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※愛しい相手と契りを※
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……ああ、これがひとつになるということか
翌日、朝から風琴は人気のない泉に腰まで身体をつけていた。まだまだ冷たい水であるが、それくらいは我慢する。
回復していない妖力を少しでも取り戻すため。そして清らかな身体で月夜を受け入れる為である。夜は物騒なので、専用の薬湯でも入れて浸かるつもりだ。
風琴は胸に水をかけると、一気に肩まで浸かった。冷たさに身体を震わせたが、風琴は表情を一切変えない。
「別に来なくても良かったのに物好きだな」
振り向かないまま風琴は泉の傍の男に声をかける。泉に背を向けた男は、顔を上げた。
「風琴が水浴びする姿を他者に見られるなと先代と奥方に言われたからな」
もう両親は亡くなっているのに、律儀な奴だ。風琴は黒髪を下ろすと、水に濡らす。風琴の艶やかな黒髪は水の中で生き物のように揺蕩う。
「なあ、風琴。そういえばどうして月夜君を拾ったんだ。お前、人間嫌いだっただろ」
どうしてだったか。月夜には顔が好みだからと言ってやったが、本当は違う気がする。あの子を抱き上げた腕に触れながら考える。
「強いて言えば、母を亡くした頃に見た鏡の中の我に似ていたのだろうな。それと自刃しようとしたあの子を放ってはおけなかった」
優しくて愛情を惜しみ無く与えてくれた母が好きだった。母の最期は部屋に近づけさせてもらえなかった上に、幼き我は「死」というものを良く分からなかった。
それを認識したのは、母の葬儀の夜に父が面を外して嗚咽を漏らす姿を見てしまった時だ。その夜に部屋で声を押し殺して泣いた。
その時の我の顔は涙でぐしゃぐしゃで、瞳が何とも暗かったのを覚えている。そんな我の瞳とそっくりなあの頃の月夜の瞳を見たとたん、気づけばあの子に手を差し出していた。
「そうか。その頃から過保護だったしな」
東雲は笑うと、妖力に木葉を乗せて手遊びのようなことをしている。まったく何をしているんだが。妖力も戻ってないくせに。
「なあ、風琴。お前のことが俺は……いや……」
東雲はなにかを言おうとして黙り込む。そして誤魔化すように咳き込んだ。
「風琴、月夜君を幸せにしたいと思うのは良いが、お前も幸せになるのだぞ」
「我の幸せかあ……分かった」
我は月夜と穏やかな日々を送れるのが、幸せなんだが。早く騒動が終わって、また穏やかな日々を送りたいと心の中で呟いた。
その日は平穏無事で、月夜と泰重が話している間に天将達と他愛のない話をすることになった。天将達が酒は口にするということだったので、酒の話題で盛り上がる。
「騰蛇殿は飲まないとは思っていたが、勾陳殿も蟒蛇酒は飲まないのか」
「うん、僕も苦手かな。一応、本性は蛇だし。あと青龍も蛇酒は嫌いだなあ」
つまり鱗を持つ同族の共食いはやりたくないと。確かに当然な話だ。あれは見た目もあまり我は好きではない。最近の流行りの酒を問うてみると、六合殿が答えた。
「少し前までは南蛮から様々な酒が入ってきましたが、最近の流行りは清酒でしょうね。濁っていない透き通った水のような酒です」
「ほう、最近はそんな酒も出ているとは。人間も酒にはこだわりがあるようですね」
人間は嫌いだが、人間が造る酒は嫌いではない。しかし南蛮の酒か。少し飲んでみたいと思うが、里の酒造りを担う奴らに怒られるかもしれない。
「そういや天狗が酒好きと聞くが、此方では作っておられるのかな」
騰蛇殿がそのようなことを聞いてきたということは、さては天狗の酒を飲むつもりか。我は好きだが、天将の口に合うかどうか。いや、それ以前にひっくり返らないか心配が半分で残りは興味が沸く。
「この山の一族は酒好きばかりで、酒を造る者達もいるのですよ。些か強いかもしれませんが、今宵の宴の際にでもどうですか」
「お気持ちは嬉しいですが、主の子を守る為に来ておりますので、遠慮します」
六合殿が苦笑して首を横に振ると、勾陳殿が身を立ち上がった。
「えー、六合は堅いなあ。僕と騰蛇はどれだけ飲んでも平気だから有り難く頂きたい。あと、何か肴を頂いてもよろしいかな」
天将は食べ物は食う必要はないと言っていたが、それはそれとして嗜好品として欲しいということか。まあ酒には肴が付き物だしな。あとで厨を預かっている天狗に我の漬け物を肴として出せと伝えるか。
そんなことを考えながら厨の方向を見る。今夜は月夜と契る日だ。菓子と酒はあるが、肴も準備しておくべきだろうな。特別な夜の肴は何が良いかと、風琴は面の下で微笑みながら考えていた。
夕方になれば昨日のように皆で食事を摂る。ひとつ違うのは月夜の様子がそわそわしている事であろうか。我とて落ち着かないでいるが、それを悟らせるなど未熟者だ。
「月夜殿、どうなされましたか」
「え!? いやあ、別に何もありませんよ」
月夜は笑って誤魔化す。これに反応してはばれてしまう危険があるので、風琴は知らない振りをしたまま食べ続けた。
食後、四半刻経ってから薬湯に浸かる。髪からずっと清めていたが、あることに気づいた。
……そういえば、ここも洗わなくてはならないのか。風琴は恐る恐る、後ろに手を伸ばす。固く閉じたそこに直に触れることなど殆ど無い。人間と違って、妖術で綺麗に浄めているから汚れてはいないだろうが……。風琴はゆっくりそこに指を入れた。
「っ……」
