カボチャの馬車に乗り損ねたのにはワケがある。

わをん

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お別れの前の告白

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 映画を見ながらの食事と相成った。

 ソファの前のローテーブルに広げられたご馳走を前に、床の座布団に座って、ソファを背もたれにしてのプチ宴会が始まった。

 飲むのは自分だけ。神林君は水。

 食事のときだけ神林君は骸骨のお面を外し、食べ終わるとまたいそいそと装着した。
 
「コスプレ?」
「そのつもりです」
「そう?」

 こうして更けていく、金曜日の夜。

「神林君はいつまでその怖いお面をつけてるつもりなの?」
「好きです」
「ふぐ……っ」

 テレビ画面いっぱいに映し出されるのは気まずいラブシーン。しつこく続いていたから、骸骨のお面に話題を逸らそうとしたのに。

 吹き出したビールで座布団が濡れた。

 アタフタしながら神林君を見たら、お面を被ったままだった。

「りょ、料理するのがだよね。知ってる」
「違います。刑部さんのことが好きなんです。言うなら今しかないと思った」
 
 うっかり発言が過ぎて、回収できない。酔いもすっかり冷めた。

「今しか……?」

 戦闘中に愛を語らうありがちシーンと壮大な音楽に乗せられそうになった。

 危ない。雰囲気に呑まれるところだった。俺は骸骨に向かって、顔を横にフリフリした。

「今しかなくなくない?」
「茶化さないでください」

 受け入れるわけにはいかない。相手は細マッチョ。こっちの方が体格もあるから現状で貞操の危機は感じないが、可能性としては半々である。

「そういうのは困るんだよ」
「年明けに出向するんです。次はジャカルタです。2年です」
「羽田から7.8時間くらい?」
「はい。会えなくなるから。その前にと思って」
「会えなくないよね?」
「引っ越しますから。だいぶ遠くに行きますから」
「お別れの前に気持ちを伝えてくれようとしてくれたということ? そういうことなら好きにしたらいいけどね。うーん。残された俺はどうしたらいいの?」
「えっと……、付き合って欲しいと言っているのではないです。一回でもいいから抱いて欲しいです」
「骸骨を?」

 神林君がお面を取った。

 なるほど、髭は薄いし、肌は綺麗で、それなりに整った顔立ちをしている。しかし、どうだろう。どう見ても男だ。

「うーん。……無理、かな?」
「物は試しで」
「無理です。やめときます」
「刑部さん」

 押し倒されそうになった。あ、そっちなの? どっちなの? 焦ってしまって、手が出た。神林君の頬を引っ叩いてしまった。

「あっ。ごめん。いい音しちゃった。痛かった?」
「う……。いや、僕の方こそ。勢い余ってとんでもないことを……、驚かせちゃってごめんなさい。でも、そんなに拒否されるなんて」
「ごめん、あの」
「もういいです」

 半泣きの神林君は骸骨のお面を付け直し、慌ただしく部屋から出てった。

「……えぇえ? どういうこと?」

 映画は甘ったるいラブシーンを終え、戦闘シーンに突入。爆音とともに残虐且つ血みどろの戦いが始まった。

 ナンテコッタ。俺は君を傷つけてしまったよ?

 テーブルの上にはすっからかんになった皿が残されている。
 
 片付けよう。もう、これはあれだ。取り敢えず、皿を洗おう。

 シンクに流れる水音がハロウィンの夜を侘しく切なくした。
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