アメイジングな恋をあなたと

cyaru

文字の大きさ
15 / 41

治験は私で

しおりを挟む
薬にも色々な種類が御座います。

水や白湯と一緒に飲む薬に塗り薬、患部に張り付ける貼り薬。あとは薬草を溶かした水で患部を洗い流したりもしますし、隣国では点眼と言って目の中にポチョンと落す薬も御座います。

ですが、隣国も含め保存が出来ないという難点があるのです。

薬草を千切って来て、茎や葉から出る汁はその時しか使えませんし、薬草を洗って干しても薬にする時はゴリゴリと乳鉢で粉上にしたりしてしまうと保存が効かず効果はせいぜい1日。

「乾燥させた状態ならどれくらい持つのかしら」
「そうですねぇ。私の祖母…と言ってももう亡くなりましたが半年、いや1年は乾燥させた薬草を引き出しにしまっておりましたよ」
「やっぱり煎じてしまうとダメなのね」

保存が効けば国内の各地に薬をまんべんなく行き渡らせる事が出来るので便利なのです。
何より煎じてしまうと数人分を一緒に作ってしまうので流感の時は解熱など複数に使えてもそうではない時は捨ての分が多くなってしまう。

「何かいい方法がありそうな気がするのよね」

悩んでいるとアルフォンソ様がお帰りになり、出迎えるのをすっかり忘れておりました。

「何を悩んでいるのだ」
「あ、アルフォンソ様。無事のお帰り何よりでございます。実は今日、お庭を散策させて頂いておりまして大根の収穫をさせて頂きました。夕食に出してくださるそうなので食べて頂けると嬉しいですわ」
「だ…大根…」
「どうなさいました?」
「いや、何でもない。夕食が楽しみだよ」

――大根苦手なんだよな…独特の生臭い香りもするし――

そんな事をアルフォンソ様が考えているとは露知らず。
私はまた書庫から借りて来た本を読み耽っておりました。

――なんだか視線を感じるんだけど――

ふっと顔を上げると周囲の使用人さんがサッと目を逸らせます。

――変ね、確かに見られているような気がしたんだけど――

向かいで早朝勤務だったアルフォンソ様が朝読めなかった新聞を読んでいらっしゃいますが、お顔は新聞で隠れているし変だなと思いつつもまた本を読んでおりました。

――んん~完全に密閉するにはどうしたら――

ふと顔を上げると何故かアルフォンソ様と目が合いますが、逸らされてしまいました。
よくよく見れば先程から新聞を捲る音がしなかった気もいたします。

――でも、なんだかんだでアルフォンソ様もイケメンなのよね――

調った顔立ちと言うのは正面からでも横向きでも、なんなら後ろ姿さえ絵になるのですから役得ですわね。


「なにか用意する者があればロカルドに頼むといい」
「え?ロカ子爵家様で用意をしてくださると?」
「庭にあるものを有効活用してくれるのだから当然だ」

――有効活用ですって?無駄になる可能性が高いのに?――

「無駄になるなど考えなくていい」

――心が読めるの?!嘘でしょ?――

「失敗は何をするにも付き物だ。失敗を恐れていたら何も出来ないから無駄になる事など何もない。こうすれば失敗をするという事も学べると思えばいいんだ。敵と対峙する訳じゃないから命まで取られる事もない」

「それもそうですわね。流石はアルフォンソ様!勉強になりますわ」

しかし、その時ポリーが「コホンコホン」と咳ばらいを致しました。
私の考えている事はおそらくアルフォンソ様は3割でしょうけども、ポリーは歴が長ぅ御座います。全てを見抜いておりました。

「ロカ様。お嬢様なのですが効能があるかどうか。ご自身の体を使って確かめようとすると思いますが宜しいでしょうか」


アルフォンソ様のお体が少し浮いた気がいたしますが気のせいではなかったようです。
尻が浮くほど驚かれたのでしょう。

「そんな危険な事を許可できるわけがない!」
「先ほどは失敗を恐れるなと仰ったではありませんか」
「自分の体を…判った。その効能を試すのは私の体にしてくれ」
「良いのですか?お腹を壊すかもしれませんよ?」
「君の体調が悪くなるよりずっといい。遠慮なく使ってくれ」
「そこまで仰ってくださるとは…。私も頑張らねばなりませんね。では早速で御座いますが…」


ポケットに入れていた小さな瓶を取り出します。
昼過ぎに作ったばかりのお薬だったのですが早速大問題に突き当たりました。

だって、一番最初は「デリケートゾーンのかゆみ止め」だったのです。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

【完結済】後悔していると言われても、ねぇ。私はもう……。

木嶋うめ香
恋愛
五歳で婚約したシオン殿下は、ある日先触れもなしに我が家にやってきました。 「君と婚約を解消したい、私はスィートピーを愛してるんだ」 シオン殿下は、私の妹スィートピーを隣に座らせ、馬鹿なことを言い始めたのです。 妹はとても愛らしいですから、殿下が思っても仕方がありません。 でも、それなら側妃でいいのではありませんか? どうしても私と婚約解消したいのですか、本当に後悔はございませんか?

全てから捨てられた伯爵令嬢は。

毒島醜女
恋愛
姉ルヴィが「あんたの婚約者、寝取ったから!」と職場に押し込んできたユークレース・エーデルシュタイン。 更に職場のお局には強引にクビを言い渡されてしまう。 結婚する気がなかったとは言え、これからどうすればいいのかと途方に暮れる彼女の前に帝国人の迷子の子供が現れる。 彼を助けたことで、薄幸なユークレースの人生は大きく変わり始める。 通常の王国語は「」 帝国語=外国語は『』

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

その言葉はそのまま返されたもの

基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。 親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。 ただそれだけのつまらぬ人生。 ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。 侯爵子息アリストには幼馴染がいる。 幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。 可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。 それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。 父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。 幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。 平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。 うんざりだ。 幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。 彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。 比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。 アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。 まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。

処理中です...