ここも念のために妖術で浄めた方が良いか。風琴はそっと指を押し進めていくが、何度も身体がぴくりと跳ねる。
「あっ……ふ……」
美容にと渡された身体を洗う液体の滑りのせいか、痛みはそれほど無い。代わりにもどかしさばかりがあるだけだ。風琴は震える声で、浄めるための妖術を唱える。
「うんっ……ん……」
妖力が中で動くせいかあの日の快楽を思い出して思わず声が出る。何をやっているんだ我は。後ろに指を突っ込んでるのは浄める為だ。決して一人でよがる為などではない。自分に言い聞かせて、風琴は中を妖術で浄め続けた。
風呂から上がる頃には、少しのぼせてしまった。これからという時に倒れては意味がない。例の妙薬と一緒に冷たい水を飲み込む。
後は……自室で月夜が風呂から上がるのを待つだけ。それを考えるだけで頬が熱くなる。風琴は自室に戻って月夜が来るのを待ちながら、じわじわと蝕む妙薬の火照りに身を任せていた。
四半刻経った頃、足音が聞こえて風琴は閉じていた目蓋を開いた。
「うっ……」
熱い。あの子の気配を感じただけで疼いてしまう。横になっていた風琴はなるべく衣が素肌に擦れないよう身体を起した。
「師匠、入ってもよろしいでしょうか」
「……入れ」
そっと障子が横へとずれる。隙間から入ってきた風が肌を撫でて、風琴は震える。そんな風琴に気づいたのか、すぐに月夜は少しの隙間無く障子を締めると面を取った。今回の事で緊張しているのだろう。頬が赤くなっているのが可愛らしい。
「月夜、何度も聞いているが最後に問う。契りが終われば人間に戻れなくなるが、本当にそれでもよいか」
「はい、勿論です。貴方様の弟子として、何処までもおそばにいましょう」
選択肢を与えたのはこれからもう戻れなくなるから。だが月夜の意志が揺らぐことは1度として無かったので少し安堵している。風琴は笑みを浮かべると、腕に刃を当てた。
「師匠、何を……!?」
これは大切な儀式なのだと、月夜を目で制す。肌が裂けた箇所から溢れる血を吸う。鉄臭い味が口の中に溜まると、月夜の目の前に座る。それで月夜も分かったのだろう。我を引き寄せると、唇を開けた。形の良い唇に己の口を重ねると、血を注ぐ。
「ん……ぅ……」
血を飲んだからと天狗になれる訳ではない。我の一族では、人と天狗が師弟として強い心の結び付きを得た上で、血や体液を摂取させることで人を天狗にすることが出来る。風琴は血を与えながら、己を包む月夜の布越しの温もりに身を委ねていた。
風琴は口の中の血を何度か与えると、己の舌に絡みつきそうになった舌を避けて唇を離す。互いに唇から顎まで血で染まった姿に、何故だが二人とも昂りを覚えていた。ごくりと生唾を飲み込む月夜ににやりと笑うと、風琴は帯をほどいていく。
露になった前側は妙薬のせいか、扇情するかのようにほんのりと火照っており、中心部はとろとろと蜜を溢れさせながら勃ち上がっていた。
「月夜、此処が咥えられるものなら咥えてみろ」
普段は挑発などの真似をしない師匠が挑発的に艶やかな笑みを浮かべて誘っている。それを拒む術など若い月夜には無かった。
月夜は風琴の股に頭を近づけると、固くなっている幹に指を添える。
「あっ……ん……」
指が触れているところから熔けてしまいそうなくらい熱い。思わず逃げてしまいそうになった風琴の腰を月夜は反対の手で掴むと、蜜を溢れさせている先端に口づけた。
「くぅ……う……んっ……」
自分の魔羅が月夜の頭で見えない為、予測できない快楽に風琴は袖を噛んで耐えている。
「んぅ……あ……ん……」
蜜を指に絡めて幹を擦られながら、先端や幹に口づけの雨が降る。その度に、甘い痺れが何度も身体に走る。駄目だ。月夜が咥えるまで耐えなければ、月夜が天狗の身体になるのが遅くなってしまう。
風琴は足の爪先に力を入れて耐える。月夜の愛撫に視界がチカチカとしてきた頃、柔らかく熱い物に魔羅が包まれた。
「ひああ………!? や……っ……あ……」
ひくりと風琴は背を仰け反らせる。咥えられたと理解したのは、腎水を飲み込む音が聞こえてきた時であろうか。不味いものらしいから、噎せるのが普通ではないのか。喉が鳴る音を聞きながら、風琴は耳まで赤くなる。
「月夜……不味いなら……水でも飲むか……?」
「いいえ。師匠のは甘露ですよ」
一度唇を離した月夜が顔を上げて笑みを浮かべる。口の端から溢れる己のそれの卑猥さに、風琴は自分の物がまた熱くなったのを感じた。
「では、師匠の甘露が尽きるまで口にさせて頂きますね」
「へ……? 月夜、我はもう少し休み……ひああぁ__!?」
達したばかりの物を咥えられ、風琴は声にもならぬ嬌声を上げる。いやいやと月夜の頭を離そうとすれども、妙薬が全身に回ってろくに力が入らない身体。むしろせがむように頭を包んでいるとしか、月夜には感じられない。
「舐めるな……やあっ……あ……達った……ばか……り……ああっ__!!」
達したばかりの魔羅はあまりにも敏感で、快楽が拷問を思わせる。風琴は涙を溢しながら、強い快楽にもはや声が抑えられなくなっていた。
第一、月夜と肌を重ねるまで他者と肌を重ねるどころか、自慰すら滅多に行ったことが無かった風琴にとって、咥えられるのは堪え難き快楽だ。月夜を煽った余裕は何処へやら。風琴は腰が砕けて、されるがままになるしかない。
「やらっ……もう……んんぅ__!!」
舌が幹から先端にかけて舐め上げられる感触に、びくびくと震えて達する。これは早漏と言われてもおかしくないのではないか。殆どの思考が快感に侵されている中、残った理性が情けないと罵倒してくる。
「つ……月夜……待て……おかしくなる……」
