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2回目の人生
王子は理解が出来ない
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暴れても、泣いても、静かにしていても扉が開くことはない。
夕食も扉がパタンと閉じる音に慌てて向かうも、入室は危険だと判断したのか床置きされていた。
悔しくて蹴り上げようと思ったが空腹には勝てない。
水すら水差しは放り投げて割ってしまったし、勇気は必要だがもう丸2日は確実に変えられていないトイレの出口にある手洗い用のボオルに張っているものしかない。
暴れた事もあり喉も乾いている。
テーブルに持って行こうにも暴れて足をへし折ったテーブルはもうテーブルとしては用をなさない。
そのまま座り込み、おかれたトレイのパンや野菜、スープ、簡単な肉料理を口に運ぶ。
コップに入った水も目の前の一杯しかない事にため息を吐いてしまう。
少し残しておこう。そう思ったが一口飲むと止まらなかった。
もうないのかとコップを逆さにして底を叩くが数滴伝ってくるだけで喉はもう潤せない。
今までにないほど、スープも綺麗に平らげる。好きではなかった野菜も瑞々しく感じた。
食べ終わり比較的まもとな状態のベッドの上に座り込む。
レオンは幾ら考えても何がいけなかったのか、何をあんなに父が怒っていたのか判らない。
「僕はただ、アンジェがいいっていうから…」
ヴィオレッタとは違うタイプで挨拶などはちゃんと出来るし甘えてくれるのが心地よかった。
異母弟のアレクセイの客人だとは判っていたが、挨拶がてらに顔を見せると学園の中等部に編入するというので、教えてあげられる事もあるのではと離宮に通うようになった。
田舎から出て来て王都は何もわからないと言うので、街に連れて行く。
どの店に入っても、何をしてやっても楽しそうで、強請られるのも頼りにされているようで嬉しかった。
丁度、教育で房事の座学が始まった事もあり、子を成すのは大事な事で政と同様に大事な事だと言われた。
だから、父上には母上の他に側妃のレクシーがいるのだなと思った。
母親からすれば自分もアレクセイも言ってみれば一人っ子である。
ヴィオレッタのように兄などがいるのも楽しそうだし、側近候補たちのように妹や弟がいるのも良いと思った。
長期休暇になりアンジェといる時間がさらに長くなった。
そうしていると、「側妃になりたい」とアンジェが言うようになる。
だが正妃の次でないと側妃は召し上げる事は出来なかったはずだと教本を思い出す。
熱心なアンジェは決して嫌いではない。キスをされた時、思わずダメだと言ったが他人の唇があんなに柔らかいとは思わなかった。それに房事ではキスもするとあった。
「結婚してよ」とアンジェが言うのも無理はない。側妃で良いと言ってるし、時期が今なのか先なのかで側妃を認めるのはヴィオレッタだと言われると、【なるほど!そうだな】とアンジェの賢さに関心をした。
侯爵邸に行った時、侯爵夫人は【コルストレイ侯爵家を代表してお約束致します】と言い父とする為、目通りを行うと言った。
これであとはアンジェを側妃にと父上、母上に言えばいいだけだと思ったのに。
どうしてこうなっているんだ?
