溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ

文字の大きさ
170 / 188
極道とウサギの甘いその後+サイドストーリー

極道とウサギの甘いその後5ー2

しおりを挟む
「りゅ、竜次郎、こんな…、い、いいの…?」

 襖が閉まるなり伸びてきた手を拒むことはできず、湊は躊躇いがちに聞く。
「うちが襲撃されたわけでもねえし、現状できることはねえんだから、いいんだよ」
「そうなの…かな?」
 現時点では中尾も恐らく無事(八重崎のことだから、すぐに中尾の所在と安否は確かめているだろう)なわけで、それならばいいかとつい流されそうになってしまう。
 しかし、八重崎が深夜にわざわざ知らせてきたということは、松平組にも関係があるからではないか。
「ん…っ、竜次郎は、誰がやったか見当はついてるの…?」
「あー、前にうちのシマでドラッグを売ってる奴がいた件があったろ。あん時少し話したと思うが、あの黒幕が一番臭いと思ってる」

 白木組という、松平組に何かと絡んでくる組があって、そこに危ない人物がいるという話は覚えている。
 以前のドラッグの件が予兆で、本格的に動き出したということなのか。
 だとしても、八重崎によれば襲撃したのは一般人とのことだった。白木組の指示だとすると、何故自分の組の人間を使わなかったのだろうか。疑問は尽きない。

「っ…、中尾さんも、狙われてるのかな…」
「…どうだろうな。最近オルカとは揉めてねえから、手ェ組んでると思われて、戦力削ぐためにやったとかな」
「そうだったら、中尾さんはとばっちり…だね、あっ!」
 緩やかに身体を辿っていた手に、突然きゅっと強く胸の先を摘まれて、高い声が出た。

「中尾の心配をしてるなんて余裕だな」

 低く耳元で囁かれると、ぞくりと腰のあたりが慄く。
 逃げるように首を竦めると、体重をかけられそのまま布団に押し倒される。
「りゅ、竜次郎……、」
 見上げた竜次郎は、悪そうな顔で口角を上げた。
 話をしている間に服は全て脱がされてしまっている。
 竜次郎は湊の腰を膝の上に引き寄せると、割り開いた場所に潤滑用のジェルを垂らした。
「あっ……!」
 冷たさを感じたのも束の間、ぬるりと指が入り込んできて、ジェルを塗り広げるように器用に蠢く。
 毎晩たっぷり愛されている湊の身体は、増やされる指を意識せずとも悦んで受け入れた。

「お前は、俺のことだけ考えてろ」
「んっ…、いつも、考えてる…、よ?」
「…足んねえんだよ」
 唸るように言って湊の腰を抱えなおすと、竜次郎は解した場所に自身を埋め込む。
「あ…っ!」
 熱いものに貫かれて、湊はシーツを手繰った。
 押し込む動きは強引だが、しかし乱暴ではない。
 最奥まで征服されると、苦しいのに、竜次郎と繋がっているという安堵感が身を包んだ。
「は、…っ、りゅう、じろ…、」
 もっと竜次郎を感じたくて、動いて欲しいと強請ろうとしたその時。

 ピリリリリリ、という電子音が部屋に響いた。

 突然のことで驚いてしまったが、この着信音は、組からの…主に日守からの連絡だ。
 事務所の方で何かあったのかもしれない。
 だが、竜次郎は布団の脇に脱ぎ捨ててある上着の中を探ることもせず、行為を続けようとしている。
 一度切れても再び鳴り始める電子音に、湊の方はとても続けようという気持ちになれそうもなくて、竜次郎の足を軽くたたいて、出るように促した。
「き、緊急の連絡かもよ?俺は、大丈夫だから…」
 わかったよと舌打ちした竜次郎は腕を伸ばし、スマホを手に取って通話を始める。

「(え……待って、このまま……?)」

 竜次郎のものは、湊の中に入ったままだ。
 湊の「大丈夫だから」というのは、行為を中断してもいいという意味であって、この状態のまま電話に出てくれという意味ではなかったのだが。

「おい日守、お前わかっててかけてんじゃねえだろうな」
「……!?っ……!」
 しかも、通話中だというのに、竜次郎は緩慢な動きで抜き差しを繰り返す。
 声が漏れそうになり、湊は慌てて口を押さえた。
 抗議の視線を向けるが、竜次郎の方は知らん顔をして話をしている。
 徐々に動きが早まり、湊は涙目で首を振った。
「(む、無理…!)」
 早く通話を終えて欲しいと思うのに、なんだか揉めているようでなかなか終わらない。
「ああ?ふざけんな、こんな時間に非常識すぎんだろ。追い払」

『てめえ竜!ガキまで使ってオフィス襲わせてなんのつもりだコラ!さっさとツラ出せ!』

 スピーカーでもないのに、大きな声が部屋中に響き渡った。
 竜次郎は眉を顰めて耳からスマホを離している。
 どうやら、中尾が事務所に来てしまって、持て余した日守が連絡をしてきたらしい。
「うるっせえな。なんで俺がそんな一文の得にもならねえことしなきゃいけねえんだよ」
『襲撃直後に連絡できる奴は犯人以外いねえだろ』
「犯人だったら尚更わざわざ知らせねえだろうが。俺も勝手にイニシャルを使用されたんだよ。よく考えてみろ、ありとあらゆる情報を入手出来て、俺を装ってお前に連絡できるような奴の心当たりが、お前にもあるんじゃねえか?」
 中尾は一瞬、静かになった。そして。

『八重子、あの野郎!』

 怒り心頭に発した。
 流石は八重崎、規格外の情報を扱う存在として、中尾の心にもしっかり刻まれているようだ。
『おい竜、あのガキの連絡先を教えろ!』
「湊、お前知ってるか?」
 突然話を振られて、ふるふると首を振った。
 もちろん連絡は取れる。けれど勝手に教えることはできないし、今はそれどころではない。
 こんな話をしている間にも竜次郎は会話の隙を縫って奥を突いてきたりするので、声を抑えるのに必死だ。

「とにかく、見当違いだ。帰れ」
 本当にもう無理、と泣きが入りかけた頃、竜次郎はようやく電話を切った。
 常日頃は竜次郎のしたいことは何でもして欲しいと思っている湊だが、流石に抗議する。
「りゅう、じろ……、こんな、いれた、まま、」
「あー、声出さねえようにしてるお前が可愛いすぎてマジでやばかった」
 涼しい顔で中尾と話しながら、そんなことを考えてたなんて。
「もう…、聞こえちゃったら、お互い気まずいでしょ…」
「こんな時間に事務所まで押しかけてくる方が悪いんだから、いいんだよ」
 言い放った竜次郎は湊の腰を抱えなおすと、本格的な抽挿を再開した。
「あっ!」
 結合部で卑猥な音が立ち、眼前がちかちかと眩む。
「…ま、お前の可愛い声を聞かせてやる気はねえけど、な…」
 同時に、蜜を垂らして震える性器の先端をぐりぐりと弄られて、急激な快感の高まりに、そこから透明な液体が迸った。
「ぁ、ゃあ…っ」
「湊お前、ほんっとエロい…」

 ぐんと質量を増したもので、体重を乗せて激しく責め立てられる。
 湊はもはや何も考えることはできず、いつもの二人の夜は更けていくのであった…。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

処理中です...