真っ直ぐな髪を乱し、濡れた瞳で訴える。だが月夜は笑みを浮かべるだけだった。
「師匠、私は貴方をお守りできるように、一刻も早く天狗になりたいのです。ですからあと1回、貴方の甘露を恵んでは頂けないでしょうか」
あと1回だと!? 今ですら限界なのに、あと1回を所望するのか!? これから肌を重ねるだぞ。それまでこの従順な顔をした獣のような弟子に身を貪られるのに、達してしまって死にはしないだろうか。命の危機を覚えていたが、月夜の上目遣いには勝てぬ。
「あと……1回だけだからな」
「有り難き幸せ」
月夜は微笑むと、先端の部分を舌で撫ぜた。風琴は目を瞑って押し殺しきれない息を吐く。
「くっ……ん……ひぅ……ぁ……」
急かすような口淫でなく、包み込むようなぬくもりに風琴は湯に揺蕩う錯覚を覚える。風琴の強張りが解けたところで陰嚢を揉まれた。
「はっ……あ……そこ……ん……んんっ……」
まるで搾り取ろうとしているよう。こんなに我が弟子は欲しがりだったのか。それとも妙薬で我がおかしくなっているのか。風琴は月夜の頭を撫でながら、のぼりつめる快楽に身を任せる。
「あ……ああっ……んんん___ッ……!」
風琴は仰け反らせると、甘い悲鳴を喉から溢れさせる。風琴は魔羅を解放させられると、びくりと震えて後方に倒れた。ぜいぜいと肩を上下させながら視線を頭上に移せば、馬乗りになっている月夜。風琴はいよいよその時が来たかと悟る。
「さっさと……我を抱け……」
お前が欲しいのだ。快楽にぐずぐずに蕩けているというのに、風琴は強がるように妖艶な笑みを浮かべ、月夜を煽り立てた。
月夜はすぐにでも我の身体を貫きたいという顔をしていたが、頭を振る。
「いいえ……。そのまましては師匠がお辛いでしょう。ですので慣らします」
月夜は丁子油を手に取って手を濡らすと、我の後孔に塗りつけていく。
「うっ……ん……」
前回は我が出した腎水であったが、今回は丁子油か。冷たさに身体が震える。丁子油は剣の手入れに使うがまさかそちらの剣を用いる時も……って何を考えているのだ我は。
普段の我なら考えない下世話な考えが浮かんで風琴は頭を横に振る。今は此方に集中しなければ、風琴が月夜の眼に視線を戻すと、月夜が不安そうな顔で見つめている。
「大丈夫だ。気にするな」
我が頭をぽんぽんと叩くと、月夜は我の後孔に指を入れた。
「んんっ……ふ……う」
あの時のような痛みは少ない。ただ、異物感にはどうにも慣れない。風琴は何ともいえない気持ち悪さを指を噛んで堪える。すると月夜がそっと指を離して舐めた。白を纏った赤い舌が指を舐める様は卑猥で、風琴は頬が熱くなる。
「師匠、美しい指から血が出てしまいます」
つまりは口づけをしろと言うことか。まあいい。そちらの方が情事らしい。風琴が固く噛んでいた唇を開けると、月夜は己の唇を重ねた。
「ふ……んんっ……ん……」
後孔を慣らしていない方の手の指と指を絡めて後孔をいじられる行為に耐える。
今回は恐怖が無いからか、以前より気持ち悪さがすぐに無くなる。少し苦味と青臭さを感じるがそんなのは些末なことであり、わざわざ我のを飲んだ月夜に対して失礼だ。むしろずっとこうして居たい。
風琴があまりの心地好さに眠りそうになると、ある部分に指が触れた。
「うっ……!? んうっ……ふ……」
眠りかけていた意識が一気に覚醒する。強い快楽に嬌声に声を上げようとしても、舌を絡め取られて呻きが零れるだけ。代わりに腰を揺らす風琴の様子に気づいたのか、月夜は指を2本、3本と増やして中を解していく。
「んっ……ん………う……あ」
一度触れただけで指を増やしてからは、そこに触れようとしない。わざと避けているのか。もどかしさに風琴は月夜を濡れた瞳で睨む。それを知ってか知らずか、月夜は指を一気に引き抜いた。
「ひああ……っ……」
一気に引き抜くことは無いだろうが! 唇を離された風琴は涙を目尻から拭わぬまま月夜を睨む。
「散々……我を……焦らしおって」
「師匠だって私を煽ったでしょう。仕返しです」
月夜は笑みを浮かべると、帯と褌を解く。そこには固く勃っている魔羅。
やはり我のより大きくて、男としての劣等感と抱かれることに、少し恐怖のような何かが……。
いやいや、そんなことを考えては駄目だろうが。風琴は覚悟を決めると、月夜の頭の後ろに腕を回して引き寄せる。
「この欲張りな弟子め。早く我を満足させろ」
「師匠の仰せのままに」
風琴と月夜は互いに顔を見合わせて笑みを浮かべる。風琴は後孔に触れる熱に目を細めた。
「月夜……来い」
風琴の囁きに応じて、熱の楔がゆっくりと風琴の身体に押し入っていった。
「ぐ……うあっ……あ……」
痛みと異物感は多少はあるが、初めて肌を重ねた時程ではない。それでも顔をしかめてしまうので、心配そうに月夜が見下ろしていた。
「師匠……お辛いなら私の肩を噛んでください」
「いや……でも……」
天狗の力は人間以上だ。噛むどころか、噛み切るようなことがあってはない。そう伝えると、月夜はきょとんとした。
「ですが、師匠。妙薬を口にされた師匠のお力は人間程も無いのでは」
「……すっかり忘れてた。すまぬが肩を借りるぞ」
月夜が頷いてから、月夜の肩に歯を立てる。奥へ奥へと楔が入っていく感覚が良く分かる。一度奥まで入れられたので腹を破る心配は無いが、太さと長さは凶器そのものではと思ってしまう。逞しい肩を噛んでいると、頭上から声がした。
「師匠、奥まで入りましたよ」
「あ……ああ。我にも分かる」
