ハブられ系キョロ充幼馴染と恋をする

むすめっすめ

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買い物袋を手に持ち、玄関のドアを開ける


「ただいまー」

玄関で靴を脱いで、自室に直行する。
ずっと制服でいたから少し嫌な気分だ、制服はブレザーだが個人的に気が楽でない。

気楽な部屋着に着替えてリビングに行く、夕飯の鍋はもう出来ていたようで母は1人でスマホを見ながら鍋をつついていた。

「靴なかったけど、父さんは?」

「今日は同僚と食べに行くみたいよ...本当にあの人は...」

いつもの如く、母さんは父さんの愚痴をこぼす。
だが決して仲が悪いわけではないと俺は思う、母さんは父さんと話す時、よく笑う。
友達みたいな距離感だけど両親は付かず離れずな関係なんだ。多分。

「あっ、ねぇそれよりなんで今日、恭介くんと一緒にいたの?」

「あ、え...」

聞き流していたのに耳に水を入れられた気分、急に恭介の名前が出てきて少し考える。

「いやぁ、なんとなく?」

「...あんた、なんとなくで恭介くん泣かせてたの?」

我ながらテキトーな嘘だと思っていたが、すぐバレた。
それに、やっぱり恭介が泣いてたの分かってたんじゃないか
俺は頬杖をついて目を細める

「なんだよ、見てたなら言えよ...あと別に俺なんもしてないからな...」

「私、あんたのこと責めてるわけじゃないけどね...何があったかぐらい教えてくれたっていいじゃない?それに、恭介くんとは幼馴染でしょう?」

「...中学の頃、俺に諭してきたけど、そんなことにはならないよ。」

最後まで言おうとすると母の顔が少し強ばる。
...“過去の事“から母に恭介の事を聞かれるのは気まずい、が言い方...悪かったか
俺がいや、と言葉を続けようとすると母は言葉を重ねる

「あの頃は...状況が悪くて...私も恭介くんのお父さんと合わせたくなかったの、だし、恭介くんは拓生のこと避けて...」

俺が母のことを睨むと、それ以上は何も言わなかった。
お互いにそれ以上探らないように、たわいの無い話を続けたが、
鍋は少し冷めていた気がした。



夜、
何事も無かったかのように風呂に入った後、自室にこもる

「はぁ...」

思わずため息をついてしまう、
何であんなこと言ってしまったんだ。
あの頃は母も辛かったんだって今は分かっていたのに...

中学生から恭介が家を引っ越した理由は、

恭介のお母さんが亡くなったことだった。

恭介が小学校卒業してすぐのことだった、理由は交通事故、いつ起きたかも、何も、“俺だけ“は詳細が分からなかった。

というのも、母は親友の突然の死に気が動転していたのか、毎晩、恭介のお母さんの名前を呟きながら泣いたり怒ったり、父さんは母に付きっきりで、とても理由を聞けるような空気ではなく、子供の俺はわけも分からず母の顔を伺いながら怯えるしか無かった。

卒業したから小学校もない期間、俺にとっては地獄だった。

泣き崩れる母も、それに付きっきりで何も話してくれない父も、果たして何がこうさせるのか、何があったのか気になって、というか、本当は恭介に会いたくて...恭介の元の家に行った。
でも、誰もいなかったことが衝撃でよく覚えている。
同じ小学校の奴に聞いても誰も知らないようで俺の困惑は深まるばかりだった。

中学が始まる頃、校内どこを探しても恭介はいなくて、ついに俺は我慢の限界だった。

いつまでたっても、精神状態が不安定な母を無理やり起こして問い詰めた。

一体何があったのか、
...なんで恭介は居なくなっているんだ。

主にコレを聞いたけど、らしくない母におれもキツく当たっていたから返ってきた言葉は...当時の中学生の俺にはキツかった。

親友が、死んだの、
何よりも、大切で、
誰よりも、好きだった、
愛していたの。

お父さんと結婚したのは、恭介のお母さんみたく、ただ“普通“になるためだけだった。
子供を産んで、幸せな家庭を築いて、
...そしたらこの気持ちがバレないでも、一緒にいられる。
でも...死んでしまったら、もうこの家族に意味なんかないじゃない。

母はそう言っていた。
さっきまで、母に乱暴な俺を止めようと父さんが後ろにいた。母が口を開けた時には諦めたのか一歩下がって俺たちを見ていたが、こんな事父さんが聞いたら...と思って咄嗟に父さんの方を振り向くと、
怒りや焦り、感情を感じさせない、無表情でただじっとこちらを見つめていた。

