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治験は私で
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薬にも色々な種類が御座います。
水や白湯と一緒に飲む薬に塗り薬、患部に張り付ける貼り薬。あとは薬草を溶かした水で患部を洗い流したりもしますし、隣国では点眼と言って目の中にポチョンと落す薬も御座います。
ですが、隣国も含め保存が出来ないという難点があるのです。
薬草を千切って来て、茎や葉から出る汁はその時しか使えませんし、薬草を洗って干しても薬にする時はゴリゴリと乳鉢で粉上にしたりしてしまうと保存が効かず効果はせいぜい1日。
「乾燥させた状態ならどれくらい持つのかしら」
「そうですねぇ。私の祖母…と言ってももう亡くなりましたが半年、いや1年は乾燥させた薬草を引き出しにしまっておりましたよ」
「やっぱり煎じてしまうとダメなのね」
保存が効けば国内の各地に薬をまんべんなく行き渡らせる事が出来るので便利なのです。
何より煎じてしまうと数人分を一緒に作ってしまうので流感の時は解熱など複数に使えてもそうではない時は捨ての分が多くなってしまう。
「何かいい方法がありそうな気がするのよね」
悩んでいるとアルフォンソ様がお帰りになり、出迎えるのをすっかり忘れておりました。
「何を悩んでいるのだ」
「あ、アルフォンソ様。無事のお帰り何よりでございます。実は今日、お庭を散策させて頂いておりまして大根の収穫をさせて頂きました。夕食に出してくださるそうなので食べて頂けると嬉しいですわ」
「だ…大根…」
「どうなさいました?」
「いや、何でもない。夕食が楽しみだよ」
――大根苦手なんだよな…独特の生臭い香りもするし――
そんな事をアルフォンソ様が考えているとは露知らず。
私はまた書庫から借りて来た本を読み耽っておりました。
――なんだか視線を感じるんだけど――
ふっと顔を上げると周囲の使用人さんがサッと目を逸らせます。
――変ね、確かに見られているような気がしたんだけど――
向かいで早朝勤務だったアルフォンソ様が朝読めなかった新聞を読んでいらっしゃいますが、お顔は新聞で隠れているし変だなと思いつつもまた本を読んでおりました。
――んん~完全に密閉するにはどうしたら――
ふと顔を上げると何故かアルフォンソ様と目が合いますが、逸らされてしまいました。
よくよく見れば先程から新聞を捲る音がしなかった気もいたします。
――でも、なんだかんだでアルフォンソ様もイケメンなのよね――
調った顔立ちと言うのは正面からでも横向きでも、なんなら後ろ姿さえ絵になるのですから役得ですわね。
「なにか用意する者があればロカルドに頼むといい」
「え?ロカ子爵家様で用意をしてくださると?」
「庭にあるものを有効活用してくれるのだから当然だ」
――有効活用ですって?無駄になる可能性が高いのに?――
「無駄になるなど考えなくていい」
――心が読めるの?!嘘でしょ?――
「失敗は何をするにも付き物だ。失敗を恐れていたら何も出来ないから無駄になる事など何もない。こうすれば失敗をするという事も学べると思えばいいんだ。敵と対峙する訳じゃないから命まで取られる事もない」
「それもそうですわね。流石はアルフォンソ様!勉強になりますわ」
しかし、その時ポリーが「コホンコホン」と咳ばらいを致しました。
私の考えている事はおそらくアルフォンソ様は3割でしょうけども、ポリーは歴が長ぅ御座います。全てを見抜いておりました。
「ロカ様。お嬢様なのですが効能があるかどうか。ご自身の体を使って確かめようとすると思いますが宜しいでしょうか」
アルフォンソ様のお体が少し浮いた気がいたしますが気のせいではなかったようです。
尻が浮くほど驚かれたのでしょう。
「そんな危険な事を許可できるわけがない!」
「先ほどは失敗を恐れるなと仰ったではありませんか」
「自分の体を…判った。その効能を試すのは私の体にしてくれ」
「良いのですか?お腹を壊すかもしれませんよ?」
「君の体調が悪くなるよりずっといい。遠慮なく使ってくれ」
「そこまで仰ってくださるとは…。私も頑張らねばなりませんね。では早速で御座いますが…」
ポケットに入れていた小さな瓶を取り出します。
昼過ぎに作ったばかりのお薬だったのですが早速大問題に突き当たりました。
