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未熟者と蛇の愛し子
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焦りを蛇は見逃さず
次の日、木刀を用いた空中戦の鍛練を行ったが、結果は惨敗。翼の動きを意識しながら木刀を使うのは存外難しかった。この日も夕方まで付き合ってもらったが、師匠の相手としてはあまりにも雑魚同然であっただろう。月夜は怪我の痛みと不甲斐なさに苛まれていた。
鍛練が終われば全身擦り傷まみれ。情けないと自分で手当てしようとした月夜であったが、風琴に怪我の手当てをしてもらうことになった。
「くっ……う……」
薬は人間の物よりも効果絶大。難点は、傷に沁みることだけ。諸肌脱いだ月夜に風琴は遠慮無く薬を塗る。昔は傷の手当てに泣いていた月夜だが、流石に大人になると奥歯を噛んで痛みに耐えていた。
「まったく、こんなに怪我するまでしないでも良かったのではないか」
「いいえ……っ……早く強くなりたいのに怠けている余裕など……ございません」
でなければ貴方の横に立つ資格はない。月夜が思いつめた表情をしているのに気づいた風琴は月夜の手を取った。
「だからと言って血豆が出来るまでやりおって。ここなんて豆が潰れておるではないか」
風琴は塗り薬を取り出すと、月夜の手にそっと塗り込む。その手つきが優しく、こそばゆさまで覚えた。
「明日から紅月か六合殿に鍛えてもらうのだろう。次の日に木刀が握れなくなるまでの無理などするな」
それはそうだ。今日は少し闇雲過ぎた。月夜が申し訳ございませんと頭を下げると、気にするなと風琴は月夜頭を軽く叩く。
「一度初心にかえってみると良いかもしれぬな。前に渡した戦術書だけでなく、我が持っている少し難しい書を渡すから、読んで鍛練の糧にするといい」
師匠は私の手に包帯を巻くと、天狗の長達との話し合いにと出ていく。風琴の足音が遠ざかると、月夜は目頭が熱くなった。
自分が情けない。貴方のお力にもなりたいと思えば思うほどに焦りで空回りしてしまう。こんな役立たずな私など……。袖で顔を隠して男泣きしていると、師匠とは違う足音が近づいてくる。どうしてこんな時に……。月夜は慌てて面を被った。
「月夜殿、今お時間よろしいですか」
声の主は、友である泰重。そういえば師匠と契りを交わしてから、彼に会っていない。師匠によると、もうすぐ山を降りて故郷に戻るそうだから、別れの挨拶に来たのだろうか。
「勿論よろしいですよ。どうぞ中へ」
月夜が促すと、泰重がそっと部屋の中に入ってきた。この方ともしばらくは会えなくなるのか。初めて出来た友ということもあり、月夜は寂しさを覚える。
「月夜殿、お久しぶりですね」
「そうですね。師匠から、もうすぐ発たれると聞いておりましたのに、中々顔を合わせず申し訳ございませんでした」
天狗になるまでの半月はともかく、昨日など手合わせをすることで頭がいっぱいになり泰重殿に顔を合わせるのを忘れてた。折角友になってくださったのに、なんという失礼なことをしてしまったのか。月夜が頭を下げると、泰重は慌てて首を横に振った。
「いいえ、私などに頭をお下げにならないでください。それにしても月夜殿。天狗になられたのですね。……おめでとうございます」
「ええ、ありがとうございます」
陰陽師と言うだけあって、すぐに気づいたようだ。祝われたのが嬉しいと思いつつも、自分の不甲斐なさを思い出して月夜の瞳が翳る。
「月夜殿、何やら落ち込んでおられるご様子ですが、いかがなさいましたか」
この人に話しても良いのだろうか。……別に素性を話すわけでもなし、一人で抱え込んでも仕方ないだろう。
「実は……その……」
月夜はぽつりぽつりと今悩んでいることを話す。泰重はそれを真剣な面持ちで聞いていた。
「成る程、そのようなことが。私も未熟者ですので、気持ちがよく分かります。しかし風琴殿が仰ることも正しい」
「そうなんですよ……。頭では理解しているつもりですが、それではいけない気がするのです」
嫌な予感ばかりがするのにそれを防ぐ術も、守れる実力も持たない。母のように師匠を喪いたくないのに。
「貴方が仰るように、紅月殿に勝てる程の実力を身につければ、大丈夫でしょう。何と言ったって、紅月殿は土御門と同盟を結んだ術師の中で一番お強いと言っても過言ではない方ですから。結局はただ目標に向かって足掻くことが一番です」
「足掻くことですか。……そうですね。それしかないですよね」