ねぇ、父さん、嘘だよ、違うよ。そんなはずないから。

俺は否定の言葉を必死に並べた。
だけど、父さんは無慈悲にも微笑んだ。

全部知っていた
同意の上で結婚したんだ。
俺は母さんを愛していたから。

って、
絶望した。
全ての愛が偽りに見えた。今までもずっと、俺らは家族ごっこをしていただけなんだって、なんでこうなってしまったんだ。なんで生まれてしまったんだ。
そこまで思考が駆け巡った。

涙も出さないで、ただ頭を抱えて黙りこくる俺に母は言った。

恭介くんのお父さん...飲んだくれのアイツの所に恭介くんはいる。引っ越したのよ、あんたの中学の学区外だから中学は違うところになるでしょうね。

それでも会わせて欲しい、俺はそう言った。

どうしても会いたかったんだ。
今、俺には恭介しかいない。
恭介が...いいんだ、

それでも、母は無理だと言った。

アイツが嫌いだから、元々のアイツは飲んだくれのクソ野郎だったのに、親友が拾ってくれてから変わった気になっているだけ、親友を失ったあいつは、もうじき死ぬ。


そう言って恭介に連絡をしてくれなかった。
俺と恭介とは小学校までの仲で、小学校では連絡手段など無くても家が近く遊べていて、メール交換など必要なかった。
恭介の家も分からないからどうしようもなく、俺は中学から荒れに荒れた。

俺の周り全てが虚実に見えた。

嘘でできた愛情も、
嘘でできた家庭も、
嘘でできた“俺“も、

けど、一つだけ真実があった。

拓生の恭介への想い。

嘘でできた俺がつくった1つの真実。

それが愛おしく、恭介への想いを膨れ上がらせた。


母は俺が日に日に荒れて、おかしくなってくるのを見て、俺を諭そうとした時があった。

あんたも、私みたいになる。

そう言われた時、怒りでどうにかなりそうだった。
恭介の居場所を教えろと叫んで、母に暴力を振るおうとした時

俺は涙が止まらなかった。


“母さん“

当時、俺にとって、母とも呼べない存在をそう呼んで、見つめた。

母を俺は捨てきれなかった。
今まで俺が貰ったつもりだった、家族からの全ての愛が、母にとって意味のない存在だとしても、嘘でも、詭弁でもいいから
俺はなぜか信じたかった。

俺の見てきた主観的事実を受け入れたかった。客観的に俺の事実は嘘でも、死ぬまでなら信じ続けられる、俺が死んだ時、嘘を信じ続けていればそれは俺にとって真実になる。

この人は俺のたった一人の母だと

本気でそう思った。



そこから、何事も無かったかのように、俺たちは“家族“になった。

彼女は母として恭介の父に連絡をしたようだったが、

『恭介くんね...
拓生と“会いたくない“...って』

心にぽっかりと穴が様だった。

これが初めての失恋というやつだった。
それでもダメージは小さかった、随分と恭介とは会ってなかったし、フラれても当然と言えば当然だろう。

なにより、母が慰めてくれた。

『俺には、もう、何もない、』

そうこぼした時、“彼女“...は言った。

『嘘でも信じられる力が貴方にはあるの、周りには何も無くても、自分がいるでしょう?』

『“母“は貴方が生まれた時から見ていたのよ、マイペースな子だったの』

たしかに、
そう思った。
周りに無いものばっかり見ていたから気づかなかったんだ。

早く自立したい、そう思うようになった。
そこから俺は人が変わった、
人が周りにいなくてもリアルは充実した。

1人は案外、楽しかった。




そこから様々な事情から公立高校ではなく少し遠くの私立高校に進学した。

そこで再会したのが、高橋恭介。

俺の幼馴染だった。



今日、母は母として対応してくれて、俺のために恭介を家に呼んで今の俺なら大丈夫だろうとアシストしてくれたのか分からないが、もうあんな醜い恋心はない、母には嫌な空気にしたことは謝ろう。

そう決めてベットに寝っ転がった時、少しの疑問が頭をよぎる

...そういえば今日、なんとなく恭介が着いてくるから気にしてなかったけど、俺の家の近くまで来てたよな?

小学校の頃引っ越したのに、なんで俺の地元まで来るんだ?...もしかしてまた引っ越して、俺の家の近くに来たとか...

とりあえずさっきは駅まで送ったけど、その後恭介は駐輪場の方へ向かっていた。


これは...


俺は枕に顔を押し付け、一人悶えた

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