儚げ侯爵令息の怠惰な檻 ~前世が社畜だったので、公爵様の重すぎる溺愛が極上の福利厚生に見える~

千葉琴音

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第一部

【ノア視点】4

公爵邸の、魔法的な結界に守られた最奥の部屋。 
私の許可なしには決して開かない重厚な扉を閉め、私はついに彼を完全に掌中に収めた。 
ここには、もう彼を「有益な道具」として利用しようとする者も、彼の安眠を妨げる喧騒も存在しない。
ここにあるのは、彼のためだけに整えられた、究極の平穏だ。

レオが私の「狂信」に気づき、拒絶する可能性も、当然ながら考慮していた。
私が十年かけて積み上げてきた過保護が、実は彼を依存させ、社会から切り離すための「罠」であったと知ったとき、彼は軽蔑の眼差しを私に向けるのではないか。
あるいは、この金色の檻から逃げ出そうと、私を拒むのではないか。
その恐怖は常に私の心の片隅に存在していた。

しかし――。
「……じゃあ、これからもよろしくお願いします。ノア兄様。明日の朝ごはんは、フレンチトーストがいいです」

その笑って彼が告げた瞬間、私の全存在が彼に屈服した。 
ああ、やはりこの子はーー私が人生のすべてを賭けるに値する、唯一無二の光だ。
私の策略も、溢れ出すほどの狂気も、度を越した独占欲も。
この少年は、そのすべてを否定することなく、あろうことか「快適なサービス」として軽やかに飲み込んでしまったのだ。

私の執着を「重荷」ではなく「極上の贅沢」として受け入れる彼の図太さと、一点の曇りもない笑顔。
それこそが、何よりも私を救ってくれる。
私が彼を縛り付けているのではなく、彼が私の愛を棲家に選んでくれたのだという確信。
その多幸感に、私は目眩すら覚えた。

「レオ、愛しているよ。世界で一番」

ふかふかのクッションに埋もれるように幸せそうに微睡む彼を、愛おしさのままに抱きしめる。
指の間を滑り落ちる、月光のような銀髪の触感。吸い付くような白磁の肌。美しく整えられた指先。
そして、私なしでは生きられないように、過保護を尽くして甘やかしてきた心。
そのすべてが、今、私の腕の中で安らかに弛緩している。

かって、色のない砂漠を歩いていた私の人生に、彼は「怠惰」という名の彩りをくれた。
ならば私は、彼がその彩りの中で永遠に眠り続けられるよう、この檻を世界で一番美しい聖域にしよう。

エリオット、君の弟はもうここから出さない。
だが安心していいよ。 
彼は今、世界で最も「頑張らなくていい」幸福な檻の中にいるのだから。

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