何せ、中で脈を打っているのだから。その度に甘い快感が走るので、指先に力を込めて耐えている状態だ。本格的に動かされては、もう声を抑えられないだろう。
「やっと満たされた気がする」
「私もです。師匠の中はとても気持ち良くて熱い」
熱い吐息で囁かれたものだから、思わず締めつけてしまう。魔羅の感触をより鮮明に感じてしまい、風琴は思わず腰を動かした。
「あんっ……っ……」
「うっ……師匠……突然動かさないでください……今、耐えているのに……」
「お前が耳元に息など掛けるからだ! ……んっ……動きたいなら動くといい。我も……その……少しくらいなら……あっ……乱暴にされたい……」
あの日以来、寝床に入る度に乱暴に身体を抱かれる記憶ばかりを反芻しているだから。月夜は我の言葉に未経験な少年のように顔を赤くして照れる。
「師匠……貴方をお慕い申し上げております……」
月夜は我の腰をそっと掴むと、腰を軽く引いてから一気に打ち付けた。
「うああっ……! んあっ……あっ……」
激しい律動に合わせ、風琴が嬌声を上げる。普段は凛とした佇まいの男の萌葱の瞳が快楽の涙で潤み、濡羽の髪が乱れた様は妖艶そのもの。組み敷く月夜は、前回のような過ちを犯さぬように自分の快楽よりも、なるべく風琴の好い所に当たるように抜き差しを繰り返す。風琴はその度に脳の奥で火花が散っておかしくなりそうになった。
「ひあっ……あん……ああっ……」
言葉など紡げない。聞こえるのは互いの荒い息と激しい水音ばかり。今はこの身体に走る快楽が心地良いことと、目の前の月夜が無我夢中で我を求めてくれるのが嬉しいことしか分からない。
「いっ………ああ__っ……それっ……やああっ__!」
ぎりぎりまで引き抜かれて一気に奥を抉られ、風琴は身を捩る。臓腑が壊れないだろうかという激しさに、月夜にしがみつくしかない。月夜は爪を立てられる痛みに思わず笑みを浮かべた。
「師匠……気持ち良いですか……?」
「い……いい……ああっ………はっ……うあ……」
月夜の言葉すら意識しないと聞こえないくらい快楽に溺れている。月夜の熱をうまそうにしゃぶる後孔が浅ましいとは思わなくもないが、心も月夜を求めているので羞恥も朧気となっている。
「月……夜……す……き……っ……もっと……ほし……ああっ__!?」
無意識に風琴が舌足らずにそんな言葉を吐いたのが悪かったのだろう。腰を掴む月夜の手に力が入ると、獣のように穿ち始めた。
「やああっ__!? 月夜っ……おか……しく……なっちゃ……ああっ__!」
「狡い師匠が……悪いの……ん……です……っ……。おかしく……なってください……」
性急に身体を揺さぶられ、風琴はそろそろ昇りつめることを悟った。もはや何も考えられない。考えたくない。ただ愛しい相手とひとつになっている事実が幸せなことしか分からない。
「あっ……ああっ_……やっ……ああぁ___!!」
「くっ……」
一番身体の深い所を抉られて、風琴は嬌声を上げながら中心から白濁を吐き出した。朦朧とした意識の中で、月夜の熱い飛沫が中を濡らすのを感じる。
ああ……これが愛しい奴と肌を重ねることか。風琴は目を閉じて、月夜を強く抱き締めた。
此度は妙薬の量を減らしていたおかげか、気絶することもなく菓子を肴にして酒を飲んでいた。月夜にとって初めての酒な上に、天狗の酒だからだろう。かわらけ一杯で顔が赤くなったものだから、今は水をちびちびと飲んでいる。
「にしても、我を組み敷いた時のお前は熊のようだったな。まさか、今まで厳しくした鬱憤か何かか」
さりげなく聞いてみると、月夜はぶんぶんと首を横に振った。
「そんな訳ありませんよ!? ただ、その……師匠への愛しさが暴走してしまい……申し訳ございません」
「そうか……」
愛しさが暴走した結果、あんなに激しく求めてきたのか。風琴は頬をほんのりと赤く染める。
「それで、どうだ。体調がおかしくなったりしないか」
「今のところは何も。私はいつ天狗になれるのでしょうか」
月夜は不安そうに自分の身体を見下ろす。一度交わっただけでは、不完全な天狗のままな上に、身体も変質しない。頭を撫でて大丈夫だと告げた。
「今から10日程後だな。霊力が妖力に変化し、妖力で翼を形にすることになる。それまでは、水や我の体液を摂取することと交わること以外は1日の内、半日以上眠り続けるな」
故に実質半月近くかかる。今のところ、人間達との話し合いや妖異との戦は1ヶ月以上先であろうから問題は無いだろう。あるとすれば、我が抱かれる側だと天狗どころか人間に露見する可能性があることくらいか。
「……ということは、天狗に成るまで師匠と交わることに……?」
「……そういうことだな。明日からは我の腰、壊すなよ」
明日、起き上がれるだろうかと不安になるくらい抱かれたのだ。毎日激しく求められたら流石の我でも泣く。
「承知いたしました、師匠」
「分かったならいい。……ところで、まだ勃っているようだが、したいのか」
月夜は途端に耳まで赤くなると、股間を隠した。いやいや、隠しても遅いだろうが。風琴は溜め息を吐いた。
「いえ、これは……その。いや、勃ってたとしても師匠は腰を壊すなと仰いましたし」
「『明日から』と言うたであろう。つまりそういうことだ」
酒瓶の残りを一気に飲み干すと、風琴は妖艶に笑う。月夜は意図を悟り、生唾を飲み込んだ。
「本当によろしいのですか」
「今宵ばかりは無礼講だ。今だけは好きに求めるといい」
風琴は締め直したばかりの帯を解く。するりと衣が落ち、障子越しの月光が風琴の白磁の肌を惜しみ無く照らすさまは、艶やかどころか神々しさも見る者に与える。風琴が腕を広げると、花に誘われた蝶の如く月夜がその胸に飛び込んだ。
