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第08話 あなたならどうする~
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「話は解りましたがお引き受けするかどうか。2、3日考えさせて頂けませんか。荷は…保管しておきますのでその時にどうするか決めましょう。しかしこの金は一旦お持ち帰りください」
「申し訳ございません。この機を逃してはならぬと侯爵家を出る時は使用人一同に帽振れで送ってもらったものですから。そうですよね。お話も子爵殿には今回が初めてですし勇み足が過ぎました」
――全くだわ。でも帽振れってどこの海軍よ!?――
最後にスティルはスゥーっと封書を差し出してきた。
手紙にしては大きい封筒で、金が入っているとすればウスウス。
「なんです?これは」
「主の経歴書で御座います。余すところなく書き記しておりますのでご一読頂ければ」
見るのが怖い。
「どうそ」と封書から取り出してくれたが、蛇腹折になっていて式典などで区画長が読み上げるただ長い話の原稿にしか見えない。
左手の側の厚さと右手側の薄さを見た時に「出口の光」を見た気がするあの分厚い原稿だ。
リサは思った。リサの経歴書なら手の平に書いて終わるくらいしかないなと。
今回も深々と頭を下げてスティルが帰って行くと、経歴書をテーブルの中央に置き、イクル子爵とケイン、リサは誰も手に取ることも無く無言で経歴書を穴が開くほど注視した。
「本当だったな。リサ、疑ってすまん」
「いいの…なんだか嵐が過ぎ去った後って感じで今、放心してるし」
「しかし…融資の話も本当で金ももう用意しているとか。参ったな」
「だよな。でも言わせてもらうとだよ?失礼だけとと前置きはしてたけど、ウチなら金で黙らせることが出来るとか思ってる風でもあったしな。腹立つわ~」
イクル子爵とケインは話を断る方向で気持ちを固めたようだが、リサは迷っていた。
――どうしよう。どうすればいいかな――
どうせいずれはどこかに嫁がねばならない事を考えると侯爵家とも縁続きになるし、良い縁ではないかと思えなくもない。
勿論侯爵家という超格上なのでリサは相当に頑張らないといけないだろうがショーの家だって伯爵家だし、覚えることが多い上にあの義母の嫁イビリが更に加速する事を考えればどっちもどっちな気がする。
蓋を開けてみたら聞いてた話と違うと思う事は大なり小なりあるはず。ない方がおかしいのだ。
心配なら事前に確約書を取り交わせばいい。
一番魅力的だったのはやはり金である。
現在イクル子爵家は経営が危険水域もど真ん中にあって、貯えもそろそろ底を突く。
かなり節約をしてあと半年もつかどうか。
その半年という期間も今までの買い取りペースを半分以下に落としての話なのだ。
イクル子爵が今までと同じペースで買い取りを続け、荷物を引き取ってくれば3か月も持たない。
従業員に給料を待ってくれと頼めば理解はしてくれるだろうが、待ってもらっても払う術がない。
叩いても出るのは埃だけ。その埃も出ないかも知れない。
従業員にも生活があるので、再就職を斡旋しようにも今は求人を1人募集すると30人ほど申し込んでくる状態でどこも人が余っているのでリストラしたり、自主退職に持って行くように働きかけたりしている。
出来ればずっと雇っていてあげたいし、給料もちゃんと払いたい。
――3年我慢すれば返済しなくていいって言ってたし――
3年でカモク侯爵家から支払われる額はイクル子爵家が10年かかっても手に入れる事の出来ない額になる。
家も経営が完全に安定するし、従業員への支払いも滞る事はない。
――3年から先は実家の様子を見て、頑張るか、断念するかすればいいんじゃないかな――
リサは「よし!」気持ちを固めた。
「父さま、兄さん。私、カモク家に行くわ」
「ダメだよ。家の事は考えなくていいんだ」
「そうだよ。わざわざ苦労する事はないんだ」
「違うわ。言ってたでしょう?3年よ。3年頑張れば3年分の返済はしなくていい。皆助かるもの。父さまと兄さんの気持ちは解るけど、従業員の事も考えて?私たちは従業員の生活も背負ってるの。皆を路頭に迷わせることは出来ないわ」
イクル子爵とケインは尚も反対をしたがリサの気持ちが変わることはなかった。
リサは反対をするのなら勘当してくれとまで言い出し、嫁ぐ決意を強く固めたのだった。
「申し訳ございません。この機を逃してはならぬと侯爵家を出る時は使用人一同に帽振れで送ってもらったものですから。そうですよね。お話も子爵殿には今回が初めてですし勇み足が過ぎました」
――全くだわ。でも帽振れってどこの海軍よ!?――
最後にスティルはスゥーっと封書を差し出してきた。
手紙にしては大きい封筒で、金が入っているとすればウスウス。
「なんです?これは」
「主の経歴書で御座います。余すところなく書き記しておりますのでご一読頂ければ」
見るのが怖い。
「どうそ」と封書から取り出してくれたが、蛇腹折になっていて式典などで区画長が読み上げるただ長い話の原稿にしか見えない。
左手の側の厚さと右手側の薄さを見た時に「出口の光」を見た気がするあの分厚い原稿だ。
リサは思った。リサの経歴書なら手の平に書いて終わるくらいしかないなと。
今回も深々と頭を下げてスティルが帰って行くと、経歴書をテーブルの中央に置き、イクル子爵とケイン、リサは誰も手に取ることも無く無言で経歴書を穴が開くほど注視した。
「本当だったな。リサ、疑ってすまん」
「いいの…なんだか嵐が過ぎ去った後って感じで今、放心してるし」
「しかし…融資の話も本当で金ももう用意しているとか。参ったな」
「だよな。でも言わせてもらうとだよ?失礼だけとと前置きはしてたけど、ウチなら金で黙らせることが出来るとか思ってる風でもあったしな。腹立つわ~」
イクル子爵とケインは話を断る方向で気持ちを固めたようだが、リサは迷っていた。
――どうしよう。どうすればいいかな――
どうせいずれはどこかに嫁がねばならない事を考えると侯爵家とも縁続きになるし、良い縁ではないかと思えなくもない。
勿論侯爵家という超格上なのでリサは相当に頑張らないといけないだろうがショーの家だって伯爵家だし、覚えることが多い上にあの義母の嫁イビリが更に加速する事を考えればどっちもどっちな気がする。
蓋を開けてみたら聞いてた話と違うと思う事は大なり小なりあるはず。ない方がおかしいのだ。
心配なら事前に確約書を取り交わせばいい。
一番魅力的だったのはやはり金である。
現在イクル子爵家は経営が危険水域もど真ん中にあって、貯えもそろそろ底を突く。
かなり節約をしてあと半年もつかどうか。
その半年という期間も今までの買い取りペースを半分以下に落としての話なのだ。
イクル子爵が今までと同じペースで買い取りを続け、荷物を引き取ってくれば3か月も持たない。
従業員に給料を待ってくれと頼めば理解はしてくれるだろうが、待ってもらっても払う術がない。
叩いても出るのは埃だけ。その埃も出ないかも知れない。
従業員にも生活があるので、再就職を斡旋しようにも今は求人を1人募集すると30人ほど申し込んでくる状態でどこも人が余っているのでリストラしたり、自主退職に持って行くように働きかけたりしている。
出来ればずっと雇っていてあげたいし、給料もちゃんと払いたい。
――3年我慢すれば返済しなくていいって言ってたし――
3年でカモク侯爵家から支払われる額はイクル子爵家が10年かかっても手に入れる事の出来ない額になる。
家も経営が完全に安定するし、従業員への支払いも滞る事はない。
――3年から先は実家の様子を見て、頑張るか、断念するかすればいいんじゃないかな――
リサは「よし!」気持ちを固めた。
「父さま、兄さん。私、カモク家に行くわ」
「ダメだよ。家の事は考えなくていいんだ」
「そうだよ。わざわざ苦労する事はないんだ」
「違うわ。言ってたでしょう?3年よ。3年頑張れば3年分の返済はしなくていい。皆助かるもの。父さまと兄さんの気持ちは解るけど、従業員の事も考えて?私たちは従業員の生活も背負ってるの。皆を路頭に迷わせることは出来ないわ」
イクル子爵とケインは尚も反対をしたがリサの気持ちが変わることはなかった。
リサは反対をするのなら勘当してくれとまで言い出し、嫁ぐ決意を強く固めたのだった。
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