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消えたりしない
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鉛色の雲が広がる空の下、1人の戦士が今まさに生き絶えようとしていていた。戦争は終わったというのに、敵から受けた致命傷のせいでどうやらもう動くことができないようだ。
「ヘヘッ、ここで俺も終わりか…」
薄れゆく意識の中、思い出すのは自分の村のこと、先天性のアビリティ、悪魔の腕という能力を生まれながら持ったばかりに、様々な迫害を受けたあの村を思い出していた。
――誰にも生きることを望まれねえ奴はここで死ぬぜ、満足だろ?
戦士は死に場所を探していた、自分の満足のいく死を求め戦士として戦場を渡り歩いてきた。大鎌を振るい、悪魔の腕の持ち主として恐れられながら。
故に戦士は常に1人だった、死に場所を探し歩き回っているのだ、友達や家族などまた必要がなかったのである。
だからこうして死ぬ時も1人だった、1人が良かった。
だが運命というのは意地悪なもので、そんな1人死にゆく戦士の元へ1人の少女を使わせた。
視界の端に戦士は少女を捉える。
「誰だ…テメェ…」
「私の名前はアン」
ジャンよりも年下であろう、その少女は血塗れの戦士に臆することなく言う。
「私の家族にならない?」
その提案にジャンは力なく笑った。
「家族なんて…今更いらねぇよ、俺は死にてぇんだ」
「そう?でもこんな死に場所でいいの?」
「なんだと…?」
「私なら…もっといい死に場所をあなたにあげられるここじゃないもっと綺麗なところに」
確かにここはあまり美しくない血の匂いと鉄の匂いが充満し、空は鉛色だ。
――おもしれぇ
「のってやる、その提案…もっとも俺を助けられたらの話だがな、見ろ血が止まりゃしねぇ」
戦士は当然の如く、闘気を戦いの中で習得し体はもはや常人の、作りとは違う。だがそれでも流れでる血を止める術を持ってはいなかった。
闘気に目覚めたが故に、常人のように死ねず、今はただ死を静かに待つのみだったのである。
「心配いらないわなぜなら私は…」
少女の言葉が遠くなる、なにを言っているのかが戦士にはわからない。
そしてそこで戦士の命は潰えた、はずだった
「な…んだ…?」
戦士は再び鉛色の空の下で息を吹き返した、いや正確には息を吹き返してなどいない。
戦士は感じた自分の体の変化を。体が冷たいのだまるで死人のように。
「お前まさか…」
「そう私は死霊術を使えるのよろしくねえっと…」
「ジャンだ…」
「ジャン…よろしく、私の家族へようこそ」
その日から戦士は少女の家族の一員となった。死人の家族というのも変な話だが、案外、戦士にとってこの居場所は嫌いではなかった。
家族は少女を入れて3人、戦士と少女と召喚士だ。
少女は家族の中ではリーダーと呼ばれ慕われていた。リーダーの指示に従い、冒険者稼業をやったり、傭兵紛いのことをしたりして生計を立てていた。
時に笑い、時に喧嘩し、迫害を受けていた戦士にとって正確な家族像というものはわからなかったが、それでもこの瞬間、家族と呼ばれるネクロマンサー達といるときだけは、本物の家族といるような錯覚をしていた。
ある日、少女は戦士に話しかける。
「ジャン…あなたは死なないでね」
「ヘヘッ、リーダー急にどうした?」
「だってあなた死にたがりだから…」
そこで戦士は思い出す当初の約束を。
――そうだ、いい死に場所を提供してくれるって約束だったな
忘れていた、存外この生活が心地よくて。
戦士は笑う。高らかに
「リーダー、いいか?俺はもうとっくに死んでるんだぜ?」
「そういうことじゃなくて…」
「だから!」
ジャンは少女の言葉を遮る。
「いい死に場所ってーのならもう見つかってるぜ。ここだ!リーダーやカミルのいるところだ。」
「ジャン…」
「だから心配すんなよ、カミルも俺もリーダーを置いて消えたりしねぇって!」
大丈夫だ、と心配そうに聞く少女に戦士は慰めの言葉をかける。この日から明確に戦士の目的は変わった。
せめてこの少女が死ぬまでそばにいてやろうと。
――だから!だからこそ!ここで負けるわけには!いかねぇんだ!!!
爆炎の中1人の男が立ち上がる。
「…!」
ドンキホーテはそれに気づき、剣を再び構えた。
「残念だったな…四肢狩り俺はまだ死んでないぜ」
そういうジャンの体はほとんどが崩れかけていた、胸の肉が一部削れ落ちそのながら紫色の宝石のようなものが覗かせていた。
「なるほどな、それがお前の心臓かい」
ドンキホーテの問いにジャンは答えない。ただまっすぐドンキホーテを見据え、片手で大鎌の刃を向ける。
大鎌は柄が砕けボロボロの状態になっているが奇跡的にあの爆発の中、刃は無事だったらしい、まだ使える状態を保っている。
その大鎌の変わり果てた姿はまさに今のジャンの状態を表しているようだった。
その姿を見てドンキホーテは剣、正眼に構えていう。
「そこまでして守りたい何かがあるんだな、ジャン、俺はお前に敬意を払う、だがここで再び土に還ってくれ、俺の守るもののために」
「ヘヘッ…残念ながらそれは…できねぇな!」
ジャンの言葉を皮切りに両者は、音速を超えぶつかり合い刃を交えた、だが結果は見えている。ジャンは先ほどのアレン先生とドンキホーテの攻撃により闘気も体力も使い果たしていた。
勝負は一瞬で決まった。ドンキホーテの剣がジャンの鎌を弾き飛ばし、紫色の宝石を横一文字に切り裂いた。ジャンは膝から崩れ落ち地面に伏した。
「アン、すまねぇ…」
その一言と共に、戦士は土へと還って行った。
「ヘヘッ、ここで俺も終わりか…」
薄れゆく意識の中、思い出すのは自分の村のこと、先天性のアビリティ、悪魔の腕という能力を生まれながら持ったばかりに、様々な迫害を受けたあの村を思い出していた。
――誰にも生きることを望まれねえ奴はここで死ぬぜ、満足だろ?