翌日、朝から風琴は人気のない泉に腰まで身体をつけていた。まだまだ冷たい水であるが、それくらいは我慢する。
回復していない妖力を少しでも取り戻すため。そして清らかな身体で月夜を受け入れる為である。夜は物騒なので、専用の薬湯でも入れて浸かるつもりだ。
風琴は胸に水をかけると、一気に肩まで浸かった。冷たさに身体を震わせたが、風琴は表情を一切変えない。
「別に来なくても良かったのに物好きだな」
振り向かないまま風琴は泉の傍の男に声をかける。泉に背を向けた男は、顔を上げた。
「風琴が水浴びする姿を他者に見られるなと先代と奥方に言われたからな」
もう両親は亡くなっているのに、律儀な奴だ。風琴は黒髪を下ろすと、水に濡らす。風琴の艶やかな黒髪は水の中で生き物のように揺蕩う。
「なあ、風琴。そういえばどうして月夜君を拾ったんだ。お前、人間嫌いだっただろ」
どうしてだったか。月夜には顔が好みだからと言ってやったが、本当は違う気がする。あの子を抱き上げた腕に触れながら考える。
「強いて言えば、母を亡くした頃に見た鏡の中の我に似ていたのだろうな。それと自刃しようとしたあの子を放ってはおけなかった」
優しくて愛情を惜しみ無く与えてくれた母が好きだった。母の最期は部屋に近づけさせてもらえなかった上に、幼き我は「死」というものを良く分からなかった。
それを認識したのは、母の葬儀の夜に父が面を外して嗚咽を漏らす姿を見てしまった時だ。その夜に部屋で声を押し殺して泣いた。
その時の我の顔は涙でぐしゃぐしゃで、瞳が何とも暗かったのを覚えている。そんな我の瞳とそっくりなあの頃の月夜の瞳を見たとたん、気づけばあの子に手を差し出していた。
「そうか。その頃から過保護だったしな」
東雲は笑うと、妖力に木葉を乗せて手遊びのようなことをしている。まったく何をしているんだが。妖力も戻ってないくせに。
「なあ、風琴。お前のことが俺は……いや……」
東雲はなにかを言おうとして黙り込む。そして誤魔化すように咳き込んだ。
「風琴、月夜君を幸せにしたいと思うのは良いが、お前も幸せになるのだぞ」
「我の幸せかあ……分かった」
我は月夜と穏やかな日々を送れるのが、幸せなんだが。早く騒動が終わって、また穏やかな日々を送りたいと心の中で呟いた。
その日は平穏無事で、月夜と泰重が話している間に天将達と他愛のない話をすることになった。天将達が酒は口にするということだったので、酒の話題で盛り上がる。
「騰蛇殿は飲まないとは思っていたが、勾陳殿も蟒蛇酒は飲まないのか」
「うん、僕も苦手かな。一応、本性は蛇だし。あと青龍も蛇酒は嫌いだなあ」
つまり鱗を持つ同族の共食いはやりたくないと。確かに当然な話だ。あれは見た目もあまり我は好きではない。最近の流行りの酒を問うてみると、六合殿が答えた。
「少し前までは南蛮から様々な酒が入ってきましたが、最近の流行りは清酒でしょうね。濁っていない透き通った水のような酒です」
「ほう、最近はそんな酒も出ているとは。人間も酒にはこだわりがあるようですね」
人間は嫌いだが、人間が造る酒は嫌いではない。しかし南蛮の酒か。少し飲んでみたいと思うが、里の酒造りを担う奴らに怒られるかもしれない。
「そういや天狗が酒好きと聞くが、此方では作っておられるのかな」
騰蛇殿がそのようなことを聞いてきたということは、さては天狗の酒を飲むつもりか。我は好きだが、天将の口に合うかどうか。いや、それ以前にひっくり返らないか心配が半分で残りは興味が沸く。
「この山の一族は酒好きばかりで、酒を造る者達もいるのですよ。些か強いかもしれませんが、今宵の宴の際にでもどうですか」
「お気持ちは嬉しいですが、主の子を守る為に来ておりますので、遠慮します」
六合殿が苦笑して首を横に振ると、勾陳殿が身を立ち上がった。
「えー、六合は堅いなあ。僕と騰蛇はどれだけ飲んでも平気だから有り難く頂きたい。あと、何か肴を頂いてもよろしいかな」
天将は食べ物は食う必要はないと言っていたが、それはそれとして嗜好品として欲しいということか。まあ酒には肴が付き物だしな。あとで厨を預かっている天狗に我の漬け物を肴として出せと伝えるか。
そんなことを考えながら厨の方向を見る。今夜は月夜と契る日だ。菓子と酒はあるが、肴も準備しておくべきだろうな。特別な夜の肴は何が良いかと、風琴は面の下で微笑みながら考えていた。
夕方になれば昨日のように皆で食事を摂る。ひとつ違うのは月夜の様子がそわそわしている事であろうか。我とて落ち着かないでいるが、それを悟らせるなど未熟者だ。
「月夜殿、どうなされましたか」
「え!? いやあ、別に何もありませんよ」
月夜は笑って誤魔化す。これに反応してはばれてしまう危険があるので、風琴は知らない振りをしたまま食べ続けた。
食後、四半刻経ってから薬湯に浸かる。髪からずっと清めていたが、あることに気づいた。
……そういえば、ここも洗わなくてはならないのか。風琴は恐る恐る、後ろに手を伸ばす。固く閉じたそこに直に触れることなど殆ど無い。人間と違って、妖術で綺麗に浄めているから汚れてはいないだろうが……。風琴はゆっくりそこに指を入れた。
「っ……」
ここも念のために妖術で浄めた方が良いか。風琴はそっと指を押し進めていくが、何度も身体がぴくりと跳ねる。
「あっ……ふ……」
美容にと渡された身体を洗う液体の滑りのせいか、痛みはそれほど無い。代わりにもどかしさばかりがあるだけだ。風琴は震える声で、浄めるための妖術を唱える。
