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激情編
21 教育に良くない!
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スパークルクラッシュの輝きが怪物に注ぐ。壊れかけたビルも元通りになり、ルチカは達成感と共にティグロを見上げた。
「どーよ! 私たちのコンビネーション的なやつは!」
「“的なやつ”はいらねェだろ。つーかよ、お前いつまで一人でやるつもりなんだ?」
「それは私も思うけどもこの際仕方ないじゃないのよ」
アストと連携を取りながら今回も無事に怪物を倒せたのだった。アストが積極的に動くようになったお陰で以前より楽にはなったが、戦うのは結局ルチカ一人だ。一人での戦いは辛い。
ティグロは鼻を鳴らして、ルチカたちを赤い目で見下ろした。
「仕方ねえ仕方ねえって、いつまで続くんだかな。俺様は別にいーけどなァ」
「ふんだ! さっさと帰りなさいよ!」
「へいへい。んーじゃ、また来るぜェ。予定空けとけよ~」
「言われなくても空いてるわよ! もう来なくていい!」
それはそれでどうなんだ、というティグロの視線をルチカは華麗に受け流した。
ティグロはいつも通り消え、ルチカは変身を解いた。スーツに戻るとほっとする。フリフリ姿は心身ともに疲れるのだ。
「お疲れ様。じゃあ帰ろう」
「あー、私、会社に用事があったんだった。アスト先に帰ってて良いよ」
「待とうか?」
「ううん。大丈夫」
陽波はアストと別れて会社へ戻った。しかし実は何の用事も無い。アストと離れて一人で休みたいだけだった。
――近頃、アストが変だ。
陽波はふらふらと会社の周辺を歩きながら息を吐いた。
ここ一か月ほど、アストの動きが変化していた。掃除や料理など家事にかける手間が増えたのである。きっちり整理整頓された綺麗な部屋、栄養バランスを考えて作られた料理。適当な性格の陽波からすると、息が詰まるような生活になっていた。
それだけではない。陽波が怠惰にスマホを眺めている時、ふと顔を上げるとアストがこちらを見ているのである。ちょっとしたホラーだった。陽波は家にいる間中、アストの視線を感じるようになり、非常に居心地が悪かった。
理由をさりげなく問うと、アストの答えは『陽波の為に』である。陽波は苦笑いを返すしかなかった。
陽波は会社の近くのコンビニに入り意味もなく商品を眺めていた。
「帰りたくないな……」
つい本音が漏れた。家にいながら謎にプレッシャーを感じるのが辛い。気が休まらなかった。
アストの行動の意味は何なのだろうか。陽波があまりにダメ人間過ぎて更生させようとしているとしか思えない。掃除はマメに毎日やること、料理はバランスを考えること、いつまでもスマホを眺めないこと……。
どうしてあんなマネージャーのようになってしまったのか。サポート役としては間違っていないが、陽波には重荷でしかない。
何も買わずに出るのも申し訳ないので、陽波は牛乳を手にレジに向かった。すると。顔見知りが店内に入って来た。思わず呟いてしまう。
「あれ、部長だ……」
「平牧さん?」
黒須部長は陽波を見て不思議そうな顔をした。陽波は随分前に退勤しているので会社の近くにいるはずが無いのだ。陽波は聞かれてもいないのに言い訳をした。
「牛乳が無いのを思い出して、買いに来たんです」
「そうなんだ。家の近くにコンビニは無いの?」
「あ、えーっと、こっちの方が安いので」
そんなわけあるか。陽波は心の中でセルフツッコミをした。同じコンビニチェーン店で値段が違えば問題である。黒須は大して問題にもせず納得していた。
陽波は黒須とコンビニの棚とを眺めた。黒須とコンビニという組み合わせは新鮮だ。高級フレンチレストランが似合いそうな顔なのに、安っぽい商品と並んでいるのが不釣り合いで面白い。陽波はついまじまじ見ながら言う。
「部長は今から帰りですか?」
「いや。まだ帰れないんだ。仕事が残ってるからね、飲み物を買いに来ただけだよ」
「え。大変ですね。何か手伝いましょうか」
「ありがとう。気持ちだけで嬉しいよ。平牧さんは家に帰ってのんびりしてくれれば十分だ」
「そうですか。あはは……」
残念だ。陽波がそう思ったのが顔に出たのか、黒須は少し声のトーンを落として言った。
「何か悩み事?」
「へ!? 分かるんですか?」
「いつも見てるからね」
意味深なことを言われ、陽波の喉は引きつった。言葉に詰まる。黒須はそんな陽波を見て自分の発言に気付いたようだった。
「ああ、これだとストーカーみたいだ。そういう邪な気持ちは一切無くて、ええと……部下の様子はいつも気にしてるから、と言いたかったんだ」
「わ、分かってます分かってます」
邪な気持ち無いんだ……。陽波は少し残念だった。一瞬緊張してしまったのが恥ずかしい。
黒須は純粋に上司として陽波を見守ってくれているだけだ。分かってはいる、全くそういった気持ちが無いことも陽波は分かっていた。それでも期待してしまった。
陽波の気も知らず、黒須は穏やかな笑みを浮かべた。
「どんな悩み? 仕事のことなら僕でも協力出来ると思うから、何でも言って欲しい」
彼のこの微笑みを見ると何でも話してしまいたくなる。しかし陽波はぐっと堪えた。
「いえ、仕事は全然、全く問題ないです。ちょっとプライベートで色々あったもので」
「そっちか。さすがに僕が聞くわけにはいかないね」
「大したことじゃないので、部長は気にしないでください」
陽波も笑みを浮かべると、黒須は逆に表情を曇らせた。
「そんな憂鬱そうな顔してたら、僕は気になるけどね」
「すみません。でも仕事の時はちゃんとしますから、心配しないでください」
「そうじゃないよ」
黒須は苦笑いを作った。そして、どこか上の方を見ながら言った。
「平牧さん。もしかしてだけど、家に帰りにくいとかだったりする?」
エスパー? 陽波は驚きながらも、彼なら何でもお見通しだろうなと納得もしていた。黒須という人間にはそう思わせるだけの説得力がある。
陽波は正直に頷いた。
「まあ、そんな感じです。あ、いや一人暮らしなんですけどね、たまにあるじゃないですかそういう時って」
「僕も何となく帰りたくない時があるから分かるよ。……それなら仕事を手伝ってくれないかな? 残業扱いにするし、雑用しかないから気楽にやってくれればいいよ」
ね、と黒須は陽波の目を見て言った。陽波は「やります!」と即答してから先に帰ったアストのことを思い出した。
「あの、私ちょっと連絡するところあるので先に会社に行っててください。追いつきますから」
急いで牛乳だけ購入し、陽波はコンビニを出ると物陰でミラクルスティックに向かって、帰りが遅くなることを伝えた。返事が無かったので本当に伝わったか不安だが仕方ない。
「どーよ! 私たちのコンビネーション的なやつは!」
「“的なやつ”はいらねェだろ。つーかよ、お前いつまで一人でやるつもりなんだ?」
「それは私も思うけどもこの際仕方ないじゃないのよ」
アストと連携を取りながら今回も無事に怪物を倒せたのだった。アストが積極的に動くようになったお陰で以前より楽にはなったが、戦うのは結局ルチカ一人だ。一人での戦いは辛い。
ティグロは鼻を鳴らして、ルチカたちを赤い目で見下ろした。
「仕方ねえ仕方ねえって、いつまで続くんだかな。俺様は別にいーけどなァ」
「ふんだ! さっさと帰りなさいよ!」
「へいへい。んーじゃ、また来るぜェ。予定空けとけよ~」
「言われなくても空いてるわよ! もう来なくていい!」
それはそれでどうなんだ、というティグロの視線をルチカは華麗に受け流した。
ティグロはいつも通り消え、ルチカは変身を解いた。スーツに戻るとほっとする。フリフリ姿は心身ともに疲れるのだ。
「お疲れ様。じゃあ帰ろう」
「あー、私、会社に用事があったんだった。アスト先に帰ってて良いよ」
「待とうか?」
「ううん。大丈夫」
陽波はアストと別れて会社へ戻った。しかし実は何の用事も無い。アストと離れて一人で休みたいだけだった。
――近頃、アストが変だ。
陽波はふらふらと会社の周辺を歩きながら息を吐いた。
ここ一か月ほど、アストの動きが変化していた。掃除や料理など家事にかける手間が増えたのである。きっちり整理整頓された綺麗な部屋、栄養バランスを考えて作られた料理。適当な性格の陽波からすると、息が詰まるような生活になっていた。
それだけではない。陽波が怠惰にスマホを眺めている時、ふと顔を上げるとアストがこちらを見ているのである。ちょっとしたホラーだった。陽波は家にいる間中、アストの視線を感じるようになり、非常に居心地が悪かった。
理由をさりげなく問うと、アストの答えは『陽波の為に』である。陽波は苦笑いを返すしかなかった。
陽波は会社の近くのコンビニに入り意味もなく商品を眺めていた。
「帰りたくないな……」
