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家出の延長
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俺は、あの後鈴音を慰める言葉が出てこなかった。
生まれる前に母娘共に父親に捨てられ、自分を育ててくれた母親に、遠回しに自身の存在を否定された若い鈴音の心に深い傷を負ってしまったというのに。
鈴音は母親に反発をして家を出て、見つからない遠いこの地に来たらしい。
俺は両親に反発をして家を飛び出す程の勇気は無かったから、鈴音が全てを捨ててここまで来たのか予想が出来ない。
けど……
『親父さんがいないって事はお袋さんが唯一の肉親なんだろ? なら、意地を張らずに仲直りしないとな。お袋さんは絶対にお前の事を心配している。お前の事が好きだから自分と同じ過ちを繰り返して欲しくないってことだろ』
などと他人行事の様な大人の戯言を言って俺は家を出た。
鈴音には家に帰る電車代と食事代で1万円渡しておいた。それだけあれば足りるだろう。
元々一宿させるだけの約束だったし、短い間だったけど、一緒に食卓を囲めて楽しかったな……嫌な記憶を思い出したけど。
「おい古坂。なにボーッと画面と睨めっこしてるんだ。課長なんだから部下のお手本になるぐらい真面目に働け」
ポカッと就業中に心ここにあらず状態だった俺の頭を本で叩く女性。
俺は叩かれた部分を摩りながらに口を尖らし。
「分かってますよ白雪部長。ちょっと考え事をしていただけです」
俺を叩いたのは課長である俺の上司の白雪部長。
昨晩俺を夜遅くまで酒盛りに突き合わしたアルハラ上司だ。
「考え事は仕事が終わった後にしろ。もし悩み事なら終わった後にいつもの居酒屋で私が聞いてやる」
「そうなれば酒で全て忘れそうなのでノーサンキューで。それにしても、昨日あれだけ飲んだのに本当に元気ですね。酒が残ってたり二日酔いになったりしないのですか?」
「酒は私にとっては水みたいな物だからな。水で気分悪くなる奴はいないだろ? それと同じだ」
「なるほどなるほど。つまりは酒が恋人って訳ですか。良かったですね。これで恋人愚痴を聞かなくて済むって事だぐぇえ!」
白雪部長に俺はヘッドロックをかけられ鶏の様な声を漏らす。
「ほほう? なら私には恋人が沢山いるから、お前にどれが私に相応しいのか審査して貰わないとな?」
俺の失言に眉を引きつらす白雪部長。……どうやら恋人の事が気に障ったようだ。
この人は美人だけど、所謂残念美人で。バリバリのキャリアウーマンだけど酒盛りの時は面倒だからな……。おかげでこの人に誘われて飲みに行くのは俺だけ。他の奴らは腹痛や頭痛、親戚の危篤とか明らかに嘘だと分かる嘘で回避している。てか、俺も断っているのに俺だけ強制参加させられるんだよな……。
「スミマセン白雪部長! 今日だけは、せめて今日だけは止めてください! 今日は前に見逃した映画がテレビ上映させるので!」
「そんなの録画すればいいだけの話だろうが! 私よりもテレビの方が大事なのか!?」
俺は観たいテレビは録画よりもリアルタイムを好む。
本当は劇場で観たかった映画だけど、仕事の都合で観れなかった映画がテレビで流れるとなれば観ない手はない。
だから俺は答える。
「え、当たり前じゃないですか?」
何故だろう。ヘッドロックからの武器(ロール状に丸められた書類の束)で殴打されたのだが?
「女心が分からないからお前は今までに彼女が出来ないのだぞ? もういっそ、私がお前の貰い手に——————」
「白雪部長。先日の営業の報告書が出来ました。確認をお願いします」
「あー分かった。私の机に置いといてくれ」
話を遮られ小さな舌打ちをする白雪部長。
この人今とんでもない事言いそうにならなかったか?
仕事中に部下の俺と戯れを自重した白雪部長は自身の仕事に戻る。
その去り際に俺の方へと振り返り。
「そう言えば古坂。珍しい事に、お前のそのスーツとシャツ。しっかりとアイロンがけされてるんだな?いつもはヨレヨレだったが、今後も社会人らしく身だしなみはしっかりしろよ」
白雪部長は俺の綺麗に伸ばされてパリッとしたスーツとシャツに気づいていた様子。
これは別に俺がしたわけではないのだが……あいつ、ちゃんと家に帰ったのかな?
