モンスターの預かり屋さん

ねこじゃ・じぇねこ

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居場所のないモンスターたち

3.光の王さまの事情

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 フェンネルの身に起きたことは、ポポの口からすぐにメイプルたちにも知らされました。
 メイプルとシロップは心配して仕事終わりにかけつけてみたのですが、その時はハイビスカスがやさしい子守歌をうたっていて、フェンネルはスヤスヤねむっていました。
 まわりには自由気ままにすごしていた五匹の手まりネコたちが丸まっています。なごやかな雰囲気ふんいきでしたのでメイプルはひとまず安心しました。
 そのまま今夜はそっとしておこうと思ったのですが、その前にフェンネルがふと目を覚ましました。大あくびをするその顔に、シロップは声をかけました。

「ゆっくりねむれたかしら? ぼすけさん。もうおそいからこのままお休みしちゃいなさいな」

 けれど、フェンネルは首をかしげてから、ふと我に返ったのでしょう、ぶんぶんと否定ひていするように首を横にってから、ワニのような両手をいっぱいに広げて言いました。

「あのね、あのね、ボクの家族が分かったの」

 一生懸命説明しようとするフェンネルに、メイプルもシロップもふくざつな気持ちを抱えながらうなずきました。というのも、だいたいのことはポポからすでに聞いていたのです。涙が止まらないフェンネルから何があったのかを聞きだすのは大変でしたが、だいたいのことは分かっていたので、ポポの説明からメイプルたちにもちゃんと伝わっていました。
 フェンネルが王家のドラゴンであったこと、そして、オキテによりもう二度とお家には帰れないということ。
 それでも、フェンネルがためこんだものを全部はきだすように語るのを、メイプルもシロップも全く邪魔じゃまをせずに、時折あいづちをうって聞き続けました。フェンネルはたくさん、わきおこるたくさん思いをはきだしていくと、最後に言いました。

「……こわいドラゴンの王さま──タラゴンはボクのきょうだいだったんだ。ボク……これからどうしたらいいんだろう。帰るお家がなくなっちゃった……!」

 再びめそめそしはじめるフェンネルに、メイプルはそっと近づきました。そして、翼のつけねをそっと手で支えながら、彼女は言いました。

「フェンネルにはここがあるじゃない。わたし、フェンネルのこと、家族だと思ってきたよ。これからもずっと。それは変わらないから」

 すると、フェンネルは涙でぬれた大きな目でメイプルを見つめました。シロップのほうにも視線を向けると、シロップはうでを組みながら言いました。

「わたしだって同じよ。だから安心なさいな」

 そんな二人の態度を前に、フェンネルはようやくほっとしました。

「そっか。うん……うん!」

 翼をバサッと広げると、不思議と悲しい気持ちも不安な気持ちもどこかへ消えてしまいました。
 お家はすでにあるし、家族はもういるんだ。
 そのことが、フェンネルの心を包み込んでくれたのです。
 おかげで、フェンネルはその夜、安心して眠りにつくことができました。けれど、眠っているうちにふと、ある疑問が思い浮かんだのです。

 家族。

 その言葉と共にタラゴンとの会話の事を思い出していると、なぜだか光の王さまの顔もかんできたのです。

 ──光の王さまはどうしてかたくなになってしまったんだろう。

 一度気になると、なかなか眠れなくなるものです。そこで、フェンネルは思い切っておきあがり、こっそりと角を光らせました。
 心の図書館に向かって、さっそく光の王さまに関する情報を探してみる事にしたのです。
 記録はぼうだいですし、本棚はたくさんあります。それでも、心の図書館は不思議な場所なので、ほしい情報はすぐに見つかります。
 この時も、フェンネルのことを呼ぶように本棚がいくつか光り輝きました。そこで手に取ったうちの一つが、まさにフェンネルの知りたい記録でした。

『光の王に関する諸報告しょほうこくについての所感しょかん

 それはどうやら、水の国の人魚たちがスパイとなり、かき集めてきた情報をまとめた手記の一部のようでした。書いたのはきっとフェンネルの生みの親──つまり、報告を受けた先王でしょう。

『人魚たちの報告によれば、やはり光の王の目的はある病の治療のみであるようだ。そこにおそろしい陰謀いんぼうなどがないともかぎらないものの、今のところ、命がけで密偵スパイたちがつかんだヒミツはこれだけだ。王には双子ふたごの男女がいるが、そのうちの姫が寝込ねこんだままであることは数年前につかんだ情報の通りだ。寝込んでいる理由は、不治とされている紫花病しばなびょうである。これは、紫色むらさきいろの花が咲くような紫斑しはんが体中にあらわれて、長い年数をかけて命をむしばんでいくおそろしい病だ。伝染病でんせんびょうではないが、光の国において、古くはのろいとされていたためか、今でも王家の者がかかることはおおやけにされないという。そのためか、光の国ではこのことを庶民しょみんは知らないようだ。そのかわり、光の王の紫花病研究への熱意は年々はげしくなってきている。双子の母である王妃おうひが亡くなって数年。王にとって王子と姫の存在はなにものにもかえがたいものであることは想像にかたくない。しかし、かといって、マリーゴールド女王の報告をむげにはできない。人魚たちをすくうことはきっとわれらがドラゴンの未来にもつながるだろう。水をけがしてはならない。だから、心苦しいが光の王の計画は阻止そしせざるを得ない』

 すべて読み終わったあとも、フェンネルはまた何度もその文を読み続けました。
 そして、五回も六回も読んで、その内容を暗唱あんしょうできるようになってくると、ようやくその記録を本棚に戻して、角を光らせるのをやめました。
 真っ暗な地下倉庫の天井を見上げながら、ふうと息をつくと、なぜだかとても悲しい気持ちになってむねに手を当てました。

 ──そっか。そうだったんだ。

 涙は出ません。ただ、悲しい気持ちだけがフェンネルの心を満たしていました。

 ──光の王さまは、お姫さまを助けたかったんだ。
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