確かにくよくよとこの場で悩むよりも、前に進むしかない。自分で言ったくせに何も出来ないと悩んでいた自分が馬鹿のようだと気づいた。
「そうですよ。それに月夜殿は、人間の頃の霊力よりも妖力が飛躍的に強くなっておられるのです。勝ち目が全くないということはないと思います。よっぽど妖力との相性が良かったのか、風琴殿と強い絆で結ばれていたのでしょうね」
月夜は思わず頬が熱くなる。自分では気づかなかったが、そんなに妖力が強いのか。師匠の力がこの身に宿っているのだ。悲観になってはいけない。
「ありがとうございます。貴方のお陰で元気が出ました。やれるだけやってみようと思います」
「それは良かったです。月夜殿、私は応援することしか出来ませんが、がんばってください」
応援の言葉など滅多に貰うことなどないせいか、月夜は胸の奥と目頭が熱くなる。
「はい……ありがとうございます」
月夜は頭を下げると、面の下で静かに涙を流した。
とうとう紅月殿と手合わせをする日を迎えた。紅月殿と六合殿以外は山を下るので、見送りに出る。本当は山の下までお送りしたかったが、危険だからと止められてしまった。
「泰重殿。どうかお元気で」
「月夜殿こそ、また近い内にお会い出来るのを楽しみにしております」
それは、紅月殿から一本でも白星を取って師匠と共に来いと言うことだろうか。泰重なりの励ましの言葉に月夜は目を細めて微笑む。
「ええ……また」
再び会う頃にはもう少し立派になった姿を貴方に見せたい。寂しいが、泰重との別れに悲しみは無かった。
「という訳で、今日から某が貴方の指南をいたします。貴方も知っての通り、私は人間ですので、空中戦には東雲殿と天狗の長のご側近である松風殿が交代で相手をすることになりました。今日は松風殿ですね」
「お初にお目にかかる」
紅月殿の紹介とともに松風という青年が頭を下げる。私も慌てて頭を下げると、ちらりと松風殿の様子を観察した。天狗面の奥から見える双眸は何処までも静かである。
「では、まず某から行きますね。月夜殿、準備をお願いします」
「はい」
月夜は木刀を握り締める。目指すは白星。勝ち目が無くとも足掻くしかない。互いに得物を構えると、月夜は目の前の者を倒すべく駆け出す。そんな月夜を紅月はにやりと笑みを浮かべるだけであった。
結果は1回も白星取れぬまま終わった。月夜が疲労困憊で地べたに倒れていると、紅月がしゃがんで月夜を微笑を浮かべたまま見下ろす。
「やはり妖気が強くなっておりますね。殺気に臆病なのは変わりませんが、怯む時間が短くなっているのと、木刀に迷いが減っているのは、大きな成長ですよ。ちょいちょい某も危うかったです」
「どこが……ですか……。それに師匠が出すなと言っていた神気までなんて……」
「そうですか? 貴方が可愛いからうっかり」
紅月殿はかわいらしい表情で誤魔化す。泰重殿は陰陽師だから紅月殿のこのような一面も理解しているのだろう。その上で想いを寄せているのなら、意外と剛胆だなあと苦笑いするしかなかった。
午後からは空中においての闘いの鍛練。松風殿は最初から手合わせをしようとはせず、飛び方の指導に重きを置いての指導であった。
「初めてにしては中々ですね。では、飛びながら矢で標的を射つ特訓に入りましょう」
一刻経ってから紅月殿が用意した動く的を使っての訓練。風の流れを読んで矢を放つのは難しい。飛ぶ時以上にコツを得られず一本も当たることがない。練習用の矢が無くなる頃には、腕が鉛のように重くなっていた。
「次は手合わせに入りましょう。矢を放つ時を思い出しながら風を読んでみてください」
手合わせに移る前ににこのようなことを言われて必死で風の流れを読む。書物を読む時とは全然違い、身体の五感全部を使っての集中するのは難しい。容易に風を読んで空中を舞う師匠の何とすごいことか。
月夜は松風の刃を受け流したり避けるので精一杯。妖力が無くなって着地した時には、船酔いのような吐き気が生じてしまった。月夜はまだまだ練習したかったが、体調的にもうこれ以上動けない。
「では今日はその辺りで。月夜殿お疲れ様でした」
紅月殿と松風殿は頭を下げてその場を去っていく。紅月殿と再び手合わせをしてみて、完全に勝機が無いわけではないことを悟った。
だが空中での戦闘はまだまだ自信がない。不幸中の幸いは、松風殿の指導が良いこと。ちゃんと彼が言う通りにすれば飛べる気がする。まだまだ自分の伸び代があると信じたい。月夜は師匠がいるであろう部屋に視線を向けた。
