カボチャの馬車に乗り損ねたのにはワケがある。

わをん

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ハロウィンの神林君

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 これは……、よくないのではないだろうか。

 頭を抱えたのは、さすがに引っかかるものがあったから。

 気にしない、気にしないと念じて、適当な付き合いを続けた。






 季節は巡り。

 10月31日、金曜日、午後9時。

『神林君』が我が家にやってきた。骸骨のお面を被って。

「トリック・オア・トリート」
「酒しかねえよ」
「お付き合いします」
「君は呑まないでしょ」
「先輩が呑むのを見てます」
「それはよくわからん。その、先輩って言うのやめてもらっていいですか」
「やめます。だから部屋に入れてください」
「汚いけど」
「知ってます。慣れてます」
「慣れないでいいんだよ」
「えへへ」

 神林君は遠慮がちに部屋に入ってきて、いつもどおり、汚いテーブルのゴチャゴチャをササッと整えてくれた。

 代わりに並べられるのは神林君特製ごはん。

「これはフェタチーズとケッパーを入れたギリシャ風サラダです。きゅうりの皮を剥くのがギリシャ流で、ミックスハーブとオリーブオイルと酢と塩胡椒でシンプルに味付けをしてます。それからこれはバングラデシュ風焼きそば。肉なしで、味の決め手はクミンです。そしてこっちは僕が香辛料を調合したインド風ホワイトソースを、グリルした鶏肉にかけてます。たぶん、少しだけからい」

 それを骸骨の仮面をつけたまま、言われた。

「それからこれ。刑部さんが好きなエビチリです。エビは大きめのブラックタイガーです。今朝、豊洲で買いました」
「ありがとう?」
「さ。食べて、食べて」

 割箸を渡された。

 形の良い爪先の動きに女性らしい所作と気配りを感じてドキッとしてしまう、独り身の耐性の無さを振り払い……、

「えっと、神林君」 
「はい」
「君、今日、会社に行ってない?」
「はい、行ってません。有給を取りました」
「朝、そんなこと言ってた?」
「いいえ、言ってません。だって朝は刑部さんと話す時間がないので」
「だよね。何でこんなに豪華? 今日って君の誕生日かなんか?」
「違います。あの、冷めちゃうので、お早めにどうぞ」
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