つい本音が漏れた。家にいながら謎にプレッシャーを感じるのが辛い。気が休まらなかった。
アストの行動の意味は何なのだろうか。陽波があまりにダメ人間過ぎて更生させようとしているとしか思えない。掃除はマメに毎日やること、料理はバランスを考えること、いつまでもスマホを眺めないこと……。
どうしてあんなマネージャーのようになってしまったのか。サポート役としては間違っていないが、陽波には重荷でしかない。
何も買わずに出るのも申し訳ないので、陽波は牛乳を手にレジに向かった。すると。顔見知りが店内に入って来た。思わず呟いてしまう。
「あれ、部長だ……」
「平牧さん?」
黒須部長は陽波を見て不思議そうな顔をした。陽波は随分前に退勤しているので会社の近くにいるはずが無いのだ。陽波は聞かれてもいないのに言い訳をした。
「牛乳が無いのを思い出して、買いに来たんです」
「そうなんだ。家の近くにコンビニは無いの?」
「あ、えーっと、こっちの方が安いので」
そんなわけあるか。陽波は心の中でセルフツッコミをした。同じコンビニチェーン店で値段が違えば問題である。黒須は大して問題にもせず納得していた。
陽波は黒須とコンビニの棚とを眺めた。黒須とコンビニという組み合わせは新鮮だ。高級フレンチレストランが似合いそうな顔なのに、安っぽい商品と並んでいるのが不釣り合いで面白い。陽波はついまじまじ見ながら言う。
「部長は今から帰りですか?」
「いや。まだ帰れないんだ。仕事が残ってるからね、飲み物を買いに来ただけだよ」
「え。大変ですね。何か手伝いましょうか」
「ありがとう。気持ちだけで嬉しいよ。平牧さんは家に帰ってのんびりしてくれれば十分だ」
「そうですか。あはは……」
残念だ。陽波がそう思ったのが顔に出たのか、黒須は少し声のトーンを落として言った。
「何か悩み事?」
「へ!? 分かるんですか?」
「いつも見てるからね」
意味深なことを言われ、陽波の喉は引きつった。言葉に詰まる。黒須はそんな陽波を見て自分の発言に気付いたようだった。
「ああ、これだとストーカーみたいだ。そういう邪な気持ちは一切無くて、ええと……部下の様子はいつも気にしてるから、と言いたかったんだ」
「わ、分かってます分かってます」
邪な気持ち無いんだ……。陽波は少し残念だった。一瞬緊張してしまったのが恥ずかしい。
黒須は純粋に上司として陽波を見守ってくれているだけだ。分かってはいる、全くそういった気持ちが無いことも陽波は分かっていた。それでも期待してしまった。
陽波の気も知らず、黒須は穏やかな笑みを浮かべた。
「どんな悩み? 仕事のことなら僕でも協力出来ると思うから、何でも言って欲しい」
彼のこの微笑みを見ると何でも話してしまいたくなる。しかし陽波はぐっと堪えた。
「いえ、仕事は全然、全く問題ないです。ちょっとプライベートで色々あったもので」
「そっちか。さすがに僕が聞くわけにはいかないね」
「大したことじゃないので、部長は気にしないでください」
陽波も笑みを浮かべると、黒須は逆に表情を曇らせた。
「そんな憂鬱そうな顔してたら、僕は気になるけどね」
「すみません。でも仕事の時はちゃんとしますから、心配しないでください」
「そうじゃないよ」
黒須は苦笑いを作った。そして、どこか上の方を見ながら言った。
「平牧さん。もしかしてだけど、家に帰りにくいとかだったりする?」
エスパー? 陽波は驚きながらも、彼なら何でもお見通しだろうなと納得もしていた。黒須という人間にはそう思わせるだけの説得力がある。
陽波は正直に頷いた。
「まあ、そんな感じです。あ、いや一人暮らしなんですけどね、たまにあるじゃないですかそういう時って」
「僕も何となく帰りたくない時があるから分かるよ。……それなら仕事を手伝ってくれないかな? 残業扱いにするし、雑用しかないから気楽にやってくれればいいよ」
ね、と黒須は陽波の目を見て言った。陽波は「やります!」と即答してから先に帰ったアストのことを思い出した。
「あの、私ちょっと連絡するところあるので先に会社に行っててください。追いつきますから」
急いで牛乳だけ購入し、陽波はコンビニを出ると物陰でミラクルスティックに向かって、帰りが遅くなることを伝えた。返事が無かったので本当に伝わったか不安だが仕方ない。
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