考えても判らないと頭を抱えていると翌日の昼、扉が開き、立っていたのは侍女ではなく父だった。
「父上っ!これはどういうことなのです?」
ドドン!!ベッドから跳ねるように飛び出したのでシーツに足を取られ床に顔を打ちつける。
鼻血は出ていないようだと手のひらを眺め、顔をあげるとまだ怒った顔の父が見えた。
「隣の部屋で急ぎ支度をせよ」
「支度?なんの支度ですか?」
「コルストレイ侯爵家に登城の命令書を出した。謁見する」
「ヴィオレッタが来るんですか?!」
その問いに父である国王は答えず背を向けて従者になにかを話しかけた後、立ち去った。
久しぶりの湯あみに、清潔な下着、やっと綺麗な服に着替えさせてもらい、髪も眉も整えてもらった。
「はぁ~スッキリしたよ。全く僕を閉じ込めるなんて。父上が助けに来てくれなかったら大変な事になってた」
部屋に謹慎と言う名の監禁を命じたのも国王であるが知るよしのないレオンは殴られた事も忘れて、今では助けに来てくれた救世主のように思ってしまっていた。
「謁見の前に陛下がお話があるそうです」
従者の言葉に、案内されるまま貴賓室の隣にある控室に入っていく。
既に腰掛けて茶を飲み、書類に目を通す父が目に入った。
「父上っ」
その言葉にちらりと見るだけで、直ぐに書類に目をやって「そこに座れ」と言われる。
「お前はコルストレイ侯爵令嬢をどう考えているのだ」
「どうって…婚約者ですよね」
「判っていて何故あのような阿婆擦れに手を出した」
「いえ、アンジェとはキスしただけで、それも向こうから…」
「バカか!」
手にしていた書類で頬をはたかれ、国王は身を乗り出しかと思うとレオンの胸ぐらを掴んだ。
「ち、父上…何をされるのです…苦しい‥」
「いいか…今度は間違うな」
「こ、今度って何ですか…僕は間違ってない…」
「前回は平民の山猿女、今度は種が破落戸の貴族モドキ。いい加減にしろ」
「山猿女??貴族モドキ?なんのことです?」
「お前はな!前回は手の付けられない野生の猿より劣る女、今回は伯爵令嬢などと言いながら破落戸の種を父に持つ偽貴族令嬢。前回の二の舞にならぬよう早々に山猿は処分したと言うに…凝りもせず」
「えっ?前回とか今回とかどうしたんですか?父上」
「とにかくだ!いいか。ヴィオレッタに縋ってでも妻になってもらうんだ。お前の利用価値などそれしかない。ヴィオレッタが王太子妃となれば帝国に…いやいい。馬鹿には理解は出来ぬ。いいかそれ以上に失墜する事はない。何が何でもヴィオレッタを引きとめろ」
控室の扉が開く。
「陛下、殿下。お願いいたします」
国王はレオンの背を叩き「しっかりやれ。正念場だ」と声をかけ貴賓室に向かった。
夕食も扉がパタンと閉じる音に慌てて向かうも、入室は危険だと判断したのか床置きされていた。
悔しくて蹴り上げようと思ったが空腹には勝てない。
水すら水差しは放り投げて割ってしまったし、勇気は必要だがもう丸2日は確実に変えられていないトイレの出口にある手洗い用のボオルに張っているものしかない。
暴れた事もあり喉も乾いている。
テーブルに持って行こうにも暴れて足をへし折ったテーブルはもうテーブルとしては用をなさない。
そのまま座り込み、おかれたトレイのパンや野菜、スープ、簡単な肉料理を口に運ぶ。
コップに入った水も目の前の一杯しかない事にため息を吐いてしまう。
少し残しておこう。そう思ったが一口飲むと止まらなかった。
もうないのかとコップを逆さにして底を叩くが数滴伝ってくるだけで喉はもう潤せない。
今までにないほど、スープも綺麗に平らげる。好きではなかった野菜も瑞々しく感じた。
食べ終わり比較的まもとな状態のベッドの上に座り込む。
レオンは幾ら考えても何がいけなかったのか、何をあんなに父が怒っていたのか判らない。
「僕はただ、アンジェがいいっていうから…」
ヴィオレッタとは違うタイプで挨拶などはちゃんと出来るし甘えてくれるのが心地よかった。
異母弟のアレクセイの客人だとは判っていたが、挨拶がてらに顔を見せると学園の中等部に編入するというので、教えてあげられる事もあるのではと離宮に通うようになった。
田舎から出て来て王都は何もわからないと言うので、街に連れて行く。
どの店に入っても、何をしてやっても楽しそうで、強請られるのも頼りにされているようで嬉しかった。
丁度、教育で房事の座学が始まった事もあり、子を成すのは大事な事で政と同様に大事な事だと言われた。
だから、父上には母上の他に側妃のレクシーがいるのだなと思った。
母親からすれば自分もアレクセイも言ってみれば一人っ子である。
ヴィオレッタのように兄などがいるのも楽しそうだし、側近候補たちのように妹や弟がいるのも良いと思った。
長期休暇になりアンジェといる時間がさらに長くなった。
そうしていると、「側妃になりたい」とアンジェが言うようになる。
だが正妃の次でないと側妃は召し上げる事は出来なかったはずだと教本を思い出す。
熱心なアンジェは決して嫌いではない。キスをされた時、思わずダメだと言ったが他人の唇があんなに柔らかいとは思わなかった。それに房事ではキスもするとあった。
「結婚してよ」とアンジェが言うのも無理はない。側妃で良いと言ってるし、時期が今なのか先なのかで側妃を認めるのはヴィオレッタだと言われると、【なるほど!そうだな】とアンジェの賢さに関心をした。
侯爵邸に行った時、侯爵夫人は【コルストレイ侯爵家を代表してお約束致します】と言い父とする為、目通りを行うと言った。
これであとはアンジェを側妃にと父上、母上に言えばいいだけだと思ったのに。
どうしてこうなっているんだ?
