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第21話 エマージェンシー!全弾被弾!!
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ガタゴトとアイリーンが馬車に揺られて王都に向かっている最中、ラビットハウスではセルジュがセルジュの世話を甲斐甲斐しく行っていた。
「ほら、食え」
「メェェ~メェェ~」
「食わないのか?向かいの婆さんが作った無農薬だぞ?味が違うのかな?」
ラビットハウスの向かいでは先代の王弟殿下に嫁いだご夫人が趣味で菜園を作り収穫できた野菜をご近所さんに配っている。
先代の王弟殿下はもう神の御許に召されたが、寡婦となり王籍も抜けたため幼い頃から夢だった「土いじり」を日々研究し死ぬまでには極めたいというご夫人が丹精込めて作ったキャベツが今日のご飯。
セルジュの口元に千切ったキャベツの柔らかい葉を差し出しても「ぷいっ」と顔を背けてしまうのでセルジュは試しに齧ってみたが、ちゃんとキャベツの味がして美味しい。
「もしかしてお前も寂しいのか?」
「メェ↑?」
「そうだよな…もう2カ月と4日も顔を見てないもんなぁ。俺も寂しいよ」
「メェ↓?」
「でもなぁ。食わないと病気になっちまう。そうなるとアイリーンさんが悲しむだろ?」
「メェ‥‥(ぱくっ)」
やっと食べてくれたかと思ったのだが、セルジュは咥えただけで「ぺっ」とセルジュに向かってキャベツの葉を飛ばしてきた。
「新しいやつがいいのか?ほら」
「メェ‥‥(ぱくっ)」
しかしまたセルジュは咥えただけで「ぺっ」とセルジュに向かってキャベツの葉を飛ばしてきた。パシっとセルジュの顔に当たってキャベツの葉が地面に落ちた。
拾い上げて、手で土を払い落しセルジュはまた新しいキャベツの葉を差し出したが、セルジュは咥えるだけでセルジュに向かって葉を飛ばしてくる。
「どうしたんだ?腹でも痛いのかな…獣医と言ってもこの辺にはいないし…馬丁なら判るかな」
しかし、ラビットハウスにいる馬は現在アイリーンと遠くの領地に出向いているためここにはいない。その期間は馬丁も有給なので、馬を診られる人間がいない。いたとしても馬丁は獣医ではないし、ヤギを診察できるかは不明。
セルジュの腹を撫でてセルジュは「病気なら大変だ」と診察してくれそうな場所をぶつぶつと呟く。
「ドゴッ!!」
「いっテェ…何すんだよ」
「ベェェ!!(ドゴっ)ベェェ!!(ドゴっ)」
セルジュはセルジュに向かって頭突きを何度も繰り返してきた。
何度目かの頭突きでセルジュは盛大に尻もちをついてしまった。
そんなセルジュにセルジュはさっき投げつけたキャベツの葉を咥えて拾っては投げて来る。
「もしかして・・・お前・・・いや、そんな筈はない」
「メェェェェェ(ザッザッ)」
「おい、嘘だろ、それじゃ猛牛・・・闘牛?いや闘ヤギじゃないか!」
セルジュは少し後ろに下がると、頭を少し下げて前足で威嚇するように土を削り始めた。
「お前、俺にハッパをかけてるのか?」
「メェッ!」
「だが待て!俺は・・・彼女に見合うような男じゃないんだ!」
「メェッ!メェェッ!」
セルジュは耳からはヤギの声で聞こえるのに脳内では人間の声に変換されるような気がして、こんこんと頭を軽く叩いてみた。
「メェエッメェッ!」
「セルジュ‥‥お口が悪いぞ・・・」
「(びくっ)メェ♡」
大人しくなったセルジュの頭や腹を撫でてセルジュはポツリと独り言を漏らす。
「俺さ、母親は罪人でさ。牢屋で死んだんだ。親父は飲んだくれで…俺なんか生まれて来なきゃ良かったと言われてさ。結果的に借金は返せたけど前線の傭兵に行ったのも、ずーっと虐められててさぁ。もういいかって投げやりな気持ちだったんだよ。でもさ、前線って不思議なもので死にたくないって生きることにしがみ付く奴から死んでいくんだ。その次が生きることに貪欲なヤツ。最後に残るのが俺みたいに死に場所を探してる奴なんだ。神様って意地悪だなと思ったよ」
「シャクシャク‥‥シャクシャク・・・」
「アハッ・・・結局食うんじゃないか。ホント・・・お前って可愛いよな。アイリーンさんみたいだ」
「シャクシャ‥‥クシャクシャク」
「好きだなんて言っちゃいけないんだよ。温かい飯に寝る場所。それで十分だと思ったのに好きだと思ったらどんどん欲が出て来て。結局俺は・・・罪人の子だから欲深くて汚い人間なんだ。そんな俺の思いなんか知られちゃいけない――」
「ブブバッ!!」
大人しくキャベツの葉を食べ始めたセルジュは突然、唾液を思いっきりセルジュの顔に吹きかけて来た。
「ウワッ!!お前・・・あァァ・・・涎でベットベトになったじゃ‥‥判った!判ったからっ!!」
飛ばされた涎塗れになったセルジュが顔をあげてセルジュを見ると「第二弾」が発動寸前。
狙い澄ましたかのように顔に全弾を被弾した上に第二弾も浴びれば流石のセルジュも1週間は臭いに悩まされるだろう。
――コイツ、狙い撃ちしてやがるっ!――
シカやロバもだが、唾液攻撃は被弾時のダメージが半端ない。
慌てたセルジュは約束してしまった。
「言う!帰ってきたらちゃんと言う!!」
「メェーェ・・・メェェェ」
――空耳??いや、違うな――
「シャクシャク・・・モッサモッサ・・・」
またキャベツの葉を食べ始めたセルジュ。
「ホント。男は女には勝てないな」
「めぇぇ♡」
「はいはい。ほれ。え?イチイの方が良いって?」
「メェ!」
「畏まりました~。どぉぞぅ~」
アイリーン帰宅まであと数日。
イチイを頬張るセルジュ。次のイチイを袋から取り出すセルジュ。
1人と1匹は青空の下、約束を交わしたのだった。
「ほら、食え」
「メェェ~メェェ~」
「食わないのか?向かいの婆さんが作った無農薬だぞ?味が違うのかな?」
ラビットハウスの向かいでは先代の王弟殿下に嫁いだご夫人が趣味で菜園を作り収穫できた野菜をご近所さんに配っている。
先代の王弟殿下はもう神の御許に召されたが、寡婦となり王籍も抜けたため幼い頃から夢だった「土いじり」を日々研究し死ぬまでには極めたいというご夫人が丹精込めて作ったキャベツが今日のご飯。
セルジュの口元に千切ったキャベツの柔らかい葉を差し出しても「ぷいっ」と顔を背けてしまうのでセルジュは試しに齧ってみたが、ちゃんとキャベツの味がして美味しい。
「もしかしてお前も寂しいのか?」
「メェ↑?」
「そうだよな…もう2カ月と4日も顔を見てないもんなぁ。俺も寂しいよ」
「メェ↓?」
「でもなぁ。食わないと病気になっちまう。そうなるとアイリーンさんが悲しむだろ?」
「メェ‥‥(ぱくっ)」
やっと食べてくれたかと思ったのだが、セルジュは咥えただけで「ぺっ」とセルジュに向かってキャベツの葉を飛ばしてきた。
「新しいやつがいいのか?ほら」
「メェ‥‥(ぱくっ)」
しかしまたセルジュは咥えただけで「ぺっ」とセルジュに向かってキャベツの葉を飛ばしてきた。パシっとセルジュの顔に当たってキャベツの葉が地面に落ちた。
拾い上げて、手で土を払い落しセルジュはまた新しいキャベツの葉を差し出したが、セルジュは咥えるだけでセルジュに向かって葉を飛ばしてくる。
「どうしたんだ?腹でも痛いのかな…獣医と言ってもこの辺にはいないし…馬丁なら判るかな」
しかし、ラビットハウスにいる馬は現在アイリーンと遠くの領地に出向いているためここにはいない。その期間は馬丁も有給なので、馬を診られる人間がいない。いたとしても馬丁は獣医ではないし、ヤギを診察できるかは不明。
セルジュの腹を撫でてセルジュは「病気なら大変だ」と診察してくれそうな場所をぶつぶつと呟く。
「ドゴッ!!」
「いっテェ…何すんだよ」
「ベェェ!!(ドゴっ)ベェェ!!(ドゴっ)」
セルジュはセルジュに向かって頭突きを何度も繰り返してきた。
何度目かの頭突きでセルジュは盛大に尻もちをついてしまった。
そんなセルジュにセルジュはさっき投げつけたキャベツの葉を咥えて拾っては投げて来る。
「もしかして・・・お前・・・いや、そんな筈はない」
「メェェェェェ(ザッザッ)」
「おい、嘘だろ、それじゃ猛牛・・・闘牛?いや闘ヤギじゃないか!」
セルジュは少し後ろに下がると、頭を少し下げて前足で威嚇するように土を削り始めた。
「お前、俺にハッパをかけてるのか?」
「メェッ!」
「だが待て!俺は・・・彼女に見合うような男じゃないんだ!」
「メェッ!メェェッ!」
セルジュは耳からはヤギの声で聞こえるのに脳内では人間の声に変換されるような気がして、こんこんと頭を軽く叩いてみた。
「メェエッメェッ!」
「セルジュ‥‥お口が悪いぞ・・・」
「(びくっ)メェ♡」
大人しくなったセルジュの頭や腹を撫でてセルジュはポツリと独り言を漏らす。
「俺さ、母親は罪人でさ。牢屋で死んだんだ。親父は飲んだくれで…俺なんか生まれて来なきゃ良かったと言われてさ。結果的に借金は返せたけど前線の傭兵に行ったのも、ずーっと虐められててさぁ。もういいかって投げやりな気持ちだったんだよ。でもさ、前線って不思議なもので死にたくないって生きることにしがみ付く奴から死んでいくんだ。その次が生きることに貪欲なヤツ。最後に残るのが俺みたいに死に場所を探してる奴なんだ。神様って意地悪だなと思ったよ」
「シャクシャク‥‥シャクシャク・・・」
「アハッ・・・結局食うんじゃないか。ホント・・・お前って可愛いよな。アイリーンさんみたいだ」
「シャクシャ‥‥クシャクシャク」
「好きだなんて言っちゃいけないんだよ。温かい飯に寝る場所。それで十分だと思ったのに好きだと思ったらどんどん欲が出て来て。結局俺は・・・罪人の子だから欲深くて汚い人間なんだ。そんな俺の思いなんか知られちゃいけない――」
「ブブバッ!!」
大人しくキャベツの葉を食べ始めたセルジュは突然、唾液を思いっきりセルジュの顔に吹きかけて来た。
「ウワッ!!お前・・・あァァ・・・涎でベットベトになったじゃ‥‥判った!判ったからっ!!」
飛ばされた涎塗れになったセルジュが顔をあげてセルジュを見ると「第二弾」が発動寸前。
狙い澄ましたかのように顔に全弾を被弾した上に第二弾も浴びれば流石のセルジュも1週間は臭いに悩まされるだろう。
――コイツ、狙い撃ちしてやがるっ!――
シカやロバもだが、唾液攻撃は被弾時のダメージが半端ない。
慌てたセルジュは約束してしまった。
「言う!帰ってきたらちゃんと言う!!」
「メェーェ・・・メェェェ」
――空耳??いや、違うな――
「シャクシャク・・・モッサモッサ・・・」
またキャベツの葉を食べ始めたセルジュ。
「ホント。男は女には勝てないな」
「めぇぇ♡」
「はいはい。ほれ。え?イチイの方が良いって?」
「メェ!」
「畏まりました~。どぉぞぅ~」
アイリーン帰宅まであと数日。
イチイを頬張るセルジュ。次のイチイを袋から取り出すセルジュ。
1人と1匹は青空の下、約束を交わしたのだった。
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