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第04話  下賜された家鴨

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アルベルティナはケーニス伯爵に向かってにこりと笑った。

「解りました。異を唱える事などありません。早速支度もせねばなりませんし…あぁ。エミリア様から預かった家鴨はどうしましょう?」
「家鴨?なんだそれは」

――あら?愚父は家鴨の事は知らなかったのかしら――

本当に何のことだか解らないケーニス伯爵はアルベルティナがおかしくなったのか?なんでそんな事を言い出したのか?そもそもペットを飼う許可など出していないのに。そんな目で見た。

「そんなもの。連れて行きたければ行けばいい!」
「あら?そうなの?解りました。本当に良いんですね?」

アルベルティナはちらりとエミリアを見た。
エミリアの顔色はすこぶる悪い。

エミリアに家鴨を押し付けた筆頭公爵家のお嬢様アメリも家鴨の意味を理解をしているからこそ押し付けた。エミリアだって帝国の第3皇女だった王太子妃の考えが読めない程馬鹿ではない。

王太子妃と言っても実質の国王。
このマレル王国は帝国の隷属に等しい国。第3皇女は身近で監視をするために嫁ぐ形をとってこの国に入ってきた。外と中からマレル王国を完全に制圧下に置くための結婚だったのだ。

そうでなければ国王と王妃、王太子が客間で生活しているはずがない。

力を持っているアメリの実家である筆頭公爵家への民意を失墜させるのは第3皇女王太子妃に課せられた必須事項の1つ。

ただ‥‥公爵家に瑕疵も無く取り潰す事は出来ない。
いきなり軍隊を呼んでしまえばマレル王国の貴族にも矜持はある。反発させないように下賜品として策の1つとして家鴨を預けたのだ。

帝国ではよくある家潰しの手。
臣下を名乗る者に品物であったり、生き物を預ける。忘れた頃に「あれはどうなっている?」と問えば下賜品を見せねばならなくなる。

解りやすい戦法で平民でも他人から預かったものは壊さないようにと扱うが、金も専用の人材も雇える貴族がぞんざいに扱えばどうなるかなど火を見るよりも明らか。

生き物なら寿命もあるが、家鴨は預けられてまだ2か月。
とても「寿命で死んでしまいました」とは言えない。

たかが家鴨。替わりは幾らでもいると思ったら大間違い。
預けられた家鴨の脚には第3皇女王太子妃直々に識別魔法が掛けられた足環が嵌められている。

アルベルティナは「面倒を見ろ」とエミリアから言われただけで、気さくに小屋に来てくれる使用人から成り行きを知っただけ。

エミリアも「第3皇女王太子妃からアメリが預かった」なんてアルベルティナに言おうものなら、どこから秘密が漏れるかもわからず、悪人にとって大事な事を守ったのだ。

それは【秘密を知る人間は少なければ少ない方が良い】ということ。

敵を騙すには味方からとも言うが、漏洩を恐れたエミリアはアルベルティナにも「大事にしろ」とは言ったが、大事にする理由は言わなかったし、恥ずかしかったのか妹のソフィアにも両親にも家鴨を押し付けられた事は言っていなかった。

――憶測は口にしちゃいけないし?――

貴族でなくても当然のことだ。
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