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(๑><๑) ハーシア15歳♡
07:恋する乙女?
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夢の中でも既定路線があるのだろうか。
デヴュタントの日から僅か5日後。
セシル伯爵家から婚約話が持ち込まれてきた。
家格としては爵位は同じ伯爵家なので問題はない。
しかし父親は良い顔をしなかったし、母親も「どうしてもと言う訳ではないのでしょう?」と乗り気ではない。
舞い上がっているのはユリアだけ。
――この時期からセシル家は経営が危うかったからかしら?――
そう思ったが、当たらずしも遠からず。
今のセシル家は父の言葉を借りるなら多少の赤字はあるがお断りの材料にするには弱いとのこと。
貴族なら途方もない額の借り入れのある家もあるけれど、僅かな借金を敢えてしている家もある。今返せと言われたらポンと返せるだけの「わざわざ借金」だ。
敢えて月賦とする事で減価償却出来たりするが、本当の目的は毎月きちんと支払う事で信用を買う。それがわざわざ借金。
セシル家の借金はそれよりも少し多い程度。
ハーシアの記憶にあるあの膨大な額と比べれば雀の涙だ。
両親は経営状況を原因として渋っているのではないように見えた。
「どうしてダメなの?ファクター様は見惚れてしまうほど美丈夫なのよ?第3王子殿下の覚えもめでたい方なのよ?」
ユリアがしきりに話を受けろと両親にせがむが両親は首を縦には振らなかった。
「この話は断る事にする」
「どうして?ウチとは派閥が違うから?」
「そうだ。派閥が違えば面倒ごとになる。この話は終わりだ」
頑として認めない父にハーシアは疑問を感じた。
異なる派閥に属していても、たかが伯爵家だ。
確かに子爵、男爵家からすれば爵位は上だが伯爵家にも優劣があってセシル家も、この家も大勢に影響するような力は持っていない。
――派閥を理由にしてるけど、別に理由があるんだわ――
変に記憶があると言葉の裏読みをしてしまう。
ハーシアはこの件には口を出さないのが賢明だろうなと結論付けた。
父親が強く「話を断る」と告げた時のユリアの顔は醜く歪んでいた。
書斎に向かおうとする父を呼び止めたユリアは何故かハーシアの肩を掴んできた。
「待って。お父様!!ハーシアだって良い縁談だと思うでしょう?」
「さぁ?どうかしら。セシル家ってよく知らないし」
「家の事は知らなくてもファクター様は知ってるでしょう?」
「あぁ、デヴュタントから帰ってきてユリアがカッコいいって言ってた人?」
「そうよ!ハーシアだって気にいる筈なの!」
「なんで?私が欲しがると面倒とか言ってたのに。見たことも無い人なんて興味ないわ」
先日とは言ってる事が真逆だ。
そしてユリアの表情。ハーシアがファクターに全く興味もなく、存在すらユリアの言葉で知ったとも言える返しにかなり驚いているようだった。
「し、知らないって事?」
「えぇ。知らない人だわ」
「あんなにカッコいいのに?第3王子殿下の直属なのよ?」
「へぇ。そうなんだぁ。でも私、騎士って汗臭そうだし…ごめんね?」
ファクターの事は勿論知っている。知っていて知らないふりをしているだけ。
理由なんか1つ。
わざわざ夢の中で関わり合いになりたくない。
折角好きな事が出来るこの空間なんだから、仮に誰かを慕うのなら全く別の人が良い。
その時でも選べるのなら騎士ではない男性が良い。
ハーシアがあれだけ留守がちだったファクターの言葉を無条件に信じていたのは、同じく騎士を夫に持つ御婦人方も「夫はまた遠征なの」と言っていたので、そんなものだと考えていたのだ。
彼女たちの夫はファクターほど家を空けておらず、せいぜい2か月遠征をすれば半年家にいる。そんな状態だったが他家の事など根掘り葉掘り聞くことも出来ないし、知ったところでどうなるものでもない。
――どうせ結婚とかしなきゃいけないなら、いつも帰って来る人が良いな――
そこまで長い夢が見られるとは思っていないけれど、夢の中でも夢を見ているという不思議な体験を現在進行形で行っているハーシアとしては騎士はお断りなのだ。
ハーシアが味方にはならないと感じたのかユリアは父親に縋った。
「直ぐに断らないで。少しの間でいいの。保留にしてくださいませ!」
