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第一話 九月二十日――第一の殺人とカッターナイフの謎

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「おっと、君たち。そうそう、君たちだよ。私のことが分かるかな?」

 九月二十日の午後四時である。
 僕と高千穂翠が生徒会室に入ろうとしたとき、背後から声をかけられた。
 蓬髪ほうはつ、という表現がピッタリのクシャクシャ髪に大きな瞳をした、小柄な女子生徒だった。

 分かりにくいと言うのなら、坂本龍馬の髪型に美少女アニメの顔面が乗っかったようなルックス、と表現するのは、一刀両断に過ぎるだろうか。

 その小さな美少女龍馬を目の当たりにして、僕は、

鵜久森うぐもり会長でしょう。もちろん知っていますよ」

「おお、良かった、良かった。ちゃんと覚えてたね、君。それといまは君が会長なんだから、私のことは単に先輩でよろしい。さん付けも大丈夫。でもちゃん付けはエヌジーね。礼儀には厳しくいきたいから。あとウグモリ。ウクじゃなくてウグだからね、覚えてね、はい、ふたり、ウグと復唱」

「「ウグ」」

「はい、百点満点。次世代の生徒会はこれで安泰だね。うっふっふ」

 礼儀に厳しいと言いながらも、別にさほど厳しくなさそうなこの前生徒会長。三年生の鵜久森有栖うぐもりありす先輩である。

 初めて苗字を見たひとはウクモリと呼んでしまうひとが多い。それがひそかにトラウマな先輩は、とにかく他人に、特に後輩にはウグ呼びを何度も強いる。あまりにその回数が多いためだろうか、高千穂翠など先日は陰でウグ先輩と間違えて呼んでしまっていた。鵜久森先輩だぜ、と僕はやんわりたしなめたのだが、確かにウグ先輩は呼びやすかった。

「それで鵜久森先輩。なにかご用ですか」

「なに、生徒会長の座を七原会長に譲ってから、もう十日。なにか困ったことでも起きていないかと心配になったわけさ。可愛い後輩の困り顔なんて、見たくないからね」

「生徒会をわたしたちに押しつけてきたのはウグセ、モリ先輩じゃないですか」

 高千穂翠が、アルトボイスを発する。
 見事にしくじりかけているのに、顔が冷静そのものなのは見事である。僕にもその沈着さを少し分けてほしい。

「押しつけるとは心外だなあ。私としては、寂しい思いをしている後輩ふたりに、青春の一ページを作ってもらいたいと思ったんだけれど」

「青春、ですか」

 僕と高千穂翠は、お互いの顔を見合った。
 容姿はふたり揃って、見飽きているはずだ。



 ここで少し、僕と高千穂翠の関係を回想しておきたい。
 僕と高千穂翠は、保育園から高校二年生の現在に至るまで、ずっと一緒。
 いわゆる幼馴染である。

 とはいえ、特に深い話をしたこともなく、一緒に遊んだこともなく。『まあアニメと違って、現実の幼馴染って実際はこんなもんだよね』と言いたくなるような関係だった。高千穂翠のことは、好きではないけれど嫌いでもなかった。

 もとい、少し苦手だったかもしれない。
 万年帰宅部だった僕に対して、高千穂翠は小学校からミニバスに入り、中学からはその百七十センチ近くある背丈を活かして、女子バスケ部のエースとして君臨。無愛想な性格のわりにいつも誰かに囲まれていた。

 そんな高千穂翠が、どういうわけだか高校に入ってからはバスケどころか運動部にも入らず、日々を誰とも共にせず、ただ孤立していた。

 これは一種のミステリーだった。
 どうしてそうなったのか? 分からなかった。友達が少ないのは僕も同じだが、僕と彼女は別に親しくもないので、わけを聞こうとも思わず、ただ時だけが流れていった。

