それなりに怖い話。

只野誠

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ひま

ひま

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 男は暇を持て余していた。
 その日は休日で家にいたのだが、エアコンの清掃がある、と言われて男は自分の部屋を追い出され、空き部屋である和室にいた。
 そこですることもなくなく、こんなことなら何か予定を入れておくべきだった、と男は後悔する。

 外は天気が良い。
 だが、外に出る気もなれず男は部屋で暇を持て余している。
 畳の上に寝っ転がり寝ようとするが、畳が固く寝れそうにはない。
 男は畳がこんなにも硬かったか? と、そんな事を思う。
 それくらいには暇だった。

 遠くからエアコンを掃除している電動音が聞こえて来る。
 男がそんな騒音を子守唄にうとうとし始めた頃だ。
 不意に天井を、半ば目を閉じながら見ている視界に移り込んでくるものがあるった。

 顔だ。

 大きな仮面を被ったような、一メートルはあろうかという巨大な顔が、いや、顔だけが宙に浮いて男を覗き込んでいる。
 男の目をすぐに覚める。

 だが、体が動かない。

 大きな宙を浮く顔が男をぎょろりとした眼で覗き込む。
 男は考える。
 なんで家にこんな化物がいるのだと。
 しかも、今は昼前だ。午前の十一時を少し過ぎたばかりの時刻だ。
 こんな真昼間から出て来る化物がいるか、と、男が思うのだが、化物は実際に居て、今も男の顔をのぞき込んで来ている。

 助けを呼ぼうにも声すら出ない。

 男は冷や汗を流しながら、大きな仮面の顔を、いや、正確には仮面を被っていない、素顔が仮面のようななのだ、そんな顔を見る。
 ただ大きな顔も男を覗き込むだけで特に何もしてこない。

 しばらくそのままの時間が流れる。

 コンコンと、和室の引き戸をノックする音が聞こえる。
 そうすると、大きな宙に浮く顔はパッと消える。
 男の金縛りも解かれる。

 動けるようになった男は和室の戸を開けると、エアコンの清掃していた清掃員が、二階の清掃終わりましたので、こちらの和室のエアコンを、と話しかけて来た。
 男は清掃員を和室に招き入れ、清掃員を見守っていた。
 あの大きな顔が現れたら可哀そうだからとだ。

 だが、清掃員は男に見張られ、終始、和室での仕事がやりづらそうにしていた。
 ただそれだけの話だ。




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