考えても判らないと頭を抱えていると翌日の昼、扉が開き、立っていたのは侍女ではなく父だった。
「父上っ!これはどういうことなのです?」
ドドン!!ベッドから跳ねるように飛び出したのでシーツに足を取られ床に顔を打ちつける。
鼻血は出ていないようだと手のひらを眺め、顔をあげるとまだ怒った顔の父が見えた。
「隣の部屋で急ぎ支度をせよ」
「支度?なんの支度ですか?」
「コルストレイ侯爵家に登城の命令書を出した。謁見する」
「ヴィオレッタが来るんですか?!」
その問いに父である国王は答えず背を向けて従者になにかを話しかけた後、立ち去った。
久しぶりの湯あみに、清潔な下着、やっと綺麗な服に着替えさせてもらい、髪も眉も整えてもらった。
「はぁ~スッキリしたよ。全く僕を閉じ込めるなんて。父上が助けに来てくれなかったら大変な事になってた」
部屋に謹慎と言う名の監禁を命じたのも国王であるが知るよしのないレオンは殴られた事も忘れて、今では助けに来てくれた救世主のように思ってしまっていた。
「謁見の前に陛下がお話があるそうです」
従者の言葉に、案内されるまま貴賓室の隣にある控室に入っていく。
既に腰掛けて茶を飲み、書類に目を通す父が目に入った。
「父上っ」
その言葉にちらりと見るだけで、直ぐに書類に目をやって「そこに座れ」と言われる。
「お前はコルストレイ侯爵令嬢をどう考えているのだ」
「どうって…婚約者ですよね」
「判っていて何故あのような阿婆擦れに手を出した」
「いえ、アンジェとはキスしただけで、それも向こうから…」
「バカか!」
手にしていた書類で頬をはたかれ、国王は身を乗り出しかと思うとレオンの胸ぐらを掴んだ。
「ち、父上…何をされるのです…苦しい‥」
「いいか…今度は間違うな」
「こ、今度って何ですか…僕は間違ってない…」
「前回は平民の山猿女、今度は種が破落戸の貴族モドキ。いい加減にしろ」
「山猿女??貴族モドキ?なんのことです?」
「お前はな!前回は手の付けられない野生の猿より劣る女、今回は伯爵令嬢などと言いながら破落戸の種を父に持つ偽貴族令嬢。前回の二の舞にならぬよう早々に山猿は処分したと言うに…凝りもせず」
「えっ?前回とか今回とかどうしたんですか?父上」
「とにかくだ!いいか。ヴィオレッタに縋ってでも妻になってもらうんだ。お前の利用価値などそれしかない。ヴィオレッタが王太子妃となれば帝国に…いやいい。馬鹿には理解は出来ぬ。いいかそれ以上に失墜する事はない。何が何でもヴィオレッタを引きとめろ」
控室の扉が開く。
「陛下、殿下。お願いいたします」
国王はレオンの背を叩き「しっかりやれ。正念場だ」と声をかけ貴賓室に向かった。
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