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日常編
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――現在。
「陽波! 朝だよ、起きてー! 時間!」
「もうちょっと~……」
陽波は布団に頭までくるまった。それをアストは強引に引き剥がそうとする。
「駄目だって! 遅刻するよ!」
「やだー……」
「じゃあ起きてよ」
「やだー」
アストは一旦諦め、三分待ってから再び陽波を起こしにかかった。陽波は寝起きが悪い。そして寝ぼけているので子供のようにワガママを言うのだ。アストは毎朝それに付き合わされているものの、辛抱強く陽波を起こし続けているのだった。
「陽波、じゃあ起きなくてもいいから朝御飯食べてよ。折角作ったんだから」
「えー……? しょうがないな……」
「今日は卵焼き上手に出来たから見て、早く!」
「うんうん、分かった分かった」
陽波は起き上がって洗面所へ向かった。アストは胸を撫で下ろす。出勤の時間には間に合いそうだ。
アストはご飯とみそ汁をよそって、テーブルに卵焼きも並べた。陽波が朝食を目の前にして目を擦る。
「わあ、すごい。お店みたい」
「お店じゃないよ、家だよ」
陽波はまだ寝ぼけているようだ。「いただきます」と行儀よく手を合わせ、陽波は朝食を食べ始めた。アストも少しだけ頂く。
「この卵焼きお店で買ったの?」
「違う。俺が作った」
「えっ。すごいじゃんアスト……お店開けるじゃん。美味しいよ、うんうん」
「あ、ありがとう……」
少し照れた。陽波は寝ぼけているので後で聞いても何を言ったか覚えてはいないだろう。それでもアストは嬉しかった。
そして朝食を食べている間に陽波は段々と目が覚めてくる。いつも同じだ。
「……あれ。今何時?」
「七時ちょっと前」
「そう。じゃあまだ時間あるね。ゆっくり食べよ」
陽波はようやく頭がはっきりしてきたようだ。アストは言った。
「そうだ、陽波、今日の夕飯はお鍋で良い? まだ十月だけど、昨日テレビで見た豆乳鍋が美味しそうだったからやってみたいんだ」
「それは良いけど……仲間の魔法少女探しは?」
「え」
アストはぎくっとした。
「えーとね、それは一応、ちゃんとやってるよ」
「そう。やっぱりまだ見つからないんだ?」
「うん。結構厳しくて」
本当は割とサボり気味なのを隠した。陽波は納得したようで、それ以上追求せずに箸を進めた。
アストは今の、陽波と二人の生活に慣れ切ってしまい、仲間の魔法少女探しが億劫になっていた。
少女たちはアストがいても全く見向きもせず、大人は大人で疲れ切っていて魔法少女になって欲しいと頼むどころではない。陽波を見つけるまでにもかなり苦労したのだ。道端で行き倒れるほどに。
それに。かつての魔法少女たちを思うと、また大変だった生活に逆戻りしそうで、アストはなかなか乗り気になれないのだった。
仲間を増やさなければ陽波が苦労するのも分かっているので、近いうちにまた魔法少女探しをするつもりではいる。しかし、やはり億劫だった。陽波の家で家事をしている方がよほど楽しい。
陽波が朝食を終え、身支度をする間にアストは食器を片付け、陽波のベッドを整えた。魔法少女のサポート役のはずが、すっかり家事が板についている。アストも最初は陽波を支えるだけのつもりが気付けばこんな状態だったので、自分でも少しおかしかった。
「じゃあ行ってきまーす。アスト、仲間探し、頼むね」
「うん。あ、陽波、忘れ物!」
床に放ってあるミラクルスティックを手渡した。ばっちり化粧をしてスーツを着た陽波は、嫌そうな顔をしてスティックをアストへ押し返す。
「これ眩しいから嫌」
「ええ! だってこれが無いと怪物が出た時困るよ!」
「アストが持って来てくれればいいでしょ」
「ええー! 俺だって眩しいんだよこれ。光った状態で持ち歩くと目立つし……」
「知ってる」
陽波は外へ出ようとするのでアストは慌てて引き止めた。ミラクルスティックを手に押し付ける。
「お願いだから持って行って。女の子なんだし、危ない目にあったらどうするんだよ」
「……普通の女の子は危ない目にあっても変身しないから。これ持ってったところで変質者とかは倒せないし」
「変質者、出るの?」
「ああ、今のは言葉のアヤ。出ないけど、現代で危ないのはそれくらいってこと。まあいいや、心配してくれてるんだろうし持ってく……けど、怪物が出てもこっちから声かけるから、勝手に喋るのはやめてね」
アストは頷く。陽波は「夕飯楽しみにしてるね」と言って出て行った。アストは扉を閉じ、一人、ワンルームの部屋を振り返る。
「はあ。寂しい……」
陽波は今出て行ったばかりだというのに、既に寂しい。
夕方まで何をしようか。魔法少女探しか。今から外に出て兎の姿で魔法少女を探す(人間体だと怪しまれて逃げられる為)……と考えただけでアストは鬱鬱した気分になってしまった。
「今日はいいか。掃除しよ」