戦士は死に場所を探していた、自分の満足のいく死を求め戦士として戦場を渡り歩いてきた。大鎌を振るい、悪魔の腕の持ち主として恐れられながら。
故に戦士は常に1人だった、死に場所を探し歩き回っているのだ、友達や家族などまた必要がなかったのである。
だからこうして死ぬ時も1人だった、1人が良かった。
だが運命というのは意地悪なもので、そんな1人死にゆく戦士の元へ1人の少女を使わせた。
視界の端に戦士は少女を捉える。
「誰だ…テメェ…」
「私の名前はアン」
ジャンよりも年下であろう、その少女は血塗れの戦士に臆することなく言う。
「私の家族にならない?」
その提案にジャンは力なく笑った。
「家族なんて…今更いらねぇよ、俺は死にてぇんだ」
「そう?でもこんな死に場所でいいの?」
「なんだと…?」
「私なら…もっといい死に場所をあなたにあげられるここじゃないもっと綺麗なところに」
確かにここはあまり美しくない血の匂いと鉄の匂いが充満し、空は鉛色だ。
――おもしれぇ
「のってやる、その提案…もっとも俺を助けられたらの話だがな、見ろ血が止まりゃしねぇ」
戦士は当然の如く、闘気を戦いの中で習得し体はもはや常人の、作りとは違う。だがそれでも流れでる血を止める術を持ってはいなかった。
闘気に目覚めたが故に、常人のように死ねず、今はただ死を静かに待つのみだったのである。
「心配いらないわなぜなら私は…」
少女の言葉が遠くなる、なにを言っているのかが戦士にはわからない。
そしてそこで戦士の命は潰えた、はずだった
「な…んだ…?」
戦士は再び鉛色の空の下で息を吹き返した、いや正確には息を吹き返してなどいない。
戦士は感じた自分の体の変化を。体が冷たいのだまるで死人のように。
「お前まさか…」
「そう私は死霊術を使えるのよろしくねえっと…」
「ジャンだ…」
「ジャン…よろしく、私の家族へようこそ」
その日から戦士は少女の家族の一員となった。死人の家族というのも変な話だが、案外、戦士にとってこの居場所は嫌いではなかった。
家族は少女を入れて3人、戦士と少女と召喚士だ。
少女は家族の中ではリーダーと呼ばれ慕われていた。リーダーの指示に従い、冒険者稼業をやったり、傭兵紛いのことをしたりして生計を立てていた。
時に笑い、時に喧嘩し、迫害を受けていた戦士にとって正確な家族像というものはわからなかったが、それでもこの瞬間、家族と呼ばれるネクロマンサー達といるときだけは、本物の家族といるような錯覚をしていた。
ある日、少女は戦士に話しかける。
「ジャン…あなたは死なないでね」
「ヘヘッ、リーダー急にどうした?」
「だってあなた死にたがりだから…」
そこで戦士は思い出す当初の約束を。
――そうだ、いい死に場所を提供してくれるって約束だったな
忘れていた、存外この生活が心地よくて。
戦士は笑う。高らかに
「リーダー、いいか?俺はもうとっくに死んでるんだぜ?」
「そういうことじゃなくて…」
「だから!」
ジャンは少女の言葉を遮る。
「いい死に場所ってーのならもう見つかってるぜ。ここだ!リーダーやカミルのいるところだ。」
「ジャン…」
「だから心配すんなよ、カミルも俺もリーダーを置いて消えたりしねぇって!」
大丈夫だ、と心配そうに聞く少女に戦士は慰めの言葉をかける。この日から明確に戦士の目的は変わった。
せめてこの少女が死ぬまでそばにいてやろうと。
――だから!だからこそ!ここで負けるわけには!いかねぇんだ!!!
爆炎の中1人の男が立ち上がる。
「…!」
ドンキホーテはそれに気づき、剣を再び構えた。
「残念だったな…四肢狩り俺はまだ死んでないぜ」
そういうジャンの体はほとんどが崩れかけていた、胸の肉が一部削れ落ちそのながら紫色の宝石のようなものが覗かせていた。
「なるほどな、それがお前の心臓かい」
ドンキホーテの問いにジャンは答えない。ただまっすぐドンキホーテを見据え、片手で大鎌の刃を向ける。
大鎌は柄が砕けボロボロの状態になっているが奇跡的にあの爆発の中、刃は無事だったらしい、まだ使える状態を保っている。
その大鎌の変わり果てた姿はまさに今のジャンの状態を表しているようだった。
その姿を見てドンキホーテは剣、正眼に構えていう。
「そこまでして守りたい何かがあるんだな、ジャン、俺はお前に敬意を払う、だがここで再び土に還ってくれ、俺の守るもののために」
「ヘヘッ…残念ながらそれは…できねぇな!」
ジャンの言葉を皮切りに両者は、音速を超えぶつかり合い刃を交えた、だが結果は見えている。ジャンは先ほどのアレン先生とドンキホーテの攻撃により闘気も体力も使い果たしていた。
勝負は一瞬で決まった。ドンキホーテの剣がジャンの鎌を弾き飛ばし、紫色の宝石を横一文字に切り裂いた。ジャンは膝から崩れ落ち地面に伏した。
「アン、すまねぇ…」
その一言と共に、戦士は土へと還って行った。
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