その後、汗だくな月夜が着替えていると、師匠が部屋に入ってきた。何やら覇気がないようだがどうされたのだろうか。月夜がちらりと横目で視見ると、風琴が面を取る。
「……月夜、口吸いしろ」
さりげなくとんでもない言葉が耳に入る。今何と仰ったのか!? 月夜は驚いて身体ごと振り返った。
「よろしいのですか……?」
「ああ、してくれ」
どうやら本当に元気が無いようだ。前に似たようなことがあったが、その時は私からせがんだっけ。体力が限界とはいえ、取り繕う余裕のない師匠のお気持ちを汲んで先に言えなかった自分が情けない。
「汗臭いかもしれませんが、よろしいですか」
「何度も肌を重ねておいて、今さら気にするようなことでもなかろう」
まあそうかもしれないのだが。月夜は両膝を着くと、風琴の肩に手を置いて、唇を重ねる。そして舌を滑り込ませた。
「んっ……ふ……あ……」
妖力が殆ど無いせいか、口内や唾液が甘く感じる。師匠が目を瞑って私の口吸いを受け入れてくださるのが嬉しくて舌を深く絡める。
ああ、本当に師匠が愛おしい。このまま組み敷いてしまいたい。口吸いをしている内に、そんな邪なことが一瞬頭に浮かんだので、月夜は唇を離した。頬を紅潮させてふらりと私の肩に額を乗せる師匠を抱き締める。
「どうされたのですか。お疲れのようですが」
「戦の話し合いなど久しぶりでな。特に陰陽師を交えての話し合いなど未知で、初日から面倒なことになっている。話し合いどころか、同胞と陰陽師で言い争いになりかけた」
そういえば、師匠や天狗の長だけでなく天狗で戦を経験した者も話し合いに参加しているのだったな。師匠や天狗の長と違って完全に警戒心を拭えていないからそうなっているのだろう。
いつも矜持が高く、説得される側の師匠が話し合いで悩まれるとは相当なもの。それに話し合いは康重殿でなく康重殿のお父上で、師匠が用いた術のように鏡越しで話し合われるそうだ。
実際に天狗の元で滞在された康重殿ならばともかく、天狗は人前に姿を表していないのだから互いに誤解や偏見も拭えないのかもしれない。
「お前が疲れているのは承知しているが、二刻後……その……良いか? お前の腕の中なら悩みを忘れられる」
師匠が恥ずかしそうに小声で言う。そんなに恥ずかしがらなくても、貴方が求めてくださるのならいつでも大丈夫なのですが。そう返答すると、怒られそうなので月夜は微笑む。
「はい。承知いたしました」
風琴は月夜の返答にありがとうと小さく呟いた。
その夜、約束通り月夜と風琴は肌を重ねる。こうして互いの熱を感じている時だけは、互いのこと以外を考えなくて済む。
「月夜……っ……ああっ……気持ち……いい」
「師匠……」
二人とも疲労困憊だというのに、情交の激しさはいつもとさして変わらない。
快感のあまりに潤む萌葱の瞳や掠れた声が愛おしい。誰にも貴方を渡したくない。貴方は私だけのものだ。そんなことを言えぬ代わりに、愛しい師匠に熱の楔で何度も穿った。
あまりにも夢中になっていたせいだろう。寝息を立てる師匠の身体を清めている時になって雨が降っていることに気づいた。
あらかじめ桶に水を汲んでいて良かったと、手拭いの水を絞る。もう梅雨かだったな。紅月殿は雨の日でも、鍛練はしますよと仰っていたので明日も鍛練はあるだろう。むしろ悪天候で鍛えられた方が実戦でも臨機応変に対応できるので良い。
ただ雨の日は妖力の消費が激しく、回復も遅いそうだから、師匠に情交をお願いする日が増えるかもしれない。
月夜はそっと風琴の夜着の帯を締める。そして月夜は風琴の頬を撫でた。師匠はあまり寝相がよろしくない。
私が幼い頃は、寝ているときに腕が飛んできたり抱き枕にされたものだ。それでも、傍にいつもとは違って幼げな寝顔があったので、子供であった私は音が聞こえるのではないかと思うほど心の臓がうるさく鳴り響いていたのを覚えている。
前と変わらず寝顔は幼く可愛いらしい。月夜が愛しさのあまり頬に軽く口づけをすると、風琴が呻いた。
「ははうえ……」
風琴の口から零れた言葉に、思わず月夜は固まる。……そういや、師匠は落ちた星を祖としているが、両親はいるのだった。
お母上が幼い頃に亡くなり、お父上は師匠からすれば最近亡くなったことは聞いてはいるが、師匠はあまり話したがらない。幼い頃は甘えん坊だったらしいから、思い出したくないのだろう。徐々に弱い一面を見せてくださっているが、情交以外では師匠が泣くところなど見せてくださらないのだから。
月夜はそっと風琴の手を握る。私はまだ貴方のことで知らないことがたくさんある。それでもいい。貴方が話してくださるまで待ちましょう。
