9 / 54
(๑><๑) ハーシア15歳♡
09:終わった事②―①
しおりを挟む
かつて時を巻き戻す呪術を使ったのは第3王子だった。
禁書とされた呪術書は全てが解読出来ていた訳ではないけれど第2王子に王弟公の座を奪われた第3王子は選ばれなかった原因を探し、その要因が起こった日まで時間を戻す事を画策した。
誰彼に言える事ではなく、生贄となる呪いを受ける者も志を同じくする者でなければならずファクターは時が戻ったら、次こそはユリアと大手を振って歩ける生活を望み生贄となった。
しかし、呪われたファクターの姿を一目見てユリアはあっさりとファクターを見捨てた。
『何なの。気持ち悪い。こんなのと一緒に居なきゃいけないの?絶対に嫌よ』
触れれば呪いに感染するのではと、雑な扱いで荷車に載せられ王都に運ばれてきたファクターを最期まで優しく世話をしてくれたのはユリアの双子の姉、散々に蔑ろにして王都にいる際にただの性欲処理として使ってきたハーシアだった。
15年という長い月日、ハーシアは使用人も触れるのを躊躇うファクターの世話をした。
痛いと言う前に魔力で痛みを取り、自身が疲れていても体を動かすのもままならないファクターに寝返りを打たせ、寝るのは寝台の隣に置いた椅子。
命が尽きる間際、ファクターは心からの言葉を伝えようと声を振り絞った。
ハーシアは爪の先ほどもファクターを疑わず、サーシスの本当の父親がファクターである事も知らずに尽くしてくれた。
時戻りが成功したことを知ったのは1年ほど前。
丁度どの王子の隊に所属をするか選択ができる時に過去の記憶を思い出したが、選択が出来るのは名ばかりで実際は選択の余地はない。家が所属する派閥で申し出る隊が決まる。
前回の人生でセシル家は第2王子の派閥だった。
しかし、ファクターが第3王子の強いリーダーシップに憧れ、第3王子の隊を選んだことでセシル家は派閥を変えねばならなくなった。
時戻りに気がついた時からファクターは第3王子とは距離を取ったのだが、何かに引っ張られるように今度は家の派閥が第3王子派だった。
前回はファクターの選択で家が派閥を変えたが、今度はファクターが折れねばならなくなった。
ユリアと出会ったのもその時期で、街中で破落戸に囲まれていたユリアとその友人を助けたのが切っ掛け。
王子の隊と言えど近衛隊ではないので、日常の警備は配属された騎士団に準じる。
ファクターはその日、市井の見回り警備だった。
ユリアと気がついたが仕事は仕事と割り切って任務にあたり会話も交わさなかったのに、翌日ユリアが隊にお礼名目の差し入れを持ってやってきた。
「私と愛し合ってサーシスが生まれたよね」
「何のことだ?貴女とは昨日が初見だが?」
「誤魔化さないで。覚えてるの。あの時はごめんなさい。誰だってびっくりすると思うのよ?終わった事に怒らないで。ずっと後悔してた」
ファクターはユリアを心底軽蔑した。
――何が終わった事だ――
裏切った側、シタ側が物事を都合よく忘れたり、過去の事とする事はままあるが、逆はそうではない。
なんのために呪いを受け入れたのか。
そう、時間が戻ったらコソコソとするのではなく自分の妻はユリアなのだと声高らかに言える生き方をしたいと願い生贄になる事を選んだのに。
呪われた自分をまるで潰れたゴキブリを見るような目で見たユリアの残酷な1言。
ユリアに捨てられた時のファクターの絶望は筆舌に尽くし難い。
驚いたのは本当だろう。
ファクターですら呪いの紋様が幾何学模様となって浮かび上がった顔を鏡で見た時は鏡を割ったし、ガラスや水面に映る自分の顔を見るのも嫌だった。
しかしハーシアは違った。
献身的な介護に介助。体に感じる物理な痛みが和らいだからだけではない。
どれだけ心が救われたか。
ハーシアの瞳に映る自分の顔を見た時、激しく後悔し時間が戻ればハーシアだけを愛し抜く事を心に誓った。
今のファクターの心の中にはハーシアしかいない。
ユリアの本性を知ったファクターは以前となんら変わらないユリアを見て「こんな女の何処が良かったんだろう」とすら考えてしまっていた。
――早めにユリアと手を切らねば――
そう考えたファクターだったが、それも出来ない事情があった。
