婚約破棄になったら、駄犬に懐かれました

cyaru

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第09話   半分こするもの?

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「大盛況だっただろう」

得意げなレオカディオの言葉。
来場者の数に限ってみれば嘘ではなかった。

ただ、列に並ぶ人間ばかりが目について閑散としている飲食ブースや、やって来る人間は多くがスラム街の住人で「品がない」と言い放ち、大通りに人をやって「行けば金が貰える」と叫ばせた。

その結果がこのバザーでの本来の目的とは全く関係ない人が押し寄せる事となったのだが、そこには問題点を見出してないレオカディオ。

幸いにもコチ公爵家を始めとして4家の公爵家から多額の寄付があると聞いたレオカディオとアエラは全てを千バウ札に両替させて、民衆に配ったのだ。


「あのお金は設営などにかかった経費の他に、支援を申請した人にも配られるモノなんですよ?!そんな事をしたら配らなきゃならない金がないじゃありませんか!何より配るのなら平等に配らないと同じような催しで現金の配布がないとなれば人が来なくなります。何のために周知するバザーを開いたのか判らなくなります」


千バウあれば1日に3食食べられる。道理で人が群がるはずだが配る事によって起きてしまった不公平感。

しかし、レオカディオとアエラはピレニーを一笑に付した。

「これだけの人が集まったんだ。快挙だと思わない君の感性を疑うよ。君の懐が潤う訳でもないのに民衆に配った金に文句をつけるのはお門違いもいい所だろうが」

「レオ。ダメよ。田舎は物が少ないから量より質って言うでしょう?僅かな物をさも!価値があるように考えるから多くの人が集まるこんな場の仕切り方も判らないだけなのよ」

「レオカディオ。貴方何をしたか判ってるの?これじゃ手続きに来た人に支援金も配れないじゃない!」

「金が配れないのは僕の責任かい?君が好き勝手に設営をしたおかげで余計な経費が掛かったからだろう?無駄金はモコ伯爵家で何とかするんだな。折角集めた寄付金の使い道まで君に何かを言われたくはない」

「ほんと。田舎者は線引きが出来ないくせに文句ばかり。知ってる?起こった事に文句を言うだけってすごく簡単な事なのよ?貴女が出来るのはこの程度なの。身の程を弁えないと。あらいけない!打ち上げの夜会があるわ。レオ、帰りましょう」


連れだって後片付けもせずに引き上げていった2人にサレス侯爵家の使用人は「申し訳ない」と言った。


この件に限らず、レオカディオの言動をサレス侯爵には報告をしているそうなのだが、まことしやかな理由をつけてレオカディオが諄く説明をするため、サレス侯爵も注意にとどめていたのだと言う。

確かに体は1つしないのだから、寄付金を募るためにあちこちに出掛けていれば設営は出来ない。連絡も自身では行わずに突然茶会に乱入するレオカディオ。

ピレニーが事前に連絡をしていたからサレス侯爵家に抗議がなかっただけで、寄付金を呼びかける声に誰も賛同をしなかったから寄付金も集まっていなかった。

それでも呼びかけをしていた事実をレオカディオは熱く語るし寄付金が少ない事に文句を言うのもおかしな話。


「いいわ。終わった事を言っても仕方ないわ。片付けをしましょう」

テントやらを片付け始めると、第2王子ドベールが1人の男性を連れてピレニーに声を掛けてきた。


「手伝おう。可愛い姪っ子に重いものを運ばせるのは忍びないからね」
「伯父さま。冗談はやめて?第2王子殿下に後片付けをさせたなんて知られたら大変だわ」
「何を言ってる。このバザーは王家も主催をしてるんだ。王家代表だよ」


そう言いながら教会から場を借りた支払い済みの領収証をピレニーに差し出したドベール。

「伯父さま・・・ありがとう」

あの民衆に配った金はおそらくは4家の公爵家からの金。2、3時間続いた騒ぎで配られた金は軽く2千万を超えるだろうから教会への支払いを父親に一時立て替えて貰おうかと考えていた所だった。

「へそくりから出すと言っただろう?あぁ、そうそう。これは息子のチェサピック。力仕事は得意だからこき使ってやってくれ。今日中に更地にしないとへそくりはもう出し尽くしたからな」

ドベールの息子で、従兄妹関係となるのだが初見となるピレニーは会うのは初めて・・・の筈だった。


「あれっ?!あの時の裸足の子!」


チェサピックはレオカディオが不貞をしていた事実は知っていたが、てっきり複数人だと思っていてあの廊下でレオカディオが連れていたのはミジャン伯爵令嬢だったため、婚約者と一緒ではないのならと別の恋人と痴態を繰り広げているのかと思っていた。

最初からあの場にいれば言い合う言葉を聞いたかも知れないが、たまたま通りかかったのがレオカディオがアエラと共に去っていく時だった。


「裸足?」ドベールが聞き直す。令嬢としてあるまじき行為にピレニーは慌てた。


「違うわ!ストッキングは履いてると言ったでしょう!」

「お前なぁ・・・」今度は呆れた声を出したドベール。
チェサピックもこれは失言だったと気が付き、「片付けをしよう!」とピレニーをいざなってドベールから距離を取った。



「君がピレニー嬢だったのか。俺はてっきり・・・」
「てっきり?何者だと思ったの?」
「何者って言うか・・・それよりも足は大丈夫だったのか?」
「足?あぁ。コチ公爵家の廊下はね、凄く歩きやすかったわ」
「歩くって…走ってたと思うが」
「走っ!!走ってなんかないわ!もし走っていたら魔法犬ジョリーより早く走れるわ!」
「ジョリーを知っているのか?!俺もあの歌劇は何度も見て泣いたぞ。ビスケットも涙も半分こなんて泣かせるだろう?」


魔法犬ジョリーは今では差別用語があるという事で歌劇では上演をされていないが、ピレニーはジョリーがグレート・ピレニーズと言う犬種で自分の名前と似ているので大好きな歌劇だった。

「ジョリーをご存じなの?!奇遇だわ」
「知ってるさ。だから足が心配でね。靴を買おうと思ったんだが・・・よく考えたらサイズが判らなくて俺のサイズの半分って事で13.5cmにしたんだが靴屋に子供用かと聞かれたよ」

――靴のサイズを半分で考えるなんて――

「買ったから生誕祭に贈るよ。従兄妹だったなんてなぁ」
「履けるわけないでしょう?!13.5cmって間違いなく入らないわよ!」
「でも俺の半分くらいの足だろう?」

チラリと足元を見れば軍靴が見える。それよりは間違いなく小さいサイズだが無理なものは無理。

「俺の心配事を1つ減らすと思って履いてくれると嬉しいな」

――トゥキックと踵落としで足のサイズを小さくしてもいいなら――

そう言いかけたピレニーだったが、ジョリー好きに免じて受け取る事を決めたのだった。
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