月夜は風琴の寝顔を眩しげに目を細めて見守るのであった。
それからは似たような日々が続いた。昼間は風琴は戦についての話し合いをし、月夜は血の滲むような鍛練を積む。夜になれば、互いを求めて肌を重ね眠る。
毎日のように情交をするのは幸せだが、以前の生活が恋しくなる。いつも2人で穏やかな日々を過ごし、たまに東雲殿が来るくらいの静かなものであった。
だが今や昼間は他人と過ごし、顔を合わせる時間すらない。同胞達でも言い争いになり、我と長は頭を抱えつつ話をまとめなければいけない。
何が楽しくて好きでもない同胞達と長時間同じ部屋にいなければならないのか。苛立ちを向けることなど出来ない。
なので風琴は、月夜の腕の中にいる時だけは全てを忘れられるので、それだけを1日の楽しみとして、深刻かつ不愉快な話し合いでなんとか冷静な頭で臨んでいた。
その日の風琴は話し合いが終わると、胡座をかいて縁側で茶を啜る。日が落ちるのが遅くなっている。そういえば今は梅雨だ。雨の中でも月夜は鍛練を行っているらしいが大丈夫なのだろうか。熱は今のところ無いようだが、念のために熱冷ましの薬の用意だけしておいた方がいいだろうか。そんなことを考えていると、紅月がふらりとやって来た。
「風琴殿、お疲れ様です。ところで、横に座ってもよろしいですか」
「別に構わん。座りたければさっさと座れ」
紅月はにこりと微笑むと、風琴の横に座った。天狗となった月夜の相手をしているせいか、以前に会った頃よりも霊力が少ない。
「最近の月夜殿の様子ですが、天狗になる前よりも霊力というか、妖力や身体能力は向上しておられるようです。鍛練で日に日に妖力の使いどころや、身体の動かし方も良くなってきています。ただ殺気に対しての怯みはまだ消えていないですね。それと焦りが見えますので、その隙を見て徹底的に鍛えております」
やはりそうか。月夜は我を守りたいようだが、我はその気持ちだけで十分だし、あやつが殺気を克服するまでは戦場にやりたくない。
「愛しいからと言って、我はあやつを無駄に甘やかすつもりはない。これからも厳しく鍛えてやってくれ。それと……月夜が殺気を克服するまでは、負けるなよ紅月」
「勿論ですよ。某は大蛇の子なのですから」
紅月は我に顔を向けるとにやりと笑って見せた。
話し合いが始まって半月以上過ぎた頃、話し合いの休憩がてらに離れた位置から月夜の稽古の様子を観察してみた。遠くからでも分かる程激しい鍛練。
以前よりも月夜の身体のキレが良い。妖力の使いどころも他の天狗と負けず劣らず上手く使いこなせている。それを上手く回避しつつ神気が溢れる程攻めを繰り広げる紅月も中々の者。
相手にはしたくない。しばらく風琴は感心しながら見ていたが、あることを思い出した。
「……我、鍛練中の神気の解放の許可など出しておらぬよな」
あやつが使う蛇神の神気は毒と炎。相手のみならず使用者にも魂の火傷となり、毒となると思ったが大丈夫なのか。
いや、蛇神の魂の分御霊なのだから制御は出来るであろうが、いくらなんでも互いにとってまずかろうに。しかし月夜が寝静まった後や情事の最中に、身体に以上がないかこっそり調べているが今のところ異常無しだ。
月夜も神気を操る相手に鍛練をしてもらって、結構上達しているようだしこのまま見守るか。
「ご隠居、長達がお呼びです」
長の側近に呼び出されて腰を上げる。手合わせがどうなるか見てみたかったが仕方ない。後ろ姿引かれる思いがあれど、若隠居として勤めを果たそうと部屋に向かった。
その日の夕方、また紅月が現れる。うげっと苦い顔を面の下でする我に紅月はひらひらと手を振った。
「昼間、某達の姿を見ておられたでしょう。どうでしたか、お弟子さんの鍛練の上達ぶりは」
「まあ悪くはない。遠目から見ても怯む様子はかなり減ったな」
そうでしょうと、紅月は頷く。まるで教え子を取られた気分に風琴は少しむっとなった。
「だが鍛練中に神気を放出しても良いのか。お前にとっても苦しかろうに」
「あの程度なら威嚇同然ですので平気ですよ。それに、蛇にも勝る恐怖など少ないでしょう」
つまり月夜の恐怖心を鍛えるためにわざと放出していると。ありがたいが、少し申し訳なくなる。風琴は用意していた物を部屋から取ってくると、紅月に渡した。
「おやこれは……。酒ですか」
「天狗の薬酒だ。味も中々の美味であるから、滋養の為に飲んで眠れ」
ぶっきらぼうに言い放つ風琴に紅月は微笑んで受け取る。
「やはり貴方は天狗の中でお優しいですね。有り難くいただきます」
別に優しくなどしてないのに、そんな風に笑うな。風琴はふんとそっぽを向いた。
次の日、木刀を用いた空中戦の鍛練を行ったが、結果は惨敗。翼の動きを意識しながら木刀を使うのは存外難しかった。この日も夕方まで付き合ってもらったが、師匠の相手としてはあまりにも雑魚同然であっただろう。月夜は怪我の痛みと不甲斐なさに苛まれていた。
鍛練が終われば全身擦り傷まみれ。情けないと自分で手当てしようとした月夜であったが、風琴に怪我の手当てをしてもらうことになった。
「くっ……う……」
薬は人間の物よりも効果絶大。難点は、傷に沁みることだけ。諸肌脱いだ月夜に風琴は遠慮無く薬を塗る。昔は傷の手当てに泣いていた月夜だが、流石に大人になると奥歯を噛んで痛みに耐えていた。
「まったく、こんなに怪我するまでしないでも良かったのではないか」
「いいえ……っ……早く強くなりたいのに怠けている余裕など……ございません」
でなければ貴方の横に立つ資格はない。月夜が思いつめた表情をしているのに気づいた風琴は月夜の手を取った。
「だからと言って血豆が出来るまでやりおって。ここなんて豆が潰れておるではないか」
風琴は塗り薬を取り出すと、月夜の手にそっと塗り込む。その手つきが優しく、こそばゆさまで覚えた。
「明日から紅月か六合殿に鍛えてもらうのだろう。次の日に木刀が握れなくなるまでの無理などするな」
それはそうだ。今日は少し闇雲過ぎた。月夜が申し訳ございませんと頭を下げると、気にするなと風琴は月夜頭を軽く叩く。
「一度初心にかえってみると良いかもしれぬな。前に渡した戦術書だけでなく、我が持っている少し難しい書を渡すから、読んで鍛練の糧にするといい」
師匠は私の手に包帯を巻くと、天狗の長達との話し合いにと出ていく。風琴の足音が遠ざかると、月夜は目頭が熱くなった。
自分が情けない。貴方のお力にもなりたいと思えば思うほどに焦りで空回りしてしまう。こんな役立たずな私など……。袖で顔を隠して男泣きしていると、師匠とは違う足音が近づいてくる。どうしてこんな時に……。月夜は慌てて面を被った。
「月夜殿、今お時間よろしいですか」
声の主は、友である泰重。そういえば師匠と契りを交わしてから、彼に会っていない。師匠によると、もうすぐ山を降りて故郷に戻るそうだから、別れの挨拶に来たのだろうか。
「勿論よろしいですよ。どうぞ中へ」
月夜が促すと、泰重がそっと部屋の中に入ってきた。この方ともしばらくは会えなくなるのか。初めて出来た友ということもあり、月夜は寂しさを覚える。
「月夜殿、お久しぶりですね」
「そうですね。師匠から、もうすぐ発たれると聞いておりましたのに、中々顔を合わせず申し訳ございませんでした」
天狗になるまでの半月はともかく、昨日など手合わせをすることで頭がいっぱいになり泰重殿に顔を合わせるのを忘れてた。折角友になってくださったのに、なんという失礼なことをしてしまったのか。月夜が頭を下げると、泰重は慌てて首を横に振った。
「いいえ、私などに頭をお下げにならないでください。それにしても月夜殿。天狗になられたのですね。……おめでとうございます」
「ええ、ありがとうございます」
陰陽師と言うだけあって、すぐに気づいたようだ。祝われたのが嬉しいと思いつつも、自分の不甲斐なさを思い出して月夜の瞳が翳る。
「月夜殿、何やら落ち込んでおられるご様子ですが、いかがなさいましたか」
この人に話しても良いのだろうか。……別に素性を話すわけでもなし、一人で抱え込んでも仕方ないだろう。
「実は……その……」
月夜はぽつりぽつりと今悩んでいることを話す。泰重はそれを真剣な面持ちで聞いていた。
「成る程、そのようなことが。私も未熟者ですので、気持ちがよく分かります。しかし風琴殿が仰ることも正しい」
「そうなんですよ……。頭では理解しているつもりですが、それではいけない気がするのです」
嫌な予感ばかりがするのにそれを防ぐ術も、守れる実力も持たない。母のように師匠を喪いたくないのに。
「貴方が仰るように、紅月殿に勝てる程の実力を身につければ、大丈夫でしょう。何と言ったって、紅月殿は土御門と同盟を結んだ術師の中で一番お強いと言っても過言ではない方ですから。結局はただ目標に向かって足掻くことが一番です」
「足掻くことですか。……そうですね。それしかないですよね」
確かにくよくよとこの場で悩むよりも、前に進むしかない。自分で言ったくせに何も出来ないと悩んでいた自分が馬鹿のようだと気づいた。
「そうですよ。それに月夜殿は、人間の頃の霊力よりも妖力が飛躍的に強くなっておられるのです。勝ち目が全くないということはないと思います。よっぽど妖力との相性が良かったのか、風琴殿と強い絆で結ばれていたのでしょうね」
月夜は思わず頬が熱くなる。自分では気づかなかったが、そんなに妖力が強いのか。師匠の力がこの身に宿っているのだ。悲観になってはいけない。
「ありがとうございます。貴方のお陰で元気が出ました。やれるだけやってみようと思います」
「それは良かったです。月夜殿、私は応援することしか出来ませんが、がんばってください」
応援の言葉など滅多に貰うことなどないせいか、月夜は胸の奥と目頭が熱くなる。
「はい……ありがとうございます」
月夜は頭を下げると、面の下で静かに涙を流した。
とうとう紅月殿と手合わせをする日を迎えた。紅月殿と六合殿以外は山を下るので、見送りに出る。本当は山の下までお送りしたかったが、危険だからと止められてしまった。
「泰重殿。どうかお元気で」
「月夜殿こそ、また近い内にお会い出来るのを楽しみにしております」
それは、紅月殿から一本でも白星を取って師匠と共に来いと言うことだろうか。泰重なりの励ましの言葉に月夜は目を細めて微笑む。
「ええ……また」
再び会う頃にはもう少し立派になった姿を貴方に見せたい。寂しいが、泰重との別れに悲しみは無かった。
「という訳で、今日から某が貴方の指南をいたします。貴方も知っての通り、私は人間ですので、空中戦には東雲殿と天狗の長のご側近である松風殿が交代で相手をすることになりました。今日は松風殿ですね」
「お初にお目にかかる」
紅月殿の紹介とともに松風という青年が頭を下げる。私も慌てて頭を下げると、ちらりと松風殿の様子を観察した。天狗面の奥から見える双眸は何処までも静かである。
「では、まず某から行きますね。月夜殿、準備をお願いします」
「はい」
月夜は木刀を握り締める。目指すは白星。勝ち目が無くとも足掻くしかない。互いに得物を構えると、月夜は目の前の者を倒すべく駆け出す。そんな月夜を紅月はにやりと笑みを浮かべるだけであった。
結果は1回も白星取れぬまま終わった。月夜が疲労困憊で地べたに倒れていると、紅月がしゃがんで月夜を微笑を浮かべたまま見下ろす。
「やはり妖気が強くなっておりますね。殺気に臆病なのは変わりませんが、怯む時間が短くなっているのと、木刀に迷いが減っているのは、大きな成長ですよ。ちょいちょい某も危うかったです」
「どこが……ですか……。それに師匠が出すなと言っていた神気までなんて……」
「そうですか? 貴方が可愛いからうっかり」
紅月殿はかわいらしい表情で誤魔化す。泰重殿は陰陽師だから紅月殿のこのような一面も理解しているのだろう。その上で想いを寄せているのなら、意外と剛胆だなあと苦笑いするしかなかった。
午後からは空中においての闘いの鍛練。松風殿は最初から手合わせをしようとはせず、飛び方の指導に重きを置いての指導であった。
「初めてにしては中々ですね。では、飛びながら矢で標的を射つ特訓に入りましょう」
一刻経ってから紅月殿が用意した動く的を使っての訓練。風の流れを読んで矢を放つのは難しい。飛ぶ時以上にコツを得られず一本も当たることがない。練習用の矢が無くなる頃には、腕が鉛のように重くなっていた。
「次は手合わせに入りましょう。矢を放つ時を思い出しながら風を読んでみてください」
手合わせに移る前ににこのようなことを言われて必死で風の流れを読む。書物を読む時とは全然違い、身体の五感全部を使っての集中するのは難しい。容易に風を読んで空中を舞う師匠の何とすごいことか。
月夜は松風の刃を受け流したり避けるので精一杯。妖力が無くなって着地した時には、船酔いのような吐き気が生じてしまった。月夜はまだまだ練習したかったが、体調的にもうこれ以上動けない。
「では今日はその辺りで。月夜殿お疲れ様でした」
紅月殿と松風殿は頭を下げてその場を去っていく。紅月殿と再び手合わせをしてみて、完全に勝機が無いわけではないことを悟った。
だが空中での戦闘はまだまだ自信がない。不幸中の幸いは、松風殿の指導が良いこと。ちゃんと彼が言う通りにすれば飛べる気がする。まだまだ自分の伸び代があると信じたい。月夜は師匠がいるであろう部屋に視線を向けた。
その後、汗だくな月夜が着替えていると、師匠が部屋に入ってきた。何やら覇気がないようだがどうされたのだろうか。月夜がちらりと横目で視見ると、風琴が面を取る。
「……月夜、口吸いしろ」