「うんっ……ん……」
妖力が中で動くせいかあの日の快楽を思い出して思わず声が出る。何をやっているんだ我は。後ろに指を突っ込んでるのは浄める為だ。決して一人でよがる為などではない。自分に言い聞かせて、風琴は中を妖術で浄め続けた。
風呂から上がる頃には、少しのぼせてしまった。これからという時に倒れては意味がない。例の妙薬と一緒に冷たい水を飲み込む。
後は……自室で月夜が風呂から上がるのを待つだけ。それを考えるだけで頬が熱くなる。風琴は自室に戻って月夜が来るのを待ちながら、じわじわと蝕む妙薬の火照りに身を任せていた。
四半刻経った頃、足音が聞こえて風琴は閉じていた目蓋を開いた。
「うっ……」
熱い。あの子の気配を感じただけで疼いてしまう。横になっていた風琴はなるべく衣が素肌に擦れないよう身体を起した。
「師匠、入ってもよろしいでしょうか」
「……入れ」
そっと障子が横へとずれる。隙間から入ってきた風が肌を撫でて、風琴は震える。そんな風琴に気づいたのか、すぐに月夜は少しの隙間無く障子を締めると面を取った。今回の事で緊張しているのだろう。頬が赤くなっているのが可愛らしい。
「月夜、何度も聞いているが最後に問う。契りが終われば人間に戻れなくなるが、本当にそれでもよいか」
「はい、勿論です。貴方様の弟子として、何処までもおそばにいましょう」
選択肢を与えたのはこれからもう戻れなくなるから。だが月夜の意志が揺らぐことは1度として無かったので少し安堵している。風琴は笑みを浮かべると、腕に刃を当てた。
「師匠、何を……!?」
これは大切な儀式なのだと、月夜を目で制す。肌が裂けた箇所から溢れる血を吸う。鉄臭い味が口の中に溜まると、月夜の目の前に座る。それで月夜も分かったのだろう。我を引き寄せると、唇を開けた。形の良い唇に己の口を重ねると、血を注ぐ。
「ん……ぅ……」
血を飲んだからと天狗になれる訳ではない。我の一族では、人と天狗が師弟として強い心の結び付きを得た上で、血や体液を摂取させることで人を天狗にすることが出来る。風琴は血を与えながら、己を包む月夜の布越しの温もりに身を委ねていた。
風琴は口の中の血を何度か与えると、己の舌に絡みつきそうになった舌を避けて唇を離す。互いに唇から顎まで血で染まった姿に、何故だが二人とも昂りを覚えていた。ごくりと生唾を飲み込む月夜ににやりと笑うと、風琴は帯をほどいていく。
露になった前側は妙薬のせいか、扇情するかのようにほんのりと火照っており、中心部はとろとろと蜜を溢れさせながら勃ち上がっていた。
「月夜、此処が咥えられるものなら咥えてみろ」
普段は挑発などの真似をしない師匠が挑発的に艶やかな笑みを浮かべて誘っている。それを拒む術など若い月夜には無かった。
月夜は風琴の股に頭を近づけると、固くなっている幹に指を添える。
「あっ……ん……」
指が触れているところから熔けてしまいそうなくらい熱い。思わず逃げてしまいそうになった風琴の腰を月夜は反対の手で掴むと、蜜を溢れさせている先端に口づけた。
「くぅ……う……んっ……」
自分の魔羅が月夜の頭で見えない為、予測できない快楽に風琴は袖を噛んで耐えている。
「んぅ……あ……ん……」
蜜を指に絡めて幹を擦られながら、先端や幹に口づけの雨が降る。その度に、甘い痺れが何度も身体に走る。駄目だ。月夜が咥えるまで耐えなければ、月夜が天狗の身体になるのが遅くなってしまう。
風琴は足の爪先に力を入れて耐える。月夜の愛撫に視界がチカチカとしてきた頃、柔らかく熱い物に魔羅が包まれた。
「ひああ………!? や……っ……あ……」
ひくりと風琴は背を仰け反らせる。咥えられたと理解したのは、腎水を飲み込む音が聞こえてきた時であろうか。不味いものらしいから、噎せるのが普通ではないのか。喉が鳴る音を聞きながら、風琴は耳まで赤くなる。
「月夜……不味いなら……水でも飲むか……?」
「いいえ。師匠のは甘露ですよ」
一度唇を離した月夜が顔を上げて笑みを浮かべる。口の端から溢れる己のそれの卑猥さに、風琴は自分の物がまた熱くなったのを感じた。
「では、師匠の甘露が尽きるまで口にさせて頂きますね」
「へ……? 月夜、我はもう少し休み……ひああぁ__!?」
達したばかりの物を咥えられ、風琴は声にもならぬ嬌声を上げる。いやいやと月夜の頭を離そうとすれども、妙薬が全身に回ってろくに力が入らない身体。むしろせがむように頭を包んでいるとしか、月夜には感じられない。
「舐めるな……やあっ……あ……達った……ばか……り……ああっ__!!」
達したばかりの魔羅はあまりにも敏感で、快楽が拷問を思わせる。風琴は涙を溢しながら、強い快楽にもはや声が抑えられなくなっていた。
第一、月夜と肌を重ねるまで他者と肌を重ねるどころか、自慰すら滅多に行ったことが無かった風琴にとって、咥えられるのは堪え難き快楽だ。月夜を煽った余裕は何処へやら。風琴は腰が砕けて、されるがままになるしかない。
「やらっ……もう……んんぅ__!!」
舌が幹から先端にかけて舐め上げられる感触に、びくびくと震えて達する。これは早漏と言われてもおかしくないのではないか。殆どの思考が快感に侵されている中、残った理性が情けないと罵倒してくる。
「つ……月夜……待て……おかしくなる……」
真っ直ぐな髪を乱し、濡れた瞳で訴える。だが月夜は笑みを浮かべるだけだった。
「師匠、私は貴方をお守りできるように、一刻も早く天狗になりたいのです。ですからあと1回、貴方の甘露を恵んでは頂けないでしょうか」
