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日常編
10 絶対何か隠してるよ
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昼休みになった。陽波が財布を取りにロッカールームに入ると、織部が追いかけて来た。
「陽波~!」
「何でしょうか?」
「お昼一緒に食べない?」
「昼休みくらいゆっくりさせてくれー」
毎日コンビニで買って済ませている陽波と違い、織部は弁当持参のはずだ。将来の為に今から弁当作りの練習をしているの~だのと聞きたくもないことを聞かされた記憶がある。
織部は陽波の肩に手を置いた。
「黒須部長誘ってさ、三人でご飯行かない?」
「はあ~? 何で部長を誘う?」
「陽波もさ、この前の合コンで思ったでしょ? やっぱ黒須部長は違うんだって!」
織部のわざとらしい言い方で陽波はぴんと来た。財布を握りしめて織部を睨む。
「織部まさか、あの合コンはわざと?! わざと変な面子集めて『やっぱ黒須部長がいい~』て言わせるための作戦だったってこと!?」
「えー違うよー。なんかーああいうのしか集まらなかったっていうかー」
「超棒読み! 変だと思ったよ、そもそも織部は彼氏いるし! こっち二人なのに向こう三人だし!」
怒りを滲ませる陽波に対し、織部はしらばっくれている。
「私が悪かったよ陽波。その分今日は挽回するからさ!」
「てかさー……何で織部は私と部長をくっつけようとしてるわけ?」
「あれっ、分かっちゃった?」
「分かるわ!」
織部は悩まし気に溜め息を零した。
「私なりの優しさってやつ?」
「織部の優しさはマジでいらないんだけど、それにしても部長はハードル高すぎる。さすがに無理」
女性社員からの人気も高めな黒須部長である。他の社員を黙らせつつ堂々と隣に並ぶには、それなりのスペックが無いと厳しそうだ。陽波では到底無理だと自覚している。万が一付き合ったとしても、嫉妬とかを通り越して同情の目で見られそうだ。自分が惨めになってしまう。
そんな陽波の心境など知らず、織部は陽波の両肩を力強く掴んだ。
「これ内緒なんだけど」
「堂々と言うなあ」
「私ね、部長に言われてんの。陽波を気にかけるようにって」
「何それ。死にそうだからってこと?」
「もう陽波も歳だからねー……って違くて」
織部はしっかりノリツッコミをしてから真面目な顔をした。陽波も釣られて真面目な顔をする。
「すごい前にさ、いきなり部長に呼び出されて、告白か~彼氏いるしな~とか思いながら行ったの」
「冗談でもメンタル強いな」
「ありがと。……そしたら、まあ普通に仕事の話だったんだけどね。その後で真剣な顔して、すご~く言い辛そうにさ、『平牧さんのことを、気にかけて欲しいんだ』ってお願いされたわけ」
織部の全く似ていない部長の物真似はともかく、妙な話だった。陽波は首を傾げる。
「何で私を?」
「さあ? 『体調が悪そうだったら僕に教えて欲しい』とか『何かあったら全部僕に言ってくれればいいから』って言われて……そうなると、さすがに怪しむでしょ?」
「変だね」
「これは、あるな! と思ったわけよ私は。もう絶対ある。陽波を見つめる目もこう、何となく愛に満ちてる感じだし?」
織部の意見は無視しても、引っかかる話だった。普通、たかが一人の部下をそこまで気にかけるだろうか。他の人に同じことを言っているならともかく、陽波は何も言われたことがない。嬉しい、とかいう以前に違和感が大きい。あの部長が公私混同するとも思えない。
「うーん? 変だ……」
「というわけで、ご飯行こうねー」
「んー……」
陽波は織部に押されるままにロッカールームを出て、気付けば職場近くのカフェにいた。目の前には噂の黒須部長が座っている。彼の周りだけ空気が澄んでいる気がした。
「え! 部長スープだけですか! 小食なんですねー」
「朝にたくさん食べるから、昼は少なめにしてるんだ」
「へえ~」
実は自分が話したかっただけでは。織部と黒須の会話を耳に入れながら、陽波はサンドイッチを食べた。
先の織部の話が頭から離れない。いっそ本人に直接問い質してみようか。陽波は意を決して声をかけた。
「あのー、黒須部長」
「何?」
優しい眼差しが向けられると、さすがに陽波も怯んだ。目を合わせられない。顔の良さで溶けそうである。急いで別の話題を探した。
「いや、ええとー……ここのカフェ来たことあります?」
「前に一度だけ。静かで良いところだよね」
「そうですか。良いですよね~」
陽波は自分でも自分が何を言っているのか分からない状態だった。慣れないことに緊張しているのかもしれない。ちなみに陽波はこのカフェに来たのは初めてである。
