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2回目の人生
愚王の告白(1回目の人生)
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私は一人の女性だけを愛していた。そして息子が生まれた。
それでいいじゃないか、世継ぎはいる。しかも男児だ。
しかし、私の周りはそれを許してはくれなかった。
愛すれば愛するほど、愛しい妻の体は傷ついていく。そしてもう子は望めない体になった。
実のところ、妻はかなり強い選民思考の持ち主であるが仮面の付け所は完璧だった。
それを踏まえて子を成せなくなった愛しい女性の代わりを探すのだが、妻自身が思い悩んだ。
妻もまた私を深く愛してくれているのである。
爵位のある女性の場合、側妃とすると権利を主張をしてくる可能性はかなり高かった。
正妃の子と、側妃の子。出来の良しあしで王太子が決まる事は十分に考えられる。
レオンは正直、出来はあまり良い方ではなかった。
ある日、妻は侍女のレクシーを側妃にと言い出した。
忠誠心のある女性で、亡き夫を愛している。
間違っても我が子を王(女王)にと考える事はない女性だと言った。
議会の突き上げもあるし、妻自身も心無い言葉に傷ついて限界だったのかも知れない。
側妃にした後、3回房事を行った。
3回目で無事懐妊をしてくれたが、暫くは地獄の日々だった。
1回目、2回目の後、日を置いて愛する妻を抱こうとした時、「汚い」と罵られた。
正直ショックで男としての自信も失いそうだった。
子爵程度で平民騎士に抱かれた女と関係を持ったと詰られる日々。
「君が選んだ女性だ」と何度も言おうとしたが、言えなかった。
妻自身のプライドだと折れるしかなかった。
3回目でやっと妊娠が判った時は嬉しかった。子供が出来る事が嬉しいのではない。
妻以外の女性をもう抱かなくていいと言う喜びだ。
生まれた子はまさしく自分の子供だった。
だが、約束通り側妃は離宮に子供を連れて引きこもり妻の精神も安定をした。
これでレオンもヴィオレッタという優秀な令嬢とこの先結婚し安泰だと思っていた。
最初の躓きは、自分にとっての第二子だった。
様子を伺いに行ってみると、小動物を分解して喜んでいた。
その先を想像し、戦慄を覚えた。対象が大きくなっていくのは当然だからだ。
見なかった事にしようと行くのを控えるようになった。
次の躓きはレオンの出来の悪さだった。
王になる素質を全く持っていないレオンは悩みの種だったが、ヴィオレッタがカバーをしていた。
負担にはなるだろうが、ヴィオレッタに丸投げをした。
それが悪かったのか、大きく躓いた。
事もあろうかレオンは平民の女を孕ませたという。
適当にすれば良いものを馬鹿正直にヴィオレッタに側妃になって公務をしろと伝えたという息子を殴りたくなった。
アレクセイと違って【狂気】はないが女の趣味がとことんまで悪いレオン。野生の猿は王家には迎え入れる事は出来ない。見限る時が来たのだと思い、アレクセイを世継ぎにする事に決めた。
妻が大反対をするかと思ったが、レオンの事は愛しているが平民と交わった事で嫌悪感を持っていた。
しかし、そのままではどうにもならない。ヴィオレッタの才能は手放すのは惜しい。
考えた挙句、暫くはヴィオレッタをレオンの婚約者として取り込んでおき、側妃候補として年数を稼ぐ。アレクセイが子がなせる年齢になればヴィオレッタとアレクセイを婚姻させようと思った。
早い子は12,13歳で子を成す者もいる。受け皿となるヴィオレッタは20歳前後なので問題がない。
レオンと平民女、その子供は早々に始末すればいいと思っていた。
しかし、平民女は盛大にやらかしてくれた。
ヴィオレッタを死に至らしめただけでなく、生まれた子供もレオンの子ではない。
通常の処刑程度では帝国は納得はしてくれないだろうと思い、アレクセイに【玩具】として3人を渡した。