さりげなくとんでもない言葉が耳に入る。今何と仰ったのか!? 月夜は驚いて身体ごと振り返った。
「よろしいのですか……?」
「ああ、してくれ」
どうやら本当に元気が無いようだ。前に似たようなことがあったが、その時は私からせがんだっけ。体力が限界とはいえ、取り繕う余裕のない師匠のお気持ちを汲んで先に言えなかった自分が情けない。
「汗臭いかもしれませんが、よろしいですか」
「何度も肌を重ねておいて、今さら気にするようなことでもなかろう」
まあそうかもしれないのだが。月夜は両膝を着くと、風琴の肩に手を置いて、唇を重ねる。そして舌を滑り込ませた。
「んっ……ふ……あ……」
妖力が殆ど無いせいか、口内や唾液が甘く感じる。師匠が目を瞑って私の口吸いを受け入れてくださるのが嬉しくて舌を深く絡める。
ああ、本当に師匠が愛おしい。このまま組み敷いてしまいたい。口吸いをしている内に、そんな邪なことが一瞬頭に浮かんだので、月夜は唇を離した。頬を紅潮させてふらりと私の肩に額を乗せる師匠を抱き締める。
「どうされたのですか。お疲れのようですが」
「戦の話し合いなど久しぶりでな。特に陰陽師を交えての話し合いなど未知で、初日から面倒なことになっている。話し合いどころか、同胞と陰陽師で言い争いになりかけた」
そういえば、師匠や天狗の長だけでなく天狗で戦を経験した者も話し合いに参加しているのだったな。師匠や天狗の長と違って完全に警戒心を拭えていないからそうなっているのだろう。
いつも矜持が高く、説得される側の師匠が話し合いで悩まれるとは相当なもの。それに話し合いは康重殿でなく康重殿のお父上で、師匠が用いた術のように鏡越しで話し合われるそうだ。
実際に天狗の元で滞在された康重殿ならばともかく、天狗は人前に姿を表していないのだから互いに誤解や偏見も拭えないのかもしれない。
「お前が疲れているのは承知しているが、二刻後……その……良いか? お前の腕の中なら悩みを忘れられる」
師匠が恥ずかしそうに小声で言う。そんなに恥ずかしがらなくても、貴方が求めてくださるのならいつでも大丈夫なのですが。そう返答すると、怒られそうなので月夜は微笑む。
「はい。承知いたしました」
風琴は月夜の返答にありがとうと小さく呟いた。
その夜、約束通り月夜と風琴は肌を重ねる。こうして互いの熱を感じている時だけは、互いのこと以外を考えなくて済む。
「月夜……っ……ああっ……気持ち……いい」
「師匠……」
二人とも疲労困憊だというのに、情交の激しさはいつもとさして変わらない。
快感のあまりに潤む萌葱の瞳や掠れた声が愛おしい。誰にも貴方を渡したくない。貴方は私だけのものだ。そんなことを言えぬ代わりに、愛しい師匠に熱の楔で何度も穿った。
あまりにも夢中になっていたせいだろう。寝息を立てる師匠の身体を清めている時になって雨が降っていることに気づいた。
あらかじめ桶に水を汲んでいて良かったと、手拭いの水を絞る。もう梅雨かだったな。紅月殿は雨の日でも、鍛練はしますよと仰っていたので明日も鍛練はあるだろう。むしろ悪天候で鍛えられた方が実戦でも臨機応変に対応できるので良い。
ただ雨の日は妖力の消費が激しく、回復も遅いそうだから、師匠に情交をお願いする日が増えるかもしれない。
月夜はそっと風琴の夜着の帯を締める。そして月夜は風琴の頬を撫でた。師匠はあまり寝相がよろしくない。
私が幼い頃は、寝ているときに腕が飛んできたり抱き枕にされたものだ。それでも、傍にいつもとは違って幼げな寝顔があったので、子供であった私は音が聞こえるのではないかと思うほど心の臓がうるさく鳴り響いていたのを覚えている。
前と変わらず寝顔は幼く可愛いらしい。月夜が愛しさのあまり頬に軽く口づけをすると、風琴が呻いた。
「ははうえ……」
風琴の口から零れた言葉に、思わず月夜は固まる。……そういや、師匠は落ちた星を祖としているが、両親はいるのだった。
お母上が幼い頃に亡くなり、お父上は師匠からすれば最近亡くなったことは聞いてはいるが、師匠はあまり話したがらない。幼い頃は甘えん坊だったらしいから、思い出したくないのだろう。徐々に弱い一面を見せてくださっているが、情交以外では師匠が泣くところなど見せてくださらないのだから。
月夜はそっと風琴の手を握る。私はまだ貴方のことで知らないことがたくさんある。それでもいい。貴方が話してくださるまで待ちましょう。
月夜は風琴の寝顔を眩しげに目を細めて見守るのであった。
それからは似たような日々が続いた。昼間は風琴は戦についての話し合いをし、月夜は血の滲むような鍛練を積む。夜になれば、互いを求めて肌を重ね眠る。
毎日のように情交をするのは幸せだが、以前の生活が恋しくなる。いつも2人で穏やかな日々を過ごし、たまに東雲殿が来るくらいの静かなものであった。
だが今や昼間は他人と過ごし、顔を合わせる時間すらない。同胞達でも言い争いになり、我と長は頭を抱えつつ話をまとめなければいけない。
何が楽しくて好きでもない同胞達と長時間同じ部屋にいなければならないのか。苛立ちを向けることなど出来ない。
なので風琴は、月夜の腕の中にいる時だけは全てを忘れられるので、それだけを1日の楽しみとして、深刻かつ不愉快な話し合いでなんとか冷静な頭で臨んでいた。
その日の風琴は話し合いが終わると、胡座をかいて縁側で茶を啜る。日が落ちるのが遅くなっている。そういえば今は梅雨だ。雨の中でも月夜は鍛練を行っているらしいが大丈夫なのだろうか。熱は今のところ無いようだが、念のために熱冷ましの薬の用意だけしておいた方がいいだろうか。そんなことを考えていると、紅月がふらりとやって来た。
「風琴殿、お疲れ様です。ところで、横に座ってもよろしいですか」
「別に構わん。座りたければさっさと座れ」
紅月はにこりと微笑むと、風琴の横に座った。天狗となった月夜の相手をしているせいか、以前に会った頃よりも霊力が少ない。
「最近の月夜殿の様子ですが、天狗になる前よりも霊力というか、妖力や身体能力は向上しておられるようです。鍛練で日に日に妖力の使いどころや、身体の動かし方も良くなってきています。ただ殺気に対しての怯みはまだ消えていないですね。それと焦りが見えますので、その隙を見て徹底的に鍛えております」
やはりそうか。月夜は我を守りたいようだが、我はその気持ちだけで十分だし、あやつが殺気を克服するまでは戦場にやりたくない。
「愛しいからと言って、我はあやつを無駄に甘やかすつもりはない。これからも厳しく鍛えてやってくれ。それと……月夜が殺気を克服するまでは、負けるなよ紅月」
「勿論ですよ。某は大蛇の子なのですから」
紅月は我に顔を向けるとにやりと笑って見せた。
話し合いが始まって半月以上過ぎた頃、話し合いの休憩がてらに離れた位置から月夜の稽古の様子を観察してみた。遠くからでも分かる程激しい鍛練。
以前よりも月夜の身体のキレが良い。妖力の使いどころも他の天狗と負けず劣らず上手く使いこなせている。それを上手く回避しつつ神気が溢れる程攻めを繰り広げる紅月も中々の者。
相手にはしたくない。しばらく風琴は感心しながら見ていたが、あることを思い出した。
「……我、鍛練中の神気の解放の許可など出しておらぬよな」
あやつが使う蛇神の神気は毒と炎。相手のみならず使用者にも魂の火傷となり、毒となると思ったが大丈夫なのか。
いや、蛇神の魂の分御霊なのだから制御は出来るであろうが、いくらなんでも互いにとってまずかろうに。しかし月夜が寝静まった後や情事の最中に、身体に以上がないかこっそり調べているが今のところ異常無しだ。
月夜も神気を操る相手に鍛練をしてもらって、結構上達しているようだしこのまま見守るか。
「ご隠居、長達がお呼びです」
長の側近に呼び出されて腰を上げる。手合わせがどうなるか見てみたかったが仕方ない。後ろ姿引かれる思いがあれど、若隠居として勤めを果たそうと部屋に向かった。
その日の夕方、また紅月が現れる。うげっと苦い顔を面の下でする我に紅月はひらひらと手を振った。
「昼間、某達の姿を見ておられたでしょう。どうでしたか、お弟子さんの鍛練の上達ぶりは」
「まあ悪くはない。遠目から見ても怯む様子はかなり減ったな」
そうでしょうと、紅月は頷く。まるで教え子を取られた気分に風琴は少しむっとなった。
「だが鍛練中に神気を放出しても良いのか。お前にとっても苦しかろうに」
「あの程度なら威嚇同然ですので平気ですよ。それに、蛇にも勝る恐怖など少ないでしょう」
つまり月夜の恐怖心を鍛えるためにわざと放出していると。ありがたいが、少し申し訳なくなる。風琴は用意していた物を部屋から取ってくると、紅月に渡した。
「おやこれは……。酒ですか」
「天狗の薬酒だ。味も中々の美味であるから、滋養の為に飲んで眠れ」
ぶっきらぼうに言い放つ風琴に紅月は微笑んで受け取る。
「やはり貴方は天狗の中でお優しいですね。有り難くいただきます」
別に優しくなどしてないのに、そんな風に笑うな。風琴はふんとそっぽを向いた。
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