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山へ

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「魔王…!?」

 アンの言葉にそこにいる誰もが息を飲んだ。魔王、2000年前に討伐されたという、誰もが知るあの魔王それを復活させるということは、どういうことか。
 暗黒の時代を再び再来させるということだ。魔王の脅威に人々が怯える時代が来るということだ。それがどうして平和の時代になるのか。
 エイダは理解ができずアンに聞く。

「信じられない…あなたはそれを信じたの?」
「ええ、信じたわ、私達、ネクロマンサーは魂を見ることができる。彼の魂は、嘘をついていなかった」 
「魔王を、復活させる方法はどうやって復活させるの?!そして、魔王を使って世界を平和にする方法ってどうやってするの?!」
「わからないわ、言ったでしょう?真実は語られていないと、これ以上のことは私にはわからないわ」
「そんな!方法もわからないのにどうして信じられたの…」
「あの人は希望だった、絶望している私にとってはね、だから縋っていただけなのよ、この人なら戦いのない世界を作ってくれるとね」

「なにせ世界で一番有名な大貴族が言うのよ?」とアンは締めくくる。エイダは情報の洪水に耐えきれず、頭を抱えた。
 だがもしアンの言うことが本当ならばグレン卿を止めねばならない、その意思がエイダは尚更強くなっていった。
 一連のやりとりを静観していたドンキホーテは口を開いた。

「それにしても、真実を語られていないとはいえ随分と重要な情報を言ってくれたな」

 その言葉を聞くとアンはドンキホーテを睨みつける。

「勘違いしないで、エイダだから話したの彼女は私の命の恩人、借りを返す義務があるわ」

「なるほど」とドンキホーテは肩をすくめる。そうしてこれ以上の情報が手に入らないとドンキホーテは察し、この尋問を切り上げた。




 部屋の中に2人と1匹の猫が入ってくる。アイラはそれを見ると、皮肉が言った。

「よかった、この太っちょと話すのも飽きてきた頃よ」

 アイラとテーブルを挟み対面に座っている太っちょ、もといマリデは仰々しく言い返す。

「ひどいな、泣くよ?」
「涙腺があなたにあるのかしら、この化け物…」
「もちろんあるさ」

 そんな煽り合いの最中、ドンキホーテが口を開いた。

「ボスこっちは尋問終了したぜ、こいつらは魔王を復活させるつもりなんだとよ」

 アイラはドンキホーテを見ると、あからさまな作り笑いを浮かべて言う。

「随分と詳しいのね、まぁそれを知られたぐらいで私たちの計画には対して影響はないけど」

「やはりそうか」ドンキホーテは言う。

「ならばお前さんには重要な情報を吐いてもらおうかのぅ?」

 アレン先生がアイラの目の前のテーブルに行き、魔法を唱える。

「汝、悔い改め、天を前に全てを晒し告白せよ」

 アレン先生の体から、青い湯気のようなものが出てくる。そしてそれはアイラの鼻の中に吸い込まれていく。

「自白の魔法ね?無駄よ私はその手の魔法には慣れているの」

 アレン先生は舌打ちをし、無駄だとわかると、その場をマリデに任せエイダの肩の上に飛び乗った。マリデはアイラに話し始める

「まぁいいさ、君に答えてもらいたいのは、魂の感知の仕方だ、君たちはエイダ君の魂を感じ取れるみたいだね?」
「ええ可能よ…」
「それを使って場所も突き止められる?」
「間違いないわ」

 エイダは目を丸くし、話に割り込んでしまう。

「じゃあ今まで私の居場所がわかったのは、私がどこにいるか、魂を感知してわかったから?」
「その通りよ」

 マリデは言う。

「魂を感知できるのは、エイダ君だけなのかい」
「いいえ、私の他にも私の兄弟たちの魂もわかるわ」

 そこでマリデは確信に至った。

「逆に言えばそれをエイダ君が覚えれば、僕たちはグレン卿の居場所を知れる。彼は常に神の使者、つまりエイダ君の兄弟たちを側に置いてるみたいだからね。」

「それには及ばないわ」とアイラは言う。

「私が案内してあげるもの父上の元に」

 聞き間違いか、そう思うほどにその言葉は衝撃的なものだった。

「なんだって?」

 マリデが聞き返すと、アイラは2度も言わせるなとでも言いたげに喋る。

「だから、私が連れていってあげると言っているの、グレン卿の元にね」
「それをするメリットがよくわからないんだが?」
「簡単よ、私はエイダをグレン卿の元に連れて行ける、あなた達は父上を邪魔できる、と言ってもできればだけどね。双方にメリットがあると思わない?」
「なるほど…だがエイダ君を連れていくことはできないな、狙われるとわかっていてわざわざ連れていけない」
「あら、だったら私は案内しない、それにエイダはもう隠すことができないわよ?今までなにかの道具で気配を抑えていたでしょ?」

 当たりだ、エイダには人避けの魔法のかかった道具を、マリデはエイダに渡していた。

「もう感知できるようになってる、エイダの魂をね、何処かに隠そうとしても私の兄弟が見つかるでしょうね」

 マリデは、悩むそぶりを見せた。その姿を見てエイダが口を挟む。

「マリデさん…私なら大丈夫ですいざとなれば戦えますから」

 マリデはエイダの方に向き直り、心配そうな顔をして言った。

「いいのかい?君を危険に晒すことになる」
「結局どちらにせよ危険でしょう?だったら私もグレン卿と戦います!」

 その言葉を待っていたかのようにアイラは笑みを浮かべた。

「そうねエイダの言う通りよ、賢いわね?」
「君は少し黙っていてくれないか?」
「はいはい…」

 とにかく、マリデは決断に迫られた。エイダを連れていくべきか行かないべきか。ドンキホーテは言う。

「ボスいざとなったら俺が命をかけてエイダを守る。だからエイダも連れていった方がいいと思うぜ?こいつの言っていることは本当くさい。エイダを俺たちから離す方が危険な気がする…」

 それにはマリデも同意する。確かにこの女の言っていることには真実味がある、そもそもエイダの場所をなぜか突き止めることができていたのだから。
「わかった」と、マリデは言った。

「エイダ君も連れて行こう、だからグレン卿の居場所を吐け」

 その言葉にエイダは安堵する。ここまで来てただ隠れていることなどできないからだ。
 そしてアイラは口を開く。

「地図を持ってきて、地図を見ないとわからない」
「わかった」

 マリデはそういうとドンキホーテに頼み地図を持ってきてもらった。持ってきたのはおおよそこのソール国の全体的な地理を把握できるものと、ソール国の地域ごとの詳しい地図をまとめた本の両方であった。
 アイラはまずソール国の全体的な地図を眺めると、「わかった」と呟いた

「何処だ?」

 マリデは聞く。

「ガデレート山よ」
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