アラサー魔法少女ミラクル☆ルチカ!!~マスコットキャラの愛が重くて面倒臭いと思っているけど本人には内緒だよ~

空木切

文字の大きさ
36 / 48
激情編

21-2

しおりを挟む
 気付けば夜も更け、陽波は黒須が呼んだタクシーに乗って帰宅した。遅い時間までごめんね、と黒須に謝られて陽波は逆に申し訳ない気持ちになってしまった。

 陽波的には家にいるより仕事をしている方が楽だったのである。時間に気付かなかったのもその所為で、黒須に責任は無い。むしろ感謝したいくらいだった。

 陽波は気持ちを切り替えると家の鍵を開けた。

「ただいま。ごめんアスト、仕事してたら遅くなった」
「お、おかえり。大変だった? ご飯、温め直すから待ってて」

 遅くなるというのはしっかり伝わっていたらしい。陽波が座ると、夕食の皿がいくつか並んだ。サラダに和え物に味噌汁に、メインは魚料理だ。

「お肉が食べたいなあ……」
「昨日は肉だったから、今日は魚だよ」
「分かるけどさ」

 魚も別に嫌いではない。ただ、今の気分ではなかった。
 アストが作る物は近頃どれも美味しい。凝った料理も多いが、陽波としてはもっと気楽に作って、楽しく食べられる物の方が嬉しい。

「大変だったでしょ魚なんて」
「切り身のを照り焼きにしただけだからそんな大変でもないよ。陽波、焼き魚嫌いだっけ?」
「ううん。別に普通」

 陽波はかつての、アストが焦がしてしまったハンバーグの味を思い出していた。食べたいと言ってみたらアストが作ってくれたものの、その頃は料理自体が不慣れで失敗してしまったのだ。今でも思い出せる懐かしい味だった。

「私、ハンバーグが食べたい」
「ハンバーグ? んー、いいけど、すぐには難しいかな。陽波、最近顔色良くないし鉄分取った方がいいだろうから明日は……」
「アスト。あんたいつから私の家政婦になったわけ?」

 陽波は夕食を綺麗に食べ終えて、箸を置いた。そしてアストを見つめる。アストは目を瞬かせた。

「そんなつもりはないけど」
「ごちそうさま。今日も美味しかったよ。でも私、ここまでして欲しいって言ってない。もうやらなくていいよ」
「え。だって俺は陽波の為に」
「それ! それがよく分かんない。アストにも何か考えがあるんだろうなーと思って私も何も言わなかったけど。正直、もう私が限界」

 陽波は立ち上がった。アストは怯えた目で陽波を見ている。少し心が痛んだが、このままではお互いの為に良くない。陽波は腹に力を入れて言った。

「アスト、明日からは私の為に何もしなくていいから。朝も起こさなくていい。アストは魔法少女とか、そっちの方だけやって」
「な、何でそんなこと言うの、いきなり」
「お互い冷静になろうよ。私がアストに頼り切ってるのも悪いし、一回お互いのペースを思い出した方がいい」

 黒須と仕事をしながら考えていたことだった。上司と部下で仕事を分けるように、アストと陽波も自分のやることをきちんと分けるべきだと。
 アストは陽波の生活を支える為にいるのではない。魔法少女のサポートをする為にいるのだ。

「分かった?」

 陽波が問えば、アストは頷く。彼はいつも素直だから。しかし今回は頷かなかった。口を引き結んだまま、アストはゆっくり視線を落とした。頷いたようにも見えなくもないが、そうではないだろう。

 言い方がきつかったかもしれない。陽波も罪悪感で気まずくなってきたので、シャワーを浴びに行った。


 シャワーから出てくると、アストはまだ同じ格好で固まっていた。

 陽波は髪を乾かしながらアストの様子を窺った。思えば最近は、髪を乾かすのさえアストに手伝ってもらっていた。さすがに良くなかったと今更自己嫌悪する。甘えすぎ、頼りすぎだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。 イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。 8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。 ※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。

【完結】ヤンデレ乙女ゲームの転生ヒロインは、囮を差し出して攻略対象を回避する。はずが、隣国の王子様にばれてしまいました(詰み)

瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
 ヤンデレだらけの乙女ゲームに転生してしまったヒロイン、アシュリー。周りには、攻略対象のヤンデレ達が勢ぞろい。  しかし、彼女は、実現したい夢のために、何としても攻略対象を回避したいのだ。  そこで彼女は、ヤンデレ攻略対象を回避する妙案を思いつく。  それは、「ヒロイン養成講座」で攻略対象好みの囮(私のコピー)を養成して、ヤンデレたちに差し出すこと。(もちろん希望者)  しかし、そこへ隣国からきた第五王子様にこの活動がばれてしまった!!  王子は、黙っている代償に、アシュリーに恋人契約を要求してきて!?  全14話です+番外編4話

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...