 高校二年生の九月二日になった。
 僕の前に、ウグ先輩が現れた。

「君、生徒会に入ろう。生徒会は楽しいこといっぱいさ。友達が増え、先生の覚えもめでたくなり、おまけに芸能人とも知り合いになれるよ」

 芸能人というのは安曇学園のOBにして、現在人気絶頂の女性シンガー、RIONのことだろう。

 今年の春、RIONは学校の卒業生として、全校生徒の前に登場した。『夢は大事』とか『高校時代の友達とはいまでも会うし、昔の話をよくする』とか『体育の先生にはよく叱られた、いまでもちょっと苦手』とか、わりとよくある話を披露してくれた。僕はさほどRIONに興味がなかったが、それでも有名人が目の前に現れたときは、それなりにテンションが上がった。

 ウグ先輩はそのとき、生徒会長としてRIONと何分か話をしたらしい。
 それを知り合いと表現できるメンタルを、僕も少し分けてほしい。
 いや、友達と表現しないだけマシかもしれないが。

 とにかくウグ先輩はいろいろと喋っていたが、結局のところ、自分が三年生の秋を迎えるにあたって、生徒会長と副会長の後任がまるで見つからないため、いかにも暇そうな僕と高千穂翠に声をかけた、というわけだ。きっとそうだ。

 うちの学校は生徒会長になりたがる者が少ない。当然かもしれない。面倒そうだ。漫画みたいに生徒会に大した権力があるわけでもない。だから僕も考えたのだけれど、先生からの覚えがめでたくなるのは確かのようだし、実際、高校生活はあまりに退屈だったので、ウグ先輩の顔を立てる意味もあって、僕は会長職を引き受けたのだ。高千穂翠も似たようなものだろう。

 我が校の生徒会長と副会長は、いちおう全校生徒が選挙で選ぶわけだけれど、僕と高千穂翠は、何事もなく賛成多数で生徒会のツートップに就任できた。

 なったからには、放課後になれば、いちおう真面目に生徒会室に行く僕である。高千穂翠もそうだ。

 令和六年九月十七日の放課後が、僕と高千穂翠の初仕事日であった。
 僕達は幼馴染生活十三年目にして、初めて二人きりになった。

「やあ」

「うん」

「元気?」

「普通」

 僕は君の普通を知らない。
 ここで会話が途切れて、一時間。
 僕らは生徒会室に無言で座っていた。

 やがて高千穂翠が帰った。
 さよならも言わずに。素っ気なさ全開である。

 翌日の九月十八日も、ほとんどそんな感じだった。
 沈黙のふたり。あいさつ。体調の確認。それだけ。
 小学生時代の思い出話でもしたかったが、なにも思いつかなかった。

 なんで副会長になったの、と尋ねると、おそろしく素っ気ない声で、

「ウグ先輩に頼まれたから」

 と答える。
 最初、誰のことを言っているのか分からず、ああ鵜久森先輩のことだったかと気が付いて、ウグ先輩って声に出すのはよせよ、いちおう年上だぜ、と言った。高千穂翠は無言でうなずいた。そこで解散。

 九月十九日もそうだった。生徒会の仕事はなにかないかと、生徒会室を調べてまわったが、別になにもなかった。高千穂翠も相変わらず無言を貫く。その無表情でいったいなにを考えているんだろう。

 陰キャの幼馴染と生徒会になってしまって退屈だ、これがせめて学年一のイケメンである猿田来夢《さるたらいむ》君だったらなあ、なんて考えているんだろうか。猿田来夢、口には決して出さないが苗字と名前のアンバランスさが激しい、学年一のモテ男である。僕は喋ったこともないが、なんとなく、彼は敵だなと思っていた。

 僻みである。
 やっかみである。
 仕方が無い。僕はそういう人間なのである。

 異性や友人に囲まれたり集団スポーツに全霊を捧げたりする人間を、自分勝手に妬んでいるのである。そもそもいわゆるリア充な方々が、おとなしめに見える僕のことをずいぶん見下してくれたものだから、僕としてもついつい反骨精神が育ってしまって、他人に対する怒りだの反発だのがずいぶん強い人間に育ってしまった。

