貴方の妻にはなれなくて

cyaru

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(๑>؂<๑) ハーシア15歳♡

09:終わった事②―①

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かつて時を巻き戻す呪術を使ったのは第3王子だった。
禁書とされた呪術書は全てが解読出来ていた訳ではないけれど第2王子に王弟公の座を奪われた第3王子は選ばれなかった原因を探し、その要因が起こった日まで時間を戻す事を画策した。

誰彼に言える事ではなく、生贄となる呪いを受ける者も志を同じくする者でなければならずファクターは時が戻ったら、次こそはユリアと大手を振って歩ける生活を望み生贄となった。

しかし、呪われたファクターの姿を一目見てユリアはあっさりとファクターを見捨てた。

『何なの。気持ち悪い。こんなのと一緒に居なきゃいけないの?絶対に嫌よ』

触れれば呪いに感染するのではと、雑な扱いで荷車に載せられ王都に運ばれてきたファクターを最期まで優しく世話をしてくれたのはユリアの双子の姉、散々に蔑ろにして王都にいる際にただの性欲処理として使ってきたハーシアだった。

15年という長い月日、ハーシアは使用人も触れるのを躊躇うファクターの世話をした。
痛いと言う前に魔力で痛みを取り、自身が疲れていても体を動かすのもままならないファクターに寝返りを打たせ、寝るのは寝台の隣に置いた椅子。

命が尽きる間際、ファクターは心からの言葉を伝えようと声を振り絞った。
ハーシアは爪の先ほどもファクターを疑わず、サーシスの本当の父親がファクターである事も知らずに尽くしてくれた。

時戻りが成功したことを知ったのは1年ほど前。
丁度どの王子の隊に所属をするか選択ができる時に過去の記憶を思い出したが、選択が出来るのは名ばかりで実際は選択の余地はない。家が所属する派閥で申し出る隊が決まる。

前回の人生でセシル家は第2王子の派閥だった。
しかし、ファクターが第3王子の強いリーダーシップに憧れ、第3王子の隊を選んだことでセシル家は派閥を変えねばならなくなった。


時戻りに気がついた時からファクターは第3王子とは距離を取ったのだが、何かに引っ張られるように今度は家の派閥が第3王子派だった。
前回はファクターの選択で家が派閥を変えたが、今度はファクターが折れねばならなくなった。


ユリアと出会ったのもその時期で、街中で破落戸に囲まれていたユリアとその友人を助けたのが切っ掛け。

王子の隊と言えど近衛隊ではないので、日常の警備は配属された騎士団に準じる。
ファクターはその日、市井の見回り警備だった。

ユリアと気がついたが仕事は仕事と割り切って任務にあたり会話も交わさなかったのに、翌日ユリアが隊にお礼名目の差し入れを持ってやってきた。

「私と愛し合ってサーシスが生まれたよね」
「何のことだ?貴女とは昨日が初見だが?」
「誤魔化さないで。覚えてるの。あの時はごめんなさい。誰だってびっくりすると思うのよ?に怒らないで。ずっと後悔してた」


ファクターはユリアを心底軽蔑した。

――何がだ――

裏切った側、シタ側が物事を都合よく忘れたり、過去の事とする事はままあるが、逆はそうではない。

なんのために呪いを受け入れたのか。

そう、時間が戻ったらコソコソとするのではなく自分の妻はユリアなのだと声高らかに言える生き方をしたいと願い生贄になる事を選んだのに。

呪われた自分をまるで潰れたゴキブリを見るような目で見たユリアの残酷な1言。
ユリアに捨てられた時のファクターの絶望は筆舌に尽くし難い。


驚いたのは本当だろう。
ファクターですら呪いの紋様が幾何学模様となって浮かび上がった顔を鏡で見た時は鏡を割ったし、ガラスや水面に映る自分の顔を見るのも嫌だった。

しかしハーシアは違った。
献身的な介護に介助。体に感じる物理な痛みが和らいだからだけではない。
どれだけ心が救われたか。

ハーシアの瞳に映る自分の顔を見た時、激しく後悔し時間が戻ればハーシアだけを愛し抜く事を心に誓った。

今のファクターの心の中にはハーシアしかいない。
ユリアの本性を知ったファクターは以前となんら変わらないユリアを見て「こんな女の何処が良かったんだろう」とすら考えてしまっていた。

――早めにユリアと手を切らねば――


そう考えたファクターだったが、それも出来ない事情があった。
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