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横乗りは危険
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ポリーと共に馬車で夜間ではありますが帰宅しようとしたのですが問題が御座いました。移動の予定は明日だったため乗る馬車がないのです。
パルカス侯爵家の婚姻とあって祝いの宴に参列するお客様も少なくありません。
「どうしましょう。お嬢様」
「知っている方に同乗させてもらうしかないわね」
「と言ってもカレドス家繋がりの方は早々に引き上げられているようです」
困り果てているとどなたの従者様なのでしょうか。お声がけくださったのです。
「どうされた」
その方のお顔を見て、私はあわててカーテシーを取ったのです。
「こ、これは大変な失礼を」
「いや、今日は殿下のお供なんだ。馬車番だから畏まるのはやめてくれ」
声を掛けてくださったのは第1王子レオン殿下の側近の中の側近。近衛騎士隊で隊長職も務められているアルフォンソ様で御座いました。
アルフォンソ様はレオン殿下の側近護衛もされておられますが、王子殿下や王女殿下とは ”いとこ” の繋がりもある筆頭公爵家、ロカ公爵家のご次男。
10歳にも満たない時期から剣を握り、27歳となられた今までに数々の武功も挙げられた方。おいそれと話をする事など出来るはずも御座いません。
こんな方を馬車番だなんて!!レオン殿下はやっぱり王族なんだわと思いつつも下げた頭は上げられず。
しかし…。
「申し訳ないが顔を上げてはくれないか?その‥‥」
「は、はい。では失礼を致します――えっ?!あ、あのっ」
――何故、アルフォンソ様の手が私の頬にあるの?!――
無駄に心拍数が上がってしまうから!と言えるはずもなく、アルフォンソ様の言葉は物理的な事が理由で御座いました。
「ちらっと見えた気がしたが…やはり。この頬は誰に?」
――かっ軽く握った指の背で撫でないで!!――
剣を握る男性の指の節の太さ。それだけで久しく錆びついていた乙女心が刺激されてしまうのですけれど、その心地よさを感じられるとなればブラウリオ様の張り手に感謝してしまいそうになります。
「だ、大丈夫です。転んでしまいまして。オホホ」
「転んだ?これは転んで出来た痕ではない。騎士の目を誤魔化せると思うな」
「だ、大丈夫なんですっ」
「これで大丈夫…そんなはずがない」
「本当に、本当に大丈夫なのです。それに今はそれどころではなくて一刻も早くこの場を去りたいのです!」
言ってしまった。
これではやはり誰かに頬を張られてしまった。
いえ、張られたのは事実なんですけれども、言ってみれば暴漢から逃げたいと言っているのと同じ。失言だったと気が付いた時には時すでに遅し。
「判った。直ぐ戻るからここから動かないように」
くるりと踵を返し会場のほうに駆け足で向かうアルフォンソ様に「お待ちください」という声も届かず。
「ポリー…やっちゃったかも知れないわ」
「ですよねー。騎士さん、絶対に勘違いしてますよねー」
「棒読みで言わないで」
動くなと言われても、私達を乗せてくれる馬車が来るはずもなく。
大騒ぎになったら何と言い訳しよう。そう考えておりました。
「待たせた。侍女殿は部下と共に。こちらだ。参られよ」
なんだ?なんだ?と頭が混乱をするのは私はアルフォンソ様に、ポリーは部下の騎士さんに横抱きにされて疾走されている事に理解が追いつかなかったのです。
横抱きで走られるのも恥ずかしいものですが、忘れておりました。
アルフォンソ様は側近護衛。レオン殿下の馬車の周囲を騎乗してここまで来られたのです。
「殿下には断りを入れてきた。一先ずは私の屋敷で保護をする」
「保護っ?!いえいえ、そんなっ」
「先ずは貴女と侍女殿の生命の安全が第一だ。騎乗するのは怖いだろうから私にしっかり掴まるんだ」
――掴まるんだと言われても!?――
ご存じ?疾走する馬に横座りで乗る恐怖。