レオンが事を起こして半年後の事である。問題が起きた。
王家として世継ぎはアレクセイのみとなったがレクシーが承諾はしたものの良い顔をしない。
そしてアレクセイの【狂気】が一部の者に悟られてしまう事態が起きた。
その他に関税で中抜きをして王家の支出分を調達していた事を知られてしまった。
口を封じなければと調べるとレオンの側近候補だったアベント侯爵家のユーダリスだった。
隣国の女性の家に婿入りをするようだが、秘密を知られたままで隣国に行かれては困る。
密かに捕らえ、アレクセイに与えようと思ったが運悪く流感に感染していて熱があると言う。
仕方なく内密に処分をしたがユーダリスは自分の消息が判らなくなった時の保険を掛けていた。
まさか先に妻を隣国に行かせていたとは思わなかった。
その結果、生涯をかけて愛すると誓った夫を亡くした妻は、万が一の時にはと渡された書類を隣国の王に渡した。
隣国とは関税で長年揉めていて、この事を知られるのは非常に不味かった。
その上、コルストレイ侯爵家は帝国へ移住をすると言い出した。引き留めていたがもう限界だった。
愛する妻に相談をする。
コルストレイ侯爵家は莫大な資産を抱えている。侯爵領の税収が国を支えている。
妻は亡骸が王家の墓にあるとなれば愛娘の亡骸を置いて移住はしないだろうと言った。
そこで王命でヴィオレッタの墓を掘り起こし、王家の墓に埋葬をした。
この事に烈火のごとく激怒した侯爵家、特に夫人は帝国の皇帝に涙ながらに直訴した。
失念をしていただけなのである。この国にはない宗教観に。
帝国が天に召された者の器となる肉体は輪廻転生をするために必要で崇拝されるものだという教えを持っていた事に。侯爵家は令嬢の墓はそのままに墓参は欠かさず行うつもりだった事に。
宗教戦争の意味合いも含み、帝国が挙兵したった1週間で陥落した。
愛する妻と会う事も出来ずに処刑をされる。処刑をされる事よりも妻に逢えない事の方が辛かった。
死の間際、ただ願ったのだ。
【愛する人と一緒にいたい】そう願った。
それでいいじゃないか、世継ぎはいる。しかも男児だ。
しかし、私の周りはそれを許してはくれなかった。
愛すれば愛するほど、愛しい妻の体は傷ついていく。そしてもう子は望めない体になった。
実のところ、妻はかなり強い選民思考の持ち主であるが仮面の付け所は完璧だった。
それを踏まえて子を成せなくなった愛しい女性の代わりを探すのだが、妻自身が思い悩んだ。
妻もまた私を深く愛してくれているのである。
爵位のある女性の場合、側妃とすると権利を主張をしてくる可能性はかなり高かった。
正妃の子と、側妃の子。出来の良しあしで王太子が決まる事は十分に考えられる。
レオンは正直、出来はあまり良い方ではなかった。
ある日、妻は侍女のレクシーを側妃にと言い出した。
忠誠心のある女性で、亡き夫を愛している。
間違っても我が子を王(女王)にと考える事はない女性だと言った。
議会の突き上げもあるし、妻自身も心無い言葉に傷ついて限界だったのかも知れない。
側妃にした後、3回房事を行った。
3回目で無事懐妊をしてくれたが、暫くは地獄の日々だった。
1回目、2回目の後、日を置いて愛する妻を抱こうとした時、「汚い」と罵られた。
正直ショックで男としての自信も失いそうだった。
子爵程度で平民騎士に抱かれた女と関係を持ったと詰られる日々。
「君が選んだ女性だ」と何度も言おうとしたが、言えなかった。
妻自身のプライドだと折れるしかなかった。
3回目でやっと妊娠が判った時は嬉しかった。子供が出来る事が嬉しいのではない。
妻以外の女性をもう抱かなくていいと言う喜びだ。
生まれた子はまさしく自分の子供だった。
だが、約束通り側妃は離宮に子供を連れて引きこもり妻の精神も安定をした。
これでレオンもヴィオレッタという優秀な令嬢とこの先結婚し安泰だと思っていた。
