侯爵様、契約妻ではなくレンタル奥様です

cyaru

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第38話  品を~止めないで~責から逃げないで~

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馬車の揺れが止まると扉が開き、レンダールは先に下りるとリサに手を差し出してきた。

「ステップはあるが、躓くと危ないからな。手を」

「ありがとうございます」

馬車から降りるとスティルが見えたが、スティルの顔も強張っていた。

――何かあったのかしら――

食事を用意されて向かい合って座ったが、いつもレンダールが1人で使っていたテーブルではなく2人用のテーブルでレンダールはデザートが運ばれてくると「飲み物は?」リサに問い、給仕がリサに飲物を注ぐと人払いをしてしまった。

「余程聞かれては困る話なんですか?そんな話を私が聞いてもいいんでしょうか」

「君には言っておかねばならないからね。ただ話す内容は義父上や義兄上にも秘密にしておいてほしいんだ。おそらく王家は王女が戻ってきた本当の理由を発表しないはずだから」

「本当の理由?里心が付いてちょっと里帰りとかではないって事ですか」

そもそもで王女が帰国する事を知っている貴族も数は少ない。
知っている貴族が少ないと言う事は市井に事実が発表される事も無い。

リサは少し不安になったが、レンダールは「大丈夫」と微笑んだ。

「リサは最近物価が目に見えて上昇しているのを知っているか?」

「そういえばそうですね。野菜とか穀物だけでなく衣料品も値上がりしましたし…もしかして!金属の買取価格もですか?」


回収してきて再利用が難しく焼却処分となった家具からは取っ手など真鍮を取り外してレンダールの紹介してくれた商会に買い取ってもらったのだが、それまで買い取って貰っていた商会よりもかなり高値で買い取ってくれた。

てっきりレンダールが価格についても話をしてくれたのかと思ってしまっていた。

「実は帝国との交易が半年前から全て停止しているんだ。高位貴族やそれ以外の貴族も有志で家の穀物庫を開けたり、別の国から調達したりしてるんだがなんせ王都は人が多い。何時まで耐えられるか判らない状況なんだ」

「耐えられなくなったらどうなるんです?」

「全ての品が不足をするからインフレが起こる可能性がある。それだけならいいが、いやインフレも行き過ぎは良くないが最悪暴動が起きる。実は今日のイベントも私が想定したよりも人が多かったんだ」

「そうなんですか?確かに沢山来てくださってましたけど」

「鉄鋼の製品の供給が止まっているからね。リサの家から出ていた金属類も提供してたんだが気がついている者もいたんだろう。レンタルだけでなく過度に金属類で装飾されている家具は買い取られていく率が高かった」

「そういえば!そうです。こんなコテコテの家具なんて何処に置くんだろう?と思いましたがそんな理由があったんですね」

帝国からの供給が止まっていたなんてリサもだが、父のイクル子爵も知らないだろう。組合でもそんな話があれば何らかの通達があるものだが、それもなかったとなるとレンダールが言ったように王女が帰国した本当の理由は伏せられている、そしてそれが品不足を誘発しているのに国は対処をする気がない。

――ホント。偉い人の考えてる事は判らないわね――

リサはデザートの1口サイズにカットされたスイカを口に放り込んだ。
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