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番外編
はじまり
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「…本当にこんなところへ私たちの可愛い子を置いていくのかい?」
もうすぐ日が昇ろうか、という時間帯。
「あぁ。調べてみたが、なかなか評判の良い孤児院のようだ。慢性的な金欠、という点を除いてはな…。この子が大きくなるまで、陰ながら金を送り続けることにしよう」
教会の隣に建つ古い建物の前で、2人の男たちが小さな籠を抱えて立ち、周りの静寂などものともせずに平然と話をしている。
「…ふむ。大工も派遣した方がいいな」
崩れ落ちそうな屋根を見上げ、淡い髪の男が呟く。
「いくらここに番いたい相手がいるとはいえ、この子はまだ小さすぎるだろう」
「だぁ、だー? きゃっ」
籠からは機嫌が良さそうな赤ん坊の声。
ところが建物の中は寝静まっており、誰も外の音に気付く気配はない。
いくらなんでもありえない状況だ。
「『番の側にいたい』という本人の希望なのだから仕方あるまい。まぁ、この子が人の形をした相手を選んでくれて安心したよ」
「本当に君たちは不思議な生き物だね」
「ふふ…。古代種の我々にとっては、番という存在こそが最も大切なのだよ。至高の相手を前にしては、親など全く価値のないものに成り下がる」
「薄情なのだな」
「その分、番に対して捧げる愛は絶大なものだよ」
背の高い淡い色の髪の男が、焦茶色の髪の男の唇に口付けを落とす。
「あぁ。君のその劇的なまでに重い愛は、十分どころか十二分、私に伝わっているさ」
「次は君に似た人間の子を産んでみせるから、どうか機嫌を直しておくれ」
「…できれば君に似た子が良いな」
どうやら2人のうちのどちらかが魔法で消音結界を張っているようだ。
「「どうか幸せに」」
2人の男たちは赤子の額へちゅ、ちゅ、と左右から口付けると、籠を孤児院の玄関前へ下ろす。
「だぁ、だーだ?」
焦茶色の髪の男がパチンと一度指を鳴らすと、赤子の声に反応するように建物の中で灯りが点った。
「…どなたですか?」
神父と思われる丸メガネの男が恐る恐る玄関扉を開いて顔を外に出せば、そこにはひとつの籠が置かれており、それ以外に人の姿は見当たらないのだった。
「はぁ。まさか2日連続で赤子の置き去りとは…」
「だーだ」
「おや、愛嬌のある可愛い子だ。淡い色の髪と瞳が美しいね」
丸メガネの男は籠をゆっくり抱き上げると、大切そうに建物の中へと運び込んで行くのだった。
後に幼馴染、やがて家族となる2人が隣同士のベッドに寝かせられるまで、
…あと十数秒。
もうすぐ日が昇ろうか、という時間帯。
「あぁ。調べてみたが、なかなか評判の良い孤児院のようだ。慢性的な金欠、という点を除いてはな…。この子が大きくなるまで、陰ながら金を送り続けることにしよう」
教会の隣に建つ古い建物の前で、2人の男たちが小さな籠を抱えて立ち、周りの静寂などものともせずに平然と話をしている。
「…ふむ。大工も派遣した方がいいな」
崩れ落ちそうな屋根を見上げ、淡い髪の男が呟く。
「いくらここに番いたい相手がいるとはいえ、この子はまだ小さすぎるだろう」
「だぁ、だー? きゃっ」
籠からは機嫌が良さそうな赤ん坊の声。
ところが建物の中は寝静まっており、誰も外の音に気付く気配はない。
いくらなんでもありえない状況だ。
「『番の側にいたい』という本人の希望なのだから仕方あるまい。まぁ、この子が人の形をした相手を選んでくれて安心したよ」
「本当に君たちは不思議な生き物だね」
「ふふ…。古代種の我々にとっては、番という存在こそが最も大切なのだよ。至高の相手を前にしては、親など全く価値のないものに成り下がる」
「薄情なのだな」
「その分、番に対して捧げる愛は絶大なものだよ」
背の高い淡い色の髪の男が、焦茶色の髪の男の唇に口付けを落とす。
「あぁ。君のその劇的なまでに重い愛は、十分どころか十二分、私に伝わっているさ」
「次は君に似た人間の子を産んでみせるから、どうか機嫌を直しておくれ」
「…できれば君に似た子が良いな」
どうやら2人のうちのどちらかが魔法で消音結界を張っているようだ。
「「どうか幸せに」」
2人の男たちは赤子の額へちゅ、ちゅ、と左右から口付けると、籠を孤児院の玄関前へ下ろす。
「だぁ、だーだ?」
焦茶色の髪の男がパチンと一度指を鳴らすと、赤子の声に反応するように建物の中で灯りが点った。
「…どなたですか?」
神父と思われる丸メガネの男が恐る恐る玄関扉を開いて顔を外に出せば、そこにはひとつの籠が置かれており、それ以外に人の姿は見当たらないのだった。
「はぁ。まさか2日連続で赤子の置き去りとは…」
「だーだ」
「おや、愛嬌のある可愛い子だ。淡い色の髪と瞳が美しいね」
丸メガネの男は籠をゆっくり抱き上げると、大切そうに建物の中へと運び込んで行くのだった。
後に幼馴染、やがて家族となる2人が隣同士のベッドに寝かせられるまで、
…あと十数秒。
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