最初の躓きは、自分にとっての第二子だった。
様子を伺いに行ってみると、小動物を分解して喜んでいた。
その先を想像し、戦慄を覚えた。対象が大きくなっていくのは当然だからだ。
見なかった事にしようと行くのを控えるようになった。
次の躓きはレオンの出来の悪さだった。
王になる素質を全く持っていないレオンは悩みの種だったが、ヴィオレッタがカバーをしていた。
負担にはなるだろうが、ヴィオレッタに丸投げをした。
それが悪かったのか、大きく躓いた。
事もあろうかレオンは平民の女を孕ませたという。
適当にすれば良いものを馬鹿正直にヴィオレッタに側妃になって公務をしろと伝えたという息子を殴りたくなった。
アレクセイと違って【狂気】はないが女の趣味がとことんまで悪いレオン。野生の猿は王家には迎え入れる事は出来ない。見限る時が来たのだと思い、アレクセイを世継ぎにする事に決めた。
妻が大反対をするかと思ったが、レオンの事は愛しているが平民と交わった事で嫌悪感を持っていた。
しかし、そのままではどうにもならない。ヴィオレッタの才能は手放すのは惜しい。
考えた挙句、暫くはヴィオレッタをレオンの婚約者として取り込んでおき、側妃候補として年数を稼ぐ。アレクセイが子がなせる年齢になればヴィオレッタとアレクセイを婚姻させようと思った。
早い子は12,13歳で子を成す者もいる。受け皿となるヴィオレッタは20歳前後なので問題がない。
レオンと平民女、その子供は早々に始末すればいいと思っていた。
しかし、平民女は盛大にやらかしてくれた。
ヴィオレッタを死に至らしめただけでなく、生まれた子供もレオンの子ではない。
通常の処刑程度では帝国は納得はしてくれないだろうと思い、アレクセイに【玩具】として3人を渡した。
レオンが事を起こして半年後の事である。問題が起きた。
王家として世継ぎはアレクセイのみとなったがレクシーが承諾はしたものの良い顔をしない。
そしてアレクセイの【狂気】が一部の者に悟られてしまう事態が起きた。
その他に関税で中抜きをして王家の支出分を調達していた事を知られてしまった。
口を封じなければと調べるとレオンの側近候補だったアベント侯爵家のユーダリスだった。
隣国の女性の家に婿入りをするようだが、秘密を知られたままで隣国に行かれては困る。
密かに捕らえ、アレクセイに与えようと思ったが運悪く流感に感染していて熱があると言う。
仕方なく内密に処分をしたがユーダリスは自分の消息が判らなくなった時の保険を掛けていた。
まさか先に妻を隣国に行かせていたとは思わなかった。
その結果、生涯をかけて愛すると誓った夫を亡くした妻は、万が一の時にはと渡された書類を隣国の王に渡した。
隣国とは関税で長年揉めていて、この事を知られるのは非常に不味かった。
その上、コルストレイ侯爵家は帝国へ移住をすると言い出した。引き留めていたがもう限界だった。
愛する妻に相談をする。
コルストレイ侯爵家は莫大な資産を抱えている。侯爵領の税収が国を支えている。
妻は亡骸が王家の墓にあるとなれば愛娘の亡骸を置いて移住はしないだろうと言った。
そこで王命でヴィオレッタの墓を掘り起こし、王家の墓に埋葬をした。
この事に烈火のごとく激怒した侯爵家、特に夫人は帝国の皇帝に涙ながらに直訴した。
失念をしていただけなのである。この国にはない宗教観に。
帝国が天に召された者の器となる肉体は輪廻転生をするために必要で崇拝されるものだという教えを持っていた事に。侯爵家は令嬢の墓はそのままに墓参は欠かさず行うつもりだった事に。
宗教戦争の意味合いも含み、帝国が挙兵したった1週間で陥落した。
愛する妻と会う事も出来ずに処刑をされる。処刑をされる事よりも妻に逢えない事の方が辛かった。
死の間際、ただ願ったのだ。
【愛する人と一緒にいたい】そう願った。
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