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第32話 以前と違う生活
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昼間は暑い時期。夜も気温は左程に下がらず海から吹いてくる風から少しだけ涼をとっていた。
「アイちゃん、飲む?」
「ありがとうございます。それにしても遅いですね」
「こんなものよ。でも、絶対に戻って来るわ」
すっかり氷の解けたレモネードを水筒からコップに注いで手渡してくれるのはレックスの妻。
メレディスとレックスが狩りに出るのは多い時で月に3、4回。全く狩りに出ない月もある。
それでも船の管理や維持が出来るのは懸賞首を取ってくれば得られる報酬が大きいからである。
大抵複数人で行動をしているので、1度の狩りで5人ほどを捕縛できる。
1人200万~の金額が付いているし、同時に押収する密輸している薬物や銃器は末端価格で査定をしてもらってその10分1が慰労金として支払われる。
ざっくりだが、1回の狩りで2千万ほどの収益になる。
金はレックスと半分。端数は交互。14歳の時からこの仕事をしているメレディスの個人資産は同年代で所有している者はまずいない額になっている。
当然危険も高いので必ずしも得られる報酬が高額だからと言って安心とは言えなかった。
3日前から狩りにでていたが、昼間にレックスの妻が来訪し船の係留場までアイリーンとレックスの妻は出迎えるためにやって来ていた。
「あ、見えた。あの明かりはレックス達の船よ」
レックスの妻が言った通り、見張り台でレックスが大きく手を振っている。近づいて来るとハッキリと見えた。
海上警備隊に以前と同じように確認をされた後、指定された係留所で獲物を卸してきて、「大漁だ」と見せてくれるのは3日以内に支払われる懸賞金の額を記載した書類だ。
「わぁ。今回は5千万超え?頑張ったじゃーん」
レックスの妻は慣れているのもあって気安いがアイリーンは気が気ではなかった。
「お帰りなさい」
「ひゃぁ。疲れたァ。今回は危なかったよ」
「危なかった?ケガをしたの?」
「擦り傷だ。ちょっと今回の相手は手練れだっただけだ」
レックス夫妻と別れて帰路につくと、アイリーンはメレディスの袖を捲りケガの度合いを確かめた。
「な?擦り傷だろ?」
「これは切り傷と言うんです。もう!ここも、ここにもあるじゃない!」
「大丈夫だって。いつもの事さ」
「ちゃんとしないと。小さな傷が命取りになる事もあるんだから」
「アイちゃんは心配性だな。俺なら大丈夫だから」
隣を歩くメレディスはアイリーンの体を引き寄せると髪にキスを落とし、ついでに頬にもキスをすると傷口を確かめたアイリーンの指を握り、家まで戻った。
「アイちゃん、何か欲しいものはないか?」
「欲しいもの?特にないけど」
「ほら、家具とか使い勝手が良いやつに変えてもいいし、服も冬用がそろそろ売り出す時期だろ」
「冬用?まだ夏よ?今時期は新製品って言っても…単にお値段が高いだけ。冬になって寒ければ買い足せばいいのよ。それに!無線機を買い替えなきゃって聞いたわよ?」
沖合にいる時、レックスはレックスの妻と無線でやり取りをしている。
今使っている無線機もそろそろお役御免なので買い替えの時期なのだ。
アイリーンとしてはついでに家にも無線機があればメレディスと会話が出来るな~っと思ったのだが操作が難しそうなのと、無線の会話は誰でも聞くことが出来るので聞かれて困る会話をするつもりはないけれど、うっかりを考えると気恥ずかしいし、メレディスはレックス夫妻の前でもアイリーンに「愛してる」と平気で言ってしまうのでそれが他の誰かにも聞かれるとかと思うと居た堪れない。
以前とはまるきり違う生活をしながらも庭で洗濯物を干していると眼下の港を補給艦が出航していくのを見るとアイリーンは胸が痛くなった。
――みんな無事でいて――
間もなくレーノルト大陸の海域に先に出航した艦船が到達する。
アイリーンは今日も祈らずにはいられなかった。
「アイちゃん、飲む?」
「ありがとうございます。それにしても遅いですね」
「こんなものよ。でも、絶対に戻って来るわ」
すっかり氷の解けたレモネードを水筒からコップに注いで手渡してくれるのはレックスの妻。
メレディスとレックスが狩りに出るのは多い時で月に3、4回。全く狩りに出ない月もある。
それでも船の管理や維持が出来るのは懸賞首を取ってくれば得られる報酬が大きいからである。
大抵複数人で行動をしているので、1度の狩りで5人ほどを捕縛できる。
1人200万~の金額が付いているし、同時に押収する密輸している薬物や銃器は末端価格で査定をしてもらってその10分1が慰労金として支払われる。
ざっくりだが、1回の狩りで2千万ほどの収益になる。
金はレックスと半分。端数は交互。14歳の時からこの仕事をしているメレディスの個人資産は同年代で所有している者はまずいない額になっている。
当然危険も高いので必ずしも得られる報酬が高額だからと言って安心とは言えなかった。
3日前から狩りにでていたが、昼間にレックスの妻が来訪し船の係留場までアイリーンとレックスの妻は出迎えるためにやって来ていた。
「あ、見えた。あの明かりはレックス達の船よ」
レックスの妻が言った通り、見張り台でレックスが大きく手を振っている。近づいて来るとハッキリと見えた。
海上警備隊に以前と同じように確認をされた後、指定された係留所で獲物を卸してきて、「大漁だ」と見せてくれるのは3日以内に支払われる懸賞金の額を記載した書類だ。
「わぁ。今回は5千万超え?頑張ったじゃーん」
レックスの妻は慣れているのもあって気安いがアイリーンは気が気ではなかった。
「お帰りなさい」
「ひゃぁ。疲れたァ。今回は危なかったよ」
「危なかった?ケガをしたの?」
「擦り傷だ。ちょっと今回の相手は手練れだっただけだ」
レックス夫妻と別れて帰路につくと、アイリーンはメレディスの袖を捲りケガの度合いを確かめた。
「な?擦り傷だろ?」
「これは切り傷と言うんです。もう!ここも、ここにもあるじゃない!」
「大丈夫だって。いつもの事さ」
「ちゃんとしないと。小さな傷が命取りになる事もあるんだから」
「アイちゃんは心配性だな。俺なら大丈夫だから」
隣を歩くメレディスはアイリーンの体を引き寄せると髪にキスを落とし、ついでに頬にもキスをすると傷口を確かめたアイリーンの指を握り、家まで戻った。
「アイちゃん、何か欲しいものはないか?」
「欲しいもの?特にないけど」
「ほら、家具とか使い勝手が良いやつに変えてもいいし、服も冬用がそろそろ売り出す時期だろ」
「冬用?まだ夏よ?今時期は新製品って言っても…単にお値段が高いだけ。冬になって寒ければ買い足せばいいのよ。それに!無線機を買い替えなきゃって聞いたわよ?」
沖合にいる時、レックスはレックスの妻と無線でやり取りをしている。
今使っている無線機もそろそろお役御免なので買い替えの時期なのだ。
アイリーンとしてはついでに家にも無線機があればメレディスと会話が出来るな~っと思ったのだが操作が難しそうなのと、無線の会話は誰でも聞くことが出来るので聞かれて困る会話をするつもりはないけれど、うっかりを考えると気恥ずかしいし、メレディスはレックス夫妻の前でもアイリーンに「愛してる」と平気で言ってしまうのでそれが他の誰かにも聞かれるとかと思うと居た堪れない。
以前とはまるきり違う生活をしながらも庭で洗濯物を干していると眼下の港を補給艦が出航していくのを見るとアイリーンは胸が痛くなった。
――みんな無事でいて――
間もなくレーノルト大陸の海域に先に出航した艦船が到達する。
アイリーンは今日も祈らずにはいられなかった。
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