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しおりを挟む嵐が過ぎ去った頃、またもや連絡無しの訪問が来た。けれどレミーアが嫌な顔せずに応対したのは、相手がアスラーナだったからだ。隣に不機嫌そうなラードがいることはこの際無視でいいだろう。
「レミーア!!!」
「きゃっ!」
いきなり飛びついてきたアスラーナに苦笑しながら、レミーアは抱きしめ返す。
「アスラーナ、ラード様が物凄い顔で私を睨んでいるのだけれど」
「気にしなくていいわ。それよりも貴女の心にトラウマをつけるなんて、あのバカ王子、絶対に許さない…!」
そう言ったアスラーナの瞳の奥には確かな怒りがそれはそれは燻っていた。
「大丈夫、大丈夫よ、アスラーナ、だからちょっと離してちょうだい」
ラードが睨んでいるということと、少し苦しくなったので離すように促す。
レミーアの身体を確認してから、ようやくアスラーナは腕を離した。
「ごめんなさい、もっと早く来れたら良かったのだけれど。嵐の中は危ないからと、お兄様が許してくれなくて」
ちらりと視線をやると、当たり前だと言わんばかりのラードがいた。いや、まぁいいんだけれど。
「当たり前だ。アスラーナに何かあったらどうする?責任がお前に取れるのか?」
「何も言ってませんが」
「レミーア、私のせいよ。私があのバカ王子を追い返したから…!」
思いつめた顔をするアスラーナに笑う。
「バカ王子を追い払ったのはラード様でしょう?」
そのくらい当たり前に想像がつく。それこそ鬼の形相で何をしに来たのかと問い詰めただろう。アスラーナに近付くことすら許さなかったのではないか。
「それよりも、レミーア。どういうことなの」
「なにが?」
「アゼル様よ!婚約するなんて、私、貴女から一言も聞いていないわ」
親友なのに、と顔を曇らせるアスラーナに慌てて謝罪する。
「ごめんなさい、突然のことだったから」
「それに貴女がアゼル様を好きでいたなんて、全く知らなかった。何も教えてくれなかったから」
「それもごめんなさい。けれどまさか、想いが叶うなんて思わなくて」
「そうかしら?」
首を傾げたレミーアに見惚れながら、ラードが馬鹿にしたようにレミーアを見た。
「アゼルの気持ちなんて一目瞭然だったがな」
「え?」
そうか?確かに優しくはしてくれていたが、それは自分だけではないのだと自惚れないようにしていた。
「アゼルが優しく接するのなんてお前くらいのもんさ。まぁ、私にはアスラーナ以外の女などどこがいいのか分からないが」
相変わらずのラードのウザさが今日は何となく、嬉しかった。というよりももっと早く言ってくれれば、と言ったのだが。
「両思いのくせにジリジリしているのを見るのは楽しかったぞ」
そう言ったラードの足を思い切り踏んでしまったのはこの際、許してくれるだろう。
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