たとえ運命じゃなくても、僕は

mimi

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あれから、一週間が経った。

とわさんとは、連絡を取れるようにはなった。
けれど、大学構内で顔を合わせることはなかった。

このまま、
何も言わないまま時間だけが過ぎていったら――
自然消滅、なんてこともあり得るんじゃないか。

そんな考えが、
頭から離れなくなっていた。

(……僕は、絶対にとわさんがいい。
かいさんが運命の番だとしても、
僕は……)

「ひなた~、やほ~。
元気にしてるか?」

聞き慣れた声に顔を上げると、だいきが立っていた。
今日は、りさちゃんの姿はない。

「だいきがこんな遅い時間まで残ってるの、珍しいね。
どうしたの?」

「どうしたのって、練習に決まってるだろ!
……まぁ、それもあるけどさ」

だいきは少しだけ言い淀んで、続けた。

「ひなたのこと、心配だったのもある。
この時間まで、いつも残ってるしな」

「……ありがとう。
とわさんと、一週間くらい会ってないんだ」

「そっか……」

だいきはそれ以上、深くは聞いてこなかった。

「立ち話もなんだしさ。
どっか店、入ろうぜ」

そう言って、歩き出すだいきの背中を追う。

僕たちは大学を出て、
夜遅くまで開いているカフェへ向かった。



だいきに、
今の僕が抱えている不安を、全部話した。

「なるほどな……」

だいきは少し考えるようにしてから、ゆっくり言った。

「気持ちはとわ先輩にある。
でも、またかいさんに会って、触れられたら
ヒートが来るかもしれない。
そのせいで、とわ先輩に迷惑をかけるかもしれない……ってことだろ?」

僕は、静かに頷いた。

「ヒート自体はさ、
正直、薬さえあれば抑えられるって話も聞く。
そこはもう、ひなたがちゃんと病院に通って
抑制剤飲むしかないよな」

「……そうだね。でも……」

でも、
その先の言葉が、うまく出てこなかった。

(かいさんが現れて、
運命の番だって分かって……
あの時の感覚が、どうしても忘れられない)

最低だと思った。

心から愛している人がいるのに、
それでも身体が反応してしまうなんて。

そんな感情を抱いてしまう自分が、
どうしようもなく嫌だった。

――それなら、いっそ。

とわさんと別れた方がいいんじゃないか。
そんな考えが、頭をよぎるほどだった。

きっと、とわさんだって苦しいはずだ。

だって、
恋人が――
自分の双子の弟と、運命の番なんて。


「……ひなた。
ひなたは、どうしたいんだ?」

だいきが、真っ直ぐ僕を見て言った。

「え……僕は……」

言葉に詰まる僕に、だいきは続ける。

「俺さ、
運命なんかに従わなくていいと思うんだよ。
ひなたもβみたいに、自由に恋愛していい。
選ぶ権利があるんだ」

だいきは、はっきりとそう言った。

「とわ先輩が好きだから、迷うんだろ?
もし本当に気持ちがなかったら、
あの日すぐに、かいさんのところに行ってたはずだ」

その言葉に、
胸の奥が、ハッとする。

「……確かに。
なんで、僕は迷ってたんだろう……」

「だろ?
ひなたの人生だ。
好きなようにすればいい」

静かだけど、力強い言葉だった。

「……そうだね」

僕は、深く息を吸って言った。

「僕は、とわさんが大好きだ。
だから……僕は、とわさんを選ぶ」

だいきは、何も言わず、
ぽん、と僕の肩を叩いた。

「じゃあ、もうやること分かってるな?」

「うん」

僕は立ち上がる。

「今から、とわさんの家に行ってくる……!」

背中を押されるように、
カフェを飛び出した。

最初から、こうすればよかった。

でも――
少し距離を置いたからこそ、
とわさんの存在が、
どれだけ大きいかを再認識できた気がする。

「待ってて……とわさん」

胸の奥で、強く願う。

「今から、行くから」

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