侯爵様、契約妻ではなくレンタル奥様です

cyaru

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第39話  場所は関係ねぇ~人目も関係ねぇ~

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「やっと到着?」

「はい」

帝国を追い出されたシシリー王女が帰国し、長い旅を終えて王都に戻ってきた。
国を出た時とは真逆で王女の乗る馬車を護衛している騎士はたった5人。決して精鋭を集めているわけでもなかった。

帝国を出た時は護衛の騎士だけで100人を超えていたが、3カ月半の道中で早馬により国王に齎された知らせは箝口令を布いてはいたが漏れてしまうもの。

どの国にも自国民に紛れて間者は侵入しており、王女の生活ぶりについては間者から報告は受けていたものの、蓼食う虫も好き好きでそれでも皇子がシシリー王女を迎えるのであれば帝国との繋がりが出来る。

損得で動く貴族たちも多く、帝国に出てしまった王女を突き返す事はしないだろうと傍観していたが、この時期になって婚約話を白紙に戻した上に王女は強制送還とも言える国外退去を帝国側が命じたことに貴族は動き出した。

国に戻っても王女の犯した失態は消えるわけではなく、帝国からのペナルティは当然通告される。この先王家に仕えても良いことはないと王家を見限った家の当主は王女の護衛として差し出した騎士を撤収したのである。

残っている騎士は国王の直属だったため逃げられなかっただけであるが、シシリー王女は王都を目前とした地で残った騎士に引導を渡した。


「貴方達、クビよ。全く役に立たないじゃないの」

「申し訳ございません」

「謝罪は結構。貴方達の謝罪を受けたってわたくしが何を得られるというの?で?入城はいつなの」

「馬が疲れておりますので明日の午前中になるかと」

「明日?まだこの狭い馬車でわたくしに我慢を強いると言うの?」

「申し訳ございません」


シシリー王女も馬が動かなくなればその先に進めない事は理解をしているので納得をしたのだが退屈がまだ続くことにウンザリしていた。

ウンザリしていたのは我儘王女の面倒をみねばならなかった騎士もだった。
ただ、ここで放り出して王女を置き去りにしてしまうと、自分たちの今後が潰える。

家族と離れ離れにはなるが、5年で交代と言われて役目を受けただけ。帰る頃には妻の腹の中にいた子はもう走り回っているだろうし、文字を覚えたての子供は学園に入学する年齢になる。

気持ちとしては「父ちゃん、頑張って稼いでくる」それに尽きる。

家族を捨てる事が出来なかったので今も王女の護衛をしているが、クビだと言われたのなら城に送り届けて騎士を辞する覚悟だった。

★~★

「どうするよ。馬を調達してくるか?」

「無理だろう。荷を引く馬もいる。あの荷馬車だって2頭では引けないんだ」

「だよな。都合よく馬の頭数は揃えられないよな。金もないし」

野営の準備をしながら3人の騎士たちは愚痴をこぼす。残り2人は王女の乗る馬車を護衛。5人しかいないので移動中も気が張るし、休憩所でも気は抜けない。野営をする時も準備に撤収、交代で火の番と周囲の見回り。気力も体力も限界にあった。

騎士たちにとって幸いだったのは帝国に行く時は何十台も荷馬車が連なっていたが今は1台。最初に解雇された侍女長が帝国に到着をした時に荷馬車と引いて来た馬を売った。

この先は皇子と結婚し、里帰りをするのなら馬車などは帝国側が用意をするのでシシリー王女が自前で持つ必要はなかったからである。

代金を帝国の官吏に預け、帝国側は使い込むような大金でもないと思ったのかそのまま保管をしてくれていた。

それが無ければ帰国する手段も路銀もなかっただろう。


沢から水を汲み、食事の準備が始まった頃にシシリー王女が馬車から出てきた。
騎士たちは用を足すのに出てきたのだろうと思ったが、茂みに消えて行った王女が腹を下しているにしても一向に戻ってこない。

「こんな所まできてマジかよ」
「いい加減にしてほしいぜ」
「迷子探しまでしなきゃなんねぇなんてな」

探しに出た騎士たちだったが、王女は直ぐに見つかった。
茂みの中に潜んでいる蛇のように1人の男に手を絡ませて、向かい合いお楽しみの最中ではあったけれど。
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