禁書とされた呪術書は全てが解読出来ていた訳ではないけれど第2王子に王弟公の座を奪われた第3王子は選ばれなかった原因を探し、その要因が起こった日まで時間を戻す事を画策した。
誰彼に言える事ではなく、生贄となる呪いを受ける者も志を同じくする者でなければならずファクターは時が戻ったら、次こそはユリアと大手を振って歩ける生活を望み生贄となった。
しかし、呪われたファクターの姿を一目見てユリアはあっさりとファクターを見捨てた。
『何なの。気持ち悪い。こんなのと一緒に居なきゃいけないの?絶対に嫌よ』
触れれば呪いに感染するのではと、雑な扱いで荷車に載せられ王都に運ばれてきたファクターを最期まで優しく世話をしてくれたのはユリアの双子の姉、散々に蔑ろにして王都にいる際にただの性欲処理として使ってきたハーシアだった。
15年という長い月日、ハーシアは使用人も触れるのを躊躇うファクターの世話をした。
痛いと言う前に魔力で痛みを取り、自身が疲れていても体を動かすのもままならないファクターに寝返りを打たせ、寝るのは寝台の隣に置いた椅子。
命が尽きる間際、ファクターは心からの言葉を伝えようと声を振り絞った。
ハーシアは爪の先ほどもファクターを疑わず、サーシスの本当の父親がファクターである事も知らずに尽くしてくれた。
時戻りが成功したことを知ったのは1年ほど前。
丁度どの王子の隊に所属をするか選択ができる時に過去の記憶を思い出したが、選択が出来るのは名ばかりで実際は選択の余地はない。家が所属する派閥で申し出る隊が決まる。
前回の人生でセシル家は第2王子の派閥だった。
しかし、ファクターが第3王子の強いリーダーシップに憧れ、第3王子の隊を選んだことでセシル家は派閥を変えねばならなくなった。
時戻りに気がついた時からファクターは第3王子とは距離を取ったのだが、何かに引っ張られるように今度は家の派閥が第3王子派だった。
前回はファクターの選択で家が派閥を変えたが、今度はファクターが折れねばならなくなった。
ユリアと出会ったのもその時期で、街中で破落戸に囲まれていたユリアとその友人を助けたのが切っ掛け。
王子の隊と言えど近衛隊ではないので、日常の警備は配属された騎士団に準じる。
ファクターはその日、市井の見回り警備だった。
ユリアと気がついたが仕事は仕事と割り切って任務にあたり会話も交わさなかったのに、翌日ユリアが隊にお礼名目の差し入れを持ってやってきた。
「私と愛し合ってサーシスが生まれたよね」
「何のことだ?貴女とは昨日が初見だが?」
「誤魔化さないで。覚えてるの。あの時はごめんなさい。誰だってびっくりすると思うのよ?終わった事に怒らないで。ずっと後悔してた」
ファクターはユリアを心底軽蔑した。
――何が終わった事だ――
裏切った側、シタ側が物事を都合よく忘れたり、過去の事とする事はままあるが、逆はそうではない。
なんのために呪いを受け入れたのか。
そう、時間が戻ったらコソコソとするのではなく自分の妻はユリアなのだと声高らかに言える生き方をしたいと願い生贄になる事を選んだのに。
呪われた自分をまるで潰れたゴキブリを見るような目で見たユリアの残酷な1言。
ユリアに捨てられた時のファクターの絶望は筆舌に尽くし難い。
驚いたのは本当だろう。
ファクターですら呪いの紋様が幾何学模様となって浮かび上がった顔を鏡で見た時は鏡を割ったし、ガラスや水面に映る自分の顔を見るのも嫌だった。
しかしハーシアは違った。
献身的な介護に介助。体に感じる物理な痛みが和らいだからだけではない。
どれだけ心が救われたか。
ハーシアの瞳に映る自分の顔を見た時、激しく後悔し時間が戻ればハーシアだけを愛し抜く事を心に誓った。
今のファクターの心の中にはハーシアしかいない。
ユリアの本性を知ったファクターは以前となんら変わらないユリアを見て「こんな女の何処が良かったんだろう」とすら考えてしまっていた。
――早めにユリアと手を切らねば――
そう考えたファクターだったが、それも出来ない事情があった。
2,034
あなたにおすすめの小説
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる