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第2章 乙女ゲームの矯正力は強いのか

遠征実習・2日目

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  休憩所には、馬の水飲み場になる物がある場所も、たまにあるんだけど、野営の場所が、まさにそれ。

  休憩所によっては、簡易の竈がある場所や、壁はないけど柱と屋根だけあって、食事がテーブルで出来る様な場所がある処もある。

  この場所は、水飲み場がある程度の休憩所。

  幌馬車を盾にして、テントを張る者に任せ、今回はレイトルを小屋に戻した。

  理由は単純で、赤くなる者がいなかったから。

  更に、不運にも首を狩られる者が出ない様にするのに戻した。

  「親父の馬も、バトルホースだが、もう1つ気が強いな」

  そう言って、笑ってるヴィルジーク様は、果敢にも寄って行って、齧られそうになってたの。

  「師匠の婆ちゃんにさえ、噛み付こうとするので、困るんですよ」

  そう言いながら、今晩の夕食をコーデリアと作ってたんだ。

  そう、ご令嬢方で料理が出来るのはマレです。

  まだ肌寒い時期なので、スープを作るんだけど、その前に火起こしです。

  「遠征実習でなければ、手伝うんだけどなあ」

  そう言いながら、覗き込んで来てたヴィルジーク様。

  「騎士団でも、野外訓練あるんですよね」

  そう言って話し掛ける生徒の話に付き合ってくれてた。

  「訓練もあるが、遠征討伐の方が多いからね。近衛でない限り、王都にいないよ」

  騎士団の実体に、驚いてるご令嬢方が多かった。


  食事の時、夜間の見張り番の順番を決めたんだけど……

  明日の朝の食事の準備の兼ね合いもあって、自分は最後だった。

  ちなみに、休憩所には、魔物に襲われない様に、魔物避けが張られては居るんだけど、見張り番は居るんだよ。

  召喚獣の小屋があると、1人だと全く気にしないで良いんだけどね。

  「適宜で、お休みください」

  そう言って、コーヒーの入ったマグカップを、ヴィルジーク様に渡せば、目を丸くしてた。

  「何も入っておりませんよ。ご安心を」

  そう言えば、噴き出したヴィルジーク様。

  「本当に、情報通だな」と言って、困った様に笑ってるけど……

  自分も聞いた時は噴き出したもん。

  何でも、まだ公爵家三男の肩書きが効いた頃、媚薬を盛られたんだってー。

  「こら、誰に聞いたんだ?」

  少し本気で聞いて来たので、「早く寝ないと」と言って、逃げたんだ。



  コーデリアと一緒に起こされて、テントから出てくれば……

  ヴィルジーク様起きていて、基礎練してた。

  「早いですね」っていうよ。

  だって、昨夜、しばらく、ヴィルジーク様の声、聞こえてたからさ。

  火起こし後、スープを作る際、休憩所の前にある草原に、コッコが居る事に気付き……

  コーデリアに任せ、「卵取ってくる」と言って来た。

  コーデリアは唖然としてたけど、「宜しく」と送り出してくれた。

  ヴィルジーク様が驚く中、雄の朝の鳴き声がする位置に忍んで行って、索敵の位置にネットを放った。

 けたたましいコッコの鳴き声も、電流ショックで直ぐ沈黙。

  それから、卵の回収をしてれば、驚きながらも、ヴィルジーク様寄って来た。

  うふふと笑う自分に「何処でも食べて行けそうだな」なんて事を言ってる。

  ので、「夏に、辺境領に行くんですよー」と、取り引きの言葉を口にし始めた自分。

  「それで、お願いがあるんですよね。ダーイン伯爵家にもあると便利ですよ~」

  にこにこしながら言えば、目を丸くしてるヴィルジーク様。

  「夏休みになる前に、こっそり王都のダーイン伯爵邸に呼んでくださいな」

  そう言って、卵を入れた籠を抱え、前を向いて、歩き出せば……

  「ちょっと待て!了承していない!」

  そう叫んでるヴィルジーク様だったけど、嫌がっていないのは、声音で気付いてた。


  コッコが騒いだ声で、野営地に居た人殆ど起きてた。

  ので、「お騒がせしました。良ければ」と言って、卵を渡せば、誰も責めないんだよ。

  自分たちのグループで食べる7個あれば良いんでね。

  困惑してたけど、「お騒がせ代です」と言えば、受け取ってくれる。

  ま、自分はコッコの肉が15羽分、インベントリにあるんで良いの~。

  ベーコンエッグを乗せ、パンで挟んで焼いてたら……

  コーデリアは「ホットサンド……」と呟き、何処で、そのホットサンドメーカー売ってるのか、聞いて来てた。

  「鍛冶屋のオルガンさんに作って貰ったの。ランドルフ商会で売ってるよ」

  そう言えば、「ええ~、そんな事聞いてない」とコーデリア言うので、聞けば……

  あらまあ、ロッテンマイヤー家が、と言うか、コーデリアが手を出した商会だそうだ。

  追放処分になった時の為に、稼いでたそうだけど、主に、コーデリア付きの侍従とメイドが運営してるそうだ。

  自分が作って出したホットサンドと、コーデリアのスープに、「美味しい」と言って、食べてたご令嬢方。



  食後、早速、出発したんだけど……

  居合わせた人全員に、お礼を言われてしまった。

  その野営地から、ヴィルジーク様の故郷、ランバルディア公爵領は直ぐだったんだけど……

  公爵の弟が御者してるので、驚いて見て来られてただけでなく、当主に連絡が入ったんだろう。

  ヴィルジーク様と代わる者が来てた。

  それで、例年、魔法学園の者が野営する森に連れて行ってくれたんだ。

  その後、行程通り、周囲の探索をして、キノコや薬草を採り、魔物が出れば討伐し、ギルドに売るまでが1連の行程なんだ。

  その間は、代わりの者が監視というより、護衛の様な事をしていた。

  まあ、魔法学園の生徒は貴族のご令嬢だからねえ。

  傷物になったといちゃもん付けられたら、敵わないもんね。


  ヴィルジーク様が戻って来たのは、夕刻だった。

  ただ、何故か、現当主のヴィルジーク様の兄で、攻略対象者の父親を連れて来てた。

  ので、全員でご挨拶させて戴いた。

  のだけど、何やら値踏みしてる様に感じたんだよねえ。

  まあ、見てるのは自分だけじゃなく全員だけど。

  確かに、コーデリアとイルラは、第2王子が決められば、息子の相手になりうるから分かるけど。

  コーデリアはどうするのか聞いてないけど、イルラは魔術師塔に籠るんだってー。

  本当に出来るかどうか不明だけど。



  次の日には、ランバルディア公爵領を出て、王都に向け、帰途に着いたんだけど……

  遠足は家に着くまでとは、よく行ったものだと思ったのは、王都に向かう道で、盗賊に遭遇した。

  イルラのバトルホークの索敵に、え?!と思ったけど、ベリンダも同じ報告で、びっくりしたよ。

  だけど、ヴィルジーク様が驚いていないと言う事は、この領は以前より、不当に税を上げてるって事?!

  だって、捕まったら犯罪奴隷に落ちるの確定なのに、盗賊になるのは、死活問題で仕方なくの者が多いって、婆ちゃんから聞いた事がある。

  そう思うのも、盗賊の武器や装備がお粗末でさあ。

  他人の富を掠めとる輩の盗賊とは丸っきり違って……

  ヴィルジーク様が、端正な顔を歪めて、こっちに走るなら、領主の税金が暴利だとする証拠を掴んで、持ってこいと言っていた。

  他家の養子に行ってしまう自身へではなく、ランバルディア公爵領に。

  そう、街道を塞ぎ、手に武器を持っていても、ヴィルジーク様の姿とバトルホースのレイトルを目にして、武器を置いたの。

  きっと、ヴィルジーク様の姿は、この辺で有名なんだろうね。

  でも、ヴィルジーク様の姿が抑止力になるのであれば良いと思うよ。


  盗賊の1件があったとしても、時間通りに学園に戻って来れた。

  「ご一緒して戴きありがとうございました」

  そう、全員で、ヴィルジーク様に挨拶をして、お別れしたんだけど……

  ヴィルジーク様の後ろ姿に、全員で「かっこいいよねえ」と言ってたんだ。

  でも、皆、ヴィルジーク様が辺境のダーイン伯爵家に養子に入るのを、そう知ってたの。

  こういう情報、やっぱり水面下で流れて行くんだね。

  と言うか、自分の耳に入るくらいだもん。

  それでほぼ全員が、「目の保養が……」と残念がってるけど、辺境領に嫁に行こうと思うご令嬢方はいない。

  魔の森の側だからだろうけど、高級素材いっぱいだよ。

  自分なんて、夏休みに稼ぎに行こうと思ってるのに。

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