魔法少女探しは明日やる、と自分に言い聞かせ、アストは部屋の掃除を始めた。
「陽波! 朝だよ、起きてー! 時間!」
「もうちょっと~……」
陽波は布団に頭までくるまった。それをアストは強引に引き剥がそうとする。
「駄目だって! 遅刻するよ!」
「やだー……」
「じゃあ起きてよ」
「やだー」
アストは一旦諦め、三分待ってから再び陽波を起こしにかかった。陽波は寝起きが悪い。そして寝ぼけているので子供のようにワガママを言うのだ。アストは毎朝それに付き合わされているものの、辛抱強く陽波を起こし続けているのだった。
「陽波、じゃあ起きなくてもいいから朝御飯食べてよ。折角作ったんだから」
「えー……? しょうがないな……」
「今日は卵焼き上手に出来たから見て、早く!」
「うんうん、分かった分かった」
陽波は起き上がって洗面所へ向かった。アストは胸を撫で下ろす。出勤の時間には間に合いそうだ。
アストはご飯とみそ汁をよそって、テーブルに卵焼きも並べた。陽波が朝食を目の前にして目を擦る。
「わあ、すごい。お店みたい」
「お店じゃないよ、家だよ」
陽波はまだ寝ぼけているようだ。「いただきます」と行儀よく手を合わせ、陽波は朝食を食べ始めた。アストも少しだけ頂く。
「この卵焼きお店で買ったの?」
「違う。俺が作った」
「えっ。すごいじゃんアスト……お店開けるじゃん。美味しいよ、うんうん」
「あ、ありがとう……」
少し照れた。陽波は寝ぼけているので後で聞いても何を言ったか覚えてはいないだろう。それでもアストは嬉しかった。
そして朝食を食べている間に陽波は段々と目が覚めてくる。いつも同じだ。
「……あれ。今何時?」
「七時ちょっと前」
「そう。じゃあまだ時間あるね。ゆっくり食べよ」
陽波はようやく頭がはっきりしてきたようだ。アストは言った。
「そうだ、陽波、今日の夕飯はお鍋で良い? まだ十月だけど、昨日テレビで見た豆乳鍋が美味しそうだったからやってみたいんだ」
「それは良いけど……仲間の魔法少女探しは?」
「え」
アストはぎくっとした。
「えーとね、それは一応、ちゃんとやってるよ」
「そう。やっぱりまだ見つからないんだ?」
「うん。結構厳しくて」
本当は割とサボり気味なのを隠した。陽波は納得したようで、それ以上追求せずに箸を進めた。
アストは今の、陽波と二人の生活に慣れ切ってしまい、仲間の魔法少女探しが億劫になっていた。
少女たちはアストがいても全く見向きもせず、大人は大人で疲れ切っていて魔法少女になって欲しいと頼むどころではない。陽波を見つけるまでにもかなり苦労したのだ。道端で行き倒れるほどに。
それに。かつての魔法少女たちを思うと、また大変だった生活に逆戻りしそうで、アストはなかなか乗り気になれないのだった。
仲間を増やさなければ陽波が苦労するのも分かっているので、近いうちにまた魔法少女探しをするつもりではいる。しかし、やはり億劫だった。陽波の家で家事をしている方がよほど楽しい。
陽波が朝食を終え、身支度をする間にアストは食器を片付け、陽波のベッドを整えた。魔法少女のサポート役のはずが、すっかり家事が板についている。アストも最初は陽波を支えるだけのつもりが気付けばこんな状態だったので、自分でも少しおかしかった。
「じゃあ行ってきまーす。アスト、仲間探し、頼むね」
「うん。あ、陽波、忘れ物!」
床に放ってあるミラクルスティックを手渡した。ばっちり化粧をしてスーツを着た陽波は、嫌そうな顔をしてスティックをアストへ押し返す。
「これ眩しいから嫌」
「ええ! だってこれが無いと怪物が出た時困るよ!」
「アストが持って来てくれればいいでしょ」
「ええー! 俺だって眩しいんだよこれ。光った状態で持ち歩くと目立つし……」
「知ってる」
陽波は外へ出ようとするのでアストは慌てて引き止めた。ミラクルスティックを手に押し付ける。
「お願いだから持って行って。女の子なんだし、危ない目にあったらどうするんだよ」
「……普通の女の子は危ない目にあっても変身しないから。これ持ってったところで変質者とかは倒せないし」
「変質者、出るの?」
「ああ、今のは言葉のアヤ。出ないけど、現代で危ないのはそれくらいってこと。まあいいや、心配してくれてるんだろうし持ってく……けど、怪物が出てもこっちから声かけるから、勝手に喋るのはやめてね」
アストは頷く。陽波は「夕飯楽しみにしてるね」と言って出て行った。アストは扉を閉じ、一人、ワンルームの部屋を振り返る。
「はあ。寂しい……」
陽波は今出て行ったばかりだというのに、既に寂しい。
夕方まで何をしようか。魔法少女探しか。今から外に出て兎の姿で魔法少女を探す(人間体だと怪しまれて逃げられる為)……と考えただけでアストは鬱鬱した気分になってしまった。
「今日はいいか。掃除しよ」
魔法少女探しは明日やる、と自分に言い聞かせ、アストは部屋の掃除を始めた。
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