だって、一番最初は「デリケートゾーンのかゆみ止め」だったのです。
水や白湯と一緒に飲む薬に塗り薬、患部に張り付ける貼り薬。あとは薬草を溶かした水で患部を洗い流したりもしますし、隣国では点眼と言って目の中にポチョンと落す薬も御座います。
ですが、隣国も含め保存が出来ないという難点があるのです。
薬草を千切って来て、茎や葉から出る汁はその時しか使えませんし、薬草を洗って干しても薬にする時はゴリゴリと乳鉢で粉上にしたりしてしまうと保存が効かず効果はせいぜい1日。
「乾燥させた状態ならどれくらい持つのかしら」
「そうですねぇ。私の祖母…と言ってももう亡くなりましたが半年、いや1年は乾燥させた薬草を引き出しにしまっておりましたよ」
「やっぱり煎じてしまうとダメなのね」
保存が効けば国内の各地に薬をまんべんなく行き渡らせる事が出来るので便利なのです。
何より煎じてしまうと数人分を一緒に作ってしまうので流感の時は解熱など複数に使えてもそうではない時は捨ての分が多くなってしまう。
「何かいい方法がありそうな気がするのよね」
悩んでいるとアルフォンソ様がお帰りになり、出迎えるのをすっかり忘れておりました。
「何を悩んでいるのだ」
「あ、アルフォンソ様。無事のお帰り何よりでございます。実は今日、お庭を散策させて頂いておりまして大根の収穫をさせて頂きました。夕食に出してくださるそうなので食べて頂けると嬉しいですわ」
「だ…大根…」
「どうなさいました?」
「いや、何でもない。夕食が楽しみだよ」
――大根苦手なんだよな…独特の生臭い香りもするし――
そんな事をアルフォンソ様が考えているとは露知らず。
私はまた書庫から借りて来た本を読み耽っておりました。
――なんだか視線を感じるんだけど――
ふっと顔を上げると周囲の使用人さんがサッと目を逸らせます。
――変ね、確かに見られているような気がしたんだけど――
向かいで早朝勤務だったアルフォンソ様が朝読めなかった新聞を読んでいらっしゃいますが、お顔は新聞で隠れているし変だなと思いつつもまた本を読んでおりました。
――んん~完全に密閉するにはどうしたら――
ふと顔を上げると何故かアルフォンソ様と目が合いますが、逸らされてしまいました。
よくよく見れば先程から新聞を捲る音がしなかった気もいたします。
――でも、なんだかんだでアルフォンソ様もイケメンなのよね――
調った顔立ちと言うのは正面からでも横向きでも、なんなら後ろ姿さえ絵になるのですから役得ですわね。
「なにか用意する者があればロカルドに頼むといい」
「え?ロカ子爵家様で用意をしてくださると?」
「庭にあるものを有効活用してくれるのだから当然だ」
――有効活用ですって?無駄になる可能性が高いのに?――
「無駄になるなど考えなくていい」
――心が読めるの?!嘘でしょ?――
「失敗は何をするにも付き物だ。失敗を恐れていたら何も出来ないから無駄になる事など何もない。こうすれば失敗をするという事も学べると思えばいいんだ。敵と対峙する訳じゃないから命まで取られる事もない」
「それもそうですわね。流石はアルフォンソ様!勉強になりますわ」
しかし、その時ポリーが「コホンコホン」と咳ばらいを致しました。
私の考えている事はおそらくアルフォンソ様は3割でしょうけども、ポリーは歴が長ぅ御座います。全てを見抜いておりました。
「ロカ様。お嬢様なのですが効能があるかどうか。ご自身の体を使って確かめようとすると思いますが宜しいでしょうか」
アルフォンソ様のお体が少し浮いた気がいたしますが気のせいではなかったようです。
尻が浮くほど驚かれたのでしょう。
「そんな危険な事を許可できるわけがない!」
「先ほどは失敗を恐れるなと仰ったではありませんか」
「自分の体を…判った。その効能を試すのは私の体にしてくれ」
「良いのですか?お腹を壊すかもしれませんよ?」
「君の体調が悪くなるよりずっといい。遠慮なく使ってくれ」
「そこまで仰ってくださるとは…。私も頑張らねばなりませんね。では早速で御座いますが…」
ポケットに入れていた小さな瓶を取り出します。
昼過ぎに作ったばかりのお薬だったのですが早速大問題に突き当たりました。
だって、一番最初は「デリケートゾーンのかゆみ止め」だったのです。
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