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鎮火
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深夜、第三王子セドリックが宿泊している宿に農夫が飛び込んできた。
門兵に無礼者と押さえつけられているが、農夫は力いっぱい叫ぶ。
「妃殿下が!妃殿下が!離宮が襲われているんです!早く!」
「何を言ってるんだ。冗談にしては質が悪すぎるぞ」
「う、嘘ではないです!早くしないと!妃殿下が!エンジェリーナ様が殺される!」
宿屋の玄関先での騒ぎに王子の執事が駆けつけてきた。
「本当の事を言いなさい」
「本当なんです!明日王子殿下が来るという事で昼から作業をしていて…そのあと…離宮が燃えて!私の娘が妃殿下に逃がして頂いたと!炭焼き小屋から逃げて来たと!」
執事は万が一の時の脱出口としてその出口が炭焼き小屋である事は知っていた。
そしてそれを知るものはおそらくその通路を通ったものだけだと言う事から本当だと判断し王子に伝えた。
「殿下、大変で御座います」
「なんだ。こんな夜更けに」
「離宮が賊に襲われ火が上がっている模様です」
「なんだとッ!!」
少し宵の酒が入ってはいたが、一気に目が覚める。支度もそこそこに馬に飛び乗り離宮までを駆け抜けた。
予定では明日離宮に行くようになっていたが、早く謝らねばと気が急いて早馬なら3,4時間の村まで到着をしていたセドリックは一心不乱に馬を走らせた。
離宮に到着した時は既に夜中の3時を過ぎていて、村人がバケツをリレーして川や井戸からの水で消火作業を終えた所であった。
目の前の離宮は半分ほどが真っ黒いすすで覆われており、西側が崩れ落ちていた。北側も屋根が焼け落ち炭となった柱や梁が見えている。
エンジェリーナの部屋は確か東側にしたはずだと思ったが、全く火の手が回っていない部分はなく総じて東南側がマシだというほどの状態だった。
門のわきには抵抗はしたのであろうが、亡骸となった門兵が並べられている。
「殿下!危険です。まだ完全に鎮火はしておりません!」
引き留める従者を振り切りくすぶる離宮の中に入っていく。
小さい火はまだところどころに残っており、農夫などが水をかけて消していく。
廊下を進むと顔を布で覆った男が数名倒れていた。
おそらくはエンジェリーナの護衛についていた騎士がやったのだろうと思い先に進む。
エンジェリーナの部屋の扉は開いたままだった。
手前は焼けているが、奥はすすが付いているだけだった。
しかし、そこに1人女性が倒れている。背中はぱっくりと開いており一目で剣で斬られたものだと解る。
うつ伏せだった女性の顔を確認するとそれはエンジェリーナの侍女だった。
見渡すが他に人がいる気配も倒れている形跡もない。
背後でバタバタと走ってくる足音が聞こえる。
「殿下!」
「なんだ」
駆けてきたのは宿から一緒に来た兵だった。振り向きもせずにセドリックは返事をする。
「賊の生き残りと思われるものを確保致しました!」
「なんだと!」
「農夫の小屋から馬を連れ出そうとしたようですが、馬が暴れたようです。負傷していたため農夫に押さえられたとの事です」
「何処にいる」
「現在、こちらに輸送中との知らせです」
「わかった。俺が直接尋問する」
「はい‥‥で、殿下…」
「なんだ」
「いえ、その‥‥お手が…」
握りしめたセドリックの手からは血が滴って足元に血だまりを作っていた。
爪は深く食い込み、表情も幾多もの戦場を駆け抜けた時よりも鬼のような目になり今にも斬り殺されそうだった。
夜が明けてくると、炭焼き小屋から逃げたという村の娘7人と調理見習い、そしてシェフが連れてこられた。
調理見習いは一番先に階段を降りたと言う事で無傷だったが、娘7人とシェフは階段から将棋倒しになりどこかしら負傷をしていた。
娘もみんな自分だけが助かり、エンジェリーナが見つからないと聞くと殺してくれと言った。
通路の入り口は内側からは閉める事が出来ないため誰かが残らねばならない。
話を聞く限りではエンジェリーナは最初から自分が扉を閉めるために残ったと思われた。
セドリックの前に連れてこられた賊は3人だった。
農夫たちに押えられる際、鍬や槌で攻撃を受けたのだろう。彼らもまた負傷をしていた。
屋敷の中で絶命していた賊は5人。何人かは逃亡中であろうと捜索隊が出た。
賊の1人の前に立ったセドリックは見下ろしながら言う。
「こいつらの歯を全て抜け」
掴まって自白をするくらいなら舌を噛んだり歯に仕掛けた毒で命を絶つ者もいる。
セドリックは歯を全て抜く事で毒による自死も舌をかんで自死する事も許さなかった。
1人目が歯を抜かれだすとその様子に地面を濡らし、白状すると命乞いを残り2人が始めた。
賊は隣国の兵士と金で雇われたならず者だった。
歯を抜かれたのが隣国の兵士。白状したのはならず者だった。
離宮を襲ったのはそこにセドリックがいるという情報からだった。
ただ、連絡の途中で間違いがあり1日早く襲ってしまったとならず者は言った。
セドリックは歯を全て抜かれた兵士の頭を水に浸けた。
「喋りたくなったか?」
兵士が首を背けると、セドリックは高純度の麻薬を尻に塗り込み木の棒で擦りあげた。
悲鳴を上げる兵士だったが、3時間もすると完全に落ち知っている事をペラペラと話し出した。
しかし、そこにセドリックが一番知りたい情報はなかった。
門兵に無礼者と押さえつけられているが、農夫は力いっぱい叫ぶ。
「妃殿下が!妃殿下が!離宮が襲われているんです!早く!」
「何を言ってるんだ。冗談にしては質が悪すぎるぞ」
「う、嘘ではないです!早くしないと!妃殿下が!エンジェリーナ様が殺される!」
宿屋の玄関先での騒ぎに王子の執事が駆けつけてきた。
「本当の事を言いなさい」
「本当なんです!明日王子殿下が来るという事で昼から作業をしていて…そのあと…離宮が燃えて!私の娘が妃殿下に逃がして頂いたと!炭焼き小屋から逃げて来たと!」
執事は万が一の時の脱出口としてその出口が炭焼き小屋である事は知っていた。
そしてそれを知るものはおそらくその通路を通ったものだけだと言う事から本当だと判断し王子に伝えた。
「殿下、大変で御座います」
「なんだ。こんな夜更けに」
「離宮が賊に襲われ火が上がっている模様です」
「なんだとッ!!」
少し宵の酒が入ってはいたが、一気に目が覚める。支度もそこそこに馬に飛び乗り離宮までを駆け抜けた。
予定では明日離宮に行くようになっていたが、早く謝らねばと気が急いて早馬なら3,4時間の村まで到着をしていたセドリックは一心不乱に馬を走らせた。
離宮に到着した時は既に夜中の3時を過ぎていて、村人がバケツをリレーして川や井戸からの水で消火作業を終えた所であった。
目の前の離宮は半分ほどが真っ黒いすすで覆われており、西側が崩れ落ちていた。北側も屋根が焼け落ち炭となった柱や梁が見えている。
エンジェリーナの部屋は確か東側にしたはずだと思ったが、全く火の手が回っていない部分はなく総じて東南側がマシだというほどの状態だった。
門のわきには抵抗はしたのであろうが、亡骸となった門兵が並べられている。
「殿下!危険です。まだ完全に鎮火はしておりません!」
引き留める従者を振り切りくすぶる離宮の中に入っていく。
小さい火はまだところどころに残っており、農夫などが水をかけて消していく。
廊下を進むと顔を布で覆った男が数名倒れていた。
おそらくはエンジェリーナの護衛についていた騎士がやったのだろうと思い先に進む。
エンジェリーナの部屋の扉は開いたままだった。
手前は焼けているが、奥はすすが付いているだけだった。
しかし、そこに1人女性が倒れている。背中はぱっくりと開いており一目で剣で斬られたものだと解る。
うつ伏せだった女性の顔を確認するとそれはエンジェリーナの侍女だった。
見渡すが他に人がいる気配も倒れている形跡もない。
背後でバタバタと走ってくる足音が聞こえる。
「殿下!」
「なんだ」
駆けてきたのは宿から一緒に来た兵だった。振り向きもせずにセドリックは返事をする。
「賊の生き残りと思われるものを確保致しました!」
「なんだと!」
「農夫の小屋から馬を連れ出そうとしたようですが、馬が暴れたようです。負傷していたため農夫に押さえられたとの事です」
「何処にいる」
「現在、こちらに輸送中との知らせです」
「わかった。俺が直接尋問する」
「はい‥‥で、殿下…」
「なんだ」
「いえ、その‥‥お手が…」
握りしめたセドリックの手からは血が滴って足元に血だまりを作っていた。
爪は深く食い込み、表情も幾多もの戦場を駆け抜けた時よりも鬼のような目になり今にも斬り殺されそうだった。
夜が明けてくると、炭焼き小屋から逃げたという村の娘7人と調理見習い、そしてシェフが連れてこられた。
調理見習いは一番先に階段を降りたと言う事で無傷だったが、娘7人とシェフは階段から将棋倒しになりどこかしら負傷をしていた。
娘もみんな自分だけが助かり、エンジェリーナが見つからないと聞くと殺してくれと言った。
通路の入り口は内側からは閉める事が出来ないため誰かが残らねばならない。
話を聞く限りではエンジェリーナは最初から自分が扉を閉めるために残ったと思われた。
セドリックの前に連れてこられた賊は3人だった。
農夫たちに押えられる際、鍬や槌で攻撃を受けたのだろう。彼らもまた負傷をしていた。
屋敷の中で絶命していた賊は5人。何人かは逃亡中であろうと捜索隊が出た。
賊の1人の前に立ったセドリックは見下ろしながら言う。
「こいつらの歯を全て抜け」
掴まって自白をするくらいなら舌を噛んだり歯に仕掛けた毒で命を絶つ者もいる。
セドリックは歯を全て抜く事で毒による自死も舌をかんで自死する事も許さなかった。
1人目が歯を抜かれだすとその様子に地面を濡らし、白状すると命乞いを残り2人が始めた。
賊は隣国の兵士と金で雇われたならず者だった。
歯を抜かれたのが隣国の兵士。白状したのはならず者だった。
離宮を襲ったのはそこにセドリックがいるという情報からだった。
ただ、連絡の途中で間違いがあり1日早く襲ってしまったとならず者は言った。
セドリックは歯を全て抜かれた兵士の頭を水に浸けた。
「喋りたくなったか?」
兵士が首を背けると、セドリックは高純度の麻薬を尻に塗り込み木の棒で擦りあげた。
悲鳴を上げる兵士だったが、3時間もすると完全に落ち知っている事をペラペラと話し出した。
しかし、そこにセドリックが一番知りたい情報はなかった。
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