 それでずいぶん損もしてきたものだから、少なくともここ数年、表面上は温厚というかおとなしい人間になることを意識して生きているつもりだが、それでも中身は変わらないのだ。そんな僕だから、高千穂翠とも縁遠かった。

 高校生になって、ようやく彼女より少しだけ上の身長百七十センチになって追い抜いたことに、優越感を抱いたり、また、彼女が高校からいわゆる『ぼっち』になったことについて、親近感すら覚えたような、腐った人間なのである。これも、もちろん決して口には出さなかったが。

 それにしても、ろくに会話もしない僕と高千穂翠。
 こんな僕らが生徒会のツートップなんて、このままだと生徒会はどうなってしまうんだろうと思ったが、さてその翌日。

 すなわち今日。
 九月二十日である。
 僕らふたりは、廊下でばったりと出会った。

 そのまま無言で生徒会室に入ろうとしたら、ウグ先輩に話しかけられた、というわけだ。

「まあ、なんだね、君たち。そういえば生徒会の心得も教えていなかったから、伝授してあげよう」

「あるんですか、そんなもの」

「あるとも。まあ、なにか飲みながら話そう。こっちへおいで」

 ウグ先輩に案内される。
 校舎の片隅にある家庭科準備室にたどり着いた。

 家庭科室は生徒が家庭科のミシン授業や調理実習などを行うための教室だが、その準備を行うために用意されたのがこの家庭科準備室で、立ち並んだスチール棚にはミシンや裁縫道具、まな板、ふきんなど、家庭科に使われる用具が所狭しと並べられており、さらに部屋の入り口付近には、巨大な冷蔵庫が一台、配置されている。

 そんな部屋に入るなり、ウグ先輩は勝手知ったるとばかりに冷蔵庫を開いた。
 中には調味料が入った容器が複数と、さらに何十本ものペットボトルや巨大なガラス瓶、理科の実験で使うようなフタ付きの大きなビーカーまで入っていて、その中身はスポーツドリンクやオレンジジュース、さらに大量のアイスコーヒーなどなど。ものによっては『さわるな私物』なんて瓶《びん》に白マジックで書かれてある。

「家庭科準備室の冷蔵庫ってね、常に開かれているんだよ。運動部が熱中症対策のためにスポドリを入れたりするからね。で、こっちはたぶん来客用のアイスコーヒー。そしてこっちは、私が勝手に入れたオレンジジュース」

「勝手に入れていいんですか」

「誰にも文句を言われていないんだ。いいさ。これくらい」

 ラベルが貼られていない2リットルペットボトルを取り出して、準備室の食器棚にあった紙コップを取り出し、オレンジジュースを入れていくウグ先輩。ふと気付いたが、先輩にこんなことをやらせてはいけないよな、自分がやらないと。そう思ったが遅い。ジュースは準備されてしまった。

「飲みなよ。ぐぐっと、ぐぐっと。お二人さん」

「どうも」

「ありがとうございます」

 さすがに、腐っても元体育会系というべきか、高千穂翠もこのときばかりは礼儀正しく頭を下げた。

 僕らは揃って冷たいオレンジジュースを飲み干す。
 単純にうまかった。ただ僕は、できればアイスコーヒーが飲みたかったけれど。

 弱冠十七歳にして、僕はカフェイン依存症なのであった。コーヒーだけは何杯でもいける。飲めば飲むほど頭が冴える。もしもテスト中にコーヒーが飲めたなら、学園ナンバーワンの座も夢ではないと断言できる。