あと1回だと!? 今ですら限界なのに、あと1回を所望するのか!? これから肌を重ねるだぞ。それまでこの従順な顔をした獣のような弟子に身を貪られるのに、達してしまって死にはしないだろうか。命の危機を覚えていたが、月夜の上目遣いには勝てぬ。
「あと……1回だけだからな」
「有り難き幸せ」
月夜は微笑むと、先端の部分を舌で撫ぜた。風琴は目を瞑って押し殺しきれない息を吐く。
「くっ……ん……ひぅ……ぁ……」
急かすような口淫でなく、包み込むようなぬくもりに風琴は湯に揺蕩う錯覚を覚える。風琴の強張りが解けたところで陰嚢を揉まれた。
「はっ……あ……そこ……ん……んんっ……」
まるで搾り取ろうとしているよう。こんなに我が弟子は欲しがりだったのか。それとも妙薬で我がおかしくなっているのか。風琴は月夜の頭を撫でながら、のぼりつめる快楽に身を任せる。
「あ……ああっ……んんん___ッ……!」
風琴は仰け反らせると、甘い悲鳴を喉から溢れさせる。風琴は魔羅を解放させられると、びくりと震えて後方に倒れた。ぜいぜいと肩を上下させながら視線を頭上に移せば、馬乗りになっている月夜。風琴はいよいよその時が来たかと悟る。
「さっさと……我を抱け……」
お前が欲しいのだ。快楽にぐずぐずに蕩けているというのに、風琴は強がるように妖艶な笑みを浮かべ、月夜を煽り立てた。
月夜はすぐにでも我の身体を貫きたいという顔をしていたが、頭を振る。
「いいえ……。そのまましては師匠がお辛いでしょう。ですので慣らします」
月夜は丁子油を手に取って手を濡らすと、我の後孔に塗りつけていく。
「うっ……ん……」
前回は我が出した腎水であったが、今回は丁子油か。冷たさに身体が震える。丁子油は剣の手入れに使うがまさかそちらの剣を用いる時も……って何を考えているのだ我は。
普段の我なら考えない下世話な考えが浮かんで風琴は頭を横に振る。今は此方に集中しなければ、風琴が月夜の眼に視線を戻すと、月夜が不安そうな顔で見つめている。
「大丈夫だ。気にするな」
我が頭をぽんぽんと叩くと、月夜は我の後孔に指を入れた。
「んんっ……ふ……う」
あの時のような痛みは少ない。ただ、異物感にはどうにも慣れない。風琴は何ともいえない気持ち悪さを指を噛んで堪える。すると月夜がそっと指を離して舐めた。白を纏った赤い舌が指を舐める様は卑猥で、風琴は頬が熱くなる。
「師匠、美しい指から血が出てしまいます」
つまりは口づけをしろと言うことか。まあいい。そちらの方が情事らしい。風琴が固く噛んでいた唇を開けると、月夜は己の唇を重ねた。
「ふ……んんっ……ん……」
後孔を慣らしていない方の手の指と指を絡めて後孔をいじられる行為に耐える。
今回は恐怖が無いからか、以前より気持ち悪さがすぐに無くなる。少し苦味と青臭さを感じるがそんなのは些末なことであり、わざわざ我のを飲んだ月夜に対して失礼だ。むしろずっとこうして居たい。
風琴があまりの心地好さに眠りそうになると、ある部分に指が触れた。
「うっ……!? んうっ……ふ……」
眠りかけていた意識が一気に覚醒する。強い快楽に嬌声に声を上げようとしても、舌を絡め取られて呻きが零れるだけ。代わりに腰を揺らす風琴の様子に気づいたのか、月夜は指を2本、3本と増やして中を解していく。
「んっ……ん………う……あ」
一度触れただけで指を増やしてからは、そこに触れようとしない。わざと避けているのか。もどかしさに風琴は月夜を濡れた瞳で睨む。それを知ってか知らずか、月夜は指を一気に引き抜いた。
「ひああ……っ……」
一気に引き抜くことは無いだろうが! 唇を離された風琴は涙を目尻から拭わぬまま月夜を睨む。
「散々……我を……焦らしおって」
「師匠だって私を煽ったでしょう。仕返しです」
月夜は笑みを浮かべると、帯と褌を解く。そこには固く勃っている魔羅。
やはり我のより大きくて、男としての劣等感と抱かれることに、少し恐怖のような何かが……。
いやいや、そんなことを考えては駄目だろうが。風琴は覚悟を決めると、月夜の頭の後ろに腕を回して引き寄せる。
「この欲張りな弟子め。早く我を満足させろ」
「師匠の仰せのままに」
風琴と月夜は互いに顔を見合わせて笑みを浮かべる。風琴は後孔に触れる熱に目を細めた。
「月夜……来い」
風琴の囁きに応じて、熱の楔がゆっくりと風琴の身体に押し入っていった。
「ぐ……うあっ……あ……」
痛みと異物感は多少はあるが、初めて肌を重ねた時程ではない。それでも顔をしかめてしまうので、心配そうに月夜が見下ろしていた。
「師匠……お辛いなら私の肩を噛んでください」
「いや……でも……」
天狗の力は人間以上だ。噛むどころか、噛み切るようなことがあってはない。そう伝えると、月夜はきょとんとした。
「ですが、師匠。妙薬を口にされた師匠のお力は人間程も無いのでは」
「……すっかり忘れてた。すまぬが肩を借りるぞ」
月夜が頷いてから、月夜の肩に歯を立てる。奥へ奥へと楔が入っていく感覚が良く分かる。一度奥まで入れられたので腹を破る心配は無いが、太さと長さは凶器そのものではと思ってしまう。逞しい肩を噛んでいると、頭上から声がした。
「師匠、奥まで入りましたよ」
「あ……ああ。我にも分かる」
何せ、中で脈を打っているのだから。その度に甘い快感が走るので、指先に力を込めて耐えている状態だ。本格的に動かされては、もう声を抑えられないだろう。
「やっと満たされた気がする」
「私もです。師匠の中はとても気持ち良くて熱い」
