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第49話 ここに来てチェンジ?
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周囲にはただドウェインが異国の言葉で喚いているようにしか見えない。
ドウェインは腕を捩じり、拘束した手から離れるとメレディスに向けて倒れるように王太子を突き飛ばた。
メレディスは軍人に「手を出すな」と制止されてしまい身動きが出来なくなった。
「妻なんですよ?」
「解っている。だが…ここで面倒を起こせば君も奥方も無罪放免と出来なくなる」
「そんな…妻は身重なんです。何かあったらどうしてくれるんですか!」
「様子を見よう。今は距離が近い。無理に抑えれば奥方も負傷する危険がある」
軍人の説明に納得できないが確かにドウェインはアイリーンの至近距離にいて無理に取り押えればアイリーンが突き飛ばされたり、後ろに転倒したりでケガをする可能性があった。
悔しいかなベンチには背凭れがなく、後ろに倒れたら植え込みとの境界になっている先端の尖った鉄製の柵に頭や肩が刺さってしまったら取り返しがつかなくなる。
キッとメレディスは王太子を睨んだ。
どんなに扱いが雑だろうと、国に戻れば王家が完全に解体されるとあってもまだ、今の段階では1つの国の王族。一介の国民であるメレディスが手を出せば、ややこしくなってしまう。
「申し訳ない」
王太子は深々とメレディスに頭を下げた。
アイリーンの前に転がるように膝をつくと断りもなく手を握り、頬にあてる。
「アイリーン、愛しているのはアイリーンだけだ。ずっと変わらないと約束しただろう?私はアイリーン以外を愛する事なんて出来ないんだ。私がいけなかったんだ。アイリーンを悲しませたのは私だ。償わせてくれ。もう二度と悲しませることはしない。永遠に変わらない愛を誓う!愛しているんだアイリーン!」
アイリーンの指先にキスをしようとしたが、アイリーンは手を振り払った。
「あなたは誰?気持ち悪い」
ドウェインは何と言われたか解らず、王太子を見た。
王太子の隣にいた軍人が言葉を訳しそのままをドウェインに伝えるとドウェインは「あり得ない」ともう一度アイリーンの手を握ろうとしたが、その手をたまたまベンチの隣に座った夫婦の夫が握って止めた。
「君、人違いだよ。彼女は迷惑をしている。やめたまえ」
「そうよ。新手の告白にしては気持ち悪さだけが際立ってるわ」
奥さんも援護をするがやはりドウェインには聞き取れず、軍人の訳す言葉に目を丸くした。
「アイリーンじゃないのか?私が見間違うはずがないのに…この胸が!全身の血が!アイリーンだと言ってるのに?あり得ない…あり得ない…」
今だとばかりに軍人はドウェインの腕を掴んだ。抵抗する事も無く拘束をされてドウェインは立たされた。
「ドウェイン。船に戻ろう。人違いなんだ。これ以上迷惑をかけるな」
「殿下…彼女はアイリーンです!私の心がこんなに震えているんですよ?違う訳がないんです」
「それでも!違うんだよ。彼女は彼女で彼女の人生を生きている。そこにお前の関与は不要だ」
王太子の言葉にドウェインはハッと何かに気が付いた顔をした。
「殿下、だとしたら!彼女が私の真に愛する女です!連れ帰っ――アガッ!!」
「それだけコロコロと真の相手が変わるのなら!国に戻ればごまんといると言う事だ!」
頬に一発お見舞いされたドウェインは今度こそ本当に強制的に連行され、船に乗せられた。
「アイリーン。ごめん。何もできなかった」
「仕方ないわ。軍人さんの前で暴れると面倒よ?」
「無事で良かった…」
メレディスに抱きしめられるとアイリーンは心から安心できた。
「凄い男だな。あれだけ言っておいて、別人でもいい、こっちだとか…あり得ないよ」
手を握られそうになった時に庇ってくれた男性がタラップを登り切り、船内に消えていくドウェインを見て呟いた。
「言葉が判ったんですか?」
「まぁね。輸送船でやってきた人たちと一緒にこっちに戻ったから。向こうで少し覚えたんだ。講師となってくれたのは使用人をしていた女性でね。ジェシーと言うんだが面白い女性だったんで言葉をすらすら覚えられたよ」
――ジェシー?!まさか、あのジェシーなの?――
侯爵家にいた時、ずっと世話をしてくれたジェシーだとしてももう会う事も出来ない。
懐かしい名前を聞き、元気でやっていたのだと心に思うジェシーなのだと思う事にしてアイリーンはメレディスと共に家路についた。
☆~★
「酷い男だな。あんな男…モゲればいいんだ」
「そう言う人だったのよ。私にも見る目がなかったわ」
「でも今は違うだろ?」
「えぇ。愛でなくても変わらないなんて約束する人は信用できない事を知ったわ」
「その点俺は毎日変わるからな!昨日と同じなんて成長もしないなんてそれこそあり得ないよ。この子だって日々、大きくなってる。生れたら毎日違う事に驚いて俺たちも親になっていくんだ」
メレディスの手がまだ膨らみのない腹にあてられると温もりを感じる。
アイリーンはメレディスの肩に頭をコテンと傾けて預けた。
☆~♡
最終話、同時公開です(;^_^A
ドウェインは腕を捩じり、拘束した手から離れるとメレディスに向けて倒れるように王太子を突き飛ばた。
メレディスは軍人に「手を出すな」と制止されてしまい身動きが出来なくなった。
「妻なんですよ?」
「解っている。だが…ここで面倒を起こせば君も奥方も無罪放免と出来なくなる」
「そんな…妻は身重なんです。何かあったらどうしてくれるんですか!」
「様子を見よう。今は距離が近い。無理に抑えれば奥方も負傷する危険がある」
軍人の説明に納得できないが確かにドウェインはアイリーンの至近距離にいて無理に取り押えればアイリーンが突き飛ばされたり、後ろに転倒したりでケガをする可能性があった。
悔しいかなベンチには背凭れがなく、後ろに倒れたら植え込みとの境界になっている先端の尖った鉄製の柵に頭や肩が刺さってしまったら取り返しがつかなくなる。
キッとメレディスは王太子を睨んだ。
どんなに扱いが雑だろうと、国に戻れば王家が完全に解体されるとあってもまだ、今の段階では1つの国の王族。一介の国民であるメレディスが手を出せば、ややこしくなってしまう。
「申し訳ない」
王太子は深々とメレディスに頭を下げた。
アイリーンの前に転がるように膝をつくと断りもなく手を握り、頬にあてる。
「アイリーン、愛しているのはアイリーンだけだ。ずっと変わらないと約束しただろう?私はアイリーン以外を愛する事なんて出来ないんだ。私がいけなかったんだ。アイリーンを悲しませたのは私だ。償わせてくれ。もう二度と悲しませることはしない。永遠に変わらない愛を誓う!愛しているんだアイリーン!」
アイリーンの指先にキスをしようとしたが、アイリーンは手を振り払った。
「あなたは誰?気持ち悪い」
ドウェインは何と言われたか解らず、王太子を見た。
王太子の隣にいた軍人が言葉を訳しそのままをドウェインに伝えるとドウェインは「あり得ない」ともう一度アイリーンの手を握ろうとしたが、その手をたまたまベンチの隣に座った夫婦の夫が握って止めた。
「君、人違いだよ。彼女は迷惑をしている。やめたまえ」
「そうよ。新手の告白にしては気持ち悪さだけが際立ってるわ」
奥さんも援護をするがやはりドウェインには聞き取れず、軍人の訳す言葉に目を丸くした。
「アイリーンじゃないのか?私が見間違うはずがないのに…この胸が!全身の血が!アイリーンだと言ってるのに?あり得ない…あり得ない…」
今だとばかりに軍人はドウェインの腕を掴んだ。抵抗する事も無く拘束をされてドウェインは立たされた。
「ドウェイン。船に戻ろう。人違いなんだ。これ以上迷惑をかけるな」
「殿下…彼女はアイリーンです!私の心がこんなに震えているんですよ?違う訳がないんです」
「それでも!違うんだよ。彼女は彼女で彼女の人生を生きている。そこにお前の関与は不要だ」
王太子の言葉にドウェインはハッと何かに気が付いた顔をした。
「殿下、だとしたら!彼女が私の真に愛する女です!連れ帰っ――アガッ!!」
「それだけコロコロと真の相手が変わるのなら!国に戻ればごまんといると言う事だ!」
頬に一発お見舞いされたドウェインは今度こそ本当に強制的に連行され、船に乗せられた。
「アイリーン。ごめん。何もできなかった」
「仕方ないわ。軍人さんの前で暴れると面倒よ?」
「無事で良かった…」
メレディスに抱きしめられるとアイリーンは心から安心できた。
「凄い男だな。あれだけ言っておいて、別人でもいい、こっちだとか…あり得ないよ」
手を握られそうになった時に庇ってくれた男性がタラップを登り切り、船内に消えていくドウェインを見て呟いた。
「言葉が判ったんですか?」
「まぁね。輸送船でやってきた人たちと一緒にこっちに戻ったから。向こうで少し覚えたんだ。講師となってくれたのは使用人をしていた女性でね。ジェシーと言うんだが面白い女性だったんで言葉をすらすら覚えられたよ」
――ジェシー?!まさか、あのジェシーなの?――
侯爵家にいた時、ずっと世話をしてくれたジェシーだとしてももう会う事も出来ない。
懐かしい名前を聞き、元気でやっていたのだと心に思うジェシーなのだと思う事にしてアイリーンはメレディスと共に家路についた。
☆~★
「酷い男だな。あんな男…モゲればいいんだ」
「そう言う人だったのよ。私にも見る目がなかったわ」
「でも今は違うだろ?」
「えぇ。愛でなくても変わらないなんて約束する人は信用できない事を知ったわ」
「その点俺は毎日変わるからな!昨日と同じなんて成長もしないなんてそれこそあり得ないよ。この子だって日々、大きくなってる。生れたら毎日違う事に驚いて俺たちも親になっていくんだ」
メレディスの手がまだ膨らみのない腹にあてられると温もりを感じる。
アイリーンはメレディスの肩に頭をコテンと傾けて預けた。
☆~♡
最終話、同時公開です(;^_^A
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