「こっそりとジュースを飲むくらい、可愛いもんだよ。ひそかに永谷先生も許してくれてる。あ、永谷って体育の先生ね。あの熱血指導の」

「知ってます。あのひとが、ジュースを許したんですか」

 いつも昭和丸出しの空気で、生徒を怒鳴り回しているイメージしかないけれど。

「生徒会なんて言っても、そうそう面白いことも起きないから、これくらいはね。放課後の休息だよ」

「芸能人と知り合いになれるとか、熱くスカウトしてたじゃないですか」

「そんな昔のことは忘れた」

 美少女龍馬は、蓬髪をかきあげながら磊落らいらくに笑い飛ばした。
 ウグ先輩の憎めないところだ。誰彼構わず話しかけるコミュ力の鬼、それが先輩である。

 しかし、だ。
 高千穂翠は、ちょっと怪訝そうに先輩を見据えている。僕も不思議に思った。
 そもそも先輩は最初から、僕たちに話がありそうなのだ。生徒会の心得なんて絶対に口実だし、ジュースをご馳走しにきたわけでもないだろう。

「先輩、なにか話があるんじゃないですか」

「ん? ……んん、うん。バレたか。実はね、あのね」

 ウグ先輩、珍しく視線が落ち着かない。
 いやに戸惑ったような態度を見せる。

 そんなに話しにくい話題なんだろうか。
 そう思ったときだった。


 ぎぃあああ――


 なにか、とんでもない音が聞こえた。
 学園のどこから聞こえてきたのか分からない。
 分厚く錆びついた扉を、何人がかりで押し開けたような不気味なメロディ。けれども、それは音楽ではない。

 悲鳴。
 としか思えなかった。
 それも、男の。僕たちはお互いの顔を見合わせる。

「なに、いまの」

「さ、さあ」

 高千穂翠と僕は、揃って周囲を見回すが、なにもない。
 どこから聞こえた音なのかも分からない。

 僕ら三人は、何秒か、何十秒か、その場で茫然自失としていたが、やがて、どこからか、

「ひとが死んでいる!」

 また、声が聞こえた。
 窓の外を眺めると、校庭が広がっている。家庭科準備室は一階なのだ。
 運動部の生徒たちが、動きを止めているのが見えた。だがその中でも、何人かの生徒が、校庭を突っ切って、体育倉庫に向かって走っている。

 僕も駆け出していた。
 野次馬根性だったことは否定できない。
 生徒たちが次々と叫んでいる。

「死体だ、死体だ」

「体育倉庫だ。誰かが死んでいるらしい!」

 そう聞いて、僕は怯えるよりも先に行動に出たのだ。

 体育倉庫――昭和の中ごろ、校庭の片隅に建造されて、その後、改修もろくにされていない、木造の古びた倉庫だ。何年も開けていないと思われるアルミサッシの窓が、いくつか取りつけられているレトロな建物。

 その入り口に数人の生徒が群がって、ざわついていた。
 僕はその集団の中に飛び込む。僕より少し遅れて、高千穂翠とウグ先輩もやってきた。

「生徒会長です。通してください」

 僕は会長の権限を行使した。
 こんなときに生徒会長だからなんだと思うが、肩書きの力はそれなりに有効だったらしく、生徒たちはモーゼの海割りのごとく、左右に分かれてくれた。僕は前へと歩を進める。

「っ、きゃ……!」

 素っ頓狂な声をあげたのは、ウグ先輩だっただろうか。
 あるいは高千穂翠かもしれない。クールな彼女でも、目の前の惨憺さんたんたる光景を目の当たりにすれば、声を出すのも当然だ。

 体育倉庫の中には、うつ伏せになって倒れた死体と、死体の横には――いや横というか後ろというか、どこと言うべきか。どこでもいい。

 とにかく死体の近くには、無数の血まみれとなったカッターナイフが、乱雑に置かれまくっていたのだ。数は、分からないが、おそらく何十本か!

 工作用だが小型の、どこにでも売られているような、カッターナイフ、カッターナイフ、カッターナイフ、カッターナイフ、カッターナイフ! さらによく見ると、カッターナイフの刃の部分には、小さく、だが濃いめの赤い字で、くっきりと、

『X』

 と、書かれてあるのだ。
 バッテン? エックス?
 それも、いまここから見えているカッターのすべてに、Xと書かれてある。
 見えないカッターにも、恐らく記入されているんじゃないか?

 そして倒れている遺体は、何者か。
 うつ伏せなので顔こそ見えないが、その体格と、着用している青いジャージで分かる。

「永谷先生……」

 高千穂翠の、うめくような一言。
 そう、倒れているのは、先ほど僕らが噂をしたばかりの体育担当。永谷先生だったのだ。
 背中を、恐らくカッターナイフでずたずたに、何度も何度も切り裂かれ、縦横無尽の傷跡を付けられ、おびただしい量の血液を流し出している。

 素人目にも先生が絶命していると分かった。永谷先生は、その破損した肉体からひどく鉄臭い臭気を放ちつつ、ぴくりとも動かない。僕は体中の毛が逆立つようなおぞましさを覚えたが、

「誰か、他の先生を呼んできて。それと救急車!」

 誰よりも早く我に返り、適切な要望を口にできたのは、高千穂翠だった。
 情けないことに、僕はただ口を半開きにしていただけである。ウグ先輩でさえも顔を蒼くして、その場に佇んでいた。――いけない、僕もしっかりしなくては。そう思って倉庫内に目を凝らしたとき、足下に白い封筒が落ちているのを発見した。

 冷静に考えれば、事故であれ事件であれ、こんな現場に落ちているものを手に取るべきではなかったのだが、僕も動転していた。その封筒を拾いあげる。あて名はなんと、

『全校生徒様』

 となっている。パソコンで印刷された文字だった。
 封筒をひっくり返して見ると、差出人は、やはりパソコンで書かれてあった。

『学園専門殺人犯X』

「X……」

 カッターナイフの文字と同じだ。
 封筒を開くと、中にはA4サイズの用紙が三つ折りになって入っていた。
 紙を開くと、例によってパソコンで書かれた文字の羅列。手紙らしい。

 これは殺人犯Xからの、全校生徒に宛てた手紙――



『私はこの学校の人間です。
 私はこの学校の人間です。
 何度も申し上げますが、私はこの学校の人間です。

 この学校の人間である私が、安曇学園専門殺人犯Xの私が、永谷を殺しました。永谷は殺されるに足る人間でした。恨まれるに足る男でありました。血も涙もない教師でした。大嫌いでありました。

 ですが、それ以上に、このXにとって、あるのっぴきならない事情があったので殺しました。怨恨だけではない理由があります。そのため、美術室にあった四十二本のカッターナイフで殺しました。

 ぜひ調べてください。このカッターは美術室のものですから。生徒諸君が授業で使い続けてきた工作用のカッターナイフで、永谷教諭の血管を、神経を、肉体を、ズタズタズタズタと切り裂いたのです。絶命させたのです。やったのは私です。この学校の人間です。

 ここまで書けば、犯人はすぐに見つかりそうですね。
 探してください。推理してください。生徒諸君、お互いのことを疑いあってください。疑心暗鬼になってください。

 けれども私は捕まりません。
 この事件は迷宮入りさせますし、してください。
 皆さんが知っていても良い事実は、ただひとつだけ。

 私はこの学校の人間です』



 美術室にあった四十二本のカッター?
 確かにうちの学校の美術室には、カッターナイフが何十本か置いてあったが、それを盗んで殺人に使ったのか? それもわざわざ、すべてのカッターに『X』という文字を書いて? そして犯行現場に残していったのか?

 なによりも、この手紙はいったい。
 なんのために、こんなものを書いて、残したんだ?

「私はこの学校の人間です……」

 Xを名乗るこの殺人犯は、わざわざ自分から学校の人間だと名乗っている。なぜ……。
 凄絶な殺人――ほぼ間違いなく、殺人事件と思われる状況を前にして、僕は無性に興奮し、やがて、よくもこんな酷いことを、と、小さな怒りを感じ始めていた。

 遠くから、パトカーのサイレンが鳴る音が聞こえてきた。
 警察がやってきたのだ。
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