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遅い着替えと昼食
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翌日の朝、目を覚ますとそこにセドリックはいなかった。
着替えをするためにシンディを呼ぶと、リネンの取り換えに侍女たちが入ってきてシーツを確認をする。
何も言わず侍女たちは下がっていった。
「お嬢様…もしやと思いますが昨夜は…」
「殿下はおいでになったのですが、朝早く出られたのでしょう」
「そ、そうではなく…閨は…」
「何もありませんでした」
「あぁ…お労しい…」
「仕方ありません。何か理由があって王子妃に迎えられたのでしょう」
「それではやはりあの娼婦のような…」
「そうかも知れませんね。第三王子では側妃、妾妃は取れませんから」
着替えが終わり、執事が食事の用意が出来たと知らせてくる。
食事室には向かいの席にセドリックはいたが、昨日の女性たちはいなかった。
静かな食事。会話は挨拶しかなかった。
それも1週間ほど続くとその後はエンジェリーナ1人の食事になった。
勿論、セドリックが夜訪れる事はなかった。
唯一、王子宮では生活をせず屋敷に戻るフレデリックから聞いたのは、隣国の侵攻がありセドリックが出向いたようだという事だった。
国境付近まで出向いていれば王子宮に戻るのは無理だろうと王子妃の執務をこなし静かに過ごした。
4か月ぶりにセドリックが戻ったとの知らせがあり着替えて出迎えに向おうとした。
しかし、シンディが隣でイライラするほどのんびりとした侍女が着替えを手伝うと申し出てなかなか進まない。
「妃殿下、お召し物にシミが御座います、少々お待ちくださいませ」
「妃殿下、お胸元が少し開きすぎでございますね。こちらにいたしましょう」
「妃殿下、申し訳ありません、裾にほつれがあるようです」
シンディが手を出そうとすると「私の仕事ですから」「出来なけれな暇をもらってしまうのです」そう言われればやってもらうしかなくなる。
時間だけがどんどんと過ぎていき、着替えがやっと終わった頃にはもう昼食の時間も過ぎていた。
「お出迎えに行かれないのですか?」
着替えを手伝った侍女は当たり前のように聞いてくるが、着替えている途中で馬車が到着し殿下が戻ったのは気が付いているはずである。
今更行ったところで玄関ホールに誰がいるというのであろうか。
仕方なく侍女には下がってもらい、シンディと庭に出ようと歩き出す。
「お嬢様…もうアレフェット様にご連絡を致しましょう?」
「お兄様に心配はかけたくないわ」
そこに侍女が声をかけてくる。
「妃殿下、ご昼食の準備はもうできております。夕食の用意も御座いますのでどうなさいますか」
「ごめんなさい。直ぐに向かいます」
そう言って食事室に行くとテーブルのすみに1人分だけ提供された状態で置かれたままとなっていた。
スープの皿に温度はなく、野菜もしなびている。
チキンにナイフを入れると表面だけが焼けていて中は全く火が通っていない。
カトラリーを静かに置くとエンジェリーナは席を立った。
「今朝から少し具合が悪いの。折角作ってくださったのにごめんなさいね」
「いえ、そういう場合は早めに侍女にお伝えくださいませ。御殿医様の手配もありますので」
「お医者様は結構ですわ。休めばよくなりますので」
食器が欠けてしまうのではないかと思うほど乱暴に片づけていく使用人。
そっと小さく頭を下げて部屋に戻るとシンディがまた怒っている。
「あ、お嬢様、お食事は終わりましたか?」
「え、えぇ。頂いたわ。いったいどうしたの?」
「どうしたも何も…リネンの取り換えに来ないのです」
「まぁ‥‥そうなのね」
朝から結局何も飲み食いをしないままだったエンジェリーナは空腹である。
せめてお茶でもと思うが、あの昼食を考えるととても飲めたものではないかもと思う。
寝台にある水差しを手に取ると、底の方に何かが転がっている。
とても飲もうとは思えない。朝、飲まなくて良かったと思うようにしてシンディに見えないよう水を捨てる。
トイレも同じである。トイレはWC。ウォータークロゼットで水で流すだけのものであるが、流れる先の扉が閉じられているのか上手く流れなくなっている。
流石にシンディにもこの処理は頼めないが、食べ物を食べられないと同じくらいトイレを我慢する事は出来ない。
仕方なくシンディの部屋にあるWCを使わせてもらうようにした。
その日、セドリックは4か月ぶりに王子宮には戻ったがエンジェリーナの部屋に来ることも、夫婦の寝室に呼ばれる事もなかった。
だが、これは始まりに過ぎなかった。
着替えをするためにシンディを呼ぶと、リネンの取り換えに侍女たちが入ってきてシーツを確認をする。
何も言わず侍女たちは下がっていった。
「お嬢様…もしやと思いますが昨夜は…」
「殿下はおいでになったのですが、朝早く出られたのでしょう」
「そ、そうではなく…閨は…」
「何もありませんでした」
「あぁ…お労しい…」
「仕方ありません。何か理由があって王子妃に迎えられたのでしょう」
「それではやはりあの娼婦のような…」
「そうかも知れませんね。第三王子では側妃、妾妃は取れませんから」
着替えが終わり、執事が食事の用意が出来たと知らせてくる。
食事室には向かいの席にセドリックはいたが、昨日の女性たちはいなかった。
静かな食事。会話は挨拶しかなかった。
それも1週間ほど続くとその後はエンジェリーナ1人の食事になった。
勿論、セドリックが夜訪れる事はなかった。
唯一、王子宮では生活をせず屋敷に戻るフレデリックから聞いたのは、隣国の侵攻がありセドリックが出向いたようだという事だった。
国境付近まで出向いていれば王子宮に戻るのは無理だろうと王子妃の執務をこなし静かに過ごした。
4か月ぶりにセドリックが戻ったとの知らせがあり着替えて出迎えに向おうとした。
しかし、シンディが隣でイライラするほどのんびりとした侍女が着替えを手伝うと申し出てなかなか進まない。
「妃殿下、お召し物にシミが御座います、少々お待ちくださいませ」
「妃殿下、お胸元が少し開きすぎでございますね。こちらにいたしましょう」
「妃殿下、申し訳ありません、裾にほつれがあるようです」
シンディが手を出そうとすると「私の仕事ですから」「出来なけれな暇をもらってしまうのです」そう言われればやってもらうしかなくなる。
時間だけがどんどんと過ぎていき、着替えがやっと終わった頃にはもう昼食の時間も過ぎていた。
「お出迎えに行かれないのですか?」
着替えを手伝った侍女は当たり前のように聞いてくるが、着替えている途中で馬車が到着し殿下が戻ったのは気が付いているはずである。
今更行ったところで玄関ホールに誰がいるというのであろうか。
仕方なく侍女には下がってもらい、シンディと庭に出ようと歩き出す。
「お嬢様…もうアレフェット様にご連絡を致しましょう?」
「お兄様に心配はかけたくないわ」
そこに侍女が声をかけてくる。
「妃殿下、ご昼食の準備はもうできております。夕食の用意も御座いますのでどうなさいますか」
「ごめんなさい。直ぐに向かいます」
そう言って食事室に行くとテーブルのすみに1人分だけ提供された状態で置かれたままとなっていた。
スープの皿に温度はなく、野菜もしなびている。
チキンにナイフを入れると表面だけが焼けていて中は全く火が通っていない。
カトラリーを静かに置くとエンジェリーナは席を立った。
「今朝から少し具合が悪いの。折角作ってくださったのにごめんなさいね」
「いえ、そういう場合は早めに侍女にお伝えくださいませ。御殿医様の手配もありますので」
「お医者様は結構ですわ。休めばよくなりますので」
食器が欠けてしまうのではないかと思うほど乱暴に片づけていく使用人。
そっと小さく頭を下げて部屋に戻るとシンディがまた怒っている。
「あ、お嬢様、お食事は終わりましたか?」
「え、えぇ。頂いたわ。いったいどうしたの?」
「どうしたも何も…リネンの取り換えに来ないのです」
「まぁ‥‥そうなのね」
朝から結局何も飲み食いをしないままだったエンジェリーナは空腹である。
せめてお茶でもと思うが、あの昼食を考えるととても飲めたものではないかもと思う。
寝台にある水差しを手に取ると、底の方に何かが転がっている。
とても飲もうとは思えない。朝、飲まなくて良かったと思うようにしてシンディに見えないよう水を捨てる。
トイレも同じである。トイレはWC。ウォータークロゼットで水で流すだけのものであるが、流れる先の扉が閉じられているのか上手く流れなくなっている。
流石にシンディにもこの処理は頼めないが、食べ物を食べられないと同じくらいトイレを我慢する事は出来ない。
仕方なくシンディの部屋にあるWCを使わせてもらうようにした。
その日、セドリックは4か月ぶりに王子宮には戻ったがエンジェリーナの部屋に来ることも、夫婦の寝室に呼ばれる事もなかった。
だが、これは始まりに過ぎなかった。
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