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第四章 師匠との邂逅と新たな出会い

22話 ケイスニル

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 寮から不気味な黒い外套を纏ったスケルトンが、鎖に繋がれた棺を投げてケイスニルを横から殴り飛ばすと骨の頭部を笑っているかのようにカタカタと慣らすと、声帯が無い筈の身体から異様に渋い声を出す。
 
「ほほ、間に合ったようですよぉっ!アン様にダート様ぁっ!」
 
 彼?はそう言いながら寮の扉から外に出ると、その後に続くようにダートと知らない良く手入れされた綺麗な黒髪に特徴的な赤目の女性が出て来た。
一方ぼく等の方は、突然出て来たスケルトンに対して理解が追い付かずにそのまま動けないでいる。
……ケイスニルとの戦いが始まる筈だったのに見事な不意打ちを決めたアレは何なんだ。
そう思っていると、ゆっくりとケイスニルが立ち上がると唸り声を上げながら大声で叫ぶ。
 
「てっめぇっ!いてぇじゃねぇかっ!……何者だこの骨野郎っ!」
「ほほ、聞かれたら応えなければ男がすたるってもんですよ、それに命を掛けて戦う戦士に名乗るのは礼儀ッ!……って言っても私死んでますけどぉっ!」
「……何だこいつ」
 
 本当に何だこの骨、さっきまでの雰囲気が台無しだ。
……心器を維持するのが疲れて来たから一回消そうかなって思うけど、仮にも今は戦闘中だからそんな危険な事をするわけにはいかないだろう。
 
「なんだこいつと言われたら名乗らねばなりますまいっ!」
「……ごめんなさいね、この馬鹿はこうなったら止まらないから聞いてあげて?」
「あ、おっ、おぅ……、ッチちょーし狂うな、聞いてやるからさっさと名乗れやっ!」
「あい分かった!」
 
 スケルトンが黒い外套を勢いよくはためかせると、棺を背負い意味の分からないポーズをすると、頭を回し『よぉーっ!』と謎の声を出す。
 
「やぁやぁ我こそは生まれは栄花、遥か昔戦の世に名を轟かせた時の大将軍、その名もマチザ……」
「……ポルトゥス」
「コホン……、我が名はマチ」
「ポルトゥス、私の死霊術で現代に蘇らせた遠いご先祖よ」
「……我が名ポルトゥスっ!背負いし獲物は我が眠っていた鋼鉄の棺っ!いざ、推してまい……へぷっ!」
「話がなげぇっ!、こちとら戦闘中だぞっ!」
 
 ケイスニルが蠍の尾で、ポルトゥスと名乗ったスケルトンを吹き飛ばすと、背中の蝙蝠の羽を羽ばたかせながら四本の脚で地面を蹴り勢いを付けながらぼく等の方に飛び掛かって来た。
咄嗟に雪の壁を作りながら距離を取ると、その上に飛び乗ったクロウが心器の手甲剣を顕現させると脚を狼の物に変え、脚のバネを活かした跳躍力できりもみ回転を加え武器を構えながら跳躍する。
 
「んなもん効くかよぉっ!」
「……化物めっ!」
 
 毛並みに武器が当たると同時に硬い物に当たり弾かれた音がしたと思うと、ケイスニルの背中を蹴り前方に転がるように受け身を取り体制を整えると心器を消して後ろに下がり腕を抑えたかと思うと、口を手で覆って蹲る。
何が起きたのかと思うとクロウの腕が変色し腫れあがっていた。
 
「どうだぁ?俺の毒の味はよぉっ!こいつにやられたらそこから徐々に体が壊死して死ぬぜぇ!!」
「……という事はポルトゥスの出番ね、ダートも手を貸してくれる?」
「何をするのかわからないですけど、私に出来る事なら指示を貰えたらアンさんの言うとおりにやってみます」
「なら私の言うとおりに空間魔術を使ってもらうわよ?……ポルトゥスっ!いつまで死んでるのっ!動きなさいっ!」
「ほほほ、死んでるから動かないのは当然なんですねぇ、では反撃と行きますぞぉっ!」
 
 あの黒い髪の人はアンさんって言うのか……、その人がダートに何やら耳打ちをするとポルトゥスの前方の空間を切り裂いてケイスニルの前方に繋ぐ。
それと同時にポルトゥスが飛び込むと鎖に繋がれた棺を空いての顔面目掛けて投擲する。
 
『レースっ!あいつらに任せて今の内にクロウの治療をするぞっ!、魔力を込めてあいつとこっちの空間を切って繋げるイメージをしながら俺を振れっ!』
「……わかった」
 
 ダート達の行動に合わせてぼくもダリアに言われた通りに魔力を込めると、空間魔術の原理が頭の中に浮かび上がる、それに従って空間を切ると目の前にクロウの姿が現れた。
初めて使う魔術に一瞬動きが止まったけど迷わず一歩踏み出し彼の元へ向かい、診察の効果が付与された魔導具の眼鏡で容態を確認する。
それと同時にケイスニルの方では、遠くに居た筈のアンが物語に出てくる死神が使うかのような大鎌を構えて棺の中から飛び出てくると首に引っ掛けるようにして刃を引くが、切れないようで逆に体が持ち上がってしまうが、彼の首を軸にして空中に跳び上がるとそのまま縦に回転しその勢いのまま蠍の尾を切り裂き、赤き血が宙に舞う。
 
「ってぇなぁっ!こちとら心器とは言え身体の一部何だぞっ!何てことしやがるっ!」
 
 蠍の尾を再生させながらそう叫ぶとアンを狙って、着地したばかりで動けない彼女に向かい尾を突き出したがケイスニルの前方にポルトゥスが転移して来たと思うと棺で受け流すように防ぐと、受け流した時の回転と鎖による遠心力を使い勢いよく棺を横から叩きつける。
 
「刺さっても毒は効きやしませんけど痛いのは勘弁ですからねーって言っても痛覚何て無いんですけどぉっ!ほほほっ!」
「てめぇらこうもちょこまかとぉっ!」
 
……彼等が戦っている間に、クロウの診察をしていたぼくは該当するどの毒にも当てはまらない為に今できる治療が出来ない事に焦るが、『体内の毒をオメェの特性で固定して、空間魔術で外部に除去した後に壊死した部分を作り直せばいいだろ?』というダリアの言葉に新しい治療法を思い付く。
眼の前でえずき蹲るクロウに「クロウ……、今から少しの間体内の血液の循環が止まるけど、直ぐに戻るから頑張って耐えて欲しい」と伝えると意識を集中し思い付いた新術を試す事にした。
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