熱い吐息で囁かれたものだから、思わず締めつけてしまう。魔羅の感触をより鮮明に感じてしまい、風琴は思わず腰を動かした。
「あんっ……っ……」
「うっ……師匠……突然動かさないでください……今、耐えているのに……」
「お前が耳元に息など掛けるからだ! ……んっ……動きたいなら動くといい。我も……その……少しくらいなら……あっ……乱暴にされたい……」
あの日以来、寝床に入る度に乱暴に身体を抱かれる記憶ばかりを反芻しているだから。月夜は我の言葉に未経験な少年のように顔を赤くして照れる。
「師匠……貴方をお慕い申し上げております……」
月夜は我の腰をそっと掴むと、腰を軽く引いてから一気に打ち付けた。
「うああっ……! んあっ……あっ……」
激しい律動に合わせ、風琴が嬌声を上げる。普段は凛とした佇まいの男の萌葱の瞳が快楽の涙で潤み、濡羽の髪が乱れた様は妖艶そのもの。組み敷く月夜は、前回のような過ちを犯さぬように自分の快楽よりも、なるべく風琴の好い所に当たるように抜き差しを繰り返す。風琴はその度に脳の奥で火花が散っておかしくなりそうになった。
「ひあっ……あん……ああっ……」
言葉など紡げない。聞こえるのは互いの荒い息と激しい水音ばかり。今はこの身体に走る快楽が心地良いことと、目の前の月夜が無我夢中で我を求めてくれるのが嬉しいことしか分からない。
「いっ………ああ__っ……それっ……やああっ__!」
ぎりぎりまで引き抜かれて一気に奥を抉られ、風琴は身を捩る。臓腑が壊れないだろうかという激しさに、月夜にしがみつくしかない。月夜は爪を立てられる痛みに思わず笑みを浮かべた。
「師匠……気持ち良いですか……?」
「い……いい……ああっ………はっ……うあ……」
月夜の言葉すら意識しないと聞こえないくらい快楽に溺れている。月夜の熱をうまそうにしゃぶる後孔が浅ましいとは思わなくもないが、心も月夜を求めているので羞恥も朧気となっている。
「月……夜……す……き……っ……もっと……ほし……ああっ__!?」
無意識に風琴が舌足らずにそんな言葉を吐いたのが悪かったのだろう。腰を掴む月夜の手に力が入ると、獣のように穿ち始めた。
「やああっ__!? 月夜っ……おか……しく……なっちゃ……ああっ__!」
「狡い師匠が……悪いの……ん……です……っ……。おかしく……なってください……」
性急に身体を揺さぶられ、風琴はそろそろ昇りつめることを悟った。もはや何も考えられない。考えたくない。ただ愛しい相手とひとつになっている事実が幸せなことしか分からない。
「あっ……ああっ_……やっ……ああぁ___!!」
「くっ……」
一番身体の深い所を抉られて、風琴は嬌声を上げながら中心から白濁を吐き出した。朦朧とした意識の中で、月夜の熱い飛沫が中を濡らすのを感じる。
ああ……これが愛しい奴と肌を重ねることか。風琴は目を閉じて、月夜を強く抱き締めた。
此度は妙薬の量を減らしていたおかげか、気絶することもなく菓子を肴にして酒を飲んでいた。月夜にとって初めての酒な上に、天狗の酒だからだろう。かわらけ一杯で顔が赤くなったものだから、今は水をちびちびと飲んでいる。
「にしても、我を組み敷いた時のお前は熊のようだったな。まさか、今まで厳しくした鬱憤か何かか」
さりげなく聞いてみると、月夜はぶんぶんと首を横に振った。
「そんな訳ありませんよ!? ただ、その……師匠への愛しさが暴走してしまい……申し訳ございません」
「そうか……」
愛しさが暴走した結果、あんなに激しく求めてきたのか。風琴は頬をほんのりと赤く染める。
「それで、どうだ。体調がおかしくなったりしないか」
「今のところは何も。私はいつ天狗になれるのでしょうか」
月夜は不安そうに自分の身体を見下ろす。一度交わっただけでは、不完全な天狗のままな上に、身体も変質しない。頭を撫でて大丈夫だと告げた。
「今から10日程後だな。霊力が妖力に変化し、妖力で翼を形にすることになる。それまでは、水や我の体液を摂取することと交わること以外は1日の内、半日以上眠り続けるな」
故に実質半月近くかかる。今のところ、人間達との話し合いや妖異との戦は1ヶ月以上先であろうから問題は無いだろう。あるとすれば、我が抱かれる側だと天狗どころか人間に露見する可能性があることくらいか。
「……ということは、天狗に成るまで師匠と交わることに……?」
「……そういうことだな。明日からは我の腰、壊すなよ」
明日、起き上がれるだろうかと不安になるくらい抱かれたのだ。毎日激しく求められたら流石の我でも泣く。
「承知いたしました、師匠」
「分かったならいい。……ところで、まだ勃っているようだが、したいのか」
月夜は途端に耳まで赤くなると、股間を隠した。いやいや、隠しても遅いだろうが。風琴は溜め息を吐いた。
「いえ、これは……その。いや、勃ってたとしても師匠は腰を壊すなと仰いましたし」
「『明日から』と言うたであろう。つまりそういうことだ」
酒瓶の残りを一気に飲み干すと、風琴は妖艶に笑う。月夜は意図を悟り、生唾を飲み込んだ。
「本当によろしいのですか」
「今宵ばかりは無礼講だ。今だけは好きに求めるといい」
風琴は締め直したばかりの帯を解く。するりと衣が落ち、障子越しの月光が風琴の白磁の肌を惜しみ無く照らすさまは、艶やかどころか神々しさも見る者に与える。風琴が腕を広げると、花に誘われた蝶の如く月夜がその胸に飛び込んだ。
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