「陽波~!」
「何でしょうか?」
「お昼一緒に食べない?」
「昼休みくらいゆっくりさせてくれー」
毎日コンビニで買って済ませている陽波と違い、織部は弁当持参のはずだ。将来の為に今から弁当作りの練習をしているの~だのと聞きたくもないことを聞かされた記憶がある。
織部は陽波の肩に手を置いた。
「黒須部長誘ってさ、三人でご飯行かない?」
「はあ~? 何で部長を誘う?」
「陽波もさ、この前の合コンで思ったでしょ? やっぱ黒須部長は違うんだって!」
織部のわざとらしい言い方で陽波はぴんと来た。財布を握りしめて織部を睨む。
「織部まさか、あの合コンはわざと?! わざと変な面子集めて『やっぱ黒須部長がいい~』て言わせるための作戦だったってこと!?」
「えー違うよー。なんかーああいうのしか集まらなかったっていうかー」
「超棒読み! 変だと思ったよ、そもそも織部は彼氏いるし! こっち二人なのに向こう三人だし!」
怒りを滲ませる陽波に対し、織部はしらばっくれている。
「私が悪かったよ陽波。その分今日は挽回するからさ!」
「てかさー……何で織部は私と部長をくっつけようとしてるわけ?」
「あれっ、分かっちゃった?」
「分かるわ!」
織部は悩まし気に溜め息を零した。
「私なりの優しさってやつ?」
「織部の優しさはマジでいらないんだけど、それにしても部長はハードル高すぎる。さすがに無理」
女性社員からの人気も高めな黒須部長である。他の社員を黙らせつつ堂々と隣に並ぶには、それなりのスペックが無いと厳しそうだ。陽波では到底無理だと自覚している。万が一付き合ったとしても、嫉妬とかを通り越して同情の目で見られそうだ。自分が惨めになってしまう。
そんな陽波の心境など知らず、織部は陽波の両肩を力強く掴んだ。
「これ内緒なんだけど」
「堂々と言うなあ」
「私ね、部長に言われてんの。陽波を気にかけるようにって」
「何それ。死にそうだからってこと?」
「もう陽波も歳だからねー……って違くて」
織部はしっかりノリツッコミをしてから真面目な顔をした。陽波も釣られて真面目な顔をする。
「すごい前にさ、いきなり部長に呼び出されて、告白か~彼氏いるしな~とか思いながら行ったの」
「冗談でもメンタル強いな」
「ありがと。……そしたら、まあ普通に仕事の話だったんだけどね。その後で真剣な顔して、すご~く言い辛そうにさ、『平牧さんのことを、気にかけて欲しいんだ』ってお願いされたわけ」
織部の全く似ていない部長の物真似はともかく、妙な話だった。陽波は首を傾げる。
「何で私を?」
「さあ? 『体調が悪そうだったら僕に教えて欲しい』とか『何かあったら全部僕に言ってくれればいいから』って言われて……そうなると、さすがに怪しむでしょ?」
「変だね」
「これは、あるな! と思ったわけよ私は。もう絶対ある。陽波を見つめる目もこう、何となく愛に満ちてる感じだし?」
織部の意見は無視しても、引っかかる話だった。普通、たかが一人の部下をそこまで気にかけるだろうか。他の人に同じことを言っているならともかく、陽波は何も言われたことがない。嬉しい、とかいう以前に違和感が大きい。あの部長が公私混同するとも思えない。
「うーん? 変だ……」
「というわけで、ご飯行こうねー」
「んー……」
陽波は織部に押されるままにロッカールームを出て、気付けば職場近くのカフェにいた。目の前には噂の黒須部長が座っている。彼の周りだけ空気が澄んでいる気がした。
「え! 部長スープだけですか! 小食なんですねー」
「朝にたくさん食べるから、昼は少なめにしてるんだ」
「へえ~」
実は自分が話したかっただけでは。織部と黒須の会話を耳に入れながら、陽波はサンドイッチを食べた。
先の織部の話が頭から離れない。いっそ本人に直接問い質してみようか。陽波は意を決して声をかけた。
「あのー、黒須部長」
「何?」
優しい眼差しが向けられると、さすがに陽波も怯んだ。目を合わせられない。顔の良さで溶けそうである。急いで別の話題を探した。
「いや、ええとー……ここのカフェ来たことあります?」
「前に一度だけ。静かで良いところだよね」
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陽波は自分でも自分が何を言っているのか分からない状態だった。慣れないことに緊張しているのかもしれない。ちなみに陽波はこのカフェに来たのは初めてである。
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