アンプラグド 接続されざる者

Ann Noraaile

文字の大きさ
51 / 66
第四章 ハートランドのゲーム

51: シナリオに繋ぐ

しおりを挟む

「昔、遊びで商業用のシナリオとHOKAIシステムをリンクさせてみた事があるの。」
 ハートランドは決心したように言った。
 真言や岩崎の為に、自分に残された方法は、それくらいしかないのがハートランドにも判っていたのだ。
 それを自分でやっても良いが、それは泳げもいない者が溺れている人間を助けにいくようなものだった。

「商業用のシナリオ?」

「簡単に言えばロールプレイングゲームね。あなたみたいに毎日リアルにスリリングな生き方してる人間には必要ないでしょうけどね。これが他のサービスと違うところは、柔軟性があまりないこと。ほぼシナリオ通りに事が運ぶ。その分、システムは堅牢だから、その堅牢さを利用すると、どんなに適応力のない人間でも向こうに送り込める。まあ、おしきせのパックツアーのようなものね。もちろん、プラグも必要なし。これに化け物みたいなNEOHOKAIシステムを繋げたらどうなるかって実験のつもりでやったの。やりかたの勘所は、源次郎との通信で判ってたから、直ぐに判ったわ。」

「そんなので、岩崎刑事や真言が探し出せるのか?シナリオ通りに事が進むだけなんだろう?」

「なに疑って聞いてるの?この話はあなたが持ち出したんでしょ?NEOHOKAI世界にはこれでリンク出来るわ。受け身の形だけどね。だからシナリオのどの部分にNEOHOKAI世界がリンクしてくるかまでは判らないの。こちらからすると、答えがそこにあるのに、それが判らないで素通りって事もあるわね。上位互換だから、向こうがこっちを見つけてくれれば楽なんだろうけど、、。つまり、そんなあやふやなレベルだって事。しかも下手をすると、向こうの世界で漂流して、同じ物語を毎回も演じ直す人生を送らなくちゃならないかも、、普通の娯楽レベルだと、ゲームが終わったら嫌でもこっちに戻ってきちゃうけど、HOKAIに繋ぐとそういう危険性がでてくる。そんなので良いのって事なんだけど?」


      ・・・・・

 兎に角、一応は父が目指した世界は自分の目で確認をした。
 そして受肉したブキャナンを岩崎が倒した。
 ブキャナンについては、自分にとって重要な使命だったとは思えないが、岩崎の生き様に学ぶところは大きかった。

 残るのは二次元刀と地図の本当の使い道だ。
 もちろん、ただ針金生物がいるこの世界に来る為に、それら二つがあったのかも知れない。
 なら、父が残したのは、この世界の在りかた、そのものと言える。
 ただ自分の息子に、保海源次郎という男が、この世には「こんな珍しい世界があるぞ」と父として教えたかったのか?、、そうとは思えなかった。

 やはり父は、自分になにかを託したかったのだろう。
 だが、真言がそれに応えようとするなら、取り敢えず渡り合わなければならない針金生物とこの世界は、相当手強そうに思えた。
 ハートランド辺りの力を借りる必要があると思えた。
 そしてシノハラや岩崎との約束もある。
 帰れるものなら一度、元の世界で態勢を整えるべきだろうと真言は思った。

 帰還は不可能ではないだろうと思っていた。
 実際に真言の父は、空から降って来るという形で、人間の住む世界に戻って来たのだ。
 今日からは、そのつもりで、この世界を歩いて見ようと真言は考えた。
 ・・・まずは、岩崎を葬った時に感じた、あの地鳴りの方向に進んで見ようと。
 この世界では、「偶然」はあり得ないからだ。



 数日後、流騎冥は、とりあえず自分に割り振られた任務だけはやりこなして、ハートランドのいる旧ボシュロム美術館に訪れた。
 旧ボシュロム美術館をΩウェブのアミューズメント施設にしょうとした保海源三郎の計画はビッグマザーの横やりで頓挫していた。
 ただ保海源三郎は粘り強い男だった、CUVR・W3関係の器機はそのまま維持されていた。

 Ωウェブに潜る決心は付いていた。
 今の状況が続けば、いくら銀甲虫になっても、流騎冥の求めている戦いの中での「完全燃焼」は、出来ない。
 元から、何が正しくて何が正しくないかなどないのが、世の中だと判っていたし、ただ後腐れなく、戦えればそれで良かったのだ。

 それが、今は世界の法の基準となっているビッグマザーと、闇の中で小競り合いをやっている。
 それは、生身の人間同士の勝負ではなくて、人間が、大きくなりすぎた自分の影と取っ組み合いをやっているようなものだった。
 しかもその勝負に、負けかけている。
 このモヤモヤの元凶を絶たねば駄目なのだ。
 その為には、自分に似合わない事もする、流騎冥はそう決めていた。

「ライブラリーを探してたら、結構、今の状況にフィットしてるシナリオを見つけたわ。シナリオを構成しているイベントが、今まで真言君達が体験してきたこととよく似てるの。それと設定を、少し私がいじったわ。源次郎から聞いた向こうの世界の話が上手く嵌め込められそうな部分があったから、、。それを使うから、貴方も向こうの世界で余り余計なことはせずに済みそうね。」

「有り難いね。何か他に気を付ける事はないのか?」

「、、ゲームに流されちゃったら、貴方はただ時間の浪費をしただけになるわ。ここだって、思った時に、向こう側に飛び移るのよ、それが肝心。後は向こうが引っ張ってくれる。真言達を取り込んだ、あれは並のCUVR・W3じゃないわ。半分、移動装置みたいなものだから、あなたの現実の身体を、真言君達がいる向こう側に持って行くはずだわ。言い方を代えると、貴方はNEOHOKAI世界の機能に、自分を引き渡すって事ね。その為には、流騎冥という自分をしっかり保っている事。のんびりゲームの主人公になっちゃ駄目って事よ。」

「主人公に成り切るのを目的にしたゲームの中でか?、、難しいな。」

「私が外から見ていて上げる。何かの形で、合図が送れるかも知れない。」
 向こうの世界に行くだけなら、何とか流騎冥を送り込めるだろうとハートランドは思っていた。

 ただし問題は、それからだった。
 流騎冥は、向こうの世界で岩崎達と協力してアルビーノ・ブキャナン人格を解体出来るのか?
 それとも何を置いても、一旦、彼らを連れて引き上げようとするのか?
 その時々において、どういう判断が最も適切なのか?
 弥勒会議の一員でもない自分には、その判断はもちろん、つなかい。

 個人的には、ただ真言を無事、向こうの世界から連れ戻して欲しい、それだけだった。
 どちらになるにしても、帰還の方法を見つけるのは、彼らであり、ハートランドは、ただそれを支援するだけだという自分の立場がもどかしかった。

「じゃ、行くぜ。」
「それだけ?」
「そうだな。」
「やっぱり貴方はアンプラグドね。」
 ハートランドは苦笑した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...