貴方の妻にはなれなくて

cyaru

文字の大きさ
7 / 54
(๑>؂<๑) ハーシア15歳♡

07:恋する乙女?

しおりを挟む
夢の中でも既定路線があるのだろうか。

デヴュタントの日から僅か5日後。
セシル伯爵家から婚約話が持ち込まれてきた。

家格としては爵位は同じ伯爵家なので問題はない。
しかし父親は良い顔をしなかったし、母親も「どうしてもと言う訳ではないのでしょう?」と乗り気ではない。

舞い上がっているのはユリアだけ。

――この時期からセシル家は経営が危うかったからかしら?――

そう思ったが、当たらずしも遠からず。

今のセシル家は父の言葉を借りるなら多少の赤字はあるがお断りの材料にするには弱いとのこと。


貴族なら途方もない額の借り入れのある家もあるけれど、僅かな借金を敢えてしている家もある。今返せと言われたらポンと返せるだけの「わざわざ借金」だ。

敢えて月賦とする事で減価償却出来たりするが、本当の目的は毎月きちんと支払う事で信用を買う。それがわざわざ借金。


セシル家の借金はそれよりも少し多い程度。
ハーシアの記憶にあるあの膨大な額と比べれば雀の涙だ。


両親は経営状況を原因として渋っているのではないように見えた。

「どうしてダメなの?ファクター様は見惚れてしまうほど美丈夫なのよ?第3王子殿下の覚えもめでたい方なのよ?」

ユリアがしきりに話を受けろと両親にせがむが両親は首を縦には振らなかった。

「この話は断る事にする」
「どうして?ウチとは派閥が違うから?」
「そうだ。派閥が違えば面倒ごとになる。この話は終わりだ」

頑として認めない父にハーシアは疑問を感じた。
異なる派閥に属していても、たかが伯爵家だ。

確かに子爵、男爵家からすれば爵位は上だが伯爵家にも優劣があってセシル家も、この家も大勢に影響するような力は持っていない。

――派閥を理由にしてるけど、別に理由があるんだわ――

変に記憶があると言葉の裏読みをしてしまう。
ハーシアはこの件には口を出さないのが賢明だろうなと結論付けた。

父親が強く「話を断る」と告げた時のユリアの顔は醜く歪んでいた。
書斎に向かおうとする父を呼び止めたユリアは何故かハーシアの肩を掴んできた。

「待って。お父様!!ハーシアだって良い縁談だと思うでしょう?」
「さぁ?どうかしら。セシル家ってよく知らないし」
「家の事は知らなくてもファクター様は知ってるでしょう?」
「あぁ、デヴュタントから帰ってきてユリアがカッコいいって言ってた人?」
「そうよ!ハーシアだって気にいる筈なの!」
「なんで?私が欲しがると面倒とか言ってたのに。見たことも無い人なんて興味ないわ」


先日とは言ってる事が真逆だ。
そしてユリアの表情。ハーシアがファクターに全く興味もなく、存在すらユリアの言葉で知ったとも言える返しにかなり驚いているようだった。


「し、知らないって事?」
「えぇ。知らない人だわ」
「あんなにカッコいいのに?第3王子殿下の直属なのよ?」
「へぇ。そうなんだぁ。でも私、騎士って汗臭そうだし…ごめんね?」


ファクターの事は勿論知っている。知っていて知らないふりをしているだけ。
理由なんか1つ。
わざわざ夢の中で関わり合いになりたくない。

折角好きな事が出来るこの空間夢の中なんだから、仮に誰かを慕うのなら全く別の人が良い。
その時でも選べるのなら騎士ではない男性が良い。

ハーシアがあれだけ留守がちだったファクターの言葉を無条件に信じていたのは、同じく騎士を夫に持つ御婦人方も「夫はまた遠征なの」と言っていたので、そんなものだと考えていたのだ。

彼女たちの夫はファクターほど家を空けておらず、せいぜい2か月遠征をすれば半年家にいる。そんな状態だったが他家の事など根掘り葉掘り聞くことも出来ないし、知ったところでどうなるものでもない。

――どうせ結婚とかしなきゃいけないなら、いつも帰って来る人が良いな――

そこまで長い夢が見られるとは思っていないけれど、夢の中でも夢を見ているという不思議な体験を現在進行形で行っているハーシアとしては騎士はお断りなのだ。


ハーシアが味方にはならないと感じたのかユリアは父親に縋った。

「直ぐに断らないで。少しの間でいいの。保留にしてくださいませ!」

必死な様子はハーシアの目には単にファクターに恋をしているユリア、としか思えなかった。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...