私のお猫さま 25歳を迎えて猫又さまになりました

月見こだま

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第三部

03:猫又さまと管理人

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 眠るミケを起こさないようにベッドから抜け出して、洗濯機を確認しに行く。乾燥したての服はあったかくて、ふわふわしていた。

(うちもドラム式ほしいなあ……)

 時間かかっても乾燥までしてもらえるのは助かる。ただ、買える値段かわからないけど。

(それにしても、仕事どうしようかな。今でさえかなり調整したのに……)

 納期の迫っているものを思い出して、うーんと唸る。パソコンさえあればどこでも仕事が出来るとはいえ、パソコンがなければ何もできない。
 洗濯物を全て取り出して考え込んでいると。


 ――ピンポ――ン

「!!」

 突然インターフォンが鳴り、体が跳ねた。危うく洗濯物を落としそうになったが、なんとか腕に抱える。

(なに……!?)

 ――ピンポ――ン

 再び、インターフォンが鳴る。一瞬、まさか化け犬!? と思ったけど、それならインターフォンを鳴らすわけがない。ひと眠りをして多少の冷静さを取り戻していたわたしは、洗濯ものをベッドの上に置く。――ミケの耳はぴくぴく動いているが、よく眠っている。起こさないように扉を閉めて、玄関へ向かう。

(クロがここは安全って言ってた。大丈夫)

 わたしは覚悟を決めた。

『こんばんは~。神崎です』
「……え?」

 玄関の近くに立ったことで、声がはっきり聞こえた。――知らない女性の声。けれど、神崎と名乗った。

『花屋敷さん~』
「あ……今開けます!」
『お願いします』

 名前を呼ばれ、わたしは玄関の扉を開けた。

「――あの……」

 そこに立っていたのは、知らない女性。だけど、笑い方は神崎先生によく似ていた。

「どうも、はじめまして。神崎の娘で、神崎裕子と申します」

 ふわっとした茶色の髪。目じりを下げて笑う女性は、神崎先生の娘だと名乗った。





「お食事とられてないと思ったので、少し持ってきました」
「あ、ありがとうございます」
「いいえ~」
「……あの、ここすごいですね」
「ふふ、そうですよね。びっくりしちゃいますよね」

(岡本先生はカチッとしてらしたけど……裕子さん、すごくふんわりした方だなあ……)

 動物看護師さんって言われてたし、もう接し方が染みついてるのかな? とわたしは思った。

「ここ、神谷さん――クロの飼主さんの敷地内にある隔離場なんですよ」
「え」

(か、神谷さんの家だったの!?)

 ――いや、当たり前にそうなるのかな? でもあんな大きな家があって、更に平屋まで敷地内なんて……。

「驚きますよね」
「ええ……」
「神谷さんとクロは、猫又の保護をしてるんですよ」
「保護……」
「やっぱり猫の寿命延びてますからねぇ……猫又になる子も増えてて」

 語尾が切れた。でも、予想はついた。猫又が飼主の命を脅かす存在であること。その上で、猫又を狙う猫又の存在もいる。少しでも被害を減らそうと、動いているんだ。

「母屋にもね、二人いるんですよ」
「二人も……」
「ううん。減って、二人だけなの」

 ――二人も、と驚いたけど。裕子さんは、悲しそうに二人だけ、と言った。ひやりと背中が冷える。化け犬に猫又食い――もしかしたら、まったく別の理由かもしれないけど。
 何か――事情があって減ってしまったのだ。

「……そう、なんですね」

 わたしはそれ以上言葉に出来なかった。言えなかった。もしかしたらそれは、ミケにも降りかかることかもしれないから。

「――ちなみに、私はここの管理をさせてもらってるの。たまに、母屋の掃除もね。――あ、お給金も貰って、仕事としてしてる」

 裕子さんは、重くなった空気を振り払うように、ぱっと顔をあげた。その言葉に、わたしは納得する。
 だから、こんなにアメニティが豊富だったのかな。

 わたしの表情から伝わったのか、裕子さんは笑った。

「ほんとはね、私の他にもう一人いて。細かな気配りしてくれてたのはその子の方。でもその子が今入院してて――花屋敷さんもよく知ってる人なんだけど――」

 裕子さんは、眉を下げた。




「まりなちゃんよ」


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