家出少女は昔振られた幼馴染と瓜二つ

ナックルボーラー

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飲み会

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 伝達が遅れ、翌日の日曜日に歓迎会が開かれる事を全く知らなかった俺だが、特に用事も無かったし夜だから参加した。課長だから参加しない訳にはいかないしな。
 家出娘で居候の鈴音から「えぇ……また飲み会ですか……大人ってズルいですよ、いつも楽しそうに飲んで!」と一日限定父親が終わり再び生意気な敬語に戻った口調でそう言われたが。
 飲み会が良いのは人それぞれで、俺はどちらかと言うと面倒な方だ。
 ぶうたらこく鈴音を無視して家を出た俺は、飲み会が開かれる馴染みの居酒屋へと向かった。

 居酒屋前を集合場所として、白雪部長から教えられた時間10分前に到着したが、俺よりも何人かが先に着いていた。
 そしていつも飲み会の時は誰よりも早くに来る白雪部長は俺を見つけるや声をかける。

「おぉ、古坂来たか。いやースマンな。お前に歓迎会の事を連絡するのを忘れていて」

「別に構いませんよ。特に用事も無かったですから。それよりも飲み会を日曜日に開くって珍しいですね?」

 普通は次の日が休日の金曜日に開く事が多い。
 日曜日に開かれるのは初めてかもしれない。
 いつもは会社帰りに行わるからスーツ姿だったが、今日は全員私服で新鮮味がある。

「本当は金曜日にしたかったんだがな。今の時期何処も歓迎会とかで予約が一杯だったらしくて。明日は振り替えで仕事は休みだろ? だから今日にしたんだ」

 そう言えば、今日は本来は祝日で明日は振り替え休日。
 なるほど。明日が会社が休みなら気兼ねなく飲めるって訳か。
 
 俺が到着した後に残りの何人かが合流。
 前に白雪部長経由で新人と会った事があるから、誰が新人かは分かる。
 殆ど集まったと思ったが、アイツが見当たらなかった。

「全員集まったか?」

「いえ、田邊がいません」

 白雪部長が本当だな、と周りを見渡すと、遠くから走って来る女性が見えた。
 遠目でも何となく分かったが、近づいて来た事で断定出来た。凛だ。

「す、スミマセン……遅れてしまいました……」

 凛は全速力で走って来たのか、着いた途端に手を膝に付けて肩で呼吸する。
 遅れた事を謝る凛だが今は集合時間5分前だ。遅れてはいない。
 
「遅れてないから安心しろ、田邊」

「そ、そうですか……。あ、改めましてこんばんはです、白雪部長」

「あぁ、こんばんは。よし、田邊が来てこれで全員だな」

 最後の凛の到着で全員揃い。いざ店内へ。
 
 何度来てもこの外の空気と店内の煙たい空気の境界は慣れない。
 この空気が好きな白雪部長はご満悦……てかこの人、本当に居酒屋好きだよな。
 休みの日は一人梯子をするぐらいでこの街の居酒屋でこの人は常連だから。
 だが、この居酒屋は全国、世界の酒を取り入れ、予約していればその酒を調達する程に気前も良い。その分は値段も跳ね上がるけど。
 
「へいいらっしゃい! おぉ、穂希ちゃんじゃねえか。予約していたやつだな、時間丁度。直ぐ案内してやるからちょっと待ってろ」

 禿で強面の店主が元気よく接客。
 白雪部長も負けない元気良さで返す。

「店主。今日は良い酒入っているんだよな。今日は限界まで飲むつもりだから、貯蔵は十分にしとけよ」

「言われなくても。今日も最高級の良い酒揃えているから思う存分飲んでくれ。摘みも美味しいの用意するからよ。コースはデラックス宴会コースでいいよな?」

「そうだ。会計の方は幹事の方に言ってくれ」

 部長が幹事をする訳でなくそれはそれで担当がいる。
 そいつが今日の参加人数と予約していた人数を店主と確認して、店員に二階にある大部屋の方に案内される中、店主の横を通る俺に店主が話しかける。

「おう兄ちゃん久しぶりだな。前に来たのは穂希ちゃんと来た2週間前だからな。元気にしていたか?」

 本当は一週間前に訪れていたが、その時に俺は店主に高いコースを頼むことで口止めをした。
 約束を破る店主ではないからそれを守ってくれてるのだろう。
 だが、そうなら話しかけないで欲しいってのが本心だ。

「観ての通り元気ですよ。2週間ぶりに来たから、今日は思う存分飲みますので覚悟しといてくれよ」

「いつも穂希ちゃんの10分の1も飲まない癖に大口叩くなよ兄ちゃん」

 ハハハッと笑い合う俺と店主。
 その傍らで社員全員が二階に行くまで待っていた白雪部長が凛と会話していた。

「そう言えば田邊はこの店初めてだったよな。酒は勿論美味だが、摘みでおすすめなのはな」

「焼き鳥ですよね」

「お、おう。そうなんだ。ここの焼き鳥は上等な部位を使っていてな。って、田邊お前、もしかしてこの店来た事あるのか?」

「はい。前にこー……古坂課長に連れて来て貰いましたから。その時食べましたが、確かに美味しかったです」

 焼き鳥を焼く熱で滾った店内がピシッと氷点下に下がる。
 店主と軽口を叩いて笑っていた俺の表情はその空気に冷やされて氷る。
 あちゃーと天井を仰ぐ店主。ぱちくりと状況を掴めていなかった凛は思い出したかの様にハッと口を押えるも時にすでに遅く……俺は白雪部長の顔を見れない。

「……おい古坂。田邊の言う話は本当か?」

 幽鬼の様に這いよる白雪部長の怒気に俺は言葉が出なかった。
 
「無言は肯定と同義だ。つまりお前は私抜きで部下と飲みに行っていたと……。なんだ? 課長としての立場を使って田邊を侍らかそうとしたのか?」

「い、いえ……部長。それには色々と事情があって……別に侍らかすつもりは……」

 俺が凛を居酒屋に誘ったのは、凛の実家の現状や親父さんの死を伝える為で別にやましい事はない。
 だが、それを話せるわけもなく、誤魔化そうとするが、白雪部長の眉の皺は深まる。

「その事情ってやらを後でしーっかりと聞こうじゃないか。ほら来い古坂。これから楽しい尋問飲み会が始まるからよ」

「待ってください部長! なんか言葉の裏にとてつもない悪意を感じた様な! スミマセン、また度数の高い酒を飲まされるのはご勘弁を!」

 俺は白雪部長に首根っこ掴まれて二階に連れて行かれる。
 こうなるのを恐れて店主に口止めしていたのに、何暴露してくれたんだ凛!
 いや、俺はあくまで店主に対して口止めはしたけど、凛にはしていないな……。
 って、何納得してるんだ俺は! 

 凛の俺に向けての申し訳ない表情から、凛に悪意は全くなく、咄嗟に聞かれて答えてしまったのだろうけど……。
 今夜の飲み会、少し波乱が起きそうで不安ばかりだ……。俺、急性アルコール中毒にならないか心配だ。
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