「喋るなよ?舌を噛むぞ」
と、言われた気もいたしますが、私もポリーもアルフォンソ様のお屋敷に到着する遥か手前で意識を飛ばしておりました。
パルカス侯爵家の婚姻とあって祝いの宴に参列するお客様も少なくありません。
「どうしましょう。お嬢様」
「知っている方に同乗させてもらうしかないわね」
「と言ってもカレドス家繋がりの方は早々に引き上げられているようです」
困り果てているとどなたの従者様なのでしょうか。お声がけくださったのです。
「どうされた」
その方のお顔を見て、私はあわててカーテシーを取ったのです。
「こ、これは大変な失礼を」
「いや、今日は殿下のお供なんだ。馬車番だから畏まるのはやめてくれ」
声を掛けてくださったのは第1王子レオン殿下の側近の中の側近。近衛騎士隊で隊長職も務められているアルフォンソ様で御座いました。
アルフォンソ様はレオン殿下の側近護衛もされておられますが、王子殿下や王女殿下とは ”いとこ” の繋がりもある筆頭公爵家、ロカ公爵家のご次男。
10歳にも満たない時期から剣を握り、27歳となられた今までに数々の武功も挙げられた方。おいそれと話をする事など出来るはずも御座いません。
こんな方を馬車番だなんて!!レオン殿下はやっぱり王族なんだわと思いつつも下げた頭は上げられず。
しかし…。
「申し訳ないが顔を上げてはくれないか?その‥‥」
「は、はい。では失礼を致します――えっ?!あ、あのっ」
――何故、アルフォンソ様の手が私の頬にあるの?!――
無駄に心拍数が上がってしまうから!と言えるはずもなく、アルフォンソ様の言葉は物理的な事が理由で御座いました。
「ちらっと見えた気がしたが…やはり。この頬は誰に?」
――かっ軽く握った指の背で撫でないで!!――
剣を握る男性の指の節の太さ。それだけで久しく錆びついていた乙女心が刺激されてしまうのですけれど、その心地よさを感じられるとなればブラウリオ様の張り手に感謝してしまいそうになります。
「だ、大丈夫です。転んでしまいまして。オホホ」
「転んだ?これは転んで出来た痕ではない。騎士の目を誤魔化せると思うな」
「だ、大丈夫なんですっ」
「これで大丈夫…そんなはずがない」
「本当に、本当に大丈夫なのです。それに今はそれどころではなくて一刻も早くこの場を去りたいのです!」
言ってしまった。
これではやはり誰かに頬を張られてしまった。
いえ、張られたのは事実なんですけれども、言ってみれば暴漢から逃げたいと言っているのと同じ。失言だったと気が付いた時には時すでに遅し。
「判った。直ぐ戻るからここから動かないように」
くるりと踵を返し会場のほうに駆け足で向かうアルフォンソ様に「お待ちください」という声も届かず。
「ポリー…やっちゃったかも知れないわ」
「ですよねー。騎士さん、絶対に勘違いしてますよねー」
「棒読みで言わないで」
動くなと言われても、私達を乗せてくれる馬車が来るはずもなく。
大騒ぎになったら何と言い訳しよう。そう考えておりました。
「待たせた。侍女殿は部下と共に。こちらだ。参られよ」
なんだ?なんだ?と頭が混乱をするのは私はアルフォンソ様に、ポリーは部下の騎士さんに横抱きにされて疾走されている事に理解が追いつかなかったのです。
横抱きで走られるのも恥ずかしいものですが、忘れておりました。
アルフォンソ様は側近護衛。レオン殿下の馬車の周囲を騎乗してここまで来られたのです。
「殿下には断りを入れてきた。一先ずは私の屋敷で保護をする」
「保護っ?!いえいえ、そんなっ」
「先ずは貴女と侍女殿の生命の安全が第一だ。騎乗するのは怖いだろうから私にしっかり掴まるんだ」
――掴まるんだと言われても!?――
ご存じ?疾走する馬に横座りで乗る恐怖。
「喋るなよ?舌を噛むぞ」
と、言われた気もいたしますが、私もポリーもアルフォンソ様のお屋敷に到着する遥か手前で意識を飛ばしておりました。
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