その後、結局俺は鈴音の事を考えていた所為で仕事に集中できず、あの後も3度白雪部長から説教をくらい、危うく今日も終業後に居酒屋に拉致られそうになった所を躱して帰宅する。
鈴音はお金が無いと言っていたが、あれだけあれば帰るだけの電車賃はあるだろう。
帰って母親と仲直りしてくれたのなら、それに越した事はない。
あーあっ、帰ってもまた寂しい独身生活か。まあ、そもそも昨日会っただけで特別な思い出もないアイツがいなくなった所で寂しいなんて気持ちはサラサラないけどな。
4階建ての賃貸マンションの自宅の前に帰宅。
いつもの感覚で鍵を入れた鞄の内ポケットを漁るが、そう言えば今日は鍵を持って出なかったな。
仕事で先に出るって事で、鈴音に鍵を閉めて郵便ポストに入れといてくれと頼んだんだった。
俺は郵便ポストを確認するが、郵便受けに鍵は無かった……。
「おいおいこれって……あいつ、俺の鍵を盗んで行ったとかじゃないよな?」
相手は素性の知らない女子高生。
心根は優しいあいつを信じて鍵を任せたが、もしかしてと思いもう一度玄関へと向かい、確認の為にドアノブを捻ると。
「開いてる……」
元々鍵は掛かっておらず扉はすんなりと開かれ、部屋から料理の良い匂いが玄関まで漂う。
俺が扉を開いた音に反応してか、部屋の奥からトタトタと足音が近づき。
「お帰りなさい。ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・じッ!」
脊髄反射で俺は”鈴音”の頭頂部を手刀で叩いた。
鈴音は頭を押さえながらに涙目で俺を睨み。
「何するんですか! もしかして新妻風な出迎えは不服だったとか……でしたらやっぱり、お帰りなさいお兄ちゃん♡って出迎えをいたたたッ! 頬を摘ままないでください!」
こいつは何も分かってない分かって無さすぎる!
「なんでお前はまだ俺の家にいるんだ! 自宅に帰れって言っただろ!?」
「嫌ですよ! なんで家に帰らないといけないんですか! 私は家に帰りたくありません!」
強情に帰宅拒否する鈴音。俺は呆れと怒りで頭が沸騰しそうだ。
「そもそもお前、これはなんなんだよ!」
俺は玄関と隣接させるキッチンを指さし問いただす。
鈴音はキョトンとした表情で。
「なにってカレーですが? もしかしてこーちゃんはカレーを知らないの?」
「黙れ若造! 俺が言いたいのは、カレーの材料は家に無かったはずなのになんでカレーが作れて……ってお前、まさか!? てかその服!?」
俺はもう1つ気づく。
鈴音の服が今朝とは違う。今朝まではこいつは制服を着ていたはず。なのに今の鈴音の恰好は無地のTシャツというラフな格好。こんな服俺の家にはなかったはず。
鈴音はバレたか、と舌を出し。
「カレーの材料とこの服はこーちゃんが家を出た後に近くのスーパーで購入しました。いやー私も女性ですから、三日も同じ服を着ていて気持ち悪くて。一緒にパンツとブラも買いました、安物ですが」
「お前な! 俺がお前に渡した1万円は家に帰る為の駄賃で渡したんだぞ! なにこれから居候しますって態度は!?」
「え、駄目ですか?」
「当たり前だ! 家に帰れよ!」
俺は強引に鈴音を家から追い出そうと首根っこ掴んで引きずるが鈴音は抵抗する。
「そんな無慈悲な事しないでください! お願いです、もう1日もう1週間、いえ、もう1か月泊めさせてください!」
「なんでだよ! 普通逆に小さく妥協するものだろ! なんで増えていってるんだよ!」
「お願いです! 泊めてくれるのでしたら私なんでもしますから! 炊事洗濯掃除など! 身の回りの世話をします! こーちゃんが望むなら下の世話もしますから! 慈悲を! この哀れな家出少女に慈悲を与えてください!」
鈴音は俺の足を掴んで必死に懇願する。
だが、独身男性の家に未成年の女性を泊まらすのは色々と危ない。
そもそもこの部屋は独り暮らし用でそんなに広くない。
こんな狭い家に男女2人で住むのは倫理的に危険だ。
「てかよ。男の俺に頼まなくても、同性に頼む方がいいだろ」
「……こんな身元不明の未成年を泊めるお人よしはいませんよ……」
お前が言うな。だが、確かにな。普通であれば身元が分からない相手を無償で泊めるのはリスクはあってもリターンは無い。
「本当はこーちゃんの前に何人か声をかけましたが、全員が私を怪しんで首を横に振ったんです……。こーちゃんだけなんですよ! 私を家に泊めてくれるのを了承してくれたのは! お願いです! 泊めてください!」
涙目で子犬の様に縋る鈴音。
家に帰ればいいだろってのは抜きにして、ここは鈴音が知らない土地。友人も知り合いもいない土地でお金もなく1人なら不安で一杯だろう。そんな土地で唯一コイツを受け入れた俺に鈴音は最後の頼みとお願いしているのか……。
「…………はぁ……。分かった。分かったよ。泊めてやるよ」
「本当ですか!?」
「だが、自分の言葉には責任持てよ。炊事洗濯掃除はしっかりして貰うぞ。家事も仕事の一環だ。働かざる物食うべからず。まずは折角作ったカレーを食べようか。俺、カレー大好物なんだよな」
「分かりました。今装います! 手を洗って待っていてください!」
泣き顔から一変して花が咲いた様に笑顔になる鈴音。この変わりように俺は背筋が凍る。
やっぱり女って怖ぇ…………が。
上機嫌に鼻歌を歌いながら食事の準備をする鈴音の横姿を見て、俺は肩を竦め。
「……その顔で泣かれると俺は勝てる気がしねえな…………」
生まれる前に母娘共に父親に捨てられ、自分を育ててくれた母親に、遠回しに自身の存在を否定された若い鈴音の心に深い傷を負ってしまったというのに。
鈴音は母親に反発をして家を出て、見つからない遠いこの地に来たらしい。
俺は両親に反発をして家を飛び出す程の勇気は無かったから、鈴音が全てを捨ててここまで来たのか予想が出来ない。
けど……
『親父さんがいないって事はお袋さんが唯一の肉親なんだろ? なら、意地を張らずに仲直りしないとな。お袋さんは絶対にお前の事を心配している。お前の事が好きだから自分と同じ過ちを繰り返して欲しくないってことだろ』
などと他人行事の様な大人の戯言を言って俺は家を出た。
鈴音には家に帰る電車代と食事代で1万円渡しておいた。それだけあれば足りるだろう。
元々一宿させるだけの約束だったし、短い間だったけど、一緒に食卓を囲めて楽しかったな……嫌な記憶を思い出したけど。
「おい古坂。なにボーッと画面と睨めっこしてるんだ。課長なんだから部下のお手本になるぐらい真面目に働け」
ポカッと就業中に心ここにあらず状態だった俺の頭を本で叩く女性。
俺は叩かれた部分を摩りながらに口を尖らし。
「分かってますよ白雪部長。ちょっと考え事をしていただけです」
俺を叩いたのは課長である俺の上司の白雪部長。
昨晩俺を夜遅くまで酒盛りに突き合わしたアルハラ上司だ。
「考え事は仕事が終わった後にしろ。もし悩み事なら終わった後にいつもの居酒屋で私が聞いてやる」
「そうなれば酒で全て忘れそうなのでノーサンキューで。それにしても、昨日あれだけ飲んだのに本当に元気ですね。酒が残ってたり二日酔いになったりしないのですか?」
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「なるほどなるほど。つまりは酒が恋人って訳ですか。良かったですね。これで恋人愚痴を聞かなくて済むって事だぐぇえ!」
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この人は美人だけど、所謂残念美人で。バリバリのキャリアウーマンだけど酒盛りの時は面倒だからな……。おかげでこの人に誘われて飲みに行くのは俺だけ。他の奴らは腹痛や頭痛、親戚の危篤とか明らかに嘘だと分かる嘘で回避している。てか、俺も断っているのに俺だけ強制参加させられるんだよな……。
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「そんなの録画すればいいだけの話だろうが! 私よりもテレビの方が大事なのか!?」
俺は観たいテレビは録画よりもリアルタイムを好む。
本当は劇場で観たかった映画だけど、仕事の都合で観れなかった映画がテレビで流れるとなれば観ない手はない。
だから俺は答える。
「え、当たり前じゃないですか?」
何故だろう。ヘッドロックからの武器(ロール状に丸められた書類の束)で殴打されたのだが?
「女心が分からないからお前は今までに彼女が出来ないのだぞ? もういっそ、私がお前の貰い手に——————」
「白雪部長。先日の営業の報告書が出来ました。確認をお願いします」
「あー分かった。私の机に置いといてくれ」
話を遮られ小さな舌打ちをする白雪部長。
この人今とんでもない事言いそうにならなかったか?
仕事中に部下の俺と戯れを自重した白雪部長は自身の仕事に戻る。
その去り際に俺の方へと振り返り。
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白雪部長は俺の綺麗に伸ばされてパリッとしたスーツとシャツに気づいていた様子。
これは別に俺がしたわけではないのだが……あいつ、ちゃんと家に帰ったのかな?
その後、結局俺は鈴音の事を考えていた所為で仕事に集中できず、あの後も3度白雪部長から説教をくらい、危うく今日も終業後に居酒屋に拉致られそうになった所を躱して帰宅する。
鈴音はお金が無いと言っていたが、あれだけあれば帰るだけの電車賃はあるだろう。
帰って母親と仲直りしてくれたのなら、それに越した事はない。
あーあっ、帰ってもまた寂しい独身生活か。まあ、そもそも昨日会っただけで特別な思い出もないアイツがいなくなった所で寂しいなんて気持ちはサラサラないけどな。
4階建ての賃貸マンションの自宅の前に帰宅。
いつもの感覚で鍵を入れた鞄の内ポケットを漁るが、そう言えば今日は鍵を持って出なかったな。
仕事で先に出るって事で、鈴音に鍵を閉めて郵便ポストに入れといてくれと頼んだんだった。
俺は郵便ポストを確認するが、郵便受けに鍵は無かった……。
「おいおいこれって……あいつ、俺の鍵を盗んで行ったとかじゃないよな?」
相手は素性の知らない女子高生。
心根は優しいあいつを信じて鍵を任せたが、もしかしてと思いもう一度玄関へと向かい、確認の為にドアノブを捻ると。
「開いてる……」
元々鍵は掛かっておらず扉はすんなりと開かれ、部屋から料理の良い匂いが玄関まで漂う。
俺が扉を開いた音に反応してか、部屋の奥からトタトタと足音が近づき。
「お帰りなさい。ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・じッ!」
脊髄反射で俺は”鈴音”の頭頂部を手刀で叩いた。
鈴音は頭を押さえながらに涙目で俺を睨み。
「何するんですか! もしかして新妻風な出迎えは不服だったとか……でしたらやっぱり、お帰りなさいお兄ちゃん♡って出迎えをいたたたッ! 頬を摘ままないでください!」
こいつは何も分かってない分かって無さすぎる!
「なんでお前はまだ俺の家にいるんだ! 自宅に帰れって言っただろ!?」
「嫌ですよ! なんで家に帰らないといけないんですか! 私は家に帰りたくありません!」
強情に帰宅拒否する鈴音。俺は呆れと怒りで頭が沸騰しそうだ。
「そもそもお前、これはなんなんだよ!」
俺は玄関と隣接させるキッチンを指さし問いただす。
鈴音はキョトンとした表情で。
「なにってカレーですが? もしかしてこーちゃんはカレーを知らないの?」
「黙れ若造! 俺が言いたいのは、カレーの材料は家に無かったはずなのになんでカレーが作れて……ってお前、まさか!? てかその服!?」
俺はもう1つ気づく。
鈴音の服が今朝とは違う。今朝まではこいつは制服を着ていたはず。なのに今の鈴音の恰好は無地のTシャツというラフな格好。こんな服俺の家にはなかったはず。
鈴音はバレたか、と舌を出し。
「カレーの材料とこの服はこーちゃんが家を出た後に近くのスーパーで購入しました。いやー私も女性ですから、三日も同じ服を着ていて気持ち悪くて。一緒にパンツとブラも買いました、安物ですが」
「お前な! 俺がお前に渡した1万円は家に帰る為の駄賃で渡したんだぞ! なにこれから居候しますって態度は!?」
「え、駄目ですか?」
「当たり前だ! 家に帰れよ!」
俺は強引に鈴音を家から追い出そうと首根っこ掴んで引きずるが鈴音は抵抗する。
「そんな無慈悲な事しないでください! お願いです、もう1日もう1週間、いえ、もう1か月泊めさせてください!」
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お前が言うな。だが、確かにな。普通であれば身元が分からない相手を無償で泊めるのはリスクはあってもリターンは無い。
「本当はこーちゃんの前に何人か声をかけましたが、全員が私を怪しんで首を横に振ったんです……。こーちゃんだけなんですよ! 私を家に泊めてくれるのを了承してくれたのは! お願いです! 泊めてください!」
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