必死な様子はハーシアの目には単にファクターに恋をしているユリア、としか思えなかった。
デヴュタントの日から僅か5日後。
セシル伯爵家から婚約話が持ち込まれてきた。
家格としては爵位は同じ伯爵家なので問題はない。
しかし父親は良い顔をしなかったし、母親も「どうしてもと言う訳ではないのでしょう?」と乗り気ではない。
舞い上がっているのはユリアだけ。
――この時期からセシル家は経営が危うかったからかしら?――
そう思ったが、当たらずしも遠からず。
今のセシル家は父の言葉を借りるなら多少の赤字はあるがお断りの材料にするには弱いとのこと。
貴族なら途方もない額の借り入れのある家もあるけれど、僅かな借金を敢えてしている家もある。今返せと言われたらポンと返せるだけの「わざわざ借金」だ。
敢えて月賦とする事で減価償却出来たりするが、本当の目的は毎月きちんと支払う事で信用を買う。それがわざわざ借金。
セシル家の借金はそれよりも少し多い程度。
ハーシアの記憶にあるあの膨大な額と比べれば雀の涙だ。
両親は経営状況を原因として渋っているのではないように見えた。
「どうしてダメなの?ファクター様は見惚れてしまうほど美丈夫なのよ?第3王子殿下の覚えもめでたい方なのよ?」
ユリアがしきりに話を受けろと両親にせがむが両親は首を縦には振らなかった。
「この話は断る事にする」
「どうして?ウチとは派閥が違うから?」
「そうだ。派閥が違えば面倒ごとになる。この話は終わりだ」
頑として認めない父にハーシアは疑問を感じた。
異なる派閥に属していても、たかが伯爵家だ。
確かに子爵、男爵家からすれば爵位は上だが伯爵家にも優劣があってセシル家も、この家も大勢に影響するような力は持っていない。
――派閥を理由にしてるけど、別に理由があるんだわ――
変に記憶があると言葉の裏読みをしてしまう。
ハーシアはこの件には口を出さないのが賢明だろうなと結論付けた。
父親が強く「話を断る」と告げた時のユリアの顔は醜く歪んでいた。
書斎に向かおうとする父を呼び止めたユリアは何故かハーシアの肩を掴んできた。
「待って。お父様!!ハーシアだって良い縁談だと思うでしょう?」
「さぁ?どうかしら。セシル家ってよく知らないし」
「家の事は知らなくてもファクター様は知ってるでしょう?」
「あぁ、デヴュタントから帰ってきてユリアがカッコいいって言ってた人?」
「そうよ!ハーシアだって気にいる筈なの!」
「なんで?私が欲しがると面倒とか言ってたのに。見たことも無い人なんて興味ないわ」
先日とは言ってる事が真逆だ。
そしてユリアの表情。ハーシアがファクターに全く興味もなく、存在すらユリアの言葉で知ったとも言える返しにかなり驚いているようだった。
「し、知らないって事?」
「えぇ。知らない人だわ」
「あんなにカッコいいのに?第3王子殿下の直属なのよ?」
「へぇ。そうなんだぁ。でも私、騎士って汗臭そうだし…ごめんね?」
ファクターの事は勿論知っている。知っていて知らないふりをしているだけ。
理由なんか1つ。
わざわざ夢の中で関わり合いになりたくない。
折角好きな事が出来るこの空間なんだから、仮に誰かを慕うのなら全く別の人が良い。
その時でも選べるのなら騎士ではない男性が良い。
ハーシアがあれだけ留守がちだったファクターの言葉を無条件に信じていたのは、同じく騎士を夫に持つ御婦人方も「夫はまた遠征なの」と言っていたので、そんなものだと考えていたのだ。
彼女たちの夫はファクターほど家を空けておらず、せいぜい2か月遠征をすれば半年家にいる。そんな状態だったが他家の事など根掘り葉掘り聞くことも出来ないし、知ったところでどうなるものでもない。
――どうせ結婚とかしなきゃいけないなら、いつも帰って来る人が良いな――
そこまで長い夢が見られるとは思っていないけれど、夢の中でも夢を見ているという不思議な体験を現在進行形で行っているハーシアとしては騎士はお断りなのだ。
ハーシアが味方にはならないと感じたのかユリアは父親に縋った。
「直ぐに断らないで。少しの間でいいの。保留にしてくださいませ!」
必死な様子はハーシアの目には単にファクターに恋をしているユリア、としか思えなかった。
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