心したように言った。
真言や岩崎の為に、自分に残された方法は、それくらいしかないのがハートランドにも判っていたのだ。
それを自分でやっても良いが、それは泳げもいない者が溺れている人間を助けにいくようなものだった。
「商業用のシナリオ?」
「簡単に言えばロールプレイングゲームね。あなたみたいに毎日リアルにスリリングな生き方してる人間には必要ないでしょうけどね。これが他のサービスと違うところは、柔軟性があまりないこと。ほぼシナリオ通りに事が運ぶ。その分、システムは堅牢だから、その堅牢さを利用すると、どんなに適応力のない人間でも向こうに送り込める。まあ、おしきせのパックツアーのようなものね。もちろん、プラグも必要なし。これに化け物みたいなNEOHOKAIシステムを繋げたらどうなるかって実験のつもりでやったの。やりかたの勘所は、源次郎との通信で判ってたから、直ぐに判ったわ。」
「そんなので、岩崎刑事や真言が探し出せるのか?シナリオ通りに事が進むだけなんだろう?」
「なに疑って聞いてるの?この話はあなたが持ち出したんでしょ?NEOHOKAI世界にはこれでリンク出来るわ。受け身の形だけどね。だからシナリオのどの部分にNEOHOKAI世界がリンクしてくるかまでは判らないの。こちらからすると、答えがそこにあるのに、それが判らないで素通りって事もあるわね。上位互換だから、向こうがこっちを見つけてくれれば楽なんだろうけど、、。つまり、そんなあやふやなレベルだって事。しかも下手をすると、向こうの世界で漂流して、同じ物語を毎回も演じ直す人生を送らなくちゃならないかも、、普通の娯楽レベルだと、ゲームが終わったら嫌でもこっちに戻ってきちゃうけど、HOKAIに繋ぐとそういう危険性がでてくる。そんなので良いのって事なんだけど?」
・・・・・
兎に角、一応は父が目指した世界は自分の目で確認をした。
そして受肉したブキャナンを岩崎が倒した。
ブキャナンについては、自分にとって重要な使命だったとは思えないが、岩崎の生き様に学ぶところは大きかった。
残るのは二次元刀と地図の本当の使い道だ。
もちろん、ただ針金生物がいるこの世界に来る為に、それら二つがあったのかも知れない。
なら、父が残したのは、この世界の在りかた、そのものと言える。
ただ自分の息子に、保海源次郎という男が、この世には「こんな珍しい世界があるぞ」と父として教えたかったのか?、、そうとは思えなかった。
やはり父は、自分になにかを託したかったのだろう。
だが、真言がそれに応えようとするなら、取り敢えず渡り合わなければならない針金生物とこの世界は、相当手強そうに思えた。
ハートランド辺りの力を借りる必要があると思えた。
そしてシノハラや岩崎との約束もある。
帰れるものなら一度、元の世界で態勢を整えるべきだろうと真言は思った。
帰還は不可能ではないだろうと思っていた。
実際に真言の父は、空から降って来るという形で、人間の住む世界に戻って来たのだ。
今日からは、そのつもりで、この世界を歩いて見ようと真言は考えた。
・・・まずは、岩崎を葬った時に感じた、あの地鳴りの方向に進んで見ようと。
この世界では、「偶然」はあり得ないからだ。
数日後、流騎冥は、とりあえず自分に割り振られた任務だけはやりこなして、ハートランドのいる旧ボシュロム美術館に訪れた。
旧ボシュロム美術館をΩウェブのアミューズメント施設にしょうとした保海源三郎の計画はビッグマザーの横やりで頓挫していた。
ただ保海源三郎は粘り強い男だった、CUVR・W3関係の器機はそのまま維持されていた。
Ωウェブに潜る決心は付いていた。
今の状況が続けば、いくら銀甲虫になっても、流騎冥の求めている戦いの中での「完全燃焼」は、出来ない。
元から、何が正しくて何が正しくないかなどないのが、世の中だと判っていたし、ただ後腐れなく、戦えればそれで良かったのだ。
それが、今は世界の法の基準となっているビッグマザーと、闇の中で小競り合いをやっている。
それは、生身の人間同士の勝負ではなくて、人間が、大きくなりすぎた自分の影と取っ組み合いをやっているようなものだった。
しかもその勝負に、負けかけている。
このモヤモヤの元凶を絶たねば駄目なのだ。
その為には、自分に似合わない事もする、流騎冥はそう決めていた。
「ライブラリーを探してたら、結構、今の状況にフィットしてるシナリオを見つけたわ。シナリオを構成しているイベントが、今まで真言君達が体験してきたこととよく似てるの。それと設定を、少し私がいじったわ。源次郎から聞いた向こうの世界の話が上手く嵌め込められそうな部分があったから、、。それを使うから、貴方も向こうの世界で余り余計なことはせずに済みそうね。」
「有り難いね。何か他に気を付ける事はないのか?」
「、、ゲームに流されちゃったら、貴方はただ時間の浪費をしただけになるわ。ここだって、思った時に、向こう側に飛び移るのよ、それが肝心。後は向こうが引っ張ってくれる。真言達を取り込んだ、あれは並のCUVR・W3じゃないわ。半分、移動装置みたいなものだから、あなたの現実の身体を、真言君達がいる向こう側に持って行くはずだわ。言い方を代えると、貴方はNEOHOKAI世界の機能に、自分を引き渡すって事ね。その為には、流騎冥という自分をしっかり保っている事。のんびりゲームの主人公になっちゃ駄目って事よ。」
「主人公に成り切るのを目的にしたゲームの中でか?、、難しいな。」
「私が外から見ていて上げる。何かの形で、合図が送れるかも知れない。」
向こうの世界に行くだけなら、何とか流騎冥を送り込めるだろうとハートランドは思っていた。
ただし問題は、それからだった。
流騎冥は、向こうの世界で岩崎達と協力してアルビーノ・ブキャナン人格を解体出来るのか?
それとも何を置いても、一旦、彼らを連れて引き上げようとするのか?
その時々において、どういう判断が最も適切なのか?
弥勒会議の一員でもない自分には、その判断はもちろん、つなかい。
個人的には、ただ真言を無事、向こうの世界から連れ戻して欲しい、それだけだった。
どちらになるにしても、帰還の方法を見つけるのは、彼らであり、ハートランドは、ただそれを支援するだけだという自分の立場がもどかしかった。
「じゃ、行くぜ。」
「それだけ?」
「そうだな。」
「やっぱり貴方はアンプラグドね。」
ハートランドは苦笑した。
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