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第30話 安心してください!オプションですよ
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耳まで真っ赤にしたレンダールは「レンタル奥様の許容範囲」が聞きたいらしい。
リサはそう判断した。
「先ずですね、大事な事なので先にお伝えしますが、おさわり禁止です」
「奥様なのに?触れてはいけないのか?」
「キャバクラやおさわりバーではないので。でも全くというわけではないんです。侯爵様は夜会にも夫人同伴とかあると思うので、その時に距離を取ったままですと周囲に不和を感じさせます。周囲の目を欺く程よい距離までは許容範囲内です」
「それは…手を繋いだり、場合によっては腰を…抱いても?」
「そうですね。手はエスコートする場合に限り必要ですからね。でもダンスはステップも碌に踏めませんので除外しますから腰を抱くことはないかと。当然閨活動、安心してください!御座いませんよ」
――あれ?どうしてガックリ項垂れてるの?――
その点は最初に破瓜の証は破ってしまうと再生不能なのでレンタル妻の契約範囲外と伝えたし、理解してくれたものだと思っていたのに何故ガッカリ?
――あぁ、そうか!高級娼館の娼婦はお高いもんね――
『お座敷の中の事は外には漏らしまへん』いつぞやリサが見た青空芝居の歌劇で遠い異国の芸妓役の役者が言ってたな~と思い出す。高級娼婦は芸妓と同様に口が堅い事で有名なのだ。
噂では『イッツ・ア・ヘヴン』に導いてくれる技が多種多様なのに、それを武器に愛人にしてくれと言う事も無いし、避妊もしっかりしてくれる。その上で秘密厳守なのだからお値段が高いと聞く。
リサは勿論未利用で今後も利用する予定はないが、きっとレンダールは余りのお値段に月に1回が利用の限界を感じ、リーズナブルなレンタル奥様を代わりにしようと思ったのだろうと想像した。
「では名前を。侯爵と呼ぶのも面倒だろう?」
「いえいえ。とんでもないです。今からの愛称呼びは錯誤を引き起こしますのでオプションです」
「オ、オプション?!」
「はい!当初から愛称呼びならまだしも、今からとなると言い間違いもありますしね。慣れって怖いんですよ?注意しててもうっかりを引き起こします。これでお互いより強く一線を画すことが出来ますねッ(ぶぃっ!)」
「ならば食事はどうだろう」
「安心してください!そちらもオプションになりました」
「そ、それもオプション」
「はい。不要だったようなので…ほら。今色々と街中で契約すると期間限定で色んなサブスクサービス受けられるじゃないですか。でも無料期間終了前に解約しとかないとそれぞれのサブスクから料金請求されて ”聞いてない!” と問題になってたりしますよね。1つ1つは980ルカ、2000ルカですけども積もれば結構な額ですし。それと同じと思って頂ければ。不要なサービスは除外したので今は食事、オプションです」
――あるぇ?なんでさらにガックリ度が増してるの?――
「あ、心配ですよね。でも安心してください!」
「全く安心できないんだが、どんな安心だろう」
「融資額なんですけど無料オプションを外した分は減額をスティルさんに申し出ていますので、契約時の満額じゃないですよ?ちゃーんと無駄は省いてます!(えへん)」
「む、無駄…」
安心させるためにリサが吐く言葉全てがレンダールを落ち込ませていく。
リサもまた、「もしかして事業のレクチャー分を差し引かないといけなかった?!」と、慌てた。
レンダールはバルト伯爵に散々に言われた。
初日の言動は人としてあり得ないと言われ、直ぐに謝罪をするようにと。
そして、仲良しさんになりたいのなら夫婦として関係を築き直すこと。
その為には先ずレンタル奥様という立場を改めて、夫人として妻として扱う事。
まどろっこしい事をせずに、真っすぐに向き合う事。
しかし、いまさら感が半端ないとレンダールは考えた。
再構築をするにあたり、レンタル奥様としてのリサとの距離をゆっくりと縮め、契約更新の時には「もう普通に夫婦だよね」と思えるくらいには誠心誠意尽くそうと思ったのだ。
なのに食事も愛称もダメだなんて。
「どうしました?侯爵様。気分が悪いんですか?」
「大丈夫だ。知らない間に無料期間を無駄にしてしまった自分を呪っていた」
「侯爵様、呪術にも手を出しているんですか?錬金術や魔法と同じで空想の産物ですよ?」
リサは本気でレンダールが呪術なんてものを信じてしまっている。だからこんな突然別人のようになってしまったのか?と考えた。
勿論違う。
レンダールは顔を覗き込んできたリサの手を取った。
バルト伯爵の言ったように回りくどい事を言っても仕方がない。
――ストレート勝負だ!――
意を決しレンダールは握った手に祈るようにして告白した。
「どうやら私は君の事を愛してしまったようなんだ。こんな私と‥もう一度最初から結婚をやり直してくれないか」
リサはクワッと目を見開いた。
「え?契約の全面見直し?ま、待って下さい。既に2回融資も受けているのですけどその扱いどうなります?」
リサには決死の告白が全く届いていなかった。
リサはそう判断した。
「先ずですね、大事な事なので先にお伝えしますが、おさわり禁止です」
「奥様なのに?触れてはいけないのか?」
「キャバクラやおさわりバーではないので。でも全くというわけではないんです。侯爵様は夜会にも夫人同伴とかあると思うので、その時に距離を取ったままですと周囲に不和を感じさせます。周囲の目を欺く程よい距離までは許容範囲内です」
「それは…手を繋いだり、場合によっては腰を…抱いても?」
「そうですね。手はエスコートする場合に限り必要ですからね。でもダンスはステップも碌に踏めませんので除外しますから腰を抱くことはないかと。当然閨活動、安心してください!御座いませんよ」
――あれ?どうしてガックリ項垂れてるの?――
その点は最初に破瓜の証は破ってしまうと再生不能なのでレンタル妻の契約範囲外と伝えたし、理解してくれたものだと思っていたのに何故ガッカリ?
――あぁ、そうか!高級娼館の娼婦はお高いもんね――
『お座敷の中の事は外には漏らしまへん』いつぞやリサが見た青空芝居の歌劇で遠い異国の芸妓役の役者が言ってたな~と思い出す。高級娼婦は芸妓と同様に口が堅い事で有名なのだ。
噂では『イッツ・ア・ヘヴン』に導いてくれる技が多種多様なのに、それを武器に愛人にしてくれと言う事も無いし、避妊もしっかりしてくれる。その上で秘密厳守なのだからお値段が高いと聞く。
リサは勿論未利用で今後も利用する予定はないが、きっとレンダールは余りのお値段に月に1回が利用の限界を感じ、リーズナブルなレンタル奥様を代わりにしようと思ったのだろうと想像した。
「では名前を。侯爵と呼ぶのも面倒だろう?」
「いえいえ。とんでもないです。今からの愛称呼びは錯誤を引き起こしますのでオプションです」
「オ、オプション?!」
「はい!当初から愛称呼びならまだしも、今からとなると言い間違いもありますしね。慣れって怖いんですよ?注意しててもうっかりを引き起こします。これでお互いより強く一線を画すことが出来ますねッ(ぶぃっ!)」
「ならば食事はどうだろう」
「安心してください!そちらもオプションになりました」
「そ、それもオプション」
「はい。不要だったようなので…ほら。今色々と街中で契約すると期間限定で色んなサブスクサービス受けられるじゃないですか。でも無料期間終了前に解約しとかないとそれぞれのサブスクから料金請求されて ”聞いてない!” と問題になってたりしますよね。1つ1つは980ルカ、2000ルカですけども積もれば結構な額ですし。それと同じと思って頂ければ。不要なサービスは除外したので今は食事、オプションです」
――あるぇ?なんでさらにガックリ度が増してるの?――
「あ、心配ですよね。でも安心してください!」
「全く安心できないんだが、どんな安心だろう」
「融資額なんですけど無料オプションを外した分は減額をスティルさんに申し出ていますので、契約時の満額じゃないですよ?ちゃーんと無駄は省いてます!(えへん)」
「む、無駄…」
安心させるためにリサが吐く言葉全てがレンダールを落ち込ませていく。
リサもまた、「もしかして事業のレクチャー分を差し引かないといけなかった?!」と、慌てた。
レンダールはバルト伯爵に散々に言われた。
初日の言動は人としてあり得ないと言われ、直ぐに謝罪をするようにと。
そして、仲良しさんになりたいのなら夫婦として関係を築き直すこと。
その為には先ずレンタル奥様という立場を改めて、夫人として妻として扱う事。
まどろっこしい事をせずに、真っすぐに向き合う事。
しかし、いまさら感が半端ないとレンダールは考えた。
再構築をするにあたり、レンタル奥様としてのリサとの距離をゆっくりと縮め、契約更新の時には「もう普通に夫婦だよね」と思えるくらいには誠心誠意尽くそうと思ったのだ。
なのに食事も愛称もダメだなんて。
「どうしました?侯爵様。気分が悪いんですか?」
「大丈夫だ。知らない間に無料期間を無駄にしてしまった自分を呪っていた」
「侯爵様、呪術にも手を出しているんですか?錬金術や魔法と同じで空想の産物ですよ?」
リサは本気でレンダールが呪術なんてものを信じてしまっている。だからこんな突然別人のようになってしまったのか?と考えた。
勿論違う。
レンダールは顔を覗き込んできたリサの手を取った。
バルト伯爵の言ったように回りくどい事を言っても仕方がない。
――ストレート勝負だ!――
意を決しレンダールは握った手に祈るようにして告白した。
「どうやら私は君の事を愛してしまったようなんだ。こんな私と‥もう一度最初から結婚をやり直してくれないか」
リサはクワッと目を見開いた。
「え?契約の全面見直し?ま、待って下さい。既に2回融資も受けているのですけどその扱いどうなります?」